【応援は力なり】〜出来損ないと呼ばれた英雄の子は自分だけが使えるユニークスキル『応援』で人と物頼りで乗り切ります〜
トロ
プロローグ
第1話 『銀翼』からの追放
「エル──お前は本日付けで除名とする」
王都でも最強と言われるSランクパーティ『銀翼』のリーダーであるアランが俺にそう告げる。アランは俺の父親だ。
「どうしても抜けないとダメなの!?」
俺にとって『銀翼』は大切な居場所だ……抜けたくない。
「散々話しただろ? 俺達は明日──災害と呼ばれている魔物と戦う。お前達だけでも生き残れるように話した結果だ……俺達も出来ればお前と一緒にいたい……だが──今回ばかりは俺達──Sランクパーティである『銀翼』も生き残れるかわからない。だから──お前だけでも生き残れ……妹のフレアも頼む。……泣くな……男の子だろ?」
頬に涙が止めどなく流れ続けてくる。
「貴方の力はきっと色々な人を助ける事が出来るわ……自然と周りも寄ってくる……だからそんな寂しそうな顔しないで?」
先代の聖女であり、母親であるキャロルも続けて言う。
「でも……母さんっ! 俺も力になれるよっ!」
そう、俺は役に立てる。生存率を上げる事が出来るんだ!
「エル……」
母さんは困ったような顔をする。
「親を困らせるもんじゃない……確かにお前の力は役に立つ。だが、まだ幼い……俺達が生き残れれば──また戻ってこい。なっ?」
大きな盾を持ち、皆を勇敢に守ってくれる壁役のゾッホが俺の頭を撫でながら悟すように言ってくる。
守る事において、右に出る者は少ない……そんな彼が『生き残れれば』と言うぐらい今回の相手は危険なのがわかる。
「誰一人好きで貴方を除名なんてしないわ? まだ13歳でここまでサポート出来る人なんていないわ。貴方ならどこでもやっていけるわ」
次に話して来たのは魔法剣士であるミレーユだ。『銀翼』の中では1番新しいメンバーで俺の次に若い18歳の女性だ。
彼女の言う通り──俺はSランクパーティに恥じぬサポートをしてきたつもりだ。
「辛気臭いなぁ、それなら皆で『白銀の誓い』をしようぜ?」
暗い空気を吹き飛ばすようにお調子者の元剣聖であるブレッドが空気を変える為に割り込む。
『銀翼』のメンバーは全員が一騎当千の実力の持ち主だ。俺は皆に憧れ、尊敬している。
そして、『白銀の誓い』──
それは『銀翼』で行われる──言葉に出した内容を必ず実現させるという意思を込めて本気で取り組む為の儀式だ。
別に何も強制力なんてない……だけど、皆は必ず言葉に出した目標や願いは実現している。
それだけに俺は皆が生き残って、またパーティに入れてくれる事を期待する。
「ちなみに、エルは不参加な? 除名したからな」
父さんの言葉に俺は少しムッとする。
「じゃあ──せーので行くぞ?」
俺以外が視線を合わせて全員頷く。
「「「──エルが英雄になれますようにっ」」」
示し合わせたように同じ事を皆が同時に言う。
その言葉が意味しているのは──
生きて戻る事は無い……そう言う事だろう。
「……俺には無理だよ……なんで……なんで帰ってくるって……言ってくれないんだよぉ……」
「守れるかわからない約束はしない。それに、お前ならなれるさ──お前の力は特別だ。なれると本気で信じている」
「父さん……」
「優しい貴方は皆の英雄になれるわ。妹のフレアも必ず守ってあげてね?」
「母さん……フレアはちゃんと俺が守る」
俺は真剣な眼差しを向けて、最後のお願いであろう言葉に応える。
「お前は芯の強い子だ」
いつも守ってくれる大きな手で安心させるように俺の頭を撫でてくれるゾッホ。
「ゾッホ……」
「俺達の誓いは今の所は叶っているっ! それに俺にはお前が活躍している未来が見えるっ! 将来は英雄で決定だ!」
いつも空気を明るくしてくれるブレッドは剣を天にかざして励ますように言ってくれる。
「ブレッド……」
「エル、私達は諦めてないわ……生き残る為に戦うんじゃない。エルに生きてほしいから戦うのよ。その為なら──全員、この命なんて惜しく無い」
ミレーユは屈んで俺を抱きしめながら皆の心を代弁する。
「ミレーユ……うぅ……うわぁぁぁぁぁん」
俺は泣き疲れるまで皆を抱きしめた。
「行ってらっしゃい……」
俺は泣き止み泣き腫らした顔で精一杯の笑顔で言う。
「「「応っ」」」
父さん、ゾッホ、ブレッドは気合いの入った返事をし──
皆男らしい顔付きをしている。
「幸せになるのよ?」
母さんは俺の幸せを願い──
「生き残ったらお嫁さんになってあげるね?」
ミレーユは俺の頬にキスをしてくれる。
俺の初恋の人──ミレーユ。
出会った時に一目惚れをしてからはいつも俺は結婚してと言っていた……。
必ず帰って来て欲しい……せめて俺がもっと戦えたら……俺も一緒に連れて行って貰えたかもしれない。
足手まといがこんなに悔しいなんて……。
皆は俺に背を向けて歩き出す──
「絶対、絶対に生きて帰って来てっ! 待ってるからっ! 俺──英雄にでも何でもなって待ってるからっ! だから────生きて帰って……ね……」
しばらく離れた所で、出来る限り出せる声量で叫びながら言う。
俺の言葉が聞こえてたのかわからない……だけど、皆──肩を震わせていた。
そして──
その後、誰一人……王都に戻ってくる事はなかった……。
後から父アラン、母キャロル──いや、俺の英雄達は死力を尽くして王都を守ったと──
そう聞いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます