第104話 真実を知る者

 〜グランド視点〜


「さぁ──皆の者、もうすぐでエル達を先回り出来る。そして──さっさと手続きを済ますぞ!」


 わしらは全力の進軍スピードで進んでいく──


 今この場にはしかおらん。


「年寄りを使うでないわい……死んだらどうするんじゃ?」


──文句を言うでないわい! これも全ては世界の為じゃっ! 神域はアランとわしでさえ泣く泣く諦めたんじゃ。必ず強くなってもらう──」


 わしとアラン、イザベラはキャロルの儀式の時に真実を知り──偽りの神と戦闘になった……。


 もはや、あれは人類で相手に出来るレベルじゃないじゃろう……それこそ初代オーガストぐらいしか相手に出来んのでは思うぐらいじゃった。


「あれは──勝てんじゃろ……わしらが全盛期で手も足も出んかったではないか……」


「そんなもん知っとるわっ! 老いたとは言え、わしらは元『六聖』じゃ。アラン達を殺した奴はまた現れる。わしらは滅ぶ世界に神の信徒として出来る事をせねばならん!」


 そう、偽りの神の思惑通りにはさせん。


 烙印──


 それは偽りの神の刻印。


 初代聖女様とライアス様に起こった悲劇──


 それは偽りの神が元凶じゃ。


 わし、イザベラ、アラン、キャロルの4人は唯一その真実を知る者じゃ。


 今代の聖女はまだ神域に行っておらん。


 腐り切った内部では難しいじゃろう。


 その為に──エルの妹であるフレアを必ず神域に連れて行くようはずじゃ。キャロルの時はアランが仕組まれおったしな。


 既に局面は最終段階じゃ……今回はもしかしたら──エル自身に烙印を刻むかもしれん。


 いや、既に刻まれている可能性が高い──


 今回、今代の聖女はエルと接触しているという情報はアメリア王女より受けておる。


 巻き込まれた可能性が高い以上は、せめて──


 強くなってもらって、なんとか可能性を上げねばならん。


 今回の件は都合が良い。


 エルは援護特化──。しかも、昔に発見したライアス様の手記を思い出すに──幼少期と似たような事が共通しておった。あり得ないサポート力、回復魔法──あれは間違いなく再来……もしかしたら、ライアス様のように最強に至り、いつか束縛されたを解放するかもしれんと思うぐらいに。


 じゃが、エル自身の力はまだまだ弱い──話を聞くにどこで知ったかわからんが、初代オーガストの『型』を使い始めたと聞いた……それでもまだ足りない。


 此度のアメリア王女の計画は必ずやエルの成長に一役買うであろう。



「帰るぞ? また朝に来る」


 イザベラが休憩していると勝手に帰ると告げる。


「ちょっと待てぇいっ! わしらも連れて王都に帰らんかっ!」


「誰か残らねばならんじゃろ……目印が無ければ転移でけんわ。って事で老いぼれが残れ──『転移』──」


 わしを除いた全員が転移する──


 あんの糞ババァ──


『転移』は場所さえ覚えておれば目印なんか必要ないじゃろが!


 歩かせた恨みか!



 わしは1人で火を起こし、干し肉を頬張りながら星空を眺める──



 年寄りに夜風は辛いわい……。



 さて、わしも勘を取り戻さねばならんな……。



 そして、息子であるアランから託された子供を──


 いや、を祖父である──


 わしが必ず──


 守る──


 それがオーガスト家に産まれたわしに出来る最後の孫孝行じゃ。


 オーランドではフレアの烙印に勘づいた教会が干渉してきたお陰で孫に何もしてやれんかったからな……。


 今回も邪魔して来おったら潰せば良かろう。既にわしは教会に属しておらんしな。


 そういえば、さっきまでいたシスター達も本部が嫌な連中ばっかりの集まりでわしに着いて来るのも躊躇いがなかったのぉ……あやつら──


 もう、今のぐらい強いんじゃなかろうか? 鍛え過ぎたかもしれん……。


 さぁ、鈍った勘を取り戻すか……。


 わしは誰もおらん中、基礎の『型』を繰り出す──



 ────


 ────────


 ────────────



 日が昇って来たか──


「おい……老いぼれ……この状況はどうなっとる? 昨日ここはだったはずじゃが?」


 イザベラが来たようじゃな。


 ふむ、確かに……森じゃったな……。今の周りを見ると更地しかないのぉ……


「……つい、我を忘れてしまったわい……」


 一心不乱に槍振っておったから覚えとらんな……。


「老いぼれはアランと一緒じゃな……」


「まぁ、親子じゃしな!」


「エルがお前らに似なくて良かったわい……」


 シスター達も同じく頷く。


 いや、確かに更地にしたのはやり過ぎたが──


 お主らもこれぐらい簡単に出来るじゃろ!?


「ちなみに武器の素振りだけで更地に出来る輩はここにはお前だけじゃ。長い付き合いじゃ……考えぐらいんかるわい……」


 うぐっ。


「……さぁ、気を取り直して──さっさとエルの元へ向かうぞ!」


 誤魔化しながら足を進ませる──


 わしらの目指す場所は──


 冒険者ギルド本部のある、ランバード王国じゃ。

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