第49話 パンツ見えてますよ?

 しばらく呆けていたら──


「どこのどいつだっ! お陰で死にかけたぞっ!」


 と怒鳴られてしまった……。


 それはそうだろう。死んでもおかしくない威力だからな……。


「すいませ──ん?」


 振り向くと目の前には誰もいなかった。


『主、上だ』


 シロガネの言葉に俺は視線を空に向ける。


 そこにいたのは角と翼を生やした女の子だった。


 珍しいな……こんな所にがいるなんて……そういえば、多種族は王都にはそれなりにいたが、ここら辺ではあまり見なかったな。


「謝って済む問題かっ!」


 酷くご立腹のようだ。


 しかし、こんな所で彼女は何をしているのだろうか?


【叡智】さん出番です。


[つまんない事で使用するんじゃないっ! 忙しいのっ!]


 ……俺は思った。


 お前スキルだよね? 忙しいって何だよ!? って……。


 とりあえず、【叡智】さんはストライキを起こしたので自分で対処するしかない。



「えっと、まさか人がいるとは思わなかったので──すいま……せん……」


 言い訳をしつつ、空を見上げて謝り──直ぐに顔を下げる。謝る為に下げたのもあるが──


 こちらに近寄って来ていた魔族の女の子のパンツが丸見えだった……。


 ガン見するのもダメだし気不味い……。


「主よ、童貞なのか? パンツ如きで頬を赤らめるでないわ」


 うぉいっ! シロガネさんやっ!


 なんで、大きくなって喋ってんだよっ!


 そこはで良いだろっ!


「──!? パンツ!? 変態っ!」


 魔族の女の子もパンツ丸見えなのがわかったようだ。頬を赤らめて即座に地面に着地する。


 変態とは言い過ぎではなかろうか? 俺別に悪くないと思うんだよね……ミニスカ履いて空飛んでる君が悪い!


「不可抗力です」


 俺は即座に言い訳をする。


「はぁ……まぁ、いいわ」


「いいですか!?」


「減るもんじゃないしね」


 なんとも、さっきと同じ人だとは思えない発言だ。


 はっ!? まさか──これがツンデレって奴なのか!?


「それで貴女はここで何してたんですか?」


「この付近で危険な兆候があると確認して来いと言われただけよ」


 ん? 発言から──この人はどっかの偉いさんの従者か何か?


「あぁ、そういえば少し前にちょっとヤバそうな奴がいましたね。もう大丈夫ですよ。討伐完了してますから」


 うん、脅威は無いはずだ。シロガネが討伐したしな!


「ふむ、私の目の前にはヤバそうながいるが? そして、さっきの魔法も一国に大打撃を与えるには十分な威力だが?」


 視線の先はシロガネを捉えており、剣を構えている。


 うん、これ間違いなく俺というか──シロガネだな……あの銃から放った【雷魔法】も元はシロガネの魔法だしな……。


 絶対、フェンリルってバレてるよね……。


 フェンリルって災害級だし?


 脅威認定されてもおかしくないよね?


 そもそも、ヤバい奴倒したのって更にヤバいシロガネだった件について!


 つまり──


 俺達はこれから襲われるかもしれないと言う事だな!


 うん、最悪だっ!


 ここは話し合いを所望したい。


「確かにシロガネは脅威かもしれませんが──俺の従魔です。危険はありません。さっきのも訓練していただけで、決して貴女を狙った物じゃありません」


 誠心誠意込めて俺は説明する。


「そうか……」


 おおっ、分かってくれたか!?


「そうなんです! だから剣を収めましょう! ほらほら出会いに乾杯ですよ!」


「主は必死だな……」


 うっさいっ! そもそもお前大きくならかったらこんな事になってない!


「我が国にはこんな言葉がある──『疑わしきは罰せよ』──とな?」


 ヤル気満々ですやん……何その絶対王政……。


 ──こ、これは凄い魔力だな……。


 さすがは魔族と言った所か……。


 亜人と言われる人族ではない種族は何かしらに特化している事が多い。


 例えば──獣人なら身体能力特化だったりするし、魔族と言われる人達は平均的に魔力が高いし、強力な魔法を使ったりする。


 だが──倒すのは簡単だ(シロガネが)。


 シロガネの方が魔力も強いだろう。


 だけど、倒してしまうとかなり拙い気がする……たぶん、この人は国直属の偉いさんのはずのような気がするし。


 叩き潰してしまうと──


 俺狙われるんじゃなかろうか?


 なんとか穏便に事を済ませたい。


「えっと……黒いパンツの人──「ぶっ殺すぞっ!」──なんと呼べば?」


 勢いでパンツの色を言ってしまった……怒らせてしまった……。


「死にゆく者に名乗る必要もないだろ?」


 俺の頬は引き攣る。


 やはり怒っている……。


 戦闘は避けられないな……。


 シロガネに任せたら周りが凄い被害を受けそうだな……念の為に言っておくか……。


 俺はシロガネに視線を移し──声をかけようとすると。


「わかっておる……我が派手に倒してやろう」


 全然わかってないしっ!


「いや、お前の派手な一撃とか普通に死ねるだろ!? 殺したらダメだぞ! とりあえず死ななければ俺がなんとかするからとりあえず殺すなよ!?」


 あっ、しまった!?


 ぷるぷるぷると震える黒パンツの人が目に入る。


「絶対殺すっ!」


 こうして、誤解からパンツの色を言ってしまった俺は戦闘に入る事になってしまった……。

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