第48話 新たなる?武器(自分の)

 俺はあの状況の中、シロガネと共に【天駆】を使い即座に離脱した。


 そして、今は物陰に隠れてシロガネと念話をしている。


『シロガネ、小さくなれないか?』


『なれるぞ?』


『……』


 なら何でさっき大きくなった!


『我は【変化】スキル持ちだからな。小さくもなれるし人にもなれる』


『……』


 何気にドヤ顔なのが腹立つな。


『主の周りが持ち上げておるから、我もつい調子に乗っただけだ』


『いや、そんなのいらないから小さくなってくれないかな?』


 俺はこめかみをピクピクさせながらそう念話する。


 すると小さな狼になるシロガネ。


 これで街にいる間は一安心だな。


 俺達は街を歩き出す。


 目的の紙は雑貨屋さんでとっとと購入すると、目の前には魔石屋さんと武器屋さんが見えた。


 ちなみに魔石とは主に魔物を倒すと手に入る魔力の宿る石だ。


 魔物の核に相当する為、基本的にどの魔物にもある。


 もちろん今まで倒した敵で回収出来る時は回収している。基本的に俺が使うので売っていない。


 今回もドラゴンゾンビや高ランクの魔石が手に入っている。


 この魔石は魔道具を作る時に前世で言う電池みたいな役割を担うのでかなり有用だ。


『魔札』のように【刻印魔法】を刻んで使い捨てにするには勿体無いので主に攻撃では使わないが……


 でも、この間の件もあるし一応文字刻んどくか……。


 まぁ、しばらくは魔石も必要ないな。いっぱいあるし……。


 俺は魔石屋さんを一瞥する。



『主は武器は使わんのか?』


 シロガネは俺が魔石屋さんの隣にある武器屋を見ていると思ったみたいだ。


『……あぁ、俺に武器は使えないんだ……スキルが無い……』


『ふむ、護身用に持っておく事をお勧めする』


『そう、だな……』


 剣は一応所持しているが本当に護身用だな。攻撃手段が少ない俺は一応、他にも武器を持ってはいる。まだ完成していないが……。


『まぁ、我が守ってやるがな』


 そんなシロガネの言葉に俺はほっこりする。


 なんやかんやで、気を使ってくれているようだ。



『なら、外に出よう。武器を完成させたい』


 旅をする上で武器が必要なのは俺が一番わかっている。


 この機会に完成させたい。


 何故、外なのか? 前に失敗して爆発したからだ……。


 俺達は外に出て何も無い荒野を発見する。


「さて、やりますかね! シロガネは護衛よろしく!」


『うむ』


 俺が作っているのは前世の記憶にあったという武器だ。


 本来なら鉛の弾を発射するようだが、仕組みなどよくわからないから再現は出来ない。


 なので、今作っているのはだ。


 魔法が使えない俺が魔法を使いたい一心で作り始めた。これならは必要無いしな。


 普通の魔力弾を発射するのは試作品ではあるが、以前にも作っている。ミレーユと再会する前ぐらいだな……。


 それは知り合いの娘さんにあげたから手元にない……。


 あれであれば低ランクの魔物だったら問題なく狩れる性能だ。


 だが、今の俺の冒険者ランクはBだ……最低でもそれぐらいの敵に通用するぐらいの物が欲しいっ!


 なので、以前から中途半端に作っていた物を完成させるっ!


【魔道具生成】【鍛治】【刻印魔法】などのスキルを合わせた最高傑作だ!


 後は仕上げの【刻印魔法】を刻むだけだっ!


 前に暴発したから慎重にしないとなっ!


 ふっ、これで念願の攻撃手段が増えるぜっ!


 一応、2種類の銃を用意した!


 一つは以前に作った試作品と同じ奴で魔力弾を発射させる物だ。



 銃身にはふんだんに『加速』の文字──


 壊れないように『強化』の文字──


 トリガーには『発射』の文字──



 ──ふっ、ふははっ!


 威力を試すのが楽しみだ。


 これで俺は戦闘において無能ではなくなるっ!


 しかし、問題が一つある……。


 ……弾が一発しか入らない……何回も試行錯誤はしているのだが、上手くいかない。


 どうやったら何発も入るんだよ……。


 まぁ、魔力弾の方は一発だけでも問題無い。これは自身の魔力を込めるだけだからな。


 問題はもう一つの方だ。


 こちらは弾丸に魔法を込める仕様にしている為、一発撃つと2発目は魔法の込めている弾丸に変えないと弾が発射されない……。


 これはいつかなんとか改良したいものだ。


 一応、念の為に俺にしか使えないようにしているから、安心だ。そもそも真似しようにも【刻印魔法】を理解して使えないと再現不可能だしな。


 とりあえず試すか……。



「シロガネ! 完成したぞ! これが俺の使武器だっ!」


『なんじゃそれ? えらい分厚いブーメランだな……投げるのか?』


 ……まぁ、見ようによってはそう見えるかもしれん……。


「この武器は誰にでも攻撃魔法が使える武器なんだぞ? その馬鹿にしたような顔に吠え面かかせてやるからなっ! 見てろよ? まずはこっちだっ!」


 俺は魔力弾を発射する銃を右手に持つ。


 目標は目の前に見える木だ。


 銃を目の前に突き出し構えて──


 トリガーを引く。


 シュッ


 と短い音が木霊すると同時に木に小さな穴が空く。


 うん、成功だ。以前と比べると貫通力が断然上がっている。


 これならオーガぐらいなら貫通可能だろう。


『主よ……』


「なんだ? 褒めてくれていいんだぞ?」


 俺はドヤ顔でシロガネに言う。


『そんなもんで巨大な魔物が殺せるのか? 穴が空くぐらいなら──直ぐに回復する魔物であれば無駄だぞ?』


 ぐぅ……痛い所を突いてくるな。


 だが──俺にはもう一つあるっ!


「ふっ、シロガネよ……これに【雷魔法】を込めてくれ」


『ふむ、えらい自信満々だな……良かろう──『落雷』──!? 発動せんだと!?』


「ふっ、驚いたようだな。これには『吸収』と『状態維持』の刻印をしてあるからな。さぁ──それを寄越せっ! 俺の攻撃を見せてやろうじゃないかっ!」


 俺は再度、銃を持って構える。この銃は俺の魔力が流れる事により発動する。


『ぬっ、これは──』


 凄まじい魔力が俺の銃を中心に放出する。


 なんか──


 ヤバい気がする……。


 だが、しっかりと見定めなければっ!


 俺は『発射』する──


 轟音と共に細い銃身から放たれるのは紫電を発した極太の黄色い閃光──


 瞬く間に木に着弾し、消し炭にする。


 そして、俺の方は反動で激痛に襲われる。


 なお、止まる事なく、そのまま前方に向かって行く。


 ヤバい……このままだと大惨事になる──


 俺は痛い腕に『回復魔法』を使い、銃を無理矢理に真上にすると、黄色い閃光は上に曲がり、やがて消える。


 俺は冷や汗が止まらない……想像以上にヤバい……。


『天晴れなり。我の『落雷』より威力があるな。弾とやらは人頼みではあるが……』


 おそらく、収束しているから貫通力重視になっているせいだな。


 そして人頼みなのも否定はしない! 俺攻撃魔法使えないからね!


「どうも……」


 俺はなんとかそう返事するのが精一杯だった。


 一応、成功だと思うが──


『こんなもん通常の戦闘で使えんな……』


 そうなんだよ……こんなもん通常の戦闘で使えるかっ!


 巻き添えで下手すりゃ仲間が死ぬわ!


 はぁ……完全に切り札だな……。


 とりあえず名前つけるか……。


 今使ったのは全てを飲み込む勢いで放たれたから安易だけど『飲み込むスワロウ』だな。


 ただ、シロガネの魔法の威力に負けてスワロウの銃身が歪んでいる……修理が必要だな……素材もいつか強力な物が欲しい。



「まぁ、俺には『魔札』があるさ……」


『人生そんなもんだ……』


 シロガネの慰めがやけに心に突き刺さった……。

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