第101話 烙印
俺は寝床に入り、考える。
神という存在は信じていなかったが、バラムははっきりと神と言っていた。
『脅威』とやらを封印する為にライアスさん、スフィアさんという2人を使った神という存在と、エレノアさんに信託を下した存在は一緒なのだろうか?
もし一緒であれば──今回、俺は何をさせられるのだろうか?
いくつか引っかかる所もあった……。
バラムの話を聞いていたら、ライアスさんを動かす為にスフィアさんの治療法をダシに使い、生け贄となり封印する事も折り込み済みだった可能性もあるかもしれない。
そんな存在の言う通りに動いても大丈夫なのだろうか?
……いくら考えてもわからない。
ただ、このまま神という存在の手の平で踊るとろくな事が無い気がする。
エレノアさんの受けた『信託』は初代聖女様の眠る場所に向かう事だ。しかも丁寧に俺にまで
母さんからは洗礼を行い、聖痕をスキルに変えてもらったとだけ聞いた。
『脅威』なる者が復活する兆しがあるから行かなければならないのか?
聖痕はいや、烙印は目印──
そう言っていた。
他にスキルとの引換券みたいな役割もあるのかもしれない。
初代の時に考えていた内容の答えの一つが確信に変わった。
神という存在は確かにいて、ユニークスキルを授ける事が出来る。
その代わり──
何かこの世界に変調を来す事がある場合には『信託』を使い──
手段は選ばずに手足のように動かす?
そういえば、初代には聖痕があったのだろうか?
初代の時は巫女とやらが誘導していたと言っていた気がする。その人はいつか俺の前に現れるのだろうか?
もしこの予想が当たっていた場合──
俺はこの運命から逃れる事は出来るのだろうか?
そう考えるだけでゾッとする。
今回の件についてはこれ以上考えても仕方がないか……だけど、何か対策は必要なのかもしれない。
俺の考えがわかる【叡智】、初代も黙ったままだ。
何か知っているのだろうか?
のんびり旅をしたいのにどんどん厄介な事になってる気がする……。
とりあえず、フレアの目は治せるのがわかっただけでも十分だ。
かつてのライアスさんのように片目だけでも移植しようと思う。
両目を移植しようとも思ったけど、俺が可愛いフレアが見れなくなるのは困るからね。
今ならフレアは熟睡している。
やるなら今が良いだろう。どうせ考えて眠れない。
俺は起き上がりフレアの寝ている場所に移動する。
「エル──」
「ミレーユか……こんな遅くにどうしたんだ?」
「フレアちゃんの近くに気配が近付いたから、起きただけよ。何かあったの?」
「あぁ、これからフレアの目を治す」
「──!? 治せるの!?」
「あぁ、俺の片目をフレアにプレゼントする──」
「……これからに支障は出ないの?」
「出る──かもしれない……だけど、念願の治療方法がわかったんだ。フレアに世界を見せてやりたい」
「そう……エルが決めた事に反対はしないわ……」
「ありがとう……じゃぁ、始めるよ──!?」
俺はフレアの瞼を開けると──
眼球に
何故……──何故フレアにある!?
俺は強く拳を握りしめ、血が滴る。
「エル? ──これは!?」
「『神の烙印』ね……」
「メリルさん……起きてたんですね……神の烙印とは何ですか?」
後ろから話しかけるメリルさん。
「これは聖王国に伝わる古い伝承よ。『烙印』されし者は責務を全うする──そう伝わっているわ」
責務だと!?
『信託』を下した存在はフレアに何をさせるつもりだ!?
ダメだ……怒りでどうにかなりそうだ……。
冷静になれ俺。
この呪縛から解き放つにはどうしたらいい?
この眼球を取り出せば──
いや、無理だな……俺の聖痕も嫌で削ぎ取ってみたが、結局取れなかった。
俺の目を移植しても聖痕のせいで見えないのであれば──効果が無い可能性が高い……。
父さんと母さんはこの事実を知っていたのか?
生まれ付きユニークスキルを持っている人も聖痕を持っているのか?
俺は生まれ付き聖痕はない。カレンさんも持っていなかったはずだ。
「メリルさん、ミレーユ……カレンさんにその烙印はありましたか?」
「「ないわ」」
という事はやはり、聖痕──いや、烙印は目印の役割が大きいのか?
バラムの話を聞いているだけに神という存在が余計に信用出来ない。
せっかく掴んだ治療法が使えなくなってしまった。
くそっ!
どうすれば──この烙印を剥がせる?
どうすれば──
フレアに世界を見せてあげれるんだ……。
信託通りに神域にたどり着けばフレアの烙印は消えるのか?
『お前はお前の思う道を進めば良い──誰も強制などしない──』
そんな初代の声が木霊する。
初代──いったい何を知っている!?
『話せない……だが──今は強くなる事だけを考えろ』
答えになっていないっ!
【叡智】っ!
[エル=オーガストよ。答えは神域にある。足掻け──そして掴み取れ]
どういう事だよ!?
それから何度問いかけても反応すらしなくなった。
神域に辿り着けば答えがわかる──
それはつまり、『脅威』とやらの封印をしろという事なのか?
そうすればフレアの烙印は消えるのか?
そうとしか考えられない。
やはり、バラムにもう一度会おう。
俺はバラムを探す──
「おや、ボス──酷い顔ですね? あれは試したのですか?」
「バラム……いや、目に烙印が刻まれていた……」
「──なるほど……先手を打たれてましたか。あれは呪いと言っても過言ではないですからね……やらなくて正解です」
呪いか……確かに何かをさせるのであればそう言っても間違いじゃないな。
「消すには神域に行かなければならない」
「その通りです。しかし、その為に──ボスは私やオーガストより強くならねばなりません……それこそ──神……いや、偽りの神を倒す為に」
「──偽りの神?」
『信託』を告げている存在の事か? それともライアスさん達の前に現れた存在?
「ボスは元から関係者です。近いうちに知る事になるでしょう。私も話したいのですが──これについては話す事が出来ません。おそらくボスの中にいるオーガストと巫女も何も話していないでしょう?」
元から?
それより、初代の存在に気付いているのか!?
後──
「巫女? そんな人はいないぞ?」
「あぁ、今はシステムに介入してスキルになってましたね。【叡智】スキルは巫女ですよ」
──なんだと……既に干渉されていたのか!?
「お前が初代達と同じように言えないのは理解した。だけど、俺が強くなる事がフレアを助ける事に繋がるのか?」
そこが一番重要だ。
「……間違い無く繋がります。歴代使徒もまたその被害者──それにエル=オーガストが終止符を打ちなさい。それが妹を救う事にも繋がるでしょう。オーガストも巫女とは一度は敵同士でしたが──真実を知り、今では同志です。この3人は味方です。そこだけは信じてくれて結構です」
一度は疑心暗鬼になったが、味方なのか?
本当に?
『もちろん、俺の子孫だからな』
[この場に存在している私達は敵ではありません]
そうか……。
「信用していいんだな?」
『[「もちろん」]』
強くなる理由が増えた──
いや、俺はフレアを守る為に必ず強くならないといけない。
それしか手が無いのであれば──やるしかないっ!
神?
誰が相手でも関係無いっ!
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