第40話 予想外の光景
俺達は街に戻り、タリアさんとナナのいる家に到着する。
そこで見た光景は俺の予想と180度違うものだった……。
「──ふっ、ふっ、ふっ──」
まだそんなに回復していないはずのタリアさんがベットの横で何故か腕立て伏せやスクワットをしていた。
チンピラ3人はその近くで横たわっている……何が起こった!?
俺達はしばらく、唖然としてその場を見守った……。
「あら? ──やだぁ~エルさんっ! いるなら言って下さいなぁ~! やだ、恥ずかしい~水浴びして来ますね?」
俺達に気付いたタリアさんは頬を染めて水浴びをしに走り去る。
身のこなしが早くてびっくりだった……。
「エル……話に聞いていた感じと違うんだけど?」
そんなカレンさんの声が聞こえてくる。
カレンさんとメリルさんには既に事情を話していただけに疑問符を浮かべているようだった。
「いや、俺にも全く意味がわからない……」
いや、しかしそれでも長い間床に伏せていたはずだから筋力や体力が落ちてるはずなんだが……。
『天使の息吹』で回復しているのだろうか? そこまでは検証した事がないからわからない。
謎だ……。
「エルお兄ちゃん! お母さん元気になりましたっ! ありがとうございます!」
ナナが後ろから声をかけて来てくれる。どうやら格好から買い物に出ていたようだ。
「あ、あぁ……タリアさんが筋トレしてたんだけど何で?」
「あはは……あれはですね……リハビリらしいです……いきなり体調が良くなったと思ったら──ずっとあの調子で……あの人達も組手だと言って一瞬でねじ伏せてしまって……安静にしてほしいんですけどね……」
遠い目をしながら困ったように言うナナはもう諦めているのだろう。
「そうか……」
俺も何も言うまい……チンピラが病み上がりで倒せるのは凄いと思うけどね。
俺の仲間も引き攣った笑いを浮かべている。
唯一、フレアだけはタリアさんが復活した事に喜んでいるが……。
ナナとも目の前で「良かったのです!」とか2人で盛り上がっている。
「おほほほっ、お待たせしました」
しばらくするとタリアさんが水浴びを終えて戻って来た。
年齢的に20代半ばのはず……この世界では10代半ばぐらいで結婚して子供を産む人が多いからな……。
水浴びから急いで戻ってきた為か、濡れた髪と急いで着たであろう服は薄っすら濡れているのがセクシーだ。
この世界では20代半ばになると行き遅れのレッテルが貼られるが──
──前世の記憶にはこれぐらいの年齢から30代ぐらいが女性としての魅力があると記憶している。
とても眼福ですっ!
──くっ、殺気が!?
ミレーユか!?
──いや、これはフレアとシロガネ以外の仲間全員か!? 何故!?
「いえいえ、とりあえず最悪の事態にならなくて良かったですよ」
俺はにやけ顔から真面目な雰囲気を作り、そう答えて取り繕う。
「本当にありがとうございました。私もこれで娘に迷惑をかけずに魔物を狩れます」
ん? 魔物を狩る?
普通に危ないよ? 俺なんて一人で狩りするとアイテム使うから赤字になる事も多いぐらいなんだよ?
「お母さん……冒険者なんです……しかもBランクの……」
ナナがコソッと教えてくれる。
……なるほど……直ぐに狩りに行けるようにする為にトレーニングをしているのか……。
というか、俺より上のランクだな……凄く華奢な見た目なのに人は見かけによらないんだな。
まぁ、スキルさえあれば別に体格なんてあまり関係ないか……。
「タリアさんはしばらく栄養をしっかり取った方がいいですよ? 俺の栄養剤飲んでるなら普通に食事も食べれるでしょうし、何か作りますね? 台所借りますよ?」
頷いてくれたので、台所に向かう。
さて、俺のヤバい【料理】スキルのお出ましだ……。
何を作ろう……。
やはり、シロガネと約束してたし──
オムライスかな?
【アイテムボックス】に材料はあるから作れるけど。
材料は──
米、玉ねぎ、卵、バター、憤死のオークベーコン(いつぞやのフレア撃退)、ケチャップ、塩胡椒、醤油だな。
シンプルなのにしよう……この世界の料理レベルは前世の日本よりは数段落ちる。その癖何故か調味料だけは大体揃っているという謎仕様だ。
俺は昔にケチャップをどうやって使っているのか気になって周りに聞いた時はただ上にかけて食べているだけだと聞いた……。
おそらく、食に対する意識が低いのだろう。他の調味料も全く活用されていない。
さてと、米を炊いてと……その間に材料を切るか。
まず──玉ねぎをみじん切りにして、ベーコンを食べやすい大きさに切る。
それらを炒めてケチャップを投入。火を通す事で酸味を飛ばす。
そして、炊き上がったご飯を突っ込んで混ぜる。程良く火が通ったら醤油を風味付けにかけてケチャップライスの出来上がりだ。
次はフライパンにバターを入れ、溶き卵を流し込む。ここからは速さが勝負だ。
卵が破れにくくする為にかき混ぜ、少し半熟な状態になった所で、ご飯を真ん中辺りに入れる。
上と下の卵を少し米に被るようにして、フライパンを斜め前に向けると端っこに寄る。
真ん中辺りを押さえながら、炒飯を炒める要領でフライパンを動かすと──
あら不思議、前世のお店で食べるようなオムライスの出来上がり!
それらを人数分作り上げる──
ぶっちゃけると量が多すぎる……合計で9個か……。
しかし、足りないだろうな……。
『主……足りん……』
そんな念話がシロガネから聞こえてきた。
やっぱりか……予想の範囲内だな。
アレンジした物も作るか──
俺の調理はまだまだ終わらない──
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