第41話 一件落着?

 案の定、出来上がったオムライス達はフレアが一瞬で運び──そして、一瞬して消え去った……。


 俺の分もシロガネが食っていて無い……。


「くぅ~ん(飯だ、早く我に飯をよこせ!)」


 さっきからこの調子だ……。


 お前のその小さな体の中にオムライスが無くなっている事実の方が気になるぞ?


「はいはい……」


 このままだと俺が食事にありつけないので、ひたすらオムライスを作り続ける。


 笑顔のフレアが鼻歌を歌いながら次々と運んで行く。


 もちろん、バリエーションを変えたオムライスだ。ハンバーグを乗せたり、カツを乗せたり、ウインナーなどのトッピング──


 さらには【アイテムボックス】で保存していたビーフシチューなどのクリーム系のシチューなどを添える。


 更にっ! 普通に包むのも飽きたので、ドレスオムライスを作る。


 フライパンに引いた卵をかき混ぜて、卵が流れる程度まで固まってきたら、箸を2本使い端と端を摘むようにとじると卵が端で引き寄せて無い部分に流れ込む。


 そこからはフライパンを回しながら箸を持っていると──


 あら不思議!


 まるでドレスのような卵が出来あがりました!


 それをケチャップライスの上に乗せる。


 まるでオムライス専門店のようだなっ!


「「「きゃぁぁぁっ~」」」


 女性陣の声が聞こえてくる。


 好評のようだ。



 その甲斐があって、食卓の方は落ち着いて来たようだ。


 先程より静かだし、シロガネが催促に来ない。


 良しっ! 俺もやっと食えるぜっ!


 最後は俺のお気に入り──


 おろしポン酢のオムライスっ!


 これはバターライスを使用する。作り方は簡単だ。玉ねぎ、ベーコンを焼いた後に米を投入して、バター、コンソメ(前に作ったスープ)、塩胡椒で味付けをするだけ。


 それを普通に通常オムライスの様に包んで仕上げに入る。


 大根おろしの水気を切って、ポン酢もどき(市販の物)をかけておく。


 お皿に乗せたオムライスの周りにレタスみたいな野菜を散りばめ、自作マヨネーズ(アイテムボックス内にある物)を使い細く糸のようにかけ、その上に先程の大根おろしを乗せる──



 ──完成だ!



 俺はそれを持って食事をしようと皆のいる場所に向かうと──



『白銀の誓い』のメンバーも酒を飲みながら仲を深めている……ただ、皆酒癖悪いな……。


 ミレーユとメリルさんはからみ酒、カレンさんは笑い上戸、ミリーさんは泣き上戸だ……。


 フレアとナナ、タリアさんは離れた所で話していた。


 俺は見なかった事にする。


 あの中に入る勇気は無いので、端っこで寝ているシロガネの近くに行き、おろしポン酢オムライスを食べる事にする。


 シロガネの側に寄るとシロガネが『念話』を送ってくる。


『美味かったぞ……』


「そっか、なら良かった」


『それも美味そうだな』


「お前何個食べたの?」


『10個は食べたぞ?』


 いや、食い過ぎだろ……軽く30個は作ってるんだぞ?


 そりゃーフレアが何度も取りに来るわ……。


「まぁ、満足してくれたなら良かった」


『うむ、これからも我に飯を作る事を許そう』


 偉そうに言いながら頭を俺にこすりつけてくる。


『こいつの声がおっさんじゃなかったらなぁ』


 と内心で思いながらも苦笑しながら頭を撫でる。


「これからも旅に出るからよろしく頼むな?」


『うむ、主が死んだら飯が食えんからな……それに──避難するには持ってこいだ』


「なんだよ避難って?」


『我は現在逃亡中である……』


「はぁ? また魔人とかじゃないだろうなぁ?!」


『嫁と子供からだ……』


「ぷはっ、ふふふ、はははっ、笑かすなよ!」


『いや、笑い事ではないぞ? 見つかったら我は最悪殺される……』


 しゅんとするシロガネは魔人なんかより深刻だと言いたげな感じだった。


「いや、お前何したの? 妻子に狙われるとか普通無いだろ?」


「嫁は嫉妬心が強いのだ……ちょっと可愛い子に色目を使っただけでこれだ……主も殺されんようにな?」


 ミレーユ達を見ながら俺に首を切るジェスチャーを器用にして忠告するシロガネの表情は真剣だった……。


「……肝に銘じるよ……」


 ミレーユも嫉妬心が強いからな……昔は全く相手にされなかったのに不思議なものだな。


 けど、そんなのも悪くないと思っている。必要とされるは素直に嬉しい。


『いつか、我の元へ来たら助けてくれよ? 主?』


「……いや、そこは自分でなんとかしてくれよ。俺なんかがフェンリルを相手出来るわけないだろ?」


『主なら出来る……守りは得意だろう? それに魔人ぐらいなら我がなんとかしてやるから頼む……』


「お前、不完全な魔人にやられそうになったんじゃなかったか?」


『結界など無かったら余裕だ』


 確かに──結界なかったら余裕で蹂躙してたな……。


「わかったよ。とりあえずできる限りのことはするさ。だからちゃんと守ってくれよ?」


『話が分かるな主よ……我らはギブ&テイクだぞ?』


 俺は何でそんな言葉を知ってるんだよと苦笑いしながら食事を続ける。


 さぁ、後はゆっくり休んで旅に出る準備だな……『魔札』もほとんど無いしな……。



「「「エルぅ~」」」


「なに?」


 俺は皆の呼びかけに身構える。


「「「私達の『英雄』に乾杯っ!」」」


 どうやら、皆俺を英雄扱いしてくれているようだ。


『白銀の誓い』のリーダーらしく──


 これからも皆の英雄でいれるように頑張ろう。



 俺達は朝方まで飲み明かした。


 酒のあてを俺が作ったのは言うまでもないだろう。


 皆のこの笑顔が報酬だと思うと悪くないな。

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