第8話 冒険者登録(フレア)2

 俺達は裏手にある訓練所まで移動する。


 フレアは確かに天賦の才があるのは確かだ……実際目が見えていたら父さんのような英雄になれるかもしれない──


 そう思えるぐらいスキルに恵まれている。


 なんせユニークスキルが何個かあるからな……。


 間違いなく父さんを超える器だろう……。


 そんな事を考えていると模擬戦の相手が告げられる。


 相手は──


 確か……Bランク冒険者の人だ。


 おそらく手加減が出来る人を選んでくれたんだろう。


 何かマッチョさんと、こそこそと話しているが……何を話しているのだろうか?



「では、Cランク昇格試験と同じルールで行く。双方構えっ!」


 マッチョさんの掛け声で試験官とフレアは構える。


 Cランク冒険者は一人前の証とされている。

 Cランクになるには複数の試験を受ける必要がある。その一つにBランク以上の人が個々の強さを見極める試験がある。それと似た形をここで行うと言っている。



「俺は普段から試験官をする事が多い。怪我はさせないようにする事を約束しよう。今回は戦える事がわかれば終了だ」


 そうフレアに話しかける試験官。


「よろしくお願いしますなのですっ!」


 2人は試験用の木剣を構える。


 試験官は動く気配が無い。

 どうやらフレアの攻撃を待っているようだ。


 しかし、フレアは本当に戦えるのだろうか?


 せめて、応援してやりたいと思う。


【応援】スキルを使うと相手のスキル一覧が。相手のスキルを見るだけなら便利なスキルだ。


 その一覧の中に突出したスキルが2つあった。


 フレアの戦えるっていうのは……まさか……そう言う意味なのか?


 フレアのスキルを見た俺は一つの答えを導き出す。


 とりあえず、フレア自身のを【応援】する。


 本来なら強化系の魔法をフレアにかけてあげた上に、対戦相手に弱体化の魔法をかけまくりたいのだが──魔法は使うと周りにバレてしまう。


 だが、【応援】スキルであればバレずに強化出来たりする。


 そして──その強化率は1.5倍だ。今回は身体強化で1.5倍になっている。


 不甲斐無いお兄ちゃんが出来るのはここまでだ……後はフレアに任せよう。



「ごめん、エル……まさか模擬戦になっちゃうなんて……フレアちゃん大丈夫かしら?」


 不安そうに俺に聞いてくるミレーユ。


「あぁ、別に構わないよ。たぶん、フレアは戦えると思う。ここに来る時に不思議だったんだけど謎が解けたよ──フレア、人とぶつかりそうになっても避けてたし。見えなくてもたぶん戦えると思う。俺もびっくりだよ……」


 俺の知らない間に成長しているもんなんだな……。

 子供が成長するっていうのはこんな感じの気持ちなのだろうか? まぁ俺に子供はいないが……。


 物思いに耽っていると。


 フレアの雰囲気が変わる──


「来ないなら──こっちから行くのですよぉ?」


 いつも通り陽気に話してはいるが、その顔は真剣そのものだ。


 真剣な顔も可愛いなぁ〜。



「いつでも」


 問題ないと答える試験官。


「──えいっ」


 可愛らしい掛け声から想像出来ないぐらい、目にも止まらぬ速さで動き出し──


 横薙ぎに木剣を振る──


 うん、お兄ちゃんなんとか目で追うのがやっとだよ……。



「──なっ!?」


 さすがは試験官……俺なら確実に真っ二つになりそうな攻撃を掠りながらもなんとかバックステップで避ける事に成功する。


 木剣が掠った部位は真剣で切ったようになっていた。


 木剣で人を真っ二つにするような斬撃を放つフレアに──



 試験官。


 観戦者。


 マッチョさん。



 俺は【応援】は必要なかったなと思っている所だ。



 試験官は雰囲気を変える。

 それからフレア達は微動だに動かない。


 まだ続けるのだろうか?


 凄い真剣な雰囲気なんだが……確か戦える事がわかったら終わりなんじゃなかったかな?


「これで証明になりましたよね?」


 全員が息を呑んで見守る中、俺はマッチョさんに話しかける。


「……そうだな……お嬢ちゃんは間違いなく相手の位置を把握していた。それに速さが異常だ……文句無しの合格だ。さすがはアランの娘だな……末恐ろしい…………保険かけなくても大丈夫だったな」


 マッチョさんはここまで動けるとは思ってなかったのだろう。


 最後の呟きは周りには聞こえていないが、俺にははっきり聞こえた……きっとするつもりだったな……。


「そう……ですね……おそらく強さだけでなら既にBランク以上──いや、Aランクはあるかもしれません……」


 試験官も便乗してくる。こちらは素直に評価してくれているようだ。


「わかった。お嬢ちゃんの名前は?」


「フレアなのですっ!」


「良し、フレアは今日からDランクだ。冒険者のいろははエルとミレーユに教えてもらえ」


「はーいっ!」


 その瞬間に観戦していた者達が大歓声を上げる────


 フレアは可愛いのに強い。


 これからどんどん強くなって人気者になるだろう。


 というか……既にフレアの冒険者ランクが俺より上なんだけど……。


 まぁ、いいか……俺はどうせ弱いしな。


 ミレーユはフレアが戦える事に喜んではいるけど、その反面少し残念そうにも見える。


 とりあえず試験が無事に終わって、お兄ちゃんは安心だ。


 一番安心してるのはマッチョさんだろうけどね。


 あの顔は自腹で金貨100枚を払わなくて良かったと心底ホッとしている顔だ。ミレーユの残念そうな顔はこれだろうな……。


 ミレーユのターンはまだ終わらない気がする……。

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