第55話 今更!?
俺はゴブリンを倒した後、皆のいる場所に戻ると──
「初代オーガストは?」
とミレーユに聞かれたので俺はしれっと「成仏したよ」と答えておいた。
皆、それで納得したのか特に他には聞かれなかった。
浄化は俺の得意分野だし、特に疑いなく会話は終わった感じだ。
それに取り憑かれたと言って心配させたくないしな。
『俺はここにいるぞぉぉぉぉっ!』
──と叫ぶ初代が煩かったが……。
シロガネの念話並に煩い……しかも念話より、ずっと中にいる為か余計にタチが悪い気がする。
プライベートが無いな……。
たまに出て行ってくれないだろうか?
『出たら、瘴気の進行が進むぞ?』
なら仕方ないか……ミレーユとまだ結婚してないしな。フレアの笑顔もまだ見ていたい。
昼食のバーベキューを食べ終わると、訓練を再開する。
『……えっと、子孫よ……凄いなお前……よく体が持っていると思うぞ?』
おそらく、初代は【応援】スキルを複数に使っている事を言っているのだろう。
確かにかなり辛いが、こんなもの慣れだと思う。重ね掛けより楽だしな。
王都にいた頃、魔の森で日常茶飯事だったし。
それより、子孫って……名前はエルって言っているんだから名前で呼んでくれよな……。
『名前って覚えるの苦手なんだよね? だからこれからは子孫と呼ぶ。それより、慣れていたとしても相当苦痛なはずなんだが……お前マゾなんじゃね?』
うっさいわっ!
好きでやってるんじゃ無いんだよ!
皆に強くなってもらわないと俺が守って貰えないじゃないか!
『……いや、お前が強くなればいいんじゃね? 俺はそのスキルは基本的に自分に使っていたぞ?』
はあぁぁぁぁぁっ!?
何その新事実!?
『いや、知らない方がびっくりなんだが……』
嘘ん……。
『あぁ、【鑑定】で見た事をあるだろ? あれには対象のって書いてあるだろ? 自分も含んでるみたいだぞ? 試してないのか? ばっかだなぁ』
むかっ!
ムカつくけど──
確かに俺は馬鹿正直に他人に使っていたし、周りが強すぎたし、援護ばかりしていたから先入観で周りを強化する事しか出来ないと思い込んでいたな。
これは俺の落ち度だ……。
という事は──
小さい頃から自分に使っていたらもっと戦えていたかもしれないのか!?
うわぁ……ショックだ……。
『凹むな凹むな。子孫よ……お前はまだ若い。これからだ。ほれっ、お前も混ざって模擬戦してこい』
──断るっ!
誰がやられるとわかっていてやるものか!
俺はフレアには良い所しか見せないと決めているんだ!
『……お前って病気レベルのシスコンじゃね?』
うっさいっ!
これは家族愛なんだよ!
目の不自由な妹に気をかけて何が悪いっ!
こんなに可愛いんだぞ!?
初代と言えど──
所詮はその程度か!
『……お前……もう手遅れだな……』
俺はフレアの為になら命など惜しくないっ!
『わかった、わかったから落ち着け……とりあえず、お前も訓練が必要だ。【応援】スキルを使いこなせ。お前の環境は記憶を見させてもらったからわかっている……そのせいで──お前は努力の方向性が俺と真逆だ。だからこそ周りに頼らず己を磨け』
それこそ今更だろっ!
周りが強すぎるせいで俺の取り柄である援護しかできなかったんだぞ!
『だからこそ今から強くなれ……じゃないとお前死ぬぞ?』
大丈夫だっ!
あそこにいる我が妹を見るがいい!
速くて全然見えないんだぞ!
仮にあそこに俺が混ざってみろ! 間違いなく瞬殺だっ!
きっとフレアが俺を守ってくれるはずだっ!
『……その根性叩き直したいな……子孫よ……よく考えてみるが良い……実はお兄ちゃんは滅多に実力を出さないし、本当に強かったんだ! とわかった時──お前は更に尊敬されるだろう。それこそ実は実力を隠していたんだと思ってもらえたら周りの子孫への評価は鰻登りだ。もちろん妹からの評価もな? ほら、想像してみろ。それにな……あれぐらいならお前も頑張れば出来るからな? 現に俺がさっき体現しているはずだ』
……確かに……今現在、周りの期待は俺の胃を壊滅的にダメージを与えている状態だ。
そこを評価通りに出来たなら──
俺の胃の安全は保たれるかもしれない。
な・に・よ・り!
フレアが『お兄ちゃん凄いのです!』と連発してくれるに違いない……。
影の実力者……良い響きだ……。
それに初代はナナの矢を簡単に避けていた。あれぐらいなら、頑張れば俺に出来ると言っている。
うん、やるしかないな……。
良しっ!
ミレーユと秘密の特訓しか無いっ!
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