第18話 追放? いえ、〇〇〇です

 教会から距離が少し離れたので立ち止まる。


「……ミレーユ、フレア……少し予定と違うけど、今すぐ王都から脱出しよう」


「そうね……あれは諦めないわね。どこまでも追ってきそう……」


 俺もそう思う。司祭様は諦めないだろうな……。


「お兄ちゃんの凄さがわかってる人達なのです!」


 いや、まぁ確かにそうだし、認められているのは素直に嬉しいが……今は悠長な事言ってる場合じゃないんだよな……。


 このままだと捕まるからな! そして教会に入れられてしまう! 母さんから昔に聞いた話だと絶対面倒臭い!



 ──!?


 教会から爆発音が聞こえてくる……おそらくメリル様の魔法だろう。


 ついにあの人が本格的に動き出してしまった……。


「ミレーユ、馬車は?!」


「明日ね……」


 そういえば、明日出発予定だったな……。


「仕方ないか……勿体無いけど──このまま行こうっ!」


 俺達は王都の門まで全力で走り抜ける──


 そして、門を出る。


 ある程度離れた所で俺達は立ち止まる……。


「これで──王都ともさよならだな……」


 俺は振り向きそう呟く……。


「そうね……また戻ってきたらいいわ」


 そうだな……まさかこんな旅の出方をするとは思わなかったな……。


「お兄ちゃんが英雄になって戻ってくるのですっ!」


 いや、それは無いな……どちらかと言うとフレアの方がなれると思うぞ?


 その為にはもっと訓練が必要だが……今回でわかったけど、フレアは我流だ。どうしても熟練者相手だと剣筋を読まれてしまう。


 暇見つけてするか……俺の【応援】でスキル強化していけば、自然と早く成長するだろうしな。


 スキル強化は次の段階の動きとか出来るから成長が早くなるんだよな。



「まぁ、とりあえず世界を見て回ろう。フレアとの約束だしな! そして、いつか王都に戻ってこよう! ──って、何事!?」


 そう言った瞬間に王都の真上で極大魔法が打ち上がる。


 前世の記憶にある花火みたいに綺麗な爆発を起こしている。


 俺達は絵になりそうな風景を眺める。


 とても綺麗だ……綺麗なんだが──



 王都大丈夫なんだろうか?


 そんな事を思ってしまう。



「あれはメリルですよ。私達の門出を祝ってくれているんですよ」


 嬉しそうにミレーユは俺に話しかけてくれる。


「……そうなの? 単純に結界を壊す為じゃなくて?」


「まぁ、それもあるでしょうね……でも、逃げる時に捕まえようとしなかったでしょう?」


 それで動かなかったのか……もしかしたら、メリル様は俺達が旅に出るのを知っていたのかもしれないな。


 状況的に見逃してくれたのかな?



「司祭様は?」


「あの人は捕まえる気満々ね……」


 まぁ、見送ってくれる感じが一切しなかったしな。


「あっ、カレンお姉ちゃん置いてきちゃったのです……」


 フレアの言葉にハッとする。


「……まぁ、今更戻れないからな……いつか生きてれば会う事もあるさ……たぶん……」


 カレンさん……ごめん……でも迎えに行く勇気が俺にはない……行けば俺は司祭様──いや教会の戦闘集団に捕まる未来しか見えない。


 どこかの冒険者ギルドで伝言を頼もう。うん、そうしよう。


 冒険者ギルドでは連絡を伝えてくれるからな。


「さぁ、行こう……夕暮れだし、とりあえず行き先は近くの街までだ!」



 俺達は歩き出す──


 楽しい事、辛い事、色々あったけど──


『銀翼』が守った王都を少しでも支えられていれてたなら嬉しいかな?


 俺は父さんみたいな英雄にはなれない。


 だけど──父さんの志だけは大事にするよ。


 夕暮れの空には流れ星が流れる。


 まるで【流星】アランと呼ばれた父さんが見送ってくれているようだ。


「エル……貴方は立派な英雄よ……」


 俺の内心を察してか、そんな言葉をかけてくれるミレーユ。



 ありがとうミレーユ……でも、もう俺は別に英雄に拘りはしないよ。



『弱者には手を差し伸べよ』────そんな父さんと母さんの志だけは大事にしたい。


 だから俺は【応援】をし続けるし、やりたいようにやる。



 まずはフレアの目を治したい。


 今代の聖女様は司祭様の発言から【回復魔法】は俺より熟練度が低いのかもしれないが、教会に所属しているのであれば何か治す手段を知っているかもしれない。


 ただ、今代の聖女様はよく失踪するらしいから後回しだな……他に何か治す手掛かりを探すとしよう。



 とりあえずは、フレアとミレーユを目一杯楽しませてやりたい。



 一応、言っておく……追いかけられはしたが、これは追放ではないっ!


 これはだっ!




 俺はここから自分の足で一歩を踏み出す。



『銀翼』の皆──



 行ってきます──

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