第110話 昇進!?
俺達はもくもくと訓練を重ねた結果、各々の力量が上がっている気がする。
そういえばフィーリアさんが邪魔しに来ないなと思ってバラムに聞くと──
「あぁ、あれは先輩に頼んでますから心配入りませんよ。それに私が張っている結界は外部から絶対に見えないようにしていますのでご安心下さい」
と返ってきた。
シロガネの強さはどうやら一席の実力を凌いでいるようだ。
しかもあれ扱い……。
それよりも──昨日、『弱体化』を使用したせいで全身が痛い……使うつもりはなかったのだが……バラムの訓練がキツすぎるせいでつい使ってしまった。
その時のバラムは少し冷や汗を流していた。俺はそれなりの勝負が出来てその時は満足したが……後の事を全く考えていなかった……。
さて、コンディションは最悪だが、もうすぐ次の目的地なのだ。
スフィア聖王国に辿り着くまでにいくつか国を跨がなければならない。
まず、一つ目に到着する国は──
『ランバード王国』だ。
この国は冒険者ギルド本部がある国で、高ランク冒険者が多かったりする。
俺も昔に来た事があるが──無駄に絡まれた記憶しか無い印象だ。
さっさと素通りしたい所だ。
何故なら嫌な予感がするからだ……この隣にいる人が原因で……。
「さぁ、エルよっ! 既に宿は手配しておる! ゆっくりお話でもしようではないか!」
グランド元司祭様だ。もう会う事はしばらくないと思っていたのだが──
普通に通り道で仁王立ちしていた……しかもオーランドの教会にいた人達全員でのお出迎え付きで……。
回想シーンはこちら……。
「エルっ! 久しぶりじゃっ! 会いたかったぞっ!」
「お、お久しぶりです……司祭様……」
「エルよっ! わしはもう司祭じゃないぞ? 辞めたからのぉ。ここにいる全員がな。わしの事はグランドと呼ぶが良い」
「えっ? 教会から抜けたんですか? ここにいる全員が??」
知らない間に何かあったんだろうか? オーランドの教会はそこまでブラック待遇だったのか??
「そうじゃ、わしら全員がじゃ! そして、エルに着いて行くぞ?」
「えっ?」
この人は突発的に何を言っているんだろうか?
「この時を待っておったのだ! ついに──エルの覇道が始まるっ!」
いや、本当何言ってるのか意味不明なのだが……。
「いや、普通に旅してるので──「烙印」──!?」
普通に旅してるのでいいですと断ろうとすると聞き流しが出来ない言葉が出る。
「それが何か?」
「その顔はやはりエルにも刻まれておるな……わしは元六聖──神域には一度行っておる。きっとエルの力になれるであろう。という事でどこまでも着いて行くぞ?」
とまぁ、そんなやり取りがあって今に至る……しかも元六聖のカミングアウト付きで。
「グランドさんは何か知ってるんですよね?」
「ん? 知っておるぞ? 今は言わんがな? 言ったらわしら置いて先に進むじゃろ?」
情報だけを得て先に向かう事は無理か……今は何でも良いから手掛かりが欲しい。
これも仕方ないか……。
「……とりあえず、宿に着いたらどうするんです?」
「うむ、一度荷物を置いてわしと共に冒険者ギルドに向かってもらう」
「……それ行く意味あるんですか?」
「ある。エルは自分のランクを更新した方が良い。エルのパーティメンバーであるアメリア王女より頼まれておるからな。まずはそれを片付けよう」
「……わかりました……」
またアメリア王女絡みか……無理矢理パーティに入っていた印象しかないんだが……。
俺達は高級宿に到着すると各々自由行動を取る事にする。
そしてグランドさんと2人で冒険者ギルド本部に向かう。
久しぶりに本部に来たが……やはり大きいな……。
改めて見ると──城の次に大きい建物だろう。
少し離れた場所から見ていても活気に満ち溢れている。
さすがに本部だと実感するな……。
「さぁ、エルよ──受付に行ってさっさと用事を済ますぞ?」
「えっと、何のです?」
俺はとぼける事にした。
「冒険者ランクの更新じゃ」
わかってるんですけどね……。
「行きたくないです……」
「行けば──エルの知らん真実を一つ話そうと思うんじゃがな……」
「──行きます」
「うむうむ、素直でよろしい。では入るぞ?」
「はい──」
俺達2人は中に入ると──
皆チラッとこちらは見るものの、特に興味無しのようだ。
俺は内心ほっとする。
絡まれなくて良かった!
「さぁ、エルよ受付に行くぞ」
「はぁ……」
俺達は受付嬢のいる所まで足を進ませる。
「今日は登録でしょうか? それともパーティ申請でしょうか?」
この受付嬢さんはどうやら俺が新規登録しに来た人かグランドさんとパーティを組む為に来たと思っているようだ。
「いや、こやつこ冒険者ランクの確認じゃ。更新頼む」
グランドさんの言葉に俺はそっと冒険者カードを提示する。
受付嬢さんは冒険者カードを見てみるみる顔つきが変わる。
「えっ?! Aランク!? この年で?!」
ん? そんなに驚く事か? って驚く事だな……高ランク冒険者はそんな簡単にはなれないしな。
何故か俺は成り行きでなっているが……。
「こやつは『白銀』のリーダーじゃ」
「──!? 最近頭角を表している、あの『白銀』!? オーランド支部より要請があった件ですね! 少々お待ちをっ!」
血相を変えて中に入って行く受付嬢……。
要請って何だ!?
まさか──レーラさん絡みか!?
グランドさんはニヒルに笑い、悪そうな顔をしている。
「グランドさん……何か知ってますね?」
「うむ、知っておるぞ? 今日からエルはSランクじゃ。最強の冒険者の称号おめでとうじゃ!」
俺は青ざめて行くのがわかるぐらい血の気が引いて行く。
「……その根拠はあるんですか?」
「うむ、もはやお主の偉業はオーランドでは有名になっておる。キンブリーでもレーラ嬢の計らいでギルド職員がエルの所に行っておったはずじゃぞ? 追い返されとったみたいじゃがの」
忙しくて関係ない人はバラムに頼んでお帰り頂いていたから全く知らなかった……。
まさか、本当にSランクになるのか?
受付嬢が走って戻ってくる。
「確認取れましたっ! エル様はSランクに昇進ですっ!」
「り、理由を……聞いても?」
「キンブリーでの汚職事件解決及び、魔人討伐、フェンリルと神話級の悪魔の従属になります」
……確かに俺が手動で動いた事が大半だ……言い逃れが出来ない……。
やっと、Aランク相当の強さになってきたと思ったのに更なるランクUP……最悪だ……。
なんとかならないだろうか……プレッシャーで吐く未来しか見えない。
『強くなれば解決だろ』
[死に物狂いでよろしく]
今でいっぱいいっぱいの訓練状況で更に俺を追い込んで来るこいつらもバラムと同じ悪魔じゃないのかと錯覚してしまう。
「はぁ? こいつがSランクだと? こんなもやしがなれるわけねーだろがっ!」
ぼけっとしていると、後ろからそんな声が聞こえて来た。
この世界にも、もやしはある。
それを比喩として使うのは初めて聞いたが!
というか今ままでも冒険者ギルドで絡まれるテンプレはあったが、ここまで欲したタイミングで発生した事実が今は堪らなく嬉しいっ!
さぁ、見知らぬ冒険者よ!
俺のランクを下げる為にボイコットするのだっ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます