第95話 俺にもなんか刻まれてるんですけど!?
昨日はバラムがミレーユを連れて来たお陰で。冷や汗が止まらない5時間を過ごした。
俺は過去最高にやつれているだろう……。
とりあえず、ミレーユに誤解を解けたのは良かった。
まるで父さんが女性冒険者に声をかけられた時、母さんに弁解しているような姿だった気がするが……。
ただ、奴隷が2人増える事が確定した……。
セリアさんとエレノアさんともさっき会った時に奴隷契約を解除すると伝えると全力で拒否されてしまった。
エレノアさんはまだわかる……俺の奴隷であれば俺の庇護下におかれるから守って欲しいのであれば解除は望んではいないだろう。
あの性癖の事はスルーするが……。
しかし、彼女が味方なのかがよくわからない。嘘は言ってないのはわかるが……『信託』スキル持ちだと聞くとどうしても完全に信用出来ない俺がいる。
セリアさんは謎だった……頑なに拒否をする。
俺の腕の件かと思って、その場で【回復魔法】で部分欠損を治して見せたのだが、それでも態度が変わらなかった。
もう、俺が折れる事にした。
いつか気が変わった時に解除すればいいだろう……今はミレーユも穏やかだしな……。
一番反応に困ったのはフレアだ……。
「お兄ちゃんは聖女様を汚すのです? 泥遊びでもするのです?」
と言われた……勘違いしてくれて心底ホッとした。
とりあえず、エレノアさんと一緒に『洗礼』場所に行かなければならない。
あそこはダンジョンだが、ダンジョンでは無い。
最深部には人類で初めて聖女と呼ばれた人が次元の歪みから現れる危険な存在を封印した場所だという伝承が残っていたはずだ。
ちなみに聖女になれる人は決まっており──【聖痕《スティグマ》】が刻まれ、【信託】スキルを所持した女性がなる事になっている。
そして、洗礼場所まで行き、聖痕と力(スキル)を交換し──次代の聖女を探す手掛かりも信託で告げられると母さんから聞いている。
神と呼ばれる存在が一番近い場所──別名『神域』と呼ばれているのだが──
──エレノアさんの話を聞くに『洗礼』が果たせていない。というか未だに正式な聖女になれていない事実にびっくりしたのだが……。
ぶっちゃけると行きたくない!
危険な存在とやらが復活とかしてないよね!?
本当、そんな所に行くのとか無理だよ!?
[復活しても問題ないですよ]
──意味がわからないんですけど!? 復活してたら世界滅ぶんじゃないの!?
[禁則事項です。ただ、それより君──刻まれてるよ?]
はっ? 何が? もっと意味わかんないですけど!?
まさか──聖痕!?
あれって女好きの神とやらが女性を選ぶんでしょ!?
俺、男なんですけど!?
[左胸に注目]
俺はそっと、服を捲る。
……何か胸にタツゥーみたいなのが刻まれていた……。
……。
なんでやねん!
もうお腹いっぱいです……後で肉ごと削ぎ落とそう……。
[まぁ、1年ぐらいは猶予があるのでのんびり行きましょうっ! 強くなってからでお願いします]
1年ね……はぁ……どちらにせよ行くしか選択肢が無い……強くならないと死ぬかもしれないしな……。
しかし、神域に行くには──
この目の前にある馬鹿みたいな量の書類を整理しないとダメだ……。
万能なバラムにも手伝ってもらっていても中々終わらない……なんせ三光2人分の仕事だ……。
「バラム……何かいい案はないかな?」
「そう──ですね。ありますよ?」
あるの!?
「じゃあ、なりふりかまってられないし、教えてくれ……」
「了解、ボス。では──【悪魔召喚】──」
ちょ、ちょっと待てぇい! 聞き捨てならない言葉が聞こえたんですけど!?
俺、教えてくれって聞いただけなのに何で実行してるんですかね!?
しかも、【悪魔召喚】とかトラブルの臭いしかしないんですけど!?
「「「馳せ参じっ!」」」
「ご苦労」
ご苦労じゃねぇよ!
「バラム……何してるのかな?」
「ボスっ、こいつらであればここの処理もこなせるはずです!」
いや、そう言う事じゃない……何故前もって言ってくれないのかな?
「言ったら止められるからですっ!」
心読まないでくれません?!
「まぁまぁ、こいつらに事務処理なんて任せればいいんですよ。これで晴れて私も旅に出れてハッピーです」
そこの3人はハッピーじゃないぞ?
こいつらの気持ちを代弁しよう。
「えっ、俺達って事務処理させられるの!?」
って思ってるような感じの表情してるじゃないか!
お前は悪魔か!
って、悪魔だった!
「そうなんです。私って悪魔なんですよね? だから気にしたらダメです。それにこの3人は我が家の事務処理担当達ですからこれぐらい余裕でやってくれます。ね?」
「「「……はっ!」」」
すんごい間が空いたんですけど!?
こうして、この日は終わりを告げる。
ちなみに聖痕を激痛に耐えて削ぎ取ってみたけど、回復したら普通に刻まれていた……。
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