第21話 旅立ちの後 3
~アメリア視点~
私の英雄様が王都からいなくなってしまわれました……これも全ては私の布教が足りなかった故ですわ。
エル様の情報は逐一、私専属の影が教えてくれます。
エル様は英雄パーティ『銀翼』アラン様の御子息。
王女である私は王都を救ってくれたアラン様には恩しかありません。
もちろん、御子息であるエル様もそれ相応の扱いを受けるべきですわ。
なのに何故──
民はエル様を侮辱するのですか!
影からの情報では裏から王都を守っているのに!
それに……孤児院にも定期的に遊びに来てくれるぐらい心優しいお方なのに……。
イザベラ様がいなくてもエル様は必ず来たはずですわ。
だって、孤児院にいる大半の子は──
2年前に親を亡くした子共達ばかり……。
アラン様が救った王都を内から救うエル様は──
間違いなく英雄。
心優しきキャロル様のお心とお力を持ち──
なお、アラン様の志を持つ。
その姿を英雄と言わずに何と言うのでしょうか?
たかが、戦えないから何だと言うのでしょう?
若くから才能ある人もいるでしょうが、彼は私と同じまだ15歳です。そんな彼にアラン様と同じ期待をするのは間違ってますわ!
魔物の襲撃にだって、手厚いサポートをしてくれました。疫病だって、彼がいなかったら王都は酷い状況になった……。
彼は彼なりに出来る事をしています。
それを誰も認めないなんて……許さない。
せめて、私が正体を明かして──
布教する!
そう決意したのに……。
そんな矢先に……エル様は出て行かれました……。
きっと、不遇な扱いに嫌気がさしたに違いないですわ!
メリル様はそれを後押ししただけ……彼にはここは狭すぎるんでしょう……。
とりあえず、今は全てが解決しています。
エル様を能無し扱いした騎士団員は即解雇、不当な扱いをした冒険者達には影がこっそりと仕返しをしています。
最近ではミレーユ様の妹であり、冒険者の受付嬢であるレーラさんに王都で1番であろうお店で会ってエル様の話を聞いていたりしています。
もちろん、そのお店は──
エル様の至高のレシピを授かったあの店ですっ!
食べた事のない料理ばかりが出てきます。
近い将来──
必ず王都で1番人気のお店になる日が来るでしょう。
美味しい食事は人に笑顔を与えてくれますわ。
エル様は料理でも民達に笑顔をくれる……。
本当に優しいお方……。
早く会いたい……追いかけた2人が先に会えるのはちょっと羨ましいですわね……。
そうですわ!
パンッパンッ
両手で2回叩くと影が現れる。
「ここにっ!」
「エル様を──サポートなさい。そして私に状況を知らせなさい。もちろんバレないようにね? それと、エル様を追いかけた2人を妨害しなさい──」
女の嫉妬は時に醜いものですわね。
「御意──」
そして、影は去る──
「ふふっ、早く会いたいですわ……」
会うのに王女という肩書きは邪魔ですわね……なんとかなりませんかしら?
いえ、でも──エル様の家系は遡れば元々は貴族──私が爵位を授ける為にこのままがいいかしら?
いえ、それよりもエル様のご活躍を身近で見ていたいですわね……出来れば一緒のパーティに入って……ずっと見守っていたいですわ……。
何故、そこまでするのか? それは私の持つ【直感】スキルが教えてくれますの。
だから──将来は必ず英雄になると【直感】が教えてくれます。絶対では無いスキルですけど、このスキルが反応するという事は……その可能性があるという事。
英雄の子は英雄なんでしょうね。
とりあえず──
パーティに入れるようにレーラさんに頼んでみましょう。ギルドマスターが反対したなら影が掴んだ情報で脅せばいいでしょうし。
後、出来る事と言えば──
イザベラ様に今まで以上に訓練して頂く事ぐらいかしら?
最近やっと【空間魔法】が使えるようになりましたし、このまま熟練度を上げて『白銀の誓い』の名に恥じぬ強さを身に付けねばなりません。
さて、色々とやらないといけませんわね……。
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