第97話 俺はノーマルだ!
現在旅路の途中だ。
大世帯のパーティになってしまった……しかし、この馬車の中は大人数でも問題無い。
シロガネも最近は文句言わずに運んでくれている。
ちなみに男である俺とバラムは基本は御者席にいる。
いつもなら中に入る所なのだが──
「女子会するからエルは入らないでね?」
と強めの口調で言われたので従う事にした次第だ。
女性の中にいるのは中々難しいものだ……。
ここ数日はシロガネのお陰でとても安全に旅が出来ている。【索敵】もたまにしか使っていない。
『主……』
「どうした?」
『前に強敵がいるぞ?』
強敵? ドラゴンでもいるのか?
俺は視線を前に向けると──
何故か──
先の方に天眼らしき者が見えている……。
ドラゴンよりタチが悪かった件について!
「……バラム──」
「ボス──ボコればいいんですね? わかります」
「いや、まぁ大まか間違ってないけどね……お帰り頂いてくれ。お前なら大丈夫だろ?」
「問題ありません。所詮は半端者──瞬殺ですよ」
半端者?
まぁ、今はどうでもいいか……とりあえず帰ってほしい……。
バラムは初代に負けたとは言え、かなり強いはずだからな!
シロガネと同等以上のはず。
「殺さなくていいからね」
「わかりました。それより、ボス──梅雨払いはしますので娘が来たら絶対守って下さいね?」
いや、お前……俺に何を期待してるのさ……どう考えてもそれ、俺が殺される未来しか見えないだろ。
「……善処する……」
「善処では困るのです、ボス──貴方は必ずやオーガストを超える逸材。目の前の奴ぐらい簡単に倒せるよう力をつけて下さい! その為なら──このバラムはいかなる手段も使いましょう!」
「……ええから、はよ行けっ! 天眼が近付いて来てるから!」
「おっ、やっと来たね〜「消えなさいっ! 今大事な話をしてるんですよっ!」──っ!?」
バラムは喋ろうとした天眼目掛けて顔面を殴り、そのまま明後日の方向に吹っ飛ばした。
「ボスっ! 本当、娘が来たらお願いしますよ!」
天眼など眼中に無いようでそのまま話し出すバラム。
お前は鬼か! いや、悪魔か!
「いきなり酷いなぁ〜。しかもオーガスト様が退治した悪魔じゃないか──「邪魔──するなっ! 【黒炎】──」──って、うわっ!? ぶふぇ──」
またもや、いつの間にか登場した天眼はバラムの容赦ない攻撃を受ける。
天眼も今度は【次元魔法】を使って攻撃を無力化するが追撃の拳が顔面を捉えてまた吹き飛んでいく。
話ぐらい聞いたら良いと思うかもしれないが──
[会話しようぜ! 絶対面白い事になるから!]
と【叡智】が表示している以上、ろくな事がない気がするのでバラムを止めていない。
『きっと、ろくな事がないな……』
天眼の師である初代がそう言ってるんだ!
絶対にお帰り頂こう。
何度も何度も天眼は現れる。そしてバラムの問答無用の攻撃で目の前から消えて行く。
とりあえず、バラムが鬼神の如く強いのはよくわかった。
天眼も不死身か!? と思うぐらいの存在だというのもね……。
しかし──
「しつこいな……」
「……ボス──殺して良いですか?」
気持ちはわかる……ちょっと現れる頻度が多すぎるからね……面倒臭いんだろうな。
「ちょ、ちょっと待ってくれないなぁ? エルだったよね? 少し話をしようじゃないか! 戦う気はないんだよ!」
また現れた……。
「……嫌です」
「そんな事言わずに! じゃないと毎日来るよ? もうマーキングしたからいつでも来れるから! いつでも覗いてるからね!」
……この世界にもストーカーは存在してるんだな……。そういえば監視してる『六聖』もいたんだったな……ストーカーだらけだな! 今の所、2人だけだけど!
しかし、話を聞いたら後戻り出来ない可能性が高い……。
どうするべきか……。
「エルはこちら側だ。仲間にならないかな?」
考えているといきなり本題に入られてしまった……。
こちら側って何だ?
俺はストーカーする側と思われているのだろうか?
「いや、覗きとか付け回したりする趣味無いんでお断りします」
「……いや、君は素質がある……いつかこちら側に来る事になる。なら早い方が良い」
この人は俺をそこまで変態にしたいのだろうか?
それ以上に真顔で変態の素質があると言われると心のダメージが半端無い……。
「いや、本当勘弁して下さい」
「君なら──オーガスト様の再来になれるはずだ!」
……つまり──
初代も変態だったんだな……。
なんてこった……そんな再来とか余計に勘弁願いたい。
『いや、俺はノーマルだ!』
自分でノーマルって言われても全く信じられん……。
『いやいや、そこは信じろよ! 俺今まで普通だっただろ? むしろあいつの方が変態なんだぞ! 遠くから幼い男の子を涎を垂らしながら覗く趣味があるんだ!』
うわあぁぁ……マジか……ショタコンなのか……。
「フィーリアさん……俺は初代のようにはなりません。俺は俺の道を行きます」
俺はロリやショタなどには絶対にならないぞ!
「何故名前を!? まぁいい……今日はそれだけを言いに来ただけだ……。いつか必ず──君は孤独になる。その時、私が言った意味を理解するはずだ……また来るよ……」
そう言い残し転移するフィーリアさん。
俺が変態に覚醒して孤独になると断言されてしまった……。
初代も実は変態だったから孤独になったんだろうか? 仲間がいたという記録はなかったしな……。
そういうのって、自分では気付かないものなのかもしれない。
俺も気を付けないとダメだな。
ミレーユがいる以上は大丈夫のような気もする……誤ったら、きっと矯正が入るだろう。
うん、俺は変態にはならないな!
『フィーリア……いつかこの借りは返すぞ……お陰で俺は変態扱いされてしまったじゃねーか!』
[会話が成り立ってるようで成り立って無くて草]
まぁ、目と耳がごちゃごちゃしてるけど気にしない方向で行こう。
特に俺は何もしてないのに疲れたな……精神的に……。
バラムが予想以上に強くて俺の守りは完璧になったのは間違いない。
案外、『神域』に着いてもなんとかなるかもしれないな!
「ボス──野営時は特訓しますからね?」
「えっ?」
そんなバラムの言葉が木霊し、俺の時間は少し止まった気がした。
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