第108話 【応援】のレベルが上がりました!

 童貞カミングアウトがバラムによってされてしまった後は、スキル強化の訓練を行った。


 各々は長所を伸ばす為にどんどんスキルを使っていく。


 俺は【魔力操作】の訓練だ。


 なんせ全員に【応援】を使っているお陰で動くと吐きそうなぐらい気持ち悪い。


 皆は楽しそうにスキルを使っている。


 どうやら微かに聞こえてくる話から察するに俺との訓練が待ち遠しいようだった。


 どうやらカレンさんから訓練の内容を聞いたっぽい。


 ミリーさんとフレアはまだなんとか引き分けに持っていけるかもしれないが、ミレーユとメリルさんは無理だ!


 蹂躙される未来しか見えない。


 なんとかならないだろうか……。


[そんな君に朗報だよん♪ テッテレ〜♪ 【応援】スキルのレベルが上がった]


 なにその表示……表示される文字でレベルUPの効果音付けてくれたんですかね?


 とりあえずスキルレベルが上がったのは喜ばしい事だ。


 これでレベル8になったな……効果は──


 ふむふむ、『対象の弱体化』か……。


 このスキルは本当、客観的に見たら援護スキルだな……。


 どれぐらい弱体化するんだろう?


 丁度、皆も落ち着いて来たし試してみるか。



「一旦ここまでにして、少し試したい事があるから皆見ておいてくれないかな? シロガネ、相手を頼む」


 皆素直に頷いてくれる。


「うむ、では人の姿になろうぞ」


 バラムはサッとシロガネに大きめの布を被せた。


 ナイス判断だバラム。少し見えた気がしたが……。


「シロガネ……人になる時は服をどうにかしろ……」


「主よ……殺気を抑えるのだ。それに無理なものは無理だ……我は基本裸なのだ……」


 いや、危うくフレアがまた汚される所だっただろうが!


 俺の後ろから声が聞こえてくる。


「この間のお兄ちゃん並の人が現れたのです! 犯人はシロガネだったのです!」


「何がお兄ちゃん並なのかしら? 強さ?」


 フレアの声に反応したのはミレーユだ。どうやらミレーユはシロガネ並に俺が強いと思ってくれているようだ。


「股間についてるモノなのです!」


 フレアのカミングアウトが炸裂する。


「「「なっ!?」」」


 フレア以外の女性陣が驚愕の表情を浮かべる。


 どうやら完全にシロガネの股間は見られていたようでバラムのファインプレーは少し遅かったようだ……。


 俺は後ろが振り向けない。


 だって「エルってあんなに大きいの?」とか「まさしく英雄並」とか色々と聞こえてくるからだ……。


 俺の手はぷるぷると震える。


 無言で『集』と『発』を準備する。


「主よ……大気が怒りに満ちておるぞ?」


 そんな事を言いながらも鉄甲をはめるシロガネ。


「……服の事は後で考えよう……とりあえず模擬戦をしよう。前と同じルールだ」


「ボス──「わかっている」──なら許可します」


 複数の重ね掛けの心配をしてくれているのだろう。今回は全強化と弱体化しか使わない予定だ。


 本当は全力で重ね掛けして、このフラストレーションを発散させたいが……。


 弱体化と全強化の2つならそこまで負担にもならないだろう。


「バラム──シロガネのを観察してくれ」


「了解ボス」


「シロガネ……覚悟しろっ!」


 俺は【応援】の『全強化』と『身体強化魔法』の強化を使い──


 腰を低くして剣先をシロガネに向け──奥義『流星』の構えを取る。父さんが使っていた技と聞いた時に真っ先に思い浮かんだ技名だ。


 俺の剣先には可視化出来るぐらい尖った高密度の魔力が形成される。


 この技術は『密』と名付けよう。


「主……それ──」


「まずは鬱憤を晴らさせてもらう──で避けろ」


 俺は『集』により強化された脚力で地面を蹴り──同時に【縮地】【疾走】を使った瞬間に『発』を発動する。


 スキルの併用であり得ない速度を出した俺はシロガネに向かい高密度の剣先を放つが──


「ぬおっ!?」


 紙一重で避けられてしまう。


 まだこれでも届かないのか……。


「……俺の最強の攻撃なんだけどな」


「……いや、かなり危うかったぞ? 来るとわかっていなければ危ないぐらいには……」


 シロガネは冷や汗を流しながら言う。


 確かにスキルとの併用だとかなりの速度だったしな。


 俺もびっくりするぐらいだった。シロガネも本気に近い動きを見せてくれたに違いない。


「さぁ、次はシロガネの番だ──で来いっ!」


 さて、これで終わりではない。


 俺は『弱体化』を使用する──


「うむ、全力とな……では行くぞ──」


 シロガネは【縮地】と【疾走】を使い全力で殴りに来る。


 身体能力に比例してスキルが上乗せされるのだが──今の俺にはそこまで速くは見えていない。


 普通に避ける事に成功する。


「なっ!?」


 驚くシロガネ。


 その顔は本気で攻撃をした事が伺えれる。


 なるほど──


 シロガネの反応を見るに、おそらく『弱体化』は本人に気付かれないのかもしれない。


 これなら俺でも対応可能だ。


 次々と連打される拳を俺は『円』を使いながら避け続ける。


『弱体化』『全強化』『型』がなかったら絶対相手に出来ない……。


 やはり、シロガネは強いな……。



「主よ、短期間でここまで強くなっていたのか?!」


「少しは強くなってはいるけど、これは新しい俺の力だよ。シロガネは今、弱体化している」


「はっ? 我は普通に全力だが? 弱体化してる気はせんぞ?」


 俺達は一旦、手を止め、【応援】も使用を止める。


「バラム──実際の所どれぐらい弱体化しているかわかるかな?」


「大体──半分ぐらいかと……やはり末恐ろしい力ですね……初代オーガストが使ったのを見たのは一度だけでしたが……」


 ……約0.5倍の倍率か。かなりヤバいな……。


 しかも、これ自分を強化するよりも遥かに有効な気がする。


 何故、初代は強力な力を頻繁に使わなかったんだろうか?


『それは……これからわかる……』


 なにその意味深な言い方……。


 ──ゔっ。


 体が痛い。


 しかも全身……。


 俺は立つのも困難な状態になり、その場で膝を着く。


 何この……地獄のような筋肉痛は……。



『……しかもな……それ1回使ったら、その後3日ぐらいはその状態な上に、1日はリバウンドで自分もするからな……連戦する時には使えないんだよ……』


 えっ?


 何そのハイリスクハイリターンの効果……。


 というか、この状態の痛みが3日も続くの!?


 最悪じゃないかぁぁぁぁっ!

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