第112話 俺の屍を越えて行けっ!
「シロガネっ!!!!」
俺はフレアの声が聞こえた瞬間に即座にシロガネを呼ぶ。
「ウォンッ」
わかってくれていたようだ。小さなシロガネになっている。
「お兄ちゃんっ! 訓練なのです!?」
「うんうん、そうだよ? Sランク冒険者の人が俺の実力を見たかったみたいなんだよ」
「へぇ〜そうなのですね! あそこで倒れてる人なのです? やっぱりお兄ちゃんは凄いのです!」
「はっはっはっ、お兄ちゃんの手にかかればこれぐらいは問題ないさ!」
フレアは俺が直接倒したと思っているようなので、便乗する事にした。
「うぅ……あの変態め……──!?」
俺とフレアが話している間にSランク冒険者は立ち上がる。
そして、こちらを見て固まる。
視線は──フレアに固定されている。
「……可憐だ……」
俺の眉がぴくりと反応する。
やはりそうか……ここで奴は滅する必要があるな。
フレアにつく虫けらは俺が退治する。
お兄ちゃんがフレアは必ず守るっ!
『妹ちゃん可哀想に……』
[守護神お兄ちゃんが発動w]
だまらっしゃい!
冒険者など安定しない職業はこの俺が許さんっ!
『いや、お前も冒険者だろ』
[ブーメランw]
……確かに……だが、何より許せないのはあいつは俺より年上だろう事だ。
ロリコンなどにフレアは任せる事は出来ないっ!
『いや、お前もシスコンだし』
[ブーメランの嵐w]
「君──名前は?」
「フレアなのです!」
初代と【叡智】に構っている間にイベントが発生してしまったじゃないか!
なんとかせねば!
俺が弱体化してるとか関係無いっ!
「俺は──ぐぼっ……何をする!?」
俺は蹴り飛ばす。
「……まだ勝負は終わってないだろ?」
そう、まだ決着はついていない。
俺との勝負の途中だ。
なので俺が攻撃しても問題無い。
ここでこいつは仕留めないとダメだ。フラグは折るッ!
俺の勘がこいつは必ずストーカーになると警鐘を鳴らしている。
「さぁ、始めよう──フレアに纏わりつく虫けらは俺が退治する──」
「ちっ、この勝負必ず勝って──俺はフレアちゃんを嫁に貰うっ!」
「俺の屍を超えて行け──」
こいつは嫁に貰うと言った! もはや勝つ為に手段は選ばん!
今までの人生で1番負けられない戦いだ。
相手は格上。出し惜しみは無しだ。
更に【極】
地獄の筋肉痛で剣を振る事がキツいが多少の動きならまだ我慢出来る。
『型』を応用した立ち回りをしたら負担は少ないだろう。
「【神力】発動──」
こいつ──フレアと同じ神シリーズのユニークスキル持ちか!?
さっきシロガネの時に使わなかったのは何故だ?
溜めがいる?
いや、シロガネ相手に出し惜しみとかしないだろう……やはり使ってはいたのか?
シロガネの股間のせいで集中出来なくて上手く使えなかったのか?
どちらにせよ、相手も本気な以上油断は禁物。
というか、言葉に出すとか本当にこいつはSランクなのか? ネタバレじゃないか……まぁ、確かに言葉に出すとスムーズに発動出来る気はするから俺も言う時あるけど……。
『神系のスキルは油断するな。あれはまさしく神の力だ。俺も手を焼いた』
初代の言う通り、神シリーズのスキルは謎が多い。フレアはそこまで地力は無いはずなのに【神速】でかなり速い。
つまり、Sランクのこいつはかなり強い?
神力という事は──
単純なパワーだと予想出来る。
攻撃力がかなり上がるスキルだろう。喰らえば非常に拙いだろう。
しかし、『弱体化』で半減している俺の強化率は約2倍。
これで対抗出来るかは試してみないとわからない。
ここに他のスキルの上乗せがお互いにされると──
どうなることやら……。
フレアがいる以上、シロガネに任せるのは別の意味で躊躇う。狼形態だと殺しそうだしな……。
とりあえず──
フレアに纏わりつく虫は俺が退治したいっ!
それと格好悪い所は見せたく無いっ!
「「行くぞっ!」」
俺は片手に持った剣を振り被り──
相手は正拳突きを放つ──
お互いの攻撃が中間地点で衝突するが──
「ぐぅっ」
予想以上の力だ……。
拮抗すると剣が折れそうだったので、俺は衝撃を逃しながら吹き飛ばされる方向に跳躍し、そのまま着地する。
「へぇ……やるじゃないか。さすが兄さんだ」
「この馬鹿力が──あと兄さん言うなっ! お前の方が年上だろっ!」
しかし、このままだと余裕で負ける。
本調子じゃないのが痛い所だ。
本調子?
俺が本調子でないのであれば、相手も本調子にさせなかったら良くね?
俺は【応援】の『弱体化』を使用する。
副作用中に2回目を使用するのは初めてだが──
このままだと負けるのでなりふり構っていられない。
初代が何も言って来ないから大丈夫だろう。
相手は弱体化しても気付かない。これが最大の利点だ。
たとえ弱体化していてもあのパワーは侮れないが。
「どうした? かかって来ないなら俺から行くぞ? そしてフレアちゃんは俺が貰う──」
「──」
俺は相手の言葉に一瞬にして、自分の不甲斐なさを感じて、怒りで頭の中が真っ白になり無意識に速度を上乗せするスキルを全て使い──
相手に向かい攻撃を仕掛ける──
「なぁ!? ぐぅぅ──さっきと動きが違う!? どうなってやがる!?」
何か言っているが関係ない。
必ず──ここで倒すっ!
フレアには指一本触れさせんっ!
『型』を使っているのにも関わらず、致命傷が与えられない。
擬似魔法剣はまだたまに失敗するから実戦ではまだ使えない。
俺はスピードで翻弄させながら──
【雷魔法】の弾丸が入ったスワロウ改を片手に充電を開始する──
これは何でも有りだ。
使える物は全て使う。
そう、それが俺のスタンスだ。
「なんだ!?」
【念動】を使い空中に放り出す。
スワロウ改は人に撃つのは初めてだが、相手はSランクだ。手加減して魔力を込めているから死ぬ事はないはず……たぶん……。
俺はトリガーを引く。
極太の光線がSランク冒険者に向かっていく──
「絡んで来たあやつが悪い。成仏せい」
『死んだな』
[南無]
えっ!?
グランドさん、初代、【叡智】の順で黙祷を捧げていた。
ど、ど、ど、どうしよ!?
俺は即座に銃口を逸らす──
すると相手の側を突き抜けて行く光線。
そして地面に落下していく相手。
「──ぐぅ……」
おぉ!? 生きてる!
片腕なくなってるけど治せるから問題無いな!
はぁ……良かった……危うくギルド本部で殺人事件が発生する所だった。
俺はSランク冒険者の元に近付いていく。
「ひっ」
怯えた顔だ。
なんか……トゥーリーさん思い出すな……。
まぁ、この人は男だから特に気にする事もないけど。
「さて、勝負ありでいいですか?」
首がもげるんじゃないかというぐらいの勢いで縦に振る。
「返事がないですよ?」
「はいっ」
「さて、回復したいと思います」
俺は怯える男の部位欠損を『回復』させる──
「「「なっ!?」」」
Sランクの男の体は逆再生するかのように失った腕が復元されて行き、周りの人も男も驚愕する。
しまった……ここ、人多い……だけど、放っておくと死んでしまう……止めるわけにはいかないか……。
もうSランク確定みたいだし大丈夫か?
変に権力者からちょっかいはかからないだろ……生半可なランクだと囲おうとする輩もいるからな……。
それに俺はなんたって名前だけはキンブリーのトップだ!
ある意味、権力に対する防御は完璧な気がする!
うんうん、大丈夫だ。
後は出来るかわかるないけど、ランクに見合った実力をつけるだけだな……。
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