第114話 継承スキル
俺はフレアとグランドさんのいる部屋まで到着する。
「入りますよ〜」
俺はノックをして中に入ると──
フレアがグランドさんと抱き合っていた。
固まる俺。
この世界はロリコンで溢れているのか!
『待て待て! それ以上【応援】を使うなっ! 死ぬぞ!?』
知るかっ!
[感動の再会中に戦闘しかけるとか無粋です]
感動の再会?
「さぁ、もう1人の孫が来よったな!」
グランドさんの声に時が止まる。
孫?
誰が?
『いや、お前しかいないだろ』
……俺!?
「孫?」
「うむ、エルはわしの孫じゃな。ほれ言うとったじゃろ? 勝った報酬じゃ」
確かに勝負の前に『エルの知らん情報を必ず話そう。嘘偽りの無くだ。フレアにも関係ある情報』と言っていた……。
まさしく──
俺の知らない情報でフレアにも関係ある……嘘偽りが無いのもわかる。
しかし、てっきり『烙印』の情報だと思っていた……。
「これこれ、凹むで無いわ! 久しぶりの再会じゃぞ!? オーランドでは教会がちょっかいかけて来よるから守るのに必死で中々会えんかったんじゃ!」
……確かに久しぶりの再会だし失礼だと思うが……オーランドでの出来事を振り返るに──あんまり良い思い出が無い!
父さんから爺ちゃんの存在は聞いていたけど、まさかグランドさんが爺ちゃんだとは……何でオーランドにいた時に誰も教えてくれなかったんだよ!
「オーランドにいる時に教えてくれても良かったんじゃ……それに教会に入れようとしてたじゃないか……」
「ふむ、これから待ち受ける運命に甘やかしてはならんと思ってな……。何も起こらなくても2人で生きて行けるよう見守っておったんじゃ。もちろん、わしが手を差し伸べる事も出来た……しかし甘えがある状態では生きて行く事は叶わん。そして、今の状況が訪れる──それはある程度予想出来たんじゃ。さすがにエルが不当な扱いを受けた時は殲滅しに行こうとしたら支部総出で止められたが……その後に教会に入れようしたのはわしが常に守れるようにじゃな」
という事は……メリルさんも爺ちゃんの存在は認識している? 口止めされてるのか?
それに今の状況か……やはり爺ちゃんは何か知っているな。
とりあえず爺ちゃんがスパルタなのはよくわかった。
そして父さん並に無茶苦茶なのも……。
「……とりあえず、爺ちゃんと言うのはまだ慣れないけど、会えて嬉しいよ」
「うむ、わしも嬉しいわい! フレアは特に可愛いのぉ……わしが絶対守ってやるぞ?」
「いやいや、フレアは俺が守るよ」
「いやいや、わしが守るんじゃ。エルはまだ弱いから修行して来い」
「ぐぬぬ……」
「冗談じゃ、心配するな……先先代オーガスト家当主として──必ず、エルに全てを継承する。アランは覚える気が全然なかったからのぉ……」
六聖筆頭って言っていたな……そりゃーオーガスト家なら納得だ……。
「フレアも強くなるのですっ!」
「うむうむ、フレアも一緒に強くなるんじゃ。じゃが──フレアは笑っておるだけでも良いんじゃぞ?」
「大好きなお兄ちゃんを守るのです!」
「……エル……その副作用とやらが切れたら──訓練するぞ?」
何故、殺気をこっちに放つ!?
あれか!
きっと、フレアが俺の事大好きだから嫉妬したんだな!
「……爺ちゃん……殺気が出てるぞ……」
「ふむ、これぐらいじゃ動じんぐらい強なったか……」
話逸らしたんですけど!?
『これが俺の子孫達か……』
そんな初代の呟きが脳内に流れる。
いや、意味深な言葉言わないでくれませんかね!?
俺は普通だから!
[説得力皆無w]
うっさいわ!
「さて、1週間後にあるクラン戦には行くから付いてくるんじゃぞ? 色々な戦闘スタイルを見て学べば幅が広がる」
「わかった……」
確かに人の戦闘を見るのは勉強になるからね。
「あと──エレノアの動きには注意するんじゃ。完全に信用してはならん」
「──!? それは……【信託】スキルが関係してる?」
「知っておったか……そうじゃ……何故かはその内話そう」
「……誘導──? とりあえず──祖父と孫の再会だね?」
「そうじゃ。その話は今は必要ないじゃろ。再会を噛み締めようぞ」
「フレアにお爺ちゃんいたのです!」
「そうじゃぞ? フレアのお爺ちゃんは元最強じゃぞ?」
「……本当に?」
俺は疑問の声を上げる。
「何じゃエルは信じんのか?」
「天眼に勝てるの?」
「あやつか……今であれば通常戦なら問題ないじゃろうな……切り札を出されたら──どうなるかわからんのう。神速を持っておったら余裕で捌けたが……そういえば──神速はフレアが持っておるのか?」
爺ちゃんも半端ないぐらい強いんだな……。
神速を持っていた? どう言う意味だ??
神速ってそういえば──いつの間にかフレアが持っていたな……いつからだろうか……──
──!?
父さんが死んでから?!
「……フレアが持っているね……まさか──このスキルって……世界に一つだけとか、継承出来る系?」
「ほぅ、よくわかったな……『神の使徒』は神系のスキルを例外無く所持しておる。それは世界に1人だけじゃ……わしの爺さんから神速スキルは出現し──継承されておる……やはりフレアに継承させておったか……エルに継承されておったらもっと強くなってもおかしく無いからのぉ……」
……つまり、父さんは俺では無く──可愛いフレアに継承させたのか……。
『いや、違うはずだぞ? 神系スキルは【応援】を所持していると習得出来ないはずだ。それに神系スキルが無くても俺は最強だったぞ?』
……なるほど……つまり、俺に継承しようとして無理だったからフレアにという事か……。
神系スキル無くても強くなれるのは初代が過去に証明している。頑張らなければ……フレアに置いて行かれる。
「なるほど……とりあえず神速スキルはオーガスト家当主が継ぐという事か……」
「お兄ちゃんが当主になるのです! スキルあげるのです!」
「いや──俺はいらない……。きっと父さんは目の不自由なフレアに何かを残したかったんだよ。あまり覚えてないかもしれないけど、父さんの形見だと思って使って欲しい」
「うむ、エルは戦闘より、母親似で補助向きと思われておったからな。それはフレアが使う方が良い。アランもきっとその方が喜ぶじゃろうて」
「──わかったのです! お父さんの意思はフレアが継ぐのです!」
うんうん、フレアも喜んでくれているし、これで良い。継げないという真実は話す必要も無いだろう……。
今はこの家族の再会を喜ぶべきだ。
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