第72話 いっぱいメダル(金)が出たのです!

 内心どうしようかと思っていると【叡智】が文字を表示させる。


[バレなきゃイカサマじゃない]


 悪魔の言葉だな……。


 正直、気が引ける……返した方がいい気がするんだが……。


[ここのカジノはイカサマで客に借金を背負わせている酷い場所です。慈悲など必要無し]


 ……何それ!? やっぱりイカサマはあるのか!?


[それに借金が返せないレベルになると強制労働や奴隷落ちする事もあるので、ここでは金のある者が勝者です]


 ここでは金が力になるんだな……。


 じゃあ、このままお金は貰っておこう。


 というかフレアとシロガネコンビは今もメダルを出し続けているが……そのうち、このカジノの方がお金を払えなくなるんじゃないだろうか?



 しばらくすると晩ご飯の時間になり、ミレーユ達と合流する。


 ミレーユとメリルさんの2人は凄く良い顔をしている。


 それに比べて、カレンさん、ミリーさんは酷く暗い顔だ。



「皆、お疲れ様」


「エル、しばらくの軍資金はこれでなんとかなるわ。私とメリルで白金貨10枚ぐらいは稼いだわ」


 ……ミレーユとメリルさん……やり過ぎだろう……しばらくどころの話じゃ無いぞ?


 白金貨といえば高い買い物や商談などでしか使わないぐらいの金だ。

 白金貨1枚は確かに前世でいう、1億円相当だったはずだ……つまり10億円相当……。


 あの状況を鑑みるに──ずっと高レートで勝ち続けたのだろう。


 俺の頬は現在進行形で引き攣っている。


 こんな数時間で稼げるものなんだな……。


 そういえば、クロムがいないな……。


 と思っていると──


 フレアとシロガネと一緒にこっちにやって来る。


「兄貴……お嬢のお陰で奴隷落ちせずに済んだぜ……」


 話を聞くに、すっからかんになったクロムは店と揉めていた所をフレアが発見して返済したと……。


 なんで案内役が奴隷落ちしかけてるんですかね!?


「……お前──本当何しに来たの?」


「案内を……」


「フレアに借りた分はちゃんと体張って返せよ?」


「この命──助けてもらったお嬢に捧げます!」


「……とりあえず、フレアはどれだけ勝ったんだ?」


「なんかいっぱいメダル出たのです!」


「……クロム」


「はっ、白金貨20枚になります!」


「「「……」」」


 全員が絶句する。もちろん俺もだ。


 ……まさかのフレアがミレーユとメリルさんの合計の倍を稼いでいた件について。


「よし、とりあえず──旅の軍資金は十分過ぎるぐらい手に入ったな。ここってイカサマも多いらしいから潮時だろう。換金して上に戻ろうか?」


「「「イカサマ!?」」」


 その言葉に反応したのはカレンさん、ミリーさん、クロムの3人だ。


 俺は3人を無視して換金所まで行くと、受付の人の顔が引き攣ってた。



 ……さっきから俺達を観察している人がちらほら入れ替わりでいるな。


 既に目を付けられている。


 まぁ……30億円相当の損害だしな……。


 しかし、無事に換金出来たが、これでよく潰れないな……バックが大きいのか?



 後ろで負け組3人が何かぶつぶつと相談している。


 そして、声を上げる──


「「「ぶっ潰す!」」」


「何を!?」


「エル様……私達は危うく奴隷にされそうでした」


 ミリーさん……そりゃあ、金借りてまでやってたらそうなるよ……借りなきゃいいんじゃん。


「兄貴っ! こんな非情なやり方が許されるわけがない! 兄貴は言っていた──『弱気者を救いたい』──と!」


 クロム……まぁ、確かにイカサマはやり過ぎだとは思うけどさ。


 弱気者って……これ自業自得だよね?!


「エル……これは正義を執行せねばなるまい! この店を潰そうっ! 『白銀の誓い』は──この悲しみの連鎖を止めなければならないっ! それが出来る人材がエルを含めて4人もいるじゃないかっ!」


 カレンさん……完全にそれ私怨ですよね?


 しかも何気にパーティ名出さないで! 声も大きいよ!



「エル……」


「ミレーユどうした?」


「この店はを奴隷にする為にイカサマをしてきたわ。見抜かなければ──私はエルから離れる事になったわ……」


「エル君、調べてみたけど結構被害者は多いわ」


「──!?」


 ここぞとばかりにミレーユもメリルさんもヤル気満々だ。


 だが、これだけは言える……。


 皆それなりに楽しんでやってたよね?


 しかし、ミレーユが奴隷落ちして好き勝手にされている姿を想像するだけで腹立つな。


 今までそうやって来たと【叡智】も言っていた。


 俺達にはたまたま被害は無かったが、これからも先──故意的にイカサマをして負けさせるような店を野放しにはできない……俺達には損失拡大させて嫌がらせぐらいしか出来ないと思うけど。


「わかった……じゃあ──フレア、シロガネ、クロムはスロット、ミレーユとカレンさん、メリルさんとミリーさんもカードとルーレットで勝てるだけ勝ってきてくれ……ちなみに負け組3人はやるなよ?」


 念の為、強めに釘を刺しておく。


「「「うっ……」」」


 言っておいて良かった……こいつらこりてないな。



 食事も済み、俺達は行動を開始する。



 俺は何もするつもりはないが、きっとミレーユとメリルさんが本気な以上……この宿屋とカジノは破滅する未来しか見えないな……。


 これぞ因果応報!


 俺は何もしないけど……というかギャンブルなんかやった事ないから鴨にしかならないだろ……。


『男を見せてみろ』


[ビバギャンブル!]


 こいつら……。

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