ディープ過ぎる執筆談義『【〇〇は言った】問題が取り上げられがちだが、実は【〇〇は笑った】問題の方が遥かに深刻過ぎる件』
ディープ過ぎる執筆談義『【〇〇は言った】問題が取り上げられがちだが、実は【〇〇は笑った】問題の方が遥かに深刻過ぎる件』
ディープな執筆談義のお時間です。
このエッセイをお読みの方々は、執筆に関するディープなお悩みをお持ちのはず。
で、今宵も新たな悩みをお持ちの方が、このディープな執筆談義を訪れたようです。
Q「私はラブコメ作品を書いているのですが、ヒロインが笑うシーンで困っています。というのも彼女は天真爛漫なキャラで基本的にずっと笑っているんです。主人公にちょっかいを出す小悪魔な感じの女の子なので、主人公が困ったり焦ったりする姿を取ると、ニコニコ笑顔になるんです。で、それを今までは誤魔化し誤魔化し書いてきたのですが……流石に今では限界に到達しました。自分自身の笑う描写のストックが完全に切れました。僕はどうすればいいでしょうか?」
上記の悩みはですねー。
〇〇は言った問題と同義だと思うんだ。
小説界隈では「〇〇は言った」問題が大きく取り上げられているんだけど——。
皆様はそれをご存知でしょうか?
簡単に説明すると——。
「」
〇〇は言った。
「」
みたいな感じで、会話文と会話文を繋げる役割を果たす文章って感じですね。
〇〇は言ったという地の文を追加することで、どのキャラが話したのかも特定できる。
で、それを簡単に説明できる手段なのよ。
多くの執筆者が「言う」や「言った」問題の場合は、他の言葉で言い換えたり、行動描写を書くことで事なきを得ているんだけど。
彼女は笑った。
この文章を毎回言い換えるの辛くない?
勿論ね、「彼女は笑った」という文章を、他の言葉で言い換える方法も沢山あるよ。
笑みを浮かべた。
笑顔を作る。
頬を緩めた。
口元を緩める。
白い歯を見せた。
目を細めた。
などなど。
でもさ。
結局、上記の書き方ってさ。
彼女は笑った。
という文章を他の言葉で言い換えただけに過ぎず、それ以上の情報を提示していない。
言った問題ではね。
「嘘でしょ? ない! ない! ない!」
彼女は部屋中を駆け回る。
だが、探し物は何も見つからないようだ。
今も手当たり次第に目に入る全てのものを確認し、結局、目当ての物が見つからずに深い溜息を吐いている。
「どうしてないのよ! 大切なものなのに!」
みたいな感じで、他の情報を入れられる。(行動描写や情景描写、心理描写などを入れることができる)
だけど、「笑う」というのは新たな情報を入れることができないじゃない?
〇〇は笑みを浮かべた。
この文章は「〇〇は笑った」と同じことを伝えているだけに過ぎず、それ以上の情報を何も渡していないのよ。
もっと分かりやすく伝えれば——。
「口元が緩む」「頬が揺れる」「目が細くなる」「笑みを浮かべる」「笑顔を作る」「瞳がキラッと光る」「白い歯を見せる」
などの表現は——。
「言う」という単語を、「説明する」「話す」「呟く」「口を開く」「提案する」「案内する」「誘導する」「語る」「騙す」「嘯く」「嘘を吐く」
みたいな感じで類似の言葉を使って、誤魔化しているだけに過ぎないと思うんだよね。
だから、全く異なるアプローチがほしい。
↓
個人的に妥協できる文章はこちら。
◇◆◇◆◇◆
「私がさ、キミのことを好きって言ったらどうする?」
「えぅ? えっ? えっ? ええええ!!」
「どうしたの? そんなに驚いて」
「いや、今〇〇さんの口から好きって」
「あくまでも可能性の話だよ、可能性」
目線を上げ、僕の方を見上げる〇〇さん。
彼女の瞳は太陽のように輝いていた。
彼女を中心に世界は廻っている。
そう言われても、僕は納得できそうだ。
「好きって言われたら嬉しいと思う」
僕が本音を漏らすと、彼女は微笑んだ。
◇◆◇◆◇◆
私はさ。
個人的にこの「微笑んだ」ぐらいの文章で、最近はイイと思ってるんだよね。
無駄に色々と文章を着飾るよりも、シンプルに簡単な表現で答えたほうがいいなと。
◇◆◇◆◇◆
この談義を思い付いたのが1月初旬。
で、実は自分の中で答えが見つかった。
その中の一つが「笑った」という表現を、10〜20個ぐらい作り、それをテンプレート化する手法。
要するに同じ文章の使い回し。
40×34形式で1枚に付き、1回笑う表現が入っても、合計100回ぐらいでしょ?
ならば、同じ文章を何回か流用してもいいのではないかと思ったわけよ。
実際に「〇〇は言った」とか何度も使い回されてるけど、許されてる感があるじゃん。
それと同じで、もう別にいいかなと。
以前までの私は同じ文章を書く手法を「手抜き」と嘲笑っていたけど、見方を変えれば、それは「黒髪流の笑い表現」や「黒髪節」という独自の文体に昇華できるなと。
こんな書き方はよくない。
こんな文章ではダメだ。
そう自分の心にブレーキをかけてしまうのは、独自の文体に昇華できていないからよ。
だからこそ、一刻も早く、自分の文体を編み出さなくちゃいけないと思ったよねー。
で、もう一個、文章を書くコツが見つかったんだけど……。
まぁ、その話は次回します。
簡単に説明すると——。
五感を意識して文章を書こうという単純な内容なんだけど、その意味をやっと理解できたってお話。
五感を意識するって、めちゃくちゃ奥行きが深いことを言っていたんだなと気付かされた感。上っ面だけを知って、その深層部分に隠された書き方を知らなかったってお話。
まぁ、次回も面白いと思うのでよろしく。
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