偶には、激昂したくなる夜もある

 決して許せないことがあったので、私の怒りをエッセイ内でぶつけたいと思う。というわけで、黒髪の激昂物語開幕です。


 私さ、時折、他人の小説を読みに行ってるのよ。

 といっても、本当に気が赴くままにって感じでね。


 何か、無性に活字が読みたくなる瞬間があるんですよ。

 だからね、月に数回あるかないかなんだけどさ。

 私は気になった作品を片っ端から読むことがあるのよ。


 選びかたはほぼほぼ適当。

 勿論、タイトルやあらすじが面白そうとか、自分に合ってそうな作品だなとかは、事前にチェックするけれども。

 それでも、オールジャンル何でも読むぜって感じで読むの。


 んでさ、昨晩の話なんだけどさ。

 とある作品に出会い、読み耽っていたのだ。


 もうね、この作家が才能の塊だった。

 磨けば磨くほどに輝く未来性ある作家。

 多少問題点があるんだけど、その点を除けば必ず伸びると確信できるダイヤの原石を発見したのである。


(問題点に関しては、後述に話します)


 でさ、その作品にはさ、感想が一つも書かれていなかった。

 というか、評価が全くされていませんでした。

 でも、その理由も分かるので、「まぁ〜そうだよな」と思いつつも、他作品ではどんな評価を受けているんだろう。


 そう思って、私はその作家さんのマイページを見てみた。


 マイページのプロフィール欄には、「大学生」という表記があった。なるほど、まだ若いひとなんだな。凄いな。


 そう思いつつも、ページをスクロールする。


 その作家は、長編作品を五作品、短編を二作書いていた。

 ネット小説では、評価が全く付かない作品を途中で書くのを止めてしまう作家が山のようにいる。私もその中の一人だ。


 だが、しかし、その作家は、数十万文字を書いていた。

 諦めずに書いて書いて書いて、その結果、読まれてなかった。ブックマークは一桁しかない弱小ネット小説家である。


 それでも、私はクリエイター精神を掻き立てられた。


 誰にも評価されない地獄の泥沼。

 自分が書いた作品の十分の一にも満たない文字数で書かれた作品が、自分の十倍、百倍、千倍、万倍の評価を受けている。


 その現実に憤り、自分の才能に絶望し、それでも立ち上がって、何度も何度も挑戦し、それでも負け続けの若い作家に。


————私は、心を打たれてしまった。


 代表作と書かれた作品を発見した。『小説家になろう』では、代表作を一作品だけ選ぶことができるのだ。作家自身が最も面白いと思っている作品を選ぶことができるのだ。

 言わば、批判するのは、それを読んでからにしろ。

 そう言っているものだろうと、私は勝手に思っている。


 で、その代表作も、評価が芳しくなかった。

 だが、その作品には、感想が一件だけ書かれていた。


 簡素な書き込みだった。


 めちゃくちゃ面白いです。

 今後も執筆頑張ってください。


 こんな感じの超単純な感想であった。

 それでも、この作家を認める読者が現れたのか。

 それだけで、この人は救われた気持ちになるのではないか。


 実際に、この作家は読者への感謝の言葉を伝え、これからも小説を書き続ける旨の内容を書き綴っていた。他者から見れば、それは単なる言葉の羅列かもしれない。


 それでも、その作家にとっては、特別な言葉だったのだ。

 スクラップ工場のように勝手に集まるネット小説界で、自分の作品を選んでくれた読者への熱い想いを書き綴っていた。


 よしっ。

 この読者は見る目があるな。

 この読者がブクマを付けている他の作品も読んでみるか。

 そう思ってさ、この読者のマイページに飛んだの。


 ふむふむ。

 この読者さんは、作品を書いているのか。

 なるほど、つまりは純粋な読み専ではなかったのね。

 同じ作家なら、あの才能の塊に嫉妬するはず。

 それなのにその才能を認めることができるなんて……。


 新たな感動を覚えつつも、私は心に決めた。


 よしっ。私が読もう。君の作品もこの私が。

 そう思いつつも、私の手は「評価をつけた作品」のページへのリンクへと伸びていた。そして、とあることに気付いた。


「あれれぇ〜?? 100件以上も同じ日に評価されてるぞ?」


 嫌な予感がよぎった。

 だが、そんなはずはないはず。

 脳裏によぎった最悪な可能性を否定しながら、私は彼か彼女かも分からない読者が五段階評価を付けた作品ページへ飛ぶ。

 それから恐る恐ると言う感じで、その作品の感想欄を開く。


 すると————。


 めちゃくちゃ面白いです。

 今後も執筆頑張ってください。


「あれ……? さっきと同じ感想じゃない?」


 感想欄に表示された文字列を見て、私は叫んでいた。

 一度事実を知ってしまい、私は次から次へとその不届き者が評価を付けた作品を片っ端から調べてみた。


「嘘だろ、おい……」


 めちゃくちゃ面白いです。

 今後も執筆頑張ってください。


「この作品もかよ……」


 めちゃくちゃ面白いです。

 今後も執筆頑張ってください。


「うわぁ……コイツ完全に黒じゃん」


 めちゃくちゃ面白いです。

 今後も執筆頑張ってください。



 私の中ではもう劉備・関羽・張飛の関係だと思ってたの。

 我ら三人、生まれし日、時は違えども兄弟の契りを結びしからは、心を同じくして助け合い——。


 と、本気で思ってたのに!!!!


 何よりも、一番腹が立ったのは————。


 この不届き者が書いた感想を、どの作家も喜んでいること。

 大半の書き手が貴重な読者が読んで送ってくれた感想だ。

 そう思って、丁寧に感想の返事をしているのよ。


 それなのに…………。


 この不届き者は、自分の作品を読んでほしいがために。

 言わば、無差別に全く同じ感想を送りつけ、相手が自分の作品を読んでくれることを待っている。無性に気持ち悪かった。


 一生懸命書いた作品を踏みにじる行為だよ、アレは。

 絶対に許されることではない。

 あんな感想を送りつける輩は、ロクなものじゃないね。


◇◆◇◆◇◆


 というわけで、激昂物語は終了です。


 それでは、前述していた問題点を説明しますわ( ̄▽ ̄)


 あんまり大きな声では言えないんだけどさ……。


 私が読んだ作品はさ。

 読者への配慮が全く足りていなかったよ。

 読み手の気持ちを全く考えずに、ただひたすらに書き殴っているだけの作品。言わば、攻撃力に全振りしちゃった系??


 一概にそれが「ダメ」と否定できないんだけど。

 もう少しだけ読者へ配慮した作品を心掛ければ、この人は必ず伸びると確信しちゃったね( ̄▽ ̄)


 天性の才能とも言うべき卓越した文章能力があるの。

 もうね、自分の脳内にある世界観を見事に再現する力をさ。


 ただ、それが裏目に出ちゃっててさ。


 勘違いしちゃってると思うんだよね。

 文章が上手ければ、読者は付いてきてくれると。


 ストーリー構成が悪かったんだよね。

 文章力だけはあるんだけど、ストーリー構成がね……。


 読者として読んだけどさ、反面教師にもなったね。

 一歩引いて自分の作品と向き合うってやっぱり大事だわ。

 客観的な立場からもう一度作品を見つめ直して、読者への配慮を考えれば、必ずあの人は化けると思っている。


「読者への配慮とは何?」「客観的な立場とは何?」


 そう感じた方は、是非とも下記のリンクをチェックへ。

 見直す箇所に関しては少し前のエッセイで語ってます。


https://kakuyomu.jp/works/16817330658939597914/episodes/16817330661299664175

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