繊細な心理描写とは一体何だろうか?

 とある大物ラノベ作家のラジオを聞いていたのだが、そのときに「漫画やアニメなどと違って、小説の最大の強みは繊細な心理描写を描けることである」と仰られていました。


 で、その話を聞きながら、私は一つの疑問が出てきたの。


【繊細な心理描写とは一体何だろうか?】


 で、その答えが自分なりに分かったので答えていくよ。


 繊細な心理描写とは、主人公の感情を出すこと。

 もっといえば、個性を出すことである。

 で、その主人公の感情を出す方法を解説したい。


 え〜とね、とりあえず「例題」を出したいと思うわ。


【例題】


 夕暮れ時の放課後。

 部活に勤しむ運動部を尻目に、俺は教室を後にした。

 さっさと家に帰って、ダラダラしよう。

 そう企みながら、俺が生徒玄関を出たところ——。


◇◆◇◆◇◆


 上記の文章は、私が去年書いた過去作品から引用したものである。徹底的に無駄を削ぎ落とし、誰が読んでも誤読しない、言わば、読みやすさに一点突破した文体で書いたものである。


 というのも、私の武器はストーリーと会話文である。

 そう自覚し、必要最低限の地の文でしか戦わない方向性で物事を進めていたからであった。だが、これは間違いだったなと今更ながら気付いた。ていうか、気づけてよかったなと思う。


 先程の文章を心理描写増しましで書いてみよう。


【改善案】


 夕暮れ時の放課後は、騒々しさに満ちている。

 部活動に通う者、残って勉学に励む者、これから仲間と共にファミレスやカラオケに行こうと企んでいる者などなど。

 様々な奴等の声で満ちた教室内は、お前みたいなぼっち野郎はさっさと家に帰れと物語っているようだ。本人たちがイジワルな態度を示すわけでもないのだが、ひとりぼっちな学園生活を送る俺にとってはそう思えてしまうのだ。

 自意識過剰だと言われても、それでも構わないさ。

 ただ、そう思ってしまう人間がいることを理解してほしい。


 結論を述べる。リア充よ、滅びろ。


 謎の理論を展開しつつも、俺はリア充軍団から逃げるように教室を出た。放課後という時間帯は、最もリア充軍団が輝くのだ。授業中なんて、殆ど眠っているような奴等だが、学校が終われば突然動き出すのである。アイツらは夜行性なのかな??


 ともあれ、アイツらと関わっていても無駄が多すぎる。

 俺にはやらなければならないことがあるのだ。

 さっさと家に帰って、ダラダラと過ごそうじゃないか。

 そうだな、今日は大好きな漫画を読み返してやろう。

 そう企みながら、俺は下駄箱で靴とシューズを履き替え、生徒玄関へと足を運ばせたわけなのだが——。


 やれやれ、今日も俺を待ち伏せしている部長がいるではないか。あの人は本当に、俺みたいな奴のどこに気に入ったんだか、俺に時間を使うよりも自分に使ったほうが有意義なはずなんだがな。そう思いつつも、俺は彼女に見つからないように学校指定の鞄で顔を隠しつつも、通ろうとしていたのだが——。


————————————————————————————


 例題と改善案でどちらの文章が小説として正しいのか。

 その答えは決して分からないが、主人公の心理描写が極めて分かりやすく書かれていたのは、後者だろうと思います。


 例題で書いた文章は、脚本や漫画に近いと思っている。

 というのも、当時の私が漫画を参考にして、小説を書いていたからである。漫画みたいにスパスパと読める小説を書いてやろう。次から次へと気になる展開を作って、ストーリーだけで読ませる小説を作ってやるんだと意気込んでいたのだ。


 考え方としては、それはある種正しかったのかもしれない。

 だが、それは小説という媒体では間違っていたのかなと思えてくる。やっぱりね、心理描写があったほうが面白い。


 というか、小説の魅力度が圧倒的に上がるなと思った。


 数年前までは、普通に心理描写を書いていたのよ。

 でもさ、その書き方は伸びないと思い、心理描写を極力減らして書く方法。言わば、地の文を減らして文章を書いていた。


 ただ、昔の執筆スタイルに戻そうかなと思いました( ̄▽ ̄)


 ライトノベルとネット小説は、書き方が全く異なる。

 私はさ、ネット小説の書き方では戦えないと自覚したわ。

 正直な話、心理描写を多めに入れたほうが、執筆速度が倍速すると気付いた。やっぱり、私の本領発揮はそこだなと。


 というわけで、私は書籍化しても戦える書き方に戻す。


「初めてのお見合い」「足をテーブルにぶつけてしまう」


 三十路の私は両親に説得され、お見合いに参加することになった。今の今まで男性経験がなく、高校を中退してからは自宅に引きこもっていた私。それなのに、突然お見合いに参加するなんて、正気か? ていうか……私を嫁に欲しいと思うのか?


 そんなことを思っていると、両親が立ち止まって振り返る。

 行くわよ、覚悟しなさいという表情を浮かべたあと、私は優しく微笑み返した。とりあえず、愛想笑いの練習は終了だ。


 扉をノックしたあと、快活な声が聞こえてきた。

 私たちは扉を開いて、中へと入った。先頭は父親、その後ろに私、母親と続く流れである。父親の背中に隠れる形で、私は自分のお見合い相手を見る。

 写真で見た通りの美男子である。

 ふわっとした黒髪と銀縁のメガネをかけて、こちらへ微笑んでくるのだ。何だ、あのイケメンは。私の夫になるのか?


 と、浮かれた矢先、ガツンと鈍い音が響いた。

 その数秒後、私の足先には激痛が走るのであった。


「いってえええええええええええええええええ!!!!!!」


 私は思わず叫んでしまった。

 あ、やばい。しまった……お見合いなのに。

 未来の旦那様に変なところを見られてしまうなんて………。


 みたいな感じの描写を、今後は容赦なく書こうと思う。

 地の文過多かなと思って、今まで自分に制御をかけていた。

 でも、このリミッターを解除して思いっきり書くわ。

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