上手い文章とは何か?

【上手い文章とは何か?】


 その答えが分かったので、皆様に教えたいと思う。

 ズバリ——「流し読みしても意味が理解できる文章」だ。


 文章の長さは関係ない。

 上手い文章は長くても短くても読める。

 一度目を通しただけで、書いている情報を正確に読み取ることができ、頭の中に思い浮かべることができる。

 逆に、下手な文章は一度目を通すだけでは意味を理解できず、何度か読み返しても、初めて意味を理解できるわけだ。


【上手い文章に必要な要素とは何か?】


 上手い文章を書く上で必要な要素はリズムだ。

 文章と文章を繋ぐ流れとでも言えばいいのだろうか。


 上手い文章は、文章と文章の流れがスムーズに進む。

 だが、下手な文章は、文章と文章の流れが悪く、流れるように読むことができないのだ。


 簡単に説明してしまえば——。


 小説は、音楽と同じなのだ。

 音と音がスムーズに流れる音楽を聴いた際は、皆様も心地よいと感じるはずだ。しかし、美しい音色の中に不協和音が混じると、心地いいものではなくなる。

 小説もそれと同じで、余計なノイズが混じるとダメになるのだ。リズムが崩れて、作品全体の調子を狂わせてしまうから。


 飛躍的な理論を言ってしまえば。


 小説家は一種の音楽家なのかもしれない。

 音楽家が楽器を通して、音楽を奏でるように。

 小説家という生き物は、文字を通して音楽を奏でているのかもしれない。


【Q&Aのコーナー】


「上手い文章を書く為に必要なことは何ですか?」


 という質問に対して、多くの書き手が大抵同じ返答をする。


「一文一義が守られている!」

「文章が短いことです!」

「具体的な情報が書かれていることです!」

「句読点の打ち方が適切であることです!」

「豊富な語彙力と表現力だと思います!」

「文章の構成力が上手いことですね!」

「音読した際に、文章に違和感がないことだと思います!」


 上記の内容は頷くべき点も多い。

 正直、ダメだなと思う小説には、上記の内容を守れていない作品が多い。


 でも、逆も言えるのも事実である。


 私が大好きな芥川賞作家の西村賢太氏は、一文が長い。更には、やたらめったら難しい語彙を扱っている。

 だが、異常なまでに読みやすい。旧字体の小難しい漢字を随所に含みつつも、文庫本三行分に当たる文章を一文で描き切っているのに。


 ライトノベル作家なら、『涼宮ハルヒの憂鬱』の谷川流氏や、『イリヤの空、UFOの夏』の秋山瑞人氏も、一文の長さが異様に長く、クセが強い文章を書いている。

 それにも関わらず、多くの読者から高い評価を受けている。


 私が思うに、その理由は——。

 流し読みしても、内容を理解できるの一点だと思う。

 谷川流氏も秋山瑞人氏も文章の構成力が上手いんだよ。



 文章力に関する話だけどさ。


 例を提示して分かりやすく説明するわ。

 その前に、お題の内容を分かりやすく要約しますね!!


『夏の昼下がり、無一文のAは喫茶店に入った。だが、注文を取ることはない。彼は涼みに来たのだ。なので、たらふく水を飲み、時間を過ごしていた。そんな折、店員から注意を受けたのだが、無職で無一文のAは反論を返すのであった』



「この店は、貧乏人は相手にしないってか?」


 Aは悪態を吐き捨て、喫茶店を出て行った。



「この店は、貧乏人は相手にしないってか?」


 静かな昼下がりの喫茶店にふさわしくない雑音が混じる。

 昼休み中のサラリーマン。

 老後の寂しさを紛らわすために足繁く通う老人。

 勉強に集中しようと入店した大学生。

 旦那の愚痴や子育ての大変さで盛り上がる子連れの若妻グループ。

 様々な客層が、前述の言葉を荒げたAへと視線を向けている。


「……ったく、何だよ。オレが悪者扱いかよ」


 やれやれと深い溜め息を吐き捨てるA。

 彼の周りには、味方は誰一人としていなかった。

 何も知らない連中は殺人犯を見るような眼差しだ。

 しかし、目線が合うと、奴等はスッと顔を背けてきた。


「……はいはい、出ていきますよ。邪魔者はね」


 Aは水を一気飲みし、コップをテーブルに力強く叩きつける。

 空っぽになった水筒が揺れ動く。「よっこらしょ」と、嫌味な声を上げながらも、Aは重たい腰を上げる。ズボンのポケットに手を突っ込み、猫背な彼は歩き出す。自分の進路を阻む者は許せない性質らしく、Aは「邪魔だ。退けろ」と言い放ち、店員や他の客を払い除ける。彼を邪魔する者は、誰も居なくなった。

 欺くして、社会不適合者の彼は、誰からも見送られることもなく、喫茶店を後にするのであった。


————————————————————————————————————


 ①と②も伝えたい内容は、一緒なんです(笑)


「Aが喫茶店を出る」


 たったこれだけの動作を書くためだけなんですね!!


 読むという点に置いては、①の方が読みやすいと思う。

 元々の文章量が圧倒的に少ないからね( ̄▽ ̄)


 でも、流し読みという点に置いては、②に群配が上がるはず。


 その理由は「ストーリーの構造」「文章の構成」で、「Aが何か行動を取るぞ!!」というのをずっと説明してるのよ。

 実際、「Aは水を一気飲みし、コップをテーブルに力強く叩きつける」という段落から、「Aが何か行動を起こすぞ!!」と分かりやすく説明してるわけよ。


 読者の想像通りに物語を動かしていると言えばいいのかな??


お題「告白」


①「もしよかったら、僕と付き合ってください!」

②「…………ええとね、あのね、山田くん」

「う、うん」

「……山田くんはとってもいいひとだと思うんだ。クラス内でも、いっつも笑顔でみんなをまとめてくれてるし。それに、誰にでも優しく接してくれるし」

「……う、うん」

「私はね、とっても山田くんはいいひとだなと思ってるよ」


 でもね、と黒髪さんは強調して呟いた。

 冷たい風が吹き、黒髪さんの長い伸びた黒髪が揺れ動く。

 彼女は申し訳なさそうに視線を下へと動かして。


「ごめんなさい。山田くんと付き合うことはできません」



 普通にOKするなら、②の段階で告白は終了するのよ。

 それなのに長引くのは、告白が失敗してるじゃない??

 で、その失敗してることを、間接的に書いてるのが分かるかしら??


 でね。


 一般的に上手い文章を書く為に必要な要素と呼ばれているものを無視している作家は、「ストーリー構造」や「文章構造」を上手く使って、物語の分かりやすさを跳ね上げているわけ。

 文章を読まずとも、ストーリーが分かる作品ってない??


 というわけで——。


 今後は流し読みしても内容が理解できる小説を書きます!!



追記


 正直な話さ。

 流し読みできない文章は、悪文だよな。

 一回読んで意味を理解できない文章は、娯楽作品に向いてないと思うわ。


 かと言って……。


「僕は走った」とか「僕は食べる」などの「主語+述語」だけの文章を書けという話じゃないんだよ。


 この辺に関してはカクヨムの作品を手当たり次第、読んでみることをオススメする。

 普通の文章なんたけど、流し読みできる作品に出会えるからさ。

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