[変更済]MISSION 1 : スワンを殺す仕事









□内容:スワン排除


 依頼主:ミサイラーウィッチ

 報酬:契約金 68000cn

    成功報酬  0cn

 敵戦力:eX-W × 1



◇ある傭兵スワンを排除する仕事を手伝ってほしい。

 敵は高位ランカースワンで、1体1では分が悪い。

 知っての通り、シーズン開幕でスワン一人殺せばその分の懸賞金が出る。

 今回のシーズンの懸賞金でこちらの報酬は充分なので、こちらが受け取る通常報酬を全額前金で払おう。

 そちらの腕は確かと聞いている。依頼を受けてくれると大変助かる。連絡を待っている。









          ***





 ‪……‬‪……‬さて、傭兵系美少女な私こと大鳥ホノカちゃんお仕事開始なんですが、




 ここで一つ!




 みんなは、傭兵スワンがホイホイ受けちゃいけない任務って何か知ってるかな?





 それはね、妙に簡単そうで、全額前払いな任務なのだ!






<ミサイラーウィッチ>

『よく来てくれた。残念だが初めから目的はお前だ、新ランク9。


 騙して悪いが仕事なんでな、死んでもらう』




 受けるとこういうこと言う奴が相手になります、はい。


 岩だらけの荒野でこう言うことになります、はい。



「‪……‬はぁ‪……‬‪……‬

 君で、27人目」


<ミサイラーウィッチ>

『は?』




 えー、突然始まりました。

 eX-W1分クッキングのお時間です♪

 今日の食材は、逆脚に武器腕ミサイルのこちらの方。


 使用するこちらは中量2脚のアルゲンタヴィスとなっております。


 まずミサイルは徹底的に両腕のライフル二つ、今日はお好みのいつものライフルとレーザースナイパーライフルでバンバン撃って対処しましょう♪


 発射直後にミサイルをガンガン誘爆させて相手へダメージを与えていきます♪


 軽量逆関節武器腕なんてこれでサッと炙ってあげればすぐです。



<ミサイラーウィッチ>

『グワァ‪……‬私のヴァルプルギスが、こんな早く‪……‬!』



 はい、お料理完了♪

 トドメに蹴りブーストチャージでも叩き込んで終わらせちゃいましょう!



「何人目だこの罠。もう慣れたよ‪……‬」


<イオ>

《27人って言いましたね?》


 今回の相方AIウェザーリポーターは、いつものコトリちゃんではなくこの前新しく買ったイオちゃんでお送りいたします。


「うへぇ‪……‬‪……‬嫌だねぇ、おんなじような内容におんなじような騙し方で‪……‬飽きるぞ、殺し合いなのに」


<イオ>

《うーん‪……‬飽きている辺り生きているだけラッキーとも言えますけどぉ‪……‬たしかになんでこんなに多いんでしょう‪……‬?》



 残骸になったもう名前も忘れた依頼主の機体を見ながら、自分でもわかるぐらい嫌な顔の私。





 まだ私より弱かったって言っても、

 殺し合いだし、集中しないといけない。


 私はね、人が死ぬのが嫌とかそういうことを思えない酷い人間だし、もし悲しい生い立ちとか聞いたら同情は私はするけど殺せる。



 けどそれ以前に、殺し合いってね、疲れるの。



 相手も必死だから抵抗するしね、生きている限りは。



 そして人は簡単に死なない。簡単に殺すにはコツとか集中がいる。



 それが面倒臭い‪……‬大変に面倒臭い。



「私、面倒は嫌いなんだけど‪……‬どうして傭兵業なんて面倒臭い事してるんだろ?」


<イオ>

《借金と、解約金500万cnカネーのためと聞いていますよ?》


「500万か‪……‬‪……‬Aランクのコイツ殺して、5万cn。

 1cnはユニオンの円換算で1万円。


 今の所持金は、」


<イオ>

《148万cnですね》


「はー‪……‬‪……‬面倒臭いなぁもぉ!!」



 左に向かって急速水平移動アサルトブースト


 ドヒャアと避けた脇の地面で爆発が起こって、爆風でeX-WのエネルギーEシールド出力がちょっと減衰する。



<デッドシーカー>

『避けた‪……‬?どうやって?』



「アンタだって、スワン名まで教えてくれる優秀なオペレーターさんが派遣されてるんでしょ?

 協力しないわけ?」




 岩陰でうまく隠れていた黒い軽量2脚機さんの、背後の上空にはとっくに私の頼れるオペレーターなカモメちゃんのヘリがいる。



<カモメ>

『ランク48『スコーチエネミー』です。

 敵機体は、軽量2脚機にハンドグレネード及びHEATライフル装備。危険です!』



<デッドシーカー>

『チッ‪……‬やはりこちらは狙撃戦は不利な機体だ。

 楽に終わらない時点で、後はいつも通り殺せば良いだけだ!』



 焦茶色の機体が、緊急脱出用急加速推進ストライクブーストを起動して近づく。


 案外避けるのが上手く、狙撃は無理。



「軽量機は、狙撃か貼り付け、か!

 セオリー通りの動き!!」


<イオ>

《あー、これはまずいです!!

 まさに貼り付けっていうアセンで突っ込んで来る!!》



 距離を離そうとするけど、あいにく相手はこっちよりブーストする速さが段違いだ。


 同じ出力なら重い中量2脚より軽い軽量2脚の方が名前通り速い!いつもの相棒のヒナちゃんの言う通り!


 そして、『張り付く』って言うのが成功するのが問題!!



 なんとか振り切ろうとする私の機体は、中距離から遠距離でお互い当たるかもしれない場所で撃ち合う様な武器ばかりだ。


 近距離で張り付かれると、はい照準が物理的に難しい。なんせライフルの長さからそんな離れてない場所なんだから銃口を見て回避すればeX-Wならギリギリ避けられちゃう!!軽量機だしね。


 そして相手のHEATライフルとグレネード、


 これは弾速が遅いけど代わりに爆風で嫌でもEシールド減衰が起こるし、むしろこの距離ならその弾速でも当たりやすい。


 ここまで、今日はお留守番のいつもの相棒のAIコトリちゃん談そのまま。



 そのまますぎて嫌になりながら、eX-Wの機動力全開で振り切ろうとする!



 左へアサルトブースト!相手も同じ方向にアサルトブーストして追いつく!


 ドヒャア、ドヒャア、右に、後ろに‪……‬



「チッ、ストーカー並みにしつこい!」


<デッドシーカー>

『中量機で良く避けられる!』


 取り回しの効く左腕のいつものライフルで反撃。

 ただカスってEシールド減衰させて終わって、グレネードが飛んでくる。


 ストライクブーストで距離を離す。

 と、相手も反応して即座にストライクブーストを起動して、軽いもんだから出力大体同じなら相手が追い越す。


 軽量機に近距離で撃ち込むもの使って張り付き‪……‬


 セオリー通りだ。

 コトリちゃんの言う最適解ってことは、それができるってことは強い‪……‬!



<デッドシーカー>

『ジリ貧だな、ランク9!

 新人にそのランクは重いようだ!!》


「は?ランクなんか気にしてんだ。

 こんな仕事、生きて任務達成して金貰えりゃそれで良いでしょ!!」


<デッドシーカー>

『ならば、私がお前の死を見て懸賞金をいただく!!』


 一か八か‪……‬!


 相手のグレネードが直撃コースで放たれた瞬間、


 この機体のストライクブーストパーツに仕込んである機能、Eシールドを全方位に向けて爆発するみたいに衝撃波に変える武装、『ブラストアーマー』を起動する。



 ズギャァァァン!!!



 閃光が辺りを包む。

 放たれたグレネードは衝撃波で誤爆し、相手は脚部備え付けの後退用推進器バックブースターを全開で回避した‪……‬けど、副次効果でEシールドが完全に減衰しきって本体の装甲が────軽量機らしいうっすいのが剥き出しになる。




 バシュゥゥゥゥゥ!!



 悪いけど、この光量でもアンタの姿を捉えられる頭部パーツだ!!

 私の操るアルゲンタヴィスの右腕のハイレーザースナイパーライフルから光が放たれて、


 相手のコア部分やや右上を直撃。



<デッドシーカー>

『まさか‪……‬!!』


 続け様に左腕の実体ライフルで、念入りにコアを何発も撃ち抜く。


 爆発、炎上‪……‬原型をとどめているけど、敵の機体は地面に猛烈にキスしながらバラバラになった。




<カモメ>

『スコーチエネミー、撃破です!』


「‪……‬‪……‬2機でかかれば、勝てたかもしれないのにね」



 嫌でも、本当に強かったよ‪……‬ス、なんだっけ名前??



<デッドシーカー>

『‪……‬‪……‬フッ‪……‬これで最後か‪……‬‪……‬死にたく無いんだが、な‪……‬』


 ってマジか。通信してきたよあの残骸から!!


「マジか、生きてたんだ。

 ねー、脱出するならしなよ。強化済みならまだワンチャンあるんじゃない?」


<デッドシーカー>

『‪……‬‪……‬いや、その前に‪……‬

 お前が『相方』にやられるところを見てからにするよ』



「は!?」



 バババババババババババッ!!



 凄まじい銃声が響いた。


 けど、私は、私のアルゲンタヴィスは、無事だ‪……‬!?



「何今の!?」


<カモメ>

『スキャン終了!

 高エネルギー反応が2‪……‬いえ、1に減りました!!


 後方1km!!』




 とっさに、そっちに振り向いて、神経接続越しに機体のカメラをそっちに向ける。





<デッドシューター>

『そんな‪……‬姉ちゃんを犠牲にしたのに‪……‬!』



 ズシン、と倒れる、ちょっと堅そうな4脚のスナイパーキャノン装備のeX-W。


 その残骸を踏みつけるように、ズシンズシンと別の脚が見える。




<???>

『───そこの傭兵スワン、私は生憎敵じゃないの。

 今出て行くから、くれぐれも撃たないで』




 同じく、出てきたのは4脚。


 流線型だけど、多分色々な企業混合型パーツの4脚フレームに、お手手がお手手のまま銃というか‪……‬

 5本の指が銃口みたいになった変な武器が両腕につけられている。


 背中はチェーンガンに、たしかレールガン。

 両肩にはなんか筒が二つの変な装備。

 そんな妙な感覚のある、黒とオレンジのシックな機体だった。




「敵じゃないとは言ったけど、味方でもないよね?」



<???>

『たしかに。でも私はただハイエナしただけ。

 獲物はあなたを狙って後ろがおろそかだったこういう機体』



 エンブレムは、銃を持ったカウガールっていうウェスタンなやつ。


 さて、問題はこれからどうする?

 こっちから撃ち合っちゃう??謎の相手。


 嫌なんか‪……‬‪……‬なんだろう?

 この人ひょっとして、めっちゃ強い??


 そんな気がする‪……‬前にあったランク2のあの人みたいなヤバい感じが‪……‬あの人も4脚だったな。




<カモメ>

『‪……‬え?機体称号無し‪……‬?

 まさか‪……‬‪……‬そんな、アレがこんな場所に?』


「どうしたのカモメちゃん?」



<???>

『気づかれたか、優秀なオペレーターね。

 面倒になる前に‪……‬バイバイ、大鳥ホノカちゃん』



 と、その両肩の筒からボフンと凄い勢いで黒い煙が出る。


「煙幕!?」


<イオ>

《げ、あれって音響センサー以外使い物にならない煙幕ですよ!?あうーん‪……‬》


 言われた通りレーダーに障害‪……‬ついでにカメラとかセンサーにもなんか異常が!



<カモメ>

『敵反応‪……‬消失ロスト


「‪……‬敵、なのアレ??」



 うーん、結果的に、助けられちゃったんだが?

 ちなみに、私が倒した軽量2脚の人は、もう喋らないってことはつまりそう言うこと。



<カモメ>

『‪……‬‪……‬『ブラックスワン』、ですか』


「え?」


<イオ>

《え!?火星にもいるんですかいな!?》


「ブラック‪……‬スワン‪……‬?」


<カモメ>

『‪……‬‪……‬機動兵器、eX-Wを操る傭兵であるスワン、


 それは、通常は全てが企業連合体『トラスト』の管理下に置かれ、トラストの仲介とトラストの認可を受けたパーツ販売ショップでのパーツ売買をもって活動が許されます。


 ‪……‬‪……‬ですが、あいにくこの火星社会にも、まだ闇ルートや非合法活動と言うものは存在します。


 当然、トラストの関わらない非合法傭兵も』



「‪……‬それが、」


<カモメ>

『はい。

 それが非合法傭兵ブラックスワン


 未登録パーツでトラストを介さない依頼を遂行する未登録傭兵スワン


 そして、非合法活動を生業なりわいにしている以上は、生き残っているならば当然並みのスワンより強いという事です』



 と、フォンという音と一緒に視界に出てくるある情報。




<カモメ>

『ホノカさんが高位ランカーのおかげで、その権限を持ってトラストの手配書が照会出来ました。


 相手は、機体名は『バレットガール』。

 活動歴は推定20年長。ただし中身は不明ですが。

 懸賞金は、今のホノカさんと同じ95万cn。


 相当危険な相手だそうです』



 あの機体の色とエンブレム、そして驚きの懸賞金額が出てくる。


 つーか私も高いな‪……‬そのお金ください。



「‪……‬何でそんな人が、一応は助けてくれたんだろ?」



 疑問を問いかけても、もう晴れ始めたあの黒い煙の向こうに答えを知っている人はいない。



 釈然としないけど‪……‬まぁいいや。



「‪……‬考えても仕方ないや。

 次会ったらって事で、今日は帰ろう」



 殺し合いは疲れるもん。早くこんな生活終わらせたい。

 そのためにはお金稼ぐしかないから‪……‬明日からもずっとがんばるために、今日は帰ろう。


 ま、そんな私並みに高い懸賞金の人と戦わなかっただけ運が良かったって事で。




 面倒にならなくて良かった。

 釈然とはしないけどね‪……‬



<イオ>

《‪……‬あれ?》


「どうしたいイオちゃんや?」


<イオ>

《さっきのブラックスワンさん、ホノカちゃんの事名前で呼びませんでした??》


「‪……‬そーだっけ??」




          ***






「あれが大鳥ホノカか。

 アンタと似てないぐらい、強いんだ」




 荒野を静かに走る4脚機、

 バレットガールの中で、彼女はつぶやく。




「でもなんだろう、すっごい懐かしい感じがする。

 これがってこと?」



 彼女は、懐から取り出したとある写真に語りかける。



「だとしたら、アンタの言う通りアンタはクズだったのね。

 ま、知ってた。嫌ってほど知ってた。


 だから‪……‬‪……‬アンタの願いは叶えてあげる」



 そして、写真を乱暴に胸元のポケットへ入れる。




「あの子は守ってあげる、アンタの子ホノカちゃんはね」




           ***

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