[変更済]MISSION 8 :対読心戦闘方法










「ゲホッ、ガハッ!?オエ‪……‬アハッ、ゲホ‪……‬!!

 ぐっ‪……‬‪……も、もう少しで‪……‬良いから!」



 ────座席の足元に夥しい量の血の吐瀉物を吐き、自分の腕にある夥しい数の注射痕の数をもう一つ増やす。



「はーっ‪……‬はーっ‪……‬!!

 まったく、笑えない話よね‪……‬!!

 私は‪……‬あんなに力が欲しかったのに‪……‬!

 命なんて‪……‬どうでもよかったはずなのに‪……‬‪……‬

 後1日‪……‬いや、2時間だけ延命したいだなんて‪……‬

 今はただの弱い奴‪……‬ああ、あれほど言われたくなかったセリフを自分で言ってる‪……‬あはは‪……‬傑作!」



 荒い息を整えて、操縦桿を掴み、目の前のモニターの先を見る。


「傑作といえば‪……‬‪……‬

 なんで、大鳥ホノカはこの場所にいるんだか‪……‬


 ただいま、‪……‬!」


 そして、自らの操るこの機体を、

 断崖絶壁と対空砲に囲まれた研究所へと、向かい出す。





           ***



 傭兵系美少女、大鳥ホノカちゃんこと私は、


 なんて言ってる場合でも、な、


「ウワッ!?」


 シミュレーターでなら鬼畜スパルタ教育者ヒナちゃんに何度も食らった光波ブレード、

 レーザーブレードの発信部分をハッキングして調節、本来刃を生成するだけのそれから刃部分を発射するっていうヤバい技を今必死に避けてます。


<コトリ>

強化人間プラスアルファか!?》


<オルトリンデ>

『ちゃうねんコトリちゃん!!!

 コイツ、多分そこの子らと同じはずなんや!!』



 今まで戦っていた、ネオ・なんとかって言うちょっとエスパーでつよつよな人たちが操っていた機体と、


 目の前の高速移動する赤い機体の中身は同じだって、ネオなんとかである僚機のリンちゃんが言っている。




 嘘でしょ?

 動きが、何もかも違う!!




 速さが、速さが特に圧倒的だ!!


 機体の速さじゃない、さっきの子達と判断というか、脳の回転というかそう言う速さが全然違う!!



 私達が狙う前に、エスパー的な感覚でこっちの手を読んで動くのはこれまでと同じ。

 でも気がつけば視界から消えているし、知らない角度からパルスレーザーとかチェーンガンの雨霰がこっちにやってきている!


 強化済みの私達じゃなければ、相手みたいにエスパー的な感覚のあるリンちゃんじゃなければ、

 あるいは火星人の思考速度?ってやつがあるアークさんでなければ、



 多分、数秒で沈められているだけの強さがある。



 もう、この数十秒で危ない橋を何度も渡っているからこそ、みんな理解していた。



 別格。


 コイツは、今までと違う。



<オルトリンデ>

《ちゅーか、今までのも脅威やろ!?》



 リンちゃん心読んで叫ぶ通り、他の3機もやってくる。


 赤い機体に合わせて、あの中量2脚も捨てたシールドの代わりに持ったレーザーブレードを使って切り裂いてくる。


 逆脚アンテナ頭からはスナイパーライフルの弾!

 当然のように、主砲クロスキャノンをぶっ放すガチタン!!



 リミッター解除、限界時間まで残り1分半。


<コトリ>

《『2段』やって!!!》


 ────赤いやつの上空から4倍痛そうなブレードが振り下ろされる。


 ヒナちゃんの指示の小技、アサルトブーストを起動して───間髪入れずもう一回起動する。



 ブースターは、ジェネレーターが電力とは別に生み出すえすぴーなんとかって言う荷電粒子?を噴射してるんだけど、アサルトブーストは噴射というより崩壊とか爆発と言った方が正しいらしい。


 で、一回爆発させたところに間髪入れずにその荷電粒子を供給する────ほんの少しでももう一回アサルトブーストしちゃうと、


 エネルギー消費は1回分に毛が生えた程度なのに、




 ────ドヒャァッッッ!!!!!




 2かける2の4倍の出力が出てしまう。



 2段アサルトブースト。


 ぐえー、にしてもなんだこの恐ろしい衝撃は!?

 強化済みじゃなけりゃ、どっか血とか出てるんじゃない!?


 ま、斬られるって言う結果よりはマシかも。



 ついでだ、スカった相手に左腕を伸ばして、ライフルを1発!!



 ───まさか、降り終わった姿勢のままアサルトターンでこっち向きながらレーザーブレードから光波出すなんて‪……‬!?


 吐くぞそれ、なんて思いながらぶった斬られたライフルの弾を見る私は、運良く気づいてもう一回2段アサルトブーストで相手の斜め右にいた。


 一番近い位置にきた右腕部のレーザースナイパーは流石に相手も避けきれなくて初めて肩に焼け焦げた跡をつけられた。


 浅い‪……‬距離も離されて、もうEシールド減衰も終わっているはず。


 こっちの武器の本当の距離だけど、まぁ当たらん当たらん、相手の赤いのの肩のチェーンガンまで飛んできて避ける羽目になる。


 当然他の機体の攻撃もこっちにくるし、知性を整えた味方3機もあの赤いのに翻弄される。



<ジェーン・ドゥ>

『なんだアイツは‪……‬オルトリンデ、お前以上じゃあないか!?!』



<オルトリンデ>

『へこむこと言うなや元ランク9!!

 ちゅーか、ホノカちゃんとあの数秒張り合えるだけやべー奴やマジで!!』



<アーク>

『なるほど。それなりの力はあるようです。

 認めましょう、あの赤い機体の力。


 今この瞬間から、アレこそが最大の脅威です』



 まったくその通りだ!!

 あの赤い機体‪……‬アレがきてから、後ろの3機の動きもいい。


 なんだろう、本当に、


 あの機体は、それを操る相手は特別な存在‪……‬ってこと!?




           ***



「そうや!セラこそ、今生き残っている9人のシンギュラ・デザインド‪……‬その中でも最高傑作なんですわ」



 クオンと共に外の戦闘を自前のタブレットで見る浅見クルスが、少しだけ安堵したような顔で断言する。



「なるほど。

 だが、単体が強いと言う訳だけでもないな」


 クオンも、外の戦闘をカメラやシンギュラ・デザインド側の機体カメラの映像を、タブレットを密かに火星人の脳の力でハッキングして自分の中で一気に全てを見て感想を漏らしていた。



「生体の位置を探知する生体センサーの原理、

 今じゃeX-Wを始めとしたあらゆる場所で使われているジェネレーターやヴァーディクトドライブから出ている超重元素、『Sp133』は、無害でありながら生物の脳波に反応して僅かな量子的エネルギー波を出しておりますわ。


 これを観測する装置はちょいと特殊ですが、70年前地球から送られてきたネオ・デザインドビーイングの胚に使われていた遺伝子の元となったいくつかの地球の生物は、その装置と同じ機能を自らの脳に備えていた。


 進化の結果だとしたら、すごいもんですわ」


「それをより強化し、ネオはSp133がある場所‪……‬もはや我々がこれまで散々に散布した量からこの惑星全土と言っても過言ではないが、この超重元素の存在する空間の生物の脳波の揺らぎから隠れた生き物の位置を把握できるのは当たり前であり、


 幾つかのネオは、その揺らぎのさらに細やかな変化‪……‬感情、いやもはや思考を読めるレベルにまでなったらしいな」


「リンちゃんとかも参考にしましたわ。

 人間、神様みたいに生き物も子供向けブロックとかプラモみたいに弄れるとならば、そら手前の考えた最強の生き物を作りたくもなりますわ。


 ‪……‬シンギュラ・デザインドはそのネオ以上の精度で読心出来ますわ。


 あの子らに嘘付くのは大変ですわ。

 僕は無理やった」


「そうか‪……‬!

 ネオと同様の感覚で思考を読むと同時に、味方へ作戦をリアルタイムで共有するのか。


 相手がネオでもそのレベルでなければ、無線の会話による共有も無い‪……‬


 言うだけはあるな」



「心が読める。それだけでも強いんやと思いません?

 地球でも、かつては本気でそう言った『超能力兵士』を作ろうとしたらしいと聞いとりますし」



「‪……‬だが、完璧な予知が量子コンピュータが生まれてほぼ不可能と分かったように、


 このままだとまだ油断はできない。

 ほら‪……‬お前が仮想敵とした相手の本当の恐ろしさが見れるぞ?」


「何ですって‪……‬!?」


 クオンは、戦場を見る。


「さて、これでどこまでやれるものか」



           ***


<アーク>

『ジェーン、あなた一度死になさい。

 そして私とあの赤い機体を押さえましょう?』


<ジェーン・ドゥ>

『‪……‬そうか!

 少し待ってくれ』



 何を、と思ったら、パンという音が無線に響く。

 銃声?マジで?



<ジェーン・ドゥ>

《────久々だな。機体に直接乗るのは》


<オルトリンデ>

『は!?おま‪……‬まさかマジで死んだんか!?』


 一瞬、敵の機体が全員止まるのが見えた。

 まさか、マジでコックピットで自害したの!?

 でも何でしゃべって!?


<ジェーン・ドゥ>

《今の私はAI社のPLシステムと同じだ!

 元よりクラウド・ビーイングは電子情報体‪……‬生物の脳とは違いSp133荷電粒子への影響が無い!


 つまり、ネオの感知原理での読心は不可能だ!》


<オルトリンデ>

『たしかに、出来なくも無いけどナマモノよりは精度落ちるわ!』



 また近づいてきた赤い機体を、レーザーライフルで撃つジェーンさんのホワイトゴースト。

 気持ち反応が遅い‪……‬!?



<アーク>

『さて‪……‬では我々は我々の方法であの赤い機体を押さえましょう。



 オルトリンデ、大鳥ホノカ、


 あなた方だけであの3機、やれる物ならやってみなさい?』



 そして、アークさんの4脚機、ローレライだっけ?が赤い機体に向かった瞬間、今度は無線からウギッという変な声が。



<オルトリンデ>

『マジかあの人‪……‬えねげつないわ‪……‬オエッ!』


「リンちゃんどうしたの!?」


<オルトリンデ>

『ごめん、ちょっと吐いちゃったわ、こら。

 流石に、30突っ込むって人間技やないもん』



 な に そ れ ?



<コトリ>

《ダミーデータか!

 昔、戦闘補助システム作る過程で生まれた、機体が勝手に未来予測してパイロット振り回すシステムが出来た時、対処法として考えた手段と同じだなぁ!

 火星人の脳みそは人間より高性能だ‪……‬30個も思考しながら戦闘は可能か》


「なにそれ、すごいことしかわかんない」


<コトリ>

《君には無理な話だよアホっ子》


「‪……‬けどさー、じゃあ考えを消すか考えを増やすかっていう離れ業はできない状況で、」



 ───真上の高速戦闘の下、左右に避けた私達に飛んでくるぶっといプラズマビーム。



 そして、リンちゃんの方にも私の視界にも、


 中量2脚が、逆脚アンテナ頭がやってくる。





「コイツら相手にしなきゃいけない訳だ‪……‬!」




 うわぉ、重労働‪……‬!!





<???>

『───なら、私が手を貸してあげる』



 その時、真上から私たちの目の前の機体達に降り注ぐ銃弾の雨。


 相手が、なぜか反応がちょっと遅れて避けた気がした中、私たちと相手の間に降りたのは‪……‬!



「あ!?」



<???>

『久しぶりね。まぁ名乗ってないから覚えてるかは知らないけど』


 この前の4脚!!

 何故か、私を助けた違法傭兵ブラックスワン



<オルトリンデ>

『ちょい待ちぃ!!

 お前‪……‬まさかそんな!?』


<???>

『!

 ネオなのね。ならその通り。

 私は、そこのプリンシパル達と


 シンギュラ・デザ‪……‬ゴフッ!?』




 リンちゃんが、驚いた声を出して、

 その理由を短く納得いく感じに言ったと思ったら、すごく咳き込む声が通信から聞こえる。



「ちょ、まって!?色々混乱してるけど大丈夫!?」


<???>

『‪……‬‪……‬持って10分‪……‬まぁ、どうせ戦闘は1分かお互いに‪……‬』



 相手が、攻撃してこない。

 何か‪……‬読心とかできないけど、沈黙するだけの理由が、相手にはある。



<広域無線>

『────ルキちゃん、だよね‪……‬?』


 それどころか、初めて広域無線が来た。




<???>

『‪……‬アンジェリカか‪……‬こんな形で再開したら、お互い心を読むだけじゃ‪……‬納得いかないものね‪……‬』



 ルキって言うんだ‪……‬

 この謎の4脚機は、その腕の特徴的な武器‪……‬人の指を銃口にしたようなマシンガンを、無線をつなげた相手に向ける。



<???>→<ルキ>

『でもね‪……‬知っての通り、私はもうあの時死んでいる。

 どのみち、もう死ぬの。

 でも‪……‬その前にやらなければいけないことがある』


<広域無線>

『分かんないよ‪……‬どういうこと‪……‬??』


<ルキ>

『大鳥ホノカ。

 あのクソ女‪……‬あなたにとっては思い出したくも無いでしょうけど、


 『大鳥タマコ』から遺言がある』








 ───────は?







<ルキ>

『今教えても良いけど、上にいる赤い機体のセラはあの二人でも押さえきれないの!!

 ‪……‬‪……‬私は、大鳥ホノカ、あなたの味方にならなきゃいけない理由がある。

 今は戦闘に集中して。死んでほしく無いし、私が死んでも意味がない』





 ‪……‬‪……‬いや、


 いやいやいやいやいや、いや、まって?




<コトリ>

《ホノカちゃん!?聞いてた!?

 返事をして!!ねぇ!!》



「‪……‬‪……‬聞こえてるから、聞いちゃったから‪……‬!!

 混乱‪……‬‪……‬するんだよ‪……‬‪……‬だって、だって‪……‬!!」




 なんで?

 何で今??








 ─────何で今、


 あの顔も知らない母親の名前が出てくる???






           ***

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