[変更済]MISSION 10 :遠洋の鳥、史上最大の翼
傭兵系少女、大鳥ホノカちゃんでーす!
なんだかんだアルゲンタヴィスの脚に迷った挙句、前のアルゲンタヴィスの上半身にフロート脚とか言うちょっと特殊な脚に変えたお手軽新機体『ペラゴルニス』ちゃんが爆誕しました!
で、みんなから「この脚は色々特殊なんでテストした方が良い」という事で、どっかテストできる場所を我らが頼れるオペレーターなアンドロイドちゃんであるカモメちゃんに相談したのだ!
「でしたら、ちょうど良い場所がありますよ?」
「なぬ?」
「ちょうど今は空いているとスケジュールも確認しております。
使用料も20
……てなわけで、
「まさか、アリーナのステージ丸々借りれるなんてなー」
そこは、いつものとは違うけど、ヨークタウンの名前の土地の中の一つ、
アリーナ戦用ステージ……別名『水没都市』だった。
名前の通り、海の間から崩れた橋とかビルが並んでるところだね……足場があんまりにもない。
<カモメ>
『ここのアリーナでの戦いは、水没の危険と常に隣り合わせなので、激しく飛び交うeX-Wの動きに観客には大人気なのですが、おおよそのスワン、とりわけ重量2脚型やタンク脚型の皆様には不人気でして……
よく、訓練などに使用される事の方が多いのです』
<コトリ>
《そりゃ、こんな足場が少ない場所じゃ、まずまともなジェネレーターじゃなかったり、ブースター消費が激しい機体じゃまずまともに戦うのは無理だね。
でも意外だよね、タンク脚のスワンがここ苦手って。
だったら動かず固定砲台すりゃ解決なのにさ》
「確かに、動き回らない方が良いかもねー、この足場。
ビルの上に陣取って撃つって言うなら案外タンクも悪くないかも」
<コトリ>
《装甲に自信を持てないタンク乗りが増えたってことかな……生存の私みたいな逆関節使いでタンク苦手なヤツでもそのぐらいは分かるのに……》
<カモメ>
『やはり、機動兵器は機動せよ、と言う考えが一般的ですからね。
タンク脚でも通常の
そんなことを言ってる間に、ペラゴルニスを吊り下げたいつものカモメちゃんのヘリは、この水没都市の海の上にやってきた。
「海の上ぇ!?
大丈夫なの?」
<コトリ>
《フロート脚は沈まないから大丈夫。
メインシステム、テストモード起動しておくよ》
でも海に上かぁ……なんか怖いなやっぱ。
というか、折り畳んでた例のフロートの翼が広がって、キュワワワワ、って感じのなんか回ってるみたいな音が響き始めてるんだけど……今までと違うね色々!
「本当に大丈夫なんだよね?
このまま落ちちゃって?」
<コトリ>
《…………ふふふふ♪》
<カモメ>
『……うふふ♪』
ん?
何その笑い声??
「ちょっと二人とも、何笑ってんのさ?」
<コトリ>
《後方カメラに映像切り替えて、上を見てごらん?》
上ぇ?
言われて、神経接続越しの網膜投影映像を切り替えてっと…………
「え?」
あれ?
カモメちゃんのヘリと、ペラゴルニス繋がってなくない??
<カモメ>
『黙っていてごめんなさい。
ヒナさんに内緒の通信で……テストモード起動と同時に、既に機体を切り離していたんです』
「え?
ちょっとまって、じゃあなんで落ちてな、」
と、脚に方に意識向けちゃった瞬間、ぐわんとペラゴルニスがちょっとバランスを崩す。
「うぉ……っとと……あれ、落ちない!?」
でも、重力に従って落ちていかない!?
<コトリ>
《びっくりなのはこっちも同じなんだよね。
君、前のタンクの時からあんまりにも普通に動かしてるし黙っておいたけど、私負荷軽減の補正以外してないよ?才能あるね……やっぱ》
「にしてもこの脚……なんか、すごいな!」
ちょっと上手く脚の内臓ブースターを調節して高度を下げて、今度はカモメちゃんのヘリの隣に行く。
なんだろう、2脚の時にあった重力に引かれてる感じが一切ない。
そして、エネルギーゲージの減りが、心なしかちょっとすごい速いし、懐かしい回復の遅さ。
<コトリ>
《戦闘機が脚にくっついてるって表現通りさ。
ちょっと飛んでみなよ、低空飛行とかしながらさ》
「おっけー……ペラゴルニスくん、お願いね!」
じゃあ、早速高度を下げる!
─────今までeX-Wの脚部とは違う、『飛べる』感覚!
いつもの背部ブースト、使ってないのにすごい速さだ……え、速度計みたらもう500km/h越え!?いやまって600!?!
「速っっっや!!!」
海面がすぐ近くに来て、平行になるようちょっとペラゴルニスの向きを変える。
途端、この速さのせいで海面が波打って筋状に跡が残るのがうっすら見える。
多分後ろに続いてるね……あ、カモメちゃんヘリのカメラにデータリンクでつなげたらくっきり見えた!!
<コトリ>
《フロート……やっぱ速いな、時速670キロ!!
……ストライクブースト、してみない?》
「怖いけど、怖いものがみたいな!」
ストライクブースト、起動!
普段は閉めてる背中のハッチが開いて、そこの緊急脱出用らしいブースターが起動!
途端、ペラゴルニスの周りに円錐状の雲ができて、ボンと音がしてそれを破る。
「うわ……強化されてるのにすっごい衝撃来てる!!」
私も機械の身体になって慣れるぐらい経ったけど、それでこんなガタガタ言うの感じるもん!?
<コトリ>
《マッハ1.2!!
この高度で音速超えられるか!!
趣味じゃない脚だけど、この速度はちょっと羨ましいな!!》
でもエネルギー減りが速い!!
ちょっとここでストライクブーストを切る。
何気なしに方向転換したら、まるで空中でドリフトでもするみたいにすごい速さで旋回する。
それも思ったより早く回れて、また元来た道をブーストなしでもすごい速度で戻る。
「エネルギーがちょっと不安だな……今まで使ってた間違いなくすごいジェネレーターなはずのフラウロスでコレなの!?」
<コトリ>
《常にブーストしてるというより、浮かせる為にエネルギー使ってるんだ。
待機エネルギーって言うべき部分がかなり高い。
上半身は低燃費なバーンズ製フレームなのにこれか!!》
「キワモノって意味がわかってきた気がする……!」
ドヒャアッ!
アサルトブーストがいつもより遠く真横へ行く。
速い。とにかく速いし、めちゃくちゃ動き回る。
ブーストも起動したら一瞬で急上昇するし、お空をどこまでも飛べる。
「これ、ロボっていうより戦闘機みたい!」
文字通り、脚が戦闘機になったんだよ。
これがフロートか……!
***
ホノカがペラゴルニスで空と海の上を縦横無尽に駆け巡る姿を、遠くから見る影がいた。
「……大鳥ホノカは、最近タンク脚に乗り換えたと聞いたが、今度はフロートか?
上半身は、見覚えのあるアルゲンタヴィスの物なのですが……」
双眼鏡を除くフィリアが言う隣から、あら、という返事が返ってくる。
「その割には、随分と様になっているわね。
初めてだけど、ここから伸びる動きをしているわ」
隣には、手で少し太陽光を遮るようバイザー代わりに額に当てながら、ペラゴルニスを見るアンネリーゼがいた。
もっとも、
「……ちょっと、ちょっかいでも出そうかしら?」
「……本気ですか?」
フィリアの言葉にふふふと笑って、その場から赤い髪をなびかせながら立ち去るアンネリーゼ。
本気だ、というのは簡単に分かる動きだった。
***
<カモメ>
『ターゲットドローン投下します』
と、産卵するみたいにポンポン下ろされたちっこいプロペラ付きの子供ヘリ───ドローンだっけ?が的を垂らしながら散開し始める。
<コトリ>
『さて、激しく動けるのは分かったね?
今度は、激しく動きながら攻撃して見よう!』
「おっけー!」
散らばるターゲット達の準備オッケーな信号をキャッチして、早速動く!
射程に入った。まずは右腕のスナイパーライフル!
ロックオンと一拍置いて撃つ!
────ちょっと遅れて、外れ!!
<コトリ>
《惜しいな……機体が速すぎて相手との相対速度がいつもと違う!
ちょっと2次ロックが遅れるかも!!》
「動くと当たらないだろって?
でも動いて当てなきゃダメでしょ?」
<コトリ>
《その通り!》
もっかい!速度緩めず……今度はこのタイミングで!!
ターゲットドローンの下の的を見事に命中!!
「当たった……次はこっち!!」
左腕の新しいライフル!!バンビちゃんだっけ?
こっちも一回目は……いや掠った!!
まぐれだなぁ……もう一回旋回して、侵入、撃つ!
今度はど真ん中!!カメラ性能いい頭だからよく見える!
「右腕のスナイパーと同じ距離で当てられるんだ!!」
<コトリ>
《私のO.W.S.製は精度が命!!
バンビラプトルちゃんは普通に射程距離が長めのアサルトライフルだ!!》
じゃあ三つ目は、通り過ぎざまに連射だ!
ターゲットを一文字に見えるぐらい綺麗に弾痕つけてやった!!
<コトリ>
《上手いぞ!
じゃ……次はターゲット達をこうしちゃうか!》
と、ターゲットドローンちゃん達が新しい的を出したと思ったら、今度はその場でランダムに移動を始める!
「急に難易度上げてきた!?」
<コトリ>
《見たいんだよ、君の力をさ》
「……そう言われたら見せちゃうしかないか!」
じゃあまずは、ふわふわ飛んでるヤツ!
うわ……すごい当てづらそう!
一発目。右腕スナイパーライフル……外した。
二発目。同じく。感覚掴んだし、ど真ん中命中!
じゃあ次、すんごいジグザグなヤツ!当然ストライクブーストほどじゃないけどかなり速い速度で突っ込む!!
当たって……ちょっと真ん中より下、スナイパーライフルで命中!!
<コトリ>
《やっぱ射撃のセンスは君凄いとこあるよ!》
「褒められると鼻もスキルも伸びちゃうぞ!」
おっしゃ、3つ目!
狙って─────────
3つ目のターゲットドローンの的に弾丸が当たった。
私のじゃない。狙ってもまだ引き金も引いてない。
「!?」
<カモメ>
『何この熱源は!?
速すぎる、報告が遅れて─────』
目の前を何かの影が横切った。
赤い色。鮮やかな感じじゃない、暗く落ち着いた、ワインみたいな深く暗い赤。
一瞬見えた。
アメンボみたいな4つの脚で、水面を進む機体の姿。
<コトリ>
《eX-W!?
なんで!?どこから!?
いやしかもあのフレーム!!》
後ろ姿から旋回するのが見える。
すんごいシャープで、テレビで見たF1カーみたいなレース用で、早く進むためみたいな上半身、両肩にはインテークって言うんだっけ?なんかジェットエンジンみたいな物がある腕、やっぱりシャープな頭の形。
背中から生えるでっかい銃、右腕にある銃はなんか、ショットガンみたい。
左腕に、まさかの私と同じライフルが握られてて、
それら全部を載せる、4つの脚が水面を切るよう進む。
<コトリ>
《なんて言う機体構成だよ!!
上半身O.W.S.に、下半身はAI社製最速4脚!?
しかも、背中『スラッグ』じゃん!!》
「スラッグって何!?」
<コトリ>
《史上最低最強最悪の言い間違い武器!!
なんか……ヤバいぞあの構成!!》
<カモメ>
『そんな馬鹿な……あれはブラッドハントレス!?
ランク2がなんでここに!?!』
あーもう、相手が素早く迫ってきてる!!
色々一気に起きすぎて、理解追いつかないんですが!?
***
「さて、七面鳥を撃つより楽しいのかしら?
大鳥ホノカ……ただの小鳥か、それとも機体名通りの規格外の大物なのか……ふふふ♪」
愛機ブラッドハントレスの中で、アンネリーゼは不敵に笑う。
「まぁ、ここで死んじゃったら、それまでのつまらない
出来れば、1分は生き残ってね?
まぐれ当たりでも一発当てたら、ちょっとは見直してあげる」
そして、容赦なくその背中のスラッグガンを展開して、ペラゴルニスへぶっ放した。
***
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