[変更済]MISSION 9 :もう脚じゃなくても良い気がしてきた
どうもー、傭兵生活も慣れてきてしまっている感じのする美少女こと、大鳥ホノカです。
今日も今日とて、マッコイ商店に来ています。
「うーーーーーーーーーーーーーーん…………
案外迷うんだよなぁ、脚」
そう、お金も溜まってきたので、そろそろアルゲンタヴィスの脚をね……もう例の1001B脚も入ってこないので、新しくしようかなーとカタログと睨めっこしてるんです。
でもねー、迷うねー脚!
性能、デザイン、色々ある!
色々あるって事は、大変に迷う!!
なんかこう選択肢が多過ぎても困るよねー……オススメがまず無いっていうのもあるしね……
<コトリ>
《カタログばっかじゃ分かんないしさ、前に買ったシミュレーターでパーツをお試しするのも良いんじゃない?》
「それさー、さっきまで鬼畜ゲーみたいな訓練させたコトリちゃんがいうかー?」
ウリウリとその愛くるしい顔いじってやるー。
やーめーろー?やーめーなーいー♪
「あら、でもずっと2脚だけでやっただけではありません?
他の脚も、ワタクシのマッコイ商店には充実な品揃えを確保しておりますのよ?
1001B以外は」
と、ありがたくつめたーい麦茶を持ってきてくれたマッコイさん。
この時期の火星は6ヶ月は夏だから、ありがたいよねー……
「他の脚ねぇ……ティタニスのタンクも色々毛色違うから、ちょっと手を出しにくいかなって」
「タンクも良いですけれども、ワタクシも後ろでシミュレーターを見ていた身として、そしてパーツを売り捌く身としては、やはり他の脚も試してみては良いのではと思いますの。
どうです?ホノカさんはスナイパーな適性がお高いようですし、
狙撃といえば安定性、安定性と言えば4脚。
逃げ足も早く、背中の武器もバランスを崩さず撃てる4脚などどうです?」
<コトリ>
《4脚って、真人間向けじゃん。
強化済みの多い昨今なら、やっぱ逆関節だよ、逆関節。
ホノカちゃんは空中戦適正、鳥だけに高いからさ……逆関節にしようよ、逆関節はいいぞ?
圧倒的ジャンプ力、低燃費でブースターを長く吹かせるし、O.W.S.製だったら積載もいいぞ!》
「安定性は低いですけれども」
《安定なんてものは気合いでなんとでもなるッ!
というか重逆だったらむしろ高いから!!》
「単にコトリちゃんの趣味じゃね、逆関節?」
《そうだよぉ〜?趣味だよぉ〜??
……でも君自身、そういう機体の趣味が無い、ってのは利点だけど欠点だよ。
1001Bずっと使ってたのも、案外タンクを乗りこなしてたのも、本質的に君は得意な脚部が無いってことなんだよ。
逆にいえば、苦手な脚部もないって事だけど》
たしかになー……
強いて言えば、2脚って感じだけど、それもなんかまぁ最初から使ってますからってだけだしなー、私。
だから、いつものが無くなった瞬間にここまで迷うことになる、って感じ?
「うーん…………確かに、ホノカさんは苦手な脚部が無さそうですわよね……
…………ねぇ、でしたら、少しよろしいかしら?」
おぉっと、マッコイさんなんか妙に悪巧みな笑顔じゃない??
「なにその、ある意味メンヘラってる時より怖ーい顔?」
「実は、『お在庫様』になっている脚部パーツがありますの♪
ちょっとで良いので、見てみません?」
お在庫様ぁ?
売れ残りってことじゃんそれぇ。
「なーに売りつける気なんだか……」
《流石に見ないよね?》
「まぁ良いや見るだけ見てみようか」
《君も怖いもの知らずだねぇ……》
「ダメだったら、コトリちゃんの案にするさ」
どうせ、私はビビッとくる脚がないんだ。
脚なんて飾り、っていう気持ちで見せてもらおうじゃん、そのお在庫様の脚部とやらを!
「えぇ……脚ですらない……!!」
そんな私を迎えたのは、
なんというか…………ジェットエンジンの塊というか……翼も生えてるし脚って言う形じゃない何かだった。
いやこれ……戦闘機???
脚パーツ、どこ???
《フロートかー!!
そりゃ在庫になるわ!!》
「コトリちゃん、なにそのコーヒーとかメロンソーダにアイスクリーム乗せたやつみたいなの?」
《フロート脚部見たことあるでしょ、この前のシーサーペント、ほらあのドデカイ自立兵器相手にした時!
フェアリーが付けてたじゃん》
……………………
「だっけ??」
《覚えてないのか》
「他のみんなの印象強すぎるからねー」
そんな足に人いたっけ?
いたようないないようなー……覚えてないよ昔のことはー!
《フロート脚部は、主にエンフィールドラボラトリーが作ってる、だいぶ特殊な脚なんだよ。
他に作ってるのはAI社が一種類のみだね。
コイツはね、最大の特徴は飛べることなんだ》
「……飛べる?」
いや、普通の機体、なんならタンクでも飛べるじゃん。
《eX-Wの根幹の技術にはさ、重力・慣性・磁場その他諸々を何故かある程度操作できる装置『ヴァーディクトドライブ』っていう物がふんだんに使われてるんだけど、》
「なにそれ初耳。ヴァーディクトドライブとかすごい言いにくそう」
《まぁ、その装置本当にあらゆるものに使われててね……原理は省くけど、莫大な電気的エネルギーで簡単に生み出せるからこそ大体の世界の技術の根底に使われてる。
電磁エネルギーを壁にするEシールドにも、エネルギー場を推進力に変えるブースターも、さらにはこの重さで動ける関節の機構から君の脳みそがシェイクされないようにするよう埋め込まれた装置にまでヴァーディクトドライブが使われてる。
で、本題は、このフロート脚部はそれがかなりふんだんに使われてて、eX-Wを常時『浮かせる』事ができる脚部なんだ。
浮くだけならともかく、空も自由に飛べる。
もう戦闘機だ。さすがエンフィールド、『人型にとらわれない』のモットー通りだよ。
しかも、飛ぶ上にから他の脚部に比べてダントツに速い。
軽量2脚でもクソ速いことで有名なフルアヤナミマテリアルフレームでも追い越せるぐらい早い。
それがフロート脚》
「へー……最速の脚部ってこと?フロートって」
ここだけ聞くとすごい脚なんだけど……うん、あれだね?
「じゃあ、なんでお在庫様になってるの?」
絶対、悪い所が相当悪い奴でしょ。
《簡単だよ。
コイツはね……
装甲がもはや空力ブレーキか空力カウルみたいな薄さで、
エネルギー消費は全脚部で最も高く、
その癖積載量は、中量2脚より下で、軽量脚と同じかそれ以下。
脆い、クソ燃費、武器乗らない。
そんな極端な性能のやつ誰が使うか!!》
「それは言い過ぎではありませんの?」
と、コトリちゃん相当ご立腹な様子で、例の在庫様に近づいて可愛いミトンみたいな手でテシテシ叩き始めた!
《コイツ乗るなら逆関節だよね!
圧倒的低燃費!ジャンプ力で空中へ飛んで、ブーストで空を駆ける!!
空中戦と言えば逆関節でしょ!!軽2は許す!!
でもフロートは無しでしょ!
水没したくないとかなら選んでも良いけど、だったらこれの次にエネルギー消費低いしホバー移動もできる4脚で良いから!
私この脚嫌いなんだよ……個人的なお気持ちだけどさ!》
「ですけど、売る側から擁護するなら、旋回性能は逆関節脚より高く4脚並み。
ついでに言えば、4脚と違って空中戦が得意なのは間違い無いですわ、常に空を飛んでいますもの」
《そこがなんか嫌。
使えない訳じゃない余地があるのに、なんか私には使いこなせなかったし》
「…………でも、使うのは私でしょコトリちゃん?」
私の言葉を察してくれた相棒は、スッゴイやっぱり驚いていた。
《正気!?》
「マッコイさん、これ……1001Bの下取りと同じ値段で買えないかな?」
「普段はそういう交渉はしないのですけれども……
まぁ特別に♪」
よし、決まりだ!
使ってみるか、フロートとやら!
改めて、ほったらかしのアルゲンタヴィスの下半身を例のフロート脚とやらに変えてみた。
戦闘機から人の上半身生えてる…………そんな見た目。
「まさか、コイツをお在庫から解放してくれる客が現れるとは驚きっすね……!
エンフィールドラボラトリー製『FFL-5 アルバトロス・エアクラフト』。
フロート脚部じゃ珍しい積載と装甲強化型っすね。
つってもまぁそんなって感じっすけど、気持ち頑丈かなー、乗るかなー、って程度のやつっす。
速度はブースト無しでもクッソ速いんすけど、フロートの中じゃ少し遅い方らしいっす」
《それで重量過多なのか……》
ユナさんの説明と裏腹に、データ上は微妙に積載量って項目の最大重量を超えていた。
「いや、多分左腕にあるトールが元々結構重いっすからね。
これ外したら、ティタニスちゃんに使ってるストーカーミサイル積める上に、なんか軽いライフル積めるんじゃないすか?」
《それもそうだな…………
ホノカちゃん御予算どのぐらいあるっけ?》
「最近は割と真面目にお稼ぎしてたしねー……
ええと……あ、なんだかんだ3万cnか……!!
アレ思ってた2倍稼いでる!」
《トール、バトルライフルとしては優秀だったけど……まぁもう良いよね、ホノカちゃん?
売っちゃえば3万ぐらいだし、これでちょっとお高いけど今後も考えると良いライフルあるんだよ。
それ買おうか。これは私のわがままで買わせてね?》
「なになに、いい感じのヤツ?」
《それは保証する》
と、屈んだマッコイさんになにやら耳打ちするコトリちゃん。
なにが出るのかな……
数分後、こりゃまたあまりにも普通な感じの四角いライフルがアルゲンタヴィスの左腕に乗ってた。
「なんか普通だね!」
《その普通が良いのさ!
これは、私のだーい好きなO.W.S.製のあまりにも手堅くてあり得ないほど使い勝手がいいと評判の、なんとも言い難いけど世間では傑作扱いのアサルトライフル、
その名も『04AR B. feinbergi』。
バンビラプトルの名前持ってるライフルだよ》
「ほー、バンビってなんかかわいいね!
でも可愛いだけじゃないんでしょ、どんな性能なの?」
《呆れるほど、普通!
いやね、O.W.S.的には、結構良い技術投資してるし特に砲身冷却機構も割と特殊なんだけど、
それでも、同タイプ口径のアサルトライフルの中では突出した性能はないかな。
強いて言えば弾道精度の高さから射程距離が長めなのと、連射性能がそこそこあって、弾速の速い。
でも後者二つはまさにアサルトライフルって感じでさー……普通に使える普通に強い武器って感じかな》
「じゃあ、不満はないって感じか。
良いんじゃない?」
という訳で、これで良いか。
下半身が飛行機みたいで、ロボの上半身生えてて、右腕にいつものスナイパーライフル、左腕にその普通のアサルトライフル、右の背中にストーカーっていうぐらいに追いかけてくるミサイル。
ま、これで使ってみてどうかな、って感じ!
「じゃあこれで行くか、アルゲンタヴィス」
《……ねぇホノカちゃん?
これ、アルゲンタヴィスって名前は辞めておかない?》
あらら、急にどうしたのコトリちゃん?
「どうしてまた?」
《私も機体の名付け親だしさ、アルゲンタヴィス……史上最大の最も力強い捕食者だった『アルゲンタヴィス・マグニフィセンス』の名前を、フロートには個人的に付けたくないんだよ。
コイツは、3機目の機体ってことにしてさ、アルゲンタヴィスの名前は、また2脚にする時か、私オススメの逆関節機体に乗りたくなったときとかにまた名付けようよ》
「はー……こだわるねぇ。
まぁそういうなら良いけど、じゃあこのフロートの機体はなんて呼ぶ?」
《良いのがあるよ。
実は、アルゲンタヴィスより大きな鳥は地球に存在していたんだ。
そいつの名前をつける》
え、アルゲンタヴィスって最も大きくて強い鳥って言ってたじゃん??
「なにさそれ?」
《ペラゴルニス・サンデルシ。
新生代最大の翼を持つ、アルゲンタヴィスを超える大きさの鳥。
そして、古代地球の海の上をずっと飛んでたアホウドリみたいなどこかゆったりした印象のある海鳥だよ。
何故か歯みたいな突起が生えてるけど、アルゲンタヴィスよりはなんかおとなしそうなヤツ。
だから、このフロート脚の3つ目の機体は『ペラゴルニス』だ》
「ペラゴルニス……かぁ」
つまり、弱そう、っていう印象なのかコトリちゃんは。
なーんかそう聞くと、ちょっと頼りなさげに見えるぞペラゴルニスちゃん。
《あ!
そうだ、フロートは君も使うの初めてじゃん?
どうせだし、カモメちゃんに頼んで、近くの海で練習しない?》
「え、海の上で?」
《フロートは、海の上と空が主戦場だしさ。
今までのeX-Wと動きが違うから、そうした方が良いよ?
実際に乗ってテストの方が、君も良いじゃん?》
「オイラもお勧めするっすよ、ホノカちゃん。
フロート、結構一筋縄じゃいかない脚なんで」
「確かにそうですわね……
人類生存圏の外の海なんて、インペリアル海軍しかいないでしょうし、今ならそんな海周りの航路進んでいる船も飛行機もいないでしょうし、ワタクシからもそうすると良いと思いますわ」
「……まって?そんなに慣らし運転した方が良い?」
うんうん、と3人はうなづく。
「…………こりゃ、コトリちゃんの嫌う理由、すぐ分かるかもなー」
《後悔は早い方が良いよ?》
……じゃ、そうしますか!!
ペラゴルニスくん、君はどんな機体なんだか……
好みを持って教えてもらおう!!
***
歩行型移動要塞、兼スワンを含めた傭兵が住む街ヨークタウン、
「─────まさか、いつものここに貴女の言う相手がいるとはね」
「はい。彼女はここに住んでいますので」
そこへ、二つの影がやってくる。
「だけど、その相手はAランクになりたての傭兵でしょう?
本当に貴女の言う通り、使える方かしらね?
────ブロイルズ3等尉官騎士さん?」
その片方は、数週間前に現れたあの巨大自立兵器攻略戦に参加した、インペリアル所属の正規兵のeX-W乗りだった。
もっとも、彼女ことフィリアの『目的の人物』は、名前を覚えてもいないだろうが。
「私は、この目で見ました。
自分達の未熟と、あの戦いで最も早く対空網を突破していった彼女を。
そして、
フィリアの隣、赤毛の長いロングヘアの絶世の美女がいた。
上等な服に身を包み、ふぅんとだけ微笑みながら頬にたおやかな指の手を当ててつぶやく。
「アレには驚いたけど、まぁ『別に』って感じだったもの。
だって、私は『ランク2』よ。まぁ、すぐに1になるけれども」
まるでさも当然のように、強気な発言をする彼女。
そう、彼女は……
「流石の自信です、アンネリーゼ・レーヴェンタール殿。
「当たり前よ、違うもの。
私は『イレギュラー』。残念ながら他の
それは、自信というよりはまさに、当然の出来事を語るような口調だった。
「……インペリアルの貴族の中でも歴史ある家系にして、その全ての代で『傭兵』として領民のため、土地の為に戦い、あらゆるもの勝ち取ってきたレーヴェンタール家の、その現当主であらせられる貴女、貴女らしい自己評価だ……決して皮肉ではなく……!」
「ありがとう♪
それで?今度の私達の大義ある作戦のお供に、
その大鳥ホノカって言う新人ちゃんは使えるの?」
その名前を笑いながら言うアンネリーゼに、深く頷くフィリア。
「我が名誉に懸けて、彼女が適任だと推薦します」
「……ふぅん?
興味があるわね、噂になるぐらいだもの。
会ってみたいわ、その子?」
ふふふ、とアンネリーゼは笑う。
「でもできれば、
直接私と戦ってみて、30秒で『潰れない』かどうかは知りたいかしら?」
***
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