[変更済]MISSION 18 :敵は大抵こっちが一番嫌なことをやってくる







 どうも、傭兵スワン系女子の大鳥ホノカです。

 巨大な自立兵器のお尻から内部に侵入したら、よりにもよって今いる部分から前が分離して逃走しました。

 いわゆるトカゲの尻尾切りです。ふざけんな!


「これ逃げたら10万cnカネー無し!?

 ここまできたのに!!」


 私の仕事道具の機動兵器eX-W、愛称はアルゲンタヴィスの頭部カメラが、離れていく巨大な姿を映し出してます。


 マジで逃げる気か!?

 外からは強いけど中からは本当ダメっぽいねこのデカい要塞みたいな列車って感じの奴!!


<オルトリンデ>

『ざけんやないでゴラァ!!

 みすみす逃すわけ無いやろ、10万cnの大金の癖に生意気なんやボケェ!!』


 飛び出す先輩傭兵スワンのオルトリンデさんの機体は、ものすっごいジャンプ力で一気に先頭の巨大自立兵器の所に飛び掛かります。

 いやすっごいジャンプ力じゃん、あのウネウネ脚!?


<コトリ>

《逆関節脚部は、重い癖に低燃費で凄まじいジャンプ力を持つんだ。

 地上から一気に上空に上がって空中戦とトップアタックが出来るからね。

 特にあの関西弁の子、機体フレームが低エネルギー負荷な構成だし、ジャンプ力も滞空性能も相当高い構成だ。

 空の死神スカイヴァルキュリアの名前通りか、まさしく》


 相棒AIのヒナちゃんの解説通り、あの逆関節という脚を前に、ブーストを噴かせて入り口っぽい部分に蹴りを入れる。


<オルトリンデ>

『ノックしてもしもぉぉぉぉし!!!

 いるんは分かっとるんや観念して出てこいやぁ!!』


 へこんだ隔壁に、両腕の銃を乱射。

 カンカン弾かれるけど、衝撃で段々鉄の扉が凹んでいく。



<インペリアル部隊長>

『このまま傭兵スワンだけに任せるな!!

 我々も行くぞ!!』


『『『『『了解!!』』』』』』


 と、ここでインペリアルのみなさん出撃!!

 軽そうな機体だけあって空を飛びながらライフルを隔壁に当てていく!!


<レッドセクション6>

『これならば、行ける!!』


<レッドセクション3>

『このまま壊すぞ!!』


 そして、ようやく隔壁が破壊されるって時だった。




<オルトリンデ>

『─────!?!』


 突然、スカイヴァルキュリアが距離を離す。


<レッドセクション5>

『どうした傭兵スワン!?突撃は間近だ!!』


<オルトリンデ>

『あかん!!

 こんなもん隠しよってたんか!?』



 切羽詰まったような声と、隔壁に殺到していたインペリアルの皆さんが一瞬止まる。



 そのあまりに良いタイミングで、隔壁が内側から吹き飛ばされた。


 吹き飛んだ鉄の破片が、あまりの速さか、それとも機体のEシールドが弱かったのか、コア部分をスッパリと切ってた。


 一気に3機か‪!?

 あまりにも『即死』が似合う姿で、真下の海に落ちる6つぐらいの破片‪……‬何増えてるんだよっていうのは察して?


「何が‪……‬!?」


 直後、ズドンと言う音で今度は別のインペリアルの機体がこっちの切り離された方の自立兵器の内部の反対側の壁にぶつけられる。


<レッドセクション5>

『ガッ‪……‬‪……‬』


 機体のあちこちから火花を散らして‪……‬まだ原型をとどめているとはいえ、倒れこんで動かなくなる。


「何今の‪……‬こんなあっさり死ぬ普通‪……‬!?」


<コトリ>

《ぐ、グレネード‪……‬!!

 対戦車榴弾HEATの究極、当たったら死ぬやばい武器‪……‬!》


「コトリちゃん、いつもの難しい言葉が必要ないって、相当やばい武器って事だよね?おバカの私の予想当たってるよね?」



<オルトリンデ>

『なんちゅー事や‪……‬アレは卑怯やろ‪……‬!!』



 開いた隔壁から、向こうの先頭部分の隔壁を見る。




 それは、もうそうとしか表現できないぐらいの、


 ────『戦車タンク』だった。


 重厚なキャタピラの脚、自立兵器っぽいぎょろりとした目を持つ胴体、四角くて分厚い頭に同じく四角く分厚くて太い腕。


 構える二つの腕の武器は、おんなじようなデザインの硬そうで何より強そうな大砲じみた巨大な筒を持つ武器。


 何が怖いって、両肩にあるのはそんなぶっとい筒が2本ぐらい束ねられた物がこっちを向いている。



 それは『戦車タンク』だった。

 比喩でも何でも無い‪……‬ガッチガチに堅そうな重装甲のタンク型。

 自立兵器というべきか、eX-Wというべきか、それは知らない。


 けど‪……‬‪……‬それは『戦車タンク』なのは確実だった。






<オルトリンデ>

『クソ狭空間にガチタングレオンアセンは卑怯やろ!?!』




 うん、私知識ないけどあれはヤバいって見りゃわかるよ先輩!



<コトリ>

《うっっっっわ!!!

 やりやがった自立兵器の奴ら‪……‬!!

 こっちのコピーする敵とかやるならせめて二脚にしてよ‪……‬ガチタンはダメだよ、そんな狭い場所で‪……‬ひたすら嫌だー‪……‬》


「何かやばいっていうのは分かるけど、何がどうやばいのアレ‪……‬?」


<コトリ>

《ガチタン、ガチガチに装甲固めた重武装なタンク脚構成アセン

 機動力は無視して、バカみたいな硬さで耐えて地獄の業火みたいな火力で戦う、機動兵器eX-Wの特性を全てかなぐり捨てた代わりに得た強さの塊みたいなもの。


 回避なんてしなくて良い‪……‬思い切りとデメリットを許容した、クソ強テンプレアセンの一つだよ。


 でもこれが例えば、運動性能活かして背中に張り付いてブレードとか、レーザー撃つと手も足も出ないって言う弱点のガチタンが‪……‬


 あんな狭いところにいて、唯一の入り口で、火力ある武器構えてるって考えてみて?》



「強い強くない以前にそれ‪……‬

 友達になりたくない性格の悪さじゃんか!」



 なーんか‪……‬せこい!!

 ひたすらせこいし‪……‬こっちも手の足が出ない感じなのがムカつく!!




<キリィ>

『ケツの穴ぁ狭いヤツじゃのぉ!?

 クソ‪……‬突っ込んでとっつくにも入り口狭すぎじゃ!』


<エーネ>

『───持ってきて良かったな、コレ』


 と、突然エーネちゃんの乗るキュアフル・ウィッシュの背中の、長いなんかのキャノンが折り畳まれた状態から前へ伸びる。


 そして、バシュウと凄まじい光の線が、あのクソ狭い入り口に鎮座する相手へ叩き込まれる。


<コトリ>

《『ブリュンヒルデ HLC-5G』!

 レイシュトローム製ハイレーザーキャノンの決定版か!

 タンク相手にはやっぱレーザーがいいね!!》


「なんか今まで見たレーザーの中でも一番ぶっといかも!!」


<コトリ>

《『ハイ』レーザーだからね。

 アルゲンタヴィスの実防重視のフレームとか、アイツも簡単に溶けるよ?》


 おぉ、じゃあなら勝てるかな!?


 だけど、そんな考えを粉砕するよう、直後この場所に向かって飛んできたグレネードとかが大爆発!


 遮蔽物がわりに隠れるけど、入り口のあたりがそりゃもう、なんかすっごいへこんで真っ黒に煤けてて‪……‬!


<エーネ>

『やっちゃった‪……‬!』


 そして、

 なんと運悪く、キュアフル・ウィッシュの持ってたガチタンの天敵のハイレーザーキャノンが、直撃か爆風かで綺麗に破壊されちゃってた。


「レーザー売るんじゃなかったな‪……‬」


<コトリ>

《予想できないでしょこんなの。

 とはいえ、あまり機体を入り口から出さないほうがいいよ。

 グレネード相手じゃ、実防高めのこの機体でもマッハで色々削られる》


「でもどうする?

 待ってても、離れてくだけだよ?」


 射程距離内ではあるっぽいけど、ちょっと先頭の自立兵器が遠くなっていく。


「確認するけど、あの中に突っ込んで、中を破壊して終わりなんだっけ?」


<スノウウィンド>

『スキャン終了。

 あのガチタンの背後に、先頭部分の動力源があります。

 そこを破壊すれば、この自立兵器は止まります』


「‪……‬‪……‬」


 さて、つまりはあの文字通り壁となって立ち塞がるガチタンを纏う自立兵器を突破しないといけないわけだ。


 じゃないとミッションは失敗。住んでる場所は地獄になるし、お金も手に入らない。


 特にお金が手に入らないのはきつい。


 ここまできて、けっこう嫌な思いも面倒臭いこともして、そうまでしたのに報酬なしは非常に嫌だ。

 傭兵やめるための500万が遠のくだけじゃないのが、余計に嫌だ。

 あーあ、こんな目に遭っても10万か。

 こんな目に遭う任務を50回こなす必要があるってだけで、辞めたい気持ちがどんどん出てくる。



<サージェント・トルペード>

『だぁー!!まどろっこしいんだよクソガチタン!!

 そんなクソ狭いところに陣取るぐらいなら出てこいやぁ!!じゃなきゃ私のロケットとかで焼けて死ね!!』


 と、ブチギレたご様子のトルペードさんが、ボボボボと私の肩のと同じロケットをぶっ放し続ける。


 当たってはいるけど相手は不動。

 ただ受け止めて、そしてまたグレネードを一発。


<サージェント・トルペード>

『うぎゃー!?!』


 トルペードさんの機体に直撃。爆風がすごいもんだから、こっちも少しダメージ食らう。


<サージェント・トルペード>

『うぅ‪……‬何でよ‪……‬私ってeX-W戦勝てない‪……‬呪いでもあるわけぇ‪……‬ガクッ』


<キリィ>

『トルペードのあねさん!!

 ‪……‬クソが!!敵討ちにも出てこない引きこもり相手にどうすりゃ良いんじゃ!!

 墓前報告できのうなるんは嫌じゃけぇ!』


<サージェント・トルペード>

『死んでません』


<エーネ>

『あれだけ撃ってもあのタンクは無傷なんですか?』


<サージェント・トルペード>

『そして無視か!?』


<インペリアル部隊長>

『死なないはずがあるか!集中砲火すれば必ず‪……‬!』


 ‪……‬ごめんねトルペードさん。悲しいだろうけどそういう事態だし無視の方向で‪……‬



<コトリ>

『この数の総火力でも、そうそう落ちない気がするなぁ‪……‬

 レーザーも焼き切る前に耐えてグレネードで殺すアセンだ。

 しかもそろそろここ出て行かないと、射程外』



 うわぁ‪……‬


 相手は、強いっちゃ強いけど、強さ全て全部嫌がらせに使ってくるのか‪……‬!


<インペリアル部隊長>

『海上で戦うにも、射線の都合上相手のグレネードの前で戦うしかない。

 覚悟を決めるしかないか‪……‬?』


「‪……‬‪……‬あの、全員答えられたらで良いんですけど、変な事一個聞いて良いですか?」


 ところで、一個だけ私は確認したいことがあるんだ。


<オルトリンデ>

『この際笑えん話でもええわ。

 何やねん?言うてみぃ?』


「‪……‬‪……‬あのタンク、幅広いっちゃ広いんですけど、あの右上とかの隙間から奥の自立兵器の動力源狙撃ってできません?」


 なんとなく、いや無理だろとは思うけど聞いてみる。


<キリィ>

『あー、分かるのう、できそうじゃしのう‪……‬

 じゃけん、あれもeX-Wじゃ。Eシールドがある。

 それに阻まれてしまうの‪……‬ハイレーザーでも一層目が限界じゃ』



 ですよn


<オルトリンデ>

『いや待ちぃ。

 それや。もうそれしかないわ』


 ‪……‬え?


<オルトリンデ>

『考えてもみぃ、タンクは本体装甲硬いけど、Eシールド出力はあの手脚頭じゃ、むしろウチらの機体より微妙に下程度や。

 おいクソ妖精フェアリー!!

 あのタンク、Eシールドの動力源は本体依存か?

 まさか先頭のあのデカブツと直結やないよな?』


<スノウウィンド>

『スキャン結果によれば、若干コアがわりの自立兵器の影響でEシールドが想定より高いですが、本体依存は間違いありません』



<オルトリンデ>

『なら、いけるで。

 ええか、特に発案者のホノカちゃーん?

 今からやるやつは、作戦というにはあまりにもゴリ押し、言ってしまえばどこまでeX-Wで曲芸ができるかが勝負や!

 耳かっぽじってよく聞き?自分もやるんやで!』



 ‪……‬いったい、私は何を言って、何をすることになったの‪……‬?



<オルトリンデ>

『まず初めや、コレが一番危険やけど、

 近づいてブラストアーマーぶっ放す。

 相手はガチタンや、一発程度じゃビクとしかせぇへんやろうけど、これで少しでもダメージ入れた上で、Eシールドをしばらく消し飛ばす!』


 あぁ!

 その手があった‪……‬!


<インペリアル部隊長>

『無茶だ!Eシールドを消し飛ばせても、こちらのEシールドを使うブラストアーマーでは、無防備なのは同じ条件だ!!』


<オルトリンデ>

『な、危険やろ?

 でも次の危険は、そのままコイツの正面に行ってロックオンしないでフルマニュアル照準でコイツの背後を撃ちまくることや』


 うわ‪……‬!

 ひょっとして、私とんでもない事言っちゃった?


<オルトリンデ>

『Eシールド再展開まで時間かかるはずや

 その間目の前で蚊ぁみたいにぐるぐる回ってグレネードの射線を避けながら、背後にしこたま弾をぶち込むんや。

 再展開したらもう一発、同じことの繰り返しや。


 コレしか今はないで‪……‬もう距離もだんだん離れてきたやろ!』



 いやらしいことにアイツは、一切攻撃してこない。

 こっちが色々考えてる間、悠々と距離が離れるのを待っている。


 この野郎‪……‬任務抜きでコイツに一発くれたくなってきた!!


<インペリアル部隊長>

『‪……‬ひとつだけ、作戦を変更させてくれ』


 と、そこでそんな声を上げるインペリアルの隊長さん。


<オルトリンデ>

『なんやこんな時に!?』


<インペリアル部隊長>

『最初のブラストアーマーは私がやる。

 最初が一番危険だ‪……‬せっかくEシールドを減衰させても、続いて攻撃するタイミングがシビアすぎる。



 傭兵スワン達、あとは頼めるな?』




 ───まさに、『こんな時だからこそ』な言葉が出た。


<オルトリンデ>

『‪……‬正気か?』


<インペリアル部隊長>

『‪……‬‪……‬遺書があるんだ。一応のつもりだったが‪……‬

 故郷のヨークタウンの端の、あの広がった移動要塞が見える芋畑の家に、誰か届けてくれ。

 ‪……‬‪……‬‪……‬ダメだな、言い出しっぺのくせに‪……‬故郷の芋が食べたい‪……‬揚げて、ケチャップとマヨネーズ‪……‬全部自家製なんだ‪……‬たまに面倒になって、電子レンジで温めた後バターと塩を降っておやつにしていたあの芋がな‪……‬』


 辞めなよ、なんて言えない。

 誰よりもそれを分かっているのか、隊長さんの機体が一歩前に進む。


<インペリアル部隊長>

『行くか』


 そして、




<レッドセクション7>

『隊長。遺書は私のを届けてくださいね』




 その背後から隊長機を突き飛ばして、別のインペリアルの人の機体が飛び出す。


「!?」



<レッドセクション7>

『よく見ておくんだな傭兵スワン!!

 我々の誉れを!!』


 ストライクブーストを起動、一気に距離を詰める。

 当然来るグレネード。

 爆発で右腕が落ちる。



<インペリアル部隊長>

『テレサ!!』



<レッドセクション7>

『インペリアル万歳!!』


 隔壁のすぐ下、光った機体からボォンと光が爆発したみたいな衝撃波が、ブラストアーマーが放たれた。


<インペリアル部隊長>

『‪……‬!!

 ‪……‬‪……‬馬鹿者が‪……‬!!』



<オルトリンデ>

『ッ、ぼさっとすんな!!

 撃てぇ!!』



 言われなくても!!

 私たちも、外に出て銃をぶっ放す!!


 ごめん、名前も知らなかった人。

 あなたの屍を超えて、生きて帰るよ!!



           ***

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