[変更済]MISSION 17 :大海鳥と恐鳥





 傭兵系美少女、大鳥ホノカちゃん!


 諸事情で私抜きで私のガチタン機体「ティタニス」を操る相棒のAIであるコトリちゃんのために!


 コトリちゃんがおすすめしたもう一個の無人操縦及び有人操縦補助AIウェザーリポーターの子、


 命名「イオ」ちゃんと共に、もう一個の機体ペラゴルニスで文字通り飛んでいくよ!!




<イオ>

《敵レーザー砲台型アタッカーサテライトの解析を終了。

 敵砲台は要塞級の装甲を持ちながら、内部独立動力を有し自律行動で攻撃をしています。

 機動力もさることながら防御力が高く危険です!》



「早速、『強すぎてヤバい』ってことしか教えてくれないとは!!」



 シビアだねぇ、コトリちゃんオススメらしいよ!


 だけど、だからこそあんなバカスカ撃ちながらドヒャドヒャ動く変な兵器にコトリちゃんはやらせない!


 修理費は相手持ちでも、パーツは有限なんだぞ!!



 まずは一個め。

 ペラゴルニスの背中のチェーンガンを放つ。

 目でもついているみたいに左へ動く空飛ぶレーザー砲台に、合わせてこっちも左にアサルトブースト。


 真正面から、ペラゴルニスの武器腕速射砲をぶっ放す。


 ズドン!


 前にこの手の相手の倒し方を聞いた時にコトリちゃんが言ってた通り、攻撃する部分は装甲が薄いから脆い!

 まずいは一機、爆発しながら落ちていく。



<イオ>

《すごいお上手です!

 残り5機!!》


「でも回避しないと!!」


 前へアサルトブーストした瞬間、さっきまでいた位置にレーザーが降り注ぐ。


 ペラゴルニスの速度なら!フロートの空中起動なら避け切れる!!


 右に左に、お尻フリフリジグザグ飛んで!!



「コトリちゃん聞こえる!?

 上は任せて!!」



 避けながら、下で戦うティタニスに視線をつい向けながら、私は無線で叫んだ。



           ***


《案外、もっと寂しくなるかなって思ったけど、

 私抜きで戦えるようになった君が頼もしいな!!》



 何度目かわからない、あの回転攻撃をする移動要塞。

 しかし、側転するカニを避けたティタニスを90度回転させたコトリは、そのまま通り過ぎ様にプラズマと75mm弾を叩き込んだ。


 回転が止まり、着地したカニのような身体から爆発と火花が散る移動要塞。



《ワンパターンなんだよ、自立兵器。

 アタッカーサテライトさえ無ければ、3分クッキングなんてお手のものさ!》


 振り返り、怒りでも見せるかのように地面へハサミを叩きつける移動要塞。


《来いよカニちゃん。下処理は終わったからサッと火を通してお皿に盛り付けてやる!》


 その言葉に反応した訳ではないだろうが、移動要塞はその巨大なハサミにレーザー刃を纏わせて、体の前で構えて突撃し始める。



《よしよし良い子だ‪……‬》


 その時、コトリがとった行動は‪……‬『動かない』だった!




          ***


「いい加減うざったいなこんにゃろー!」


 ほっ!はっ!!避けるのに必死!


 一機壊したぐらいで私のペラゴルニスに群がる空飛ぶレーザー砲台たちがうざったい!!

 曲芸飛行なんてやると思わなかった!!


<イオ>

《そのまま避け続けて!!

 そして高度を下げてくださいね!!》


「本当にやる気!?」



 まぁ、それも新しい相棒のAIのイオちゃんの指示だけど!!



<イオ>

《タイミングを合わせてくださいね?

 カウント、5》


 しかも、目標も見えてきた!

 戦闘機みたいな形のフロート脚の通り、機体を右に左に傾けゆらゆら!!

 運動性能?ってやつを生かして、もう目的地!



<イオ>

《2、1、急速上昇!反転!!》


「────ウグッ‪……‬!」



 すんごい押しつけられる感じと共に、重力が上下で入れ替わる。

 ペラゴルニスが逆さまになって後ろを向いた視線の先に、過去位置に向かってレーザーを同時斉射する砲台が見える。


 逆さまのまま両腕の速射砲を発射!!

 速射砲で弱点でもあるレーザー発射口をバンバン撃ち抜け!!!


 これで3機、急所に当たって爆発!残り2機!!


 何よりも、アイツらは予定通りの場所に砲撃してくれたのも、クルリと華麗に回って戻った視界で分かった!!



「ぐ────フフン、どうよコトリちゃん!」




           ***


 一歩も動かないコトリ。

 レーザー刃を展開したハサミを前に向けて突撃する、カニ型巨大移動要塞。



《タイミングバッチリだ。

 ま、アホっ子じゃなくて、新人AIちゃんのおかげだから調子乗んな!》



 バシュゥゥゥゥゥ!!


 移動要塞の左脚部達を貫く、死角からのレーザー照射。


 空気を切る音と共に、その上空を宙返りするペラゴルニスが通り過ぎる。


 崩れ落ちる。移動要塞の片方の脚たちが、破損しバランスを崩す。

 その瞬間、ヒナはティタニスのストライクブースを起動した。

 崩れた側のハサミで踏みとどまる移動要塞、その頭に当たる丸いセンサーユニットに、



《ブーストチャージだ!!》



 ガスンッ!!



 ティタニスの総質量が、綺麗に叩き込まれた。

 亜音速のガチタンがぶつかった衝撃で、まるでアッパーカットを食らったように身体が浮き上がる移動要塞。



《この距離でやることは一つさ!

 全弾持ってけぇッ!!!》


 その空いた本体に、プラズマキャノン、バトルライフルの75mm弾、そして背中のダブルガトリングキャノンを叩き込んでいく。


 ガチタンと言われる所以であるティタニスの全ての火力を容赦なく叩き込む。



          ***



 残り2機が、バカなことに地上のコトリちゃん操縦ティタニスを狙うのが見えた。


 こっちに攻撃が来ないって分かったら大胆に動けるさ!

 また曲芸飛行だ!ペラゴルニスを大旋回させて、斜め前から砲台に速射砲を叩き込む。


 こんな動きしても、強化済みなのでGとか平気!


「ぐぁ‪……‬!」


 ごめん嘘、結構すごいなんか前からのしかかる感じ!!

 でもコトリちゃん毎回思うけどありがとう!

 死んでなきゃそれでヨシ!!


 そして残り1機。


 ようやく、すぐにカニを捌いちゃいそうなコトリちゃんティタニスじゃなくてこっちを見る。


 レーザーのチャージが見て分かる。

 こちらは旋回中。砲撃は‪まだ……‬なんてね!!


 ペラゴルニスの武器腕は、『固定砲台』なんかじゃない!

 左腕だけ向けて、発射!!


 神経接続と、イオちゃんAI補正通りにチャージ中のレーザー砲台に命中!


 最後の浮遊砲台を破壊して、華麗にペラゴルニスはクルリと一回転して飛び去るのでした。



<イオ>

《全目標の撃破を確認。

 ‪……‬あのー、このままだと、作戦エリア外、すぐなんじゃないかなーって?》


「おっと、調子に乗りすぎた!!」



 ペラゴルニスの速度忘れてた!


 Uターン!!


 またコトリちゃんに馬鹿にされる‪……‬




          ***



《調子乗んな!》


「いてっ」


 ペラゴルニスで危うくどこいくねーんしかけた私を待っていたのは、予想通りのコトリちゃんチョップでした。


 とりあえず、カモメちゃんのいつものヘリコプターも一緒に降りて、ティタニスの集中砲火でやられたヘンなカニメカの近くに集まってます。


「ごめんて‪……‬」


《まったく、勝って兜の緒を閉めろって日本語知ってる?

 まぁ、そこの新兵器ちゃん‪……‬まさかの『イオ』ちゃんと名付けられた子がいなきゃそのままよその戦闘に巻き込まれてたんだからね、未熟者め》


 いやー反省してまーす。テチテチ叩かれるのも仕方ないや‪……‬


「本当ごめんてー。

 イオちゃんもごめんて」


《あのー、こ、コトリちゃん?そこら辺で許してあげません??》


 と、ちょっとロングヘア風の頭の形の、白い色のウェザーリポーターな30cmデフォルメロボなイオちゃん、とても優しい提案をする。


《ま、ここら辺で勘弁してあげようか。

 助かったよ相棒》


「良いってことだよ。調子乗っちゃったけど」


《たしかに調子は乗ってましたねー》


《この子すぐ調子乗る子だから厳し目に行こうね、イオちゃん》


 ひでー!

 でも言い訳できなーい!!


 早速イオちゃんにもそんな私の事を教えられてしまうし‪……‬てか仲良いね。同じウェザーリポーターだから?


「‪……‬むむむ、案外可愛いなウェザーリポーター。

 ありすちゃんも買っちゃおうかな?」


《わー、いきなりのツンツンおやめくださいー》


《しかも私もか。ツンツンやめー》


 ありすちゃん、それ私のー。


「もー、買いたいなら自分のやつ選んでからツンツンしようねー。ツンツン」


《そっちもかーい》《やーめーてー》



 ははは、憎たらしい言動も結構可愛いのだよ君らは。

 戦闘後ぐらいは良いじゃん。ねー?


「‪……‬あのー、すみません」


 と、そこでカモメちゃんがふと私達を呼びかける。


「何?救援要請?」


「いえ、でしたらコトリさん達をツンツンさせる暇はありません。ツンツン」


《君もかい!

 まぁもうこの際1億歩譲るけど、あの人野放しでいいのかいってことかい?》



 と、ツンツンされまくるコトリちゃんの指す先には、降り立ったペラゴルニスを見上げる例の皇帝さんがいる。


「‪……‬乗っ取られた所で、まともに飛ばせるかな?

 フロート、私が平気だったってだけで、コトリちゃんの言う通り難物な機体でしょ?」


《‪……‬でも、なんだか穏やかじゃない顔で見てるじゃないか。いいの?》


 言われてみればそうだけど‪……‬なんか、険しい目つきでペラゴルニスと‪……‬ティタニスを見比べている。


 いや、カモメちゃんのヘリもか。



「‪……‬盗む気なら、金払いなよ!」


 とりあえず、便宜上全部私の私物なんで、そう声をかけて近づくのだった。


「‪……‬‪……‬オレたちは、所詮は機械に改造しやすい生き物に乗っているだけだ。

 これが全て工業技術の塊というのが恐ろしい」


 と、カモメちゃんのヘリを見回しながら、皇帝さんは険しい顔のままそう言う。


「それもそれですごいと思うけどね」


「すごいのは、そこのに殺された死装魔竜の元になった湖に住む魔獣だ。

 ‪……‬‪……‬お前たち、アイツの吐く熱線が何か知った上で対処して戦っていたな?」


 それ見抜くんだ。

 いや、知ってたのは緋那ちゃんだけど、簡単な特性ぐらいはすぐに聞いて理解したし。


「‪……‬あるんだな?そして、それ自体量産もされている。

 そうだろう?」


《御明察だよ、皇帝陛下。

 そもそも、あの生物がどうやってかは知らないけど、吐いている荷電粒子ビームの元になっている物は、そこのeX-Wは常に生産しているし、

 ブースター‪……‬移動に使う推進器の推進剤みたいな扱いで使っているんだ》


「‪……‬‪……‬そうか」



 その、重たくてどこか悔しさを感じる「そうか」には、

 なんだか私は‪……‬‪……‬絶望的な『納得』の意思の方を強く感じていた。



「‪……‬‪……‬我が兄、ムルロア・ヘーリクスとの『兄弟喧嘩』程度で収まれば、我がレプリケイター達は幸せなままある日突然の滅びを迎えられたかもしれないな‪……‬」


「‪……‬というと?」


「‪……‬‪……‬ところで、戦況はどうなっている?」


 ふと、そう尋ねられた。

 私は知らないから、目配せで我らが頼れるオペレーターのカモメちゃんに問いかける。



「‪……‬‪……‬突然現れた、敵自立兵器の‪……‬いえもう『クラウド・ビーイング』と呼ぶべきですか。

 彼らの移動要塞は、ここだけではありません。


 蒼鉄王国と、おそらく赤鋼帝国の領土内にも同時に侵攻していた模様です」



「なんだと!?」


 初耳!いやこんだけ手こずってりゃそうもなるか!!


「蒼鉄王国には、インペリアルのeX-W部隊が急行し、かろうじて首都直前で全進行勢力を倒し切りました。


 この戦場は、各傭兵並びに両国軍の尽力で、なんとか殲滅を確認」


「我が国は!?どうなっているか分かるか!?

 オレの息子は!?ウォーロフは無事なのか!?!」


 と、カモメちゃんの肩を掴んで揺すって動揺して尋ねる皇帝陛下。


 でも実際どうなの!?

 私達‪……‬そこまで手が回らないんじゃ‪……‬?



「‪……‬‪……‬こういう言い方は、したくはないですが、」


 カモメちゃんは、至って冷静にそう切り出す。

 まさか‪……‬私もつい、皇帝さんみたいに恐怖で顔が引き攣る。





「─────こんなことも、あろうかと、」



 だけど、出てきた言葉は意外なもの。


「我々は、援軍を頼んでおりましたのですが、間に合ったようです。

 まぁ、蒼鉄王国との関係もありましたが、緊急事態ということで、彼女に役立ってもらいました」


「援軍!?誰なのカモメちゃん!?」





オートマティックAインダストリアルICEO、

 トラスト理事会の一人、そして傭兵スワンランク1の新美クオン氏です」







          ***


 ドシィン!


 倒れる巨大な移動要塞のカニのような身体。

 続いて落ちてくる浮遊型砲台。



「まったく、来て早々傭兵の仕事か。

 恨むぞ、ダレル・グウィンドリン坊や」



 全身AI社製中量2脚フレーム『AIE-02 ブリザードフレーム』で構成された白と青の機体『フォックスファイア』の中で、ため息混じりにクオンは言うのだった。



「まぁ良いか。

 形は違えど、心ある者を守るのは良い気分だ。

 血塗られた仕事をする身でもな」



 その後ろにいる、赤い肌を持つ3つ目に多腕の女性型生命体───レプリケイターの、まだ幼い子を抱いて守る親達を見ながら、少しだけ微笑むのだった。




          ***






 クオンさんが!?

 直接見たことないけど、ランク1ってことは最強のスワンってことじゃん!



「無事なのか!?」


「首都まで残り2kmだそうです。

 全機撃破‪……‬ランク1の名前は伊達じゃありませんね」


「すげー!クオンさんそんな強いんだ!」


 はー、と明らかに安堵する皇帝さん。

 良かった‪……‬いや、私達その人らに攻め込む側だったけど‪……‬それでも身勝手になんか良かったって思える。


「‪……‬感謝する」


「‪……‬本人は、きっと『仕事だから』と言うのでしょうね」


「‪……‬‪……‬だが、やはりもはや『兄弟喧嘩』をしている場合ではないな。

 兄はまぁ仕方ないだろうが、蒼鉄の政治屋どもに『どの面下げて』と思われるのは仕方ないが、よし決めたぞ!!」


 と、元の大声に戻る皇帝さん。


「無線を貸せ!お前らの仲間にオレの国の軍に会ってオレの声を届けろ!


 戦闘は停止だ。オレこと赤鋼帝国皇帝、ムルロア・ゼノバシアの名の下に、一切の戦闘を停止する!!


 そして、オレを兄上の元に連れて行け!!

 停戦協定の提案と、和平を申し込む。

 交渉の席を設けろ。もちろん、お前たちの上の人間を呼んでな?」



 おー‪……‬なんかすごいことに。


「わかりました。

 ‪……‬すでに音声チャンネルはつなげてありますので、我々インペリアル・トラスト複合部隊はすぐにでも」


「‪話が早いな。いいぞ。

 流石に慎重な蒼鉄の政治屋どもも動くだろうよ。

 ‪……‬‪……‬もはや、歴史はここで変わ────」


 バコン!


 突然そんな音が響いて、みんなそっちを見る。


 あのカニメカの頭あたり、丸い目っぽい部分の一部が開いて、誰かがドサリと落ちてきた。




「う‪……‬‪……‬」



「誰か倒れてる!?」


「あーっ!?お前は!!!」



《いやちょっと待ってこの顔、まさかオーグリス・シリーズ!?!》



 倒れる小さな影は、白い髪の女の子だった。

 落ちた衝撃で動けないまま、なんとかこちらを見てうめいている。



「コイツだ!我が帝国が生まれた事件の首謀者、いや蒼鉄王国の始まりにも関わっているあの悪魔は!!」


「なんだって!?」



 こんなちっちゃい子が!?

 なんか重要な人なの!?!




          ***

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