MISSION 8 : 火星の剣士達
突き、突き、連続で突き。
早く、とにかく、何がなんでも何もさせないために。
───落ちてきた落雷、いや刃。
雨の様な連続の突きを一撃で書き消す『
「チィィィィッ!?!?!」
裏社会で名の通る『剣士』でもあるカリーナ・ピエラントーニの、決して強化済みの身体だからというだけではない重さと殺意の乗ったレイピア型高周波ブレードによる連続突き。
場所を角度を、タイミングを変えたそれを、
「キェェェェェェェェェェェェイッッ!!」
生身の身体のままにはずの、
「どんなパワーですのよテメェはァッ!?!」
細いとはいえ特注のブレードを叩き折った『雲耀』には、流石にそう叫ぶしかない。
───カリーナ・ピエラントーニは、裏社会のいわゆるマフィア的武装組織に属する傍ら、そこそこ財力のある家ゆえに趣味として西洋剣術を独自に研究している。
それゆえに、いわゆる日本の剣術を主体とし、表の社会で幅を利かせている『剣機道』の面々を大変疎ましく思っていた。
だが何より疎ましく思っていたのは、その『剣機道』の持つ技そのものだった。
目の前で振るってくる薬丸自顕流、いや薬丸家伝『野太刀自顕流』の技、片手間で勉強して知った伝聞通りだ。
地球から伝わった西洋剣術は当然というか失伝した場所が多く、勉強が嫌いで喧嘩に明け暮れた自分が『真面目こいて』探しても無い技や憶測でやるしか無い部分が多い。
今は比較的伝わっているレイピアで来ているが、どうせならロングソード型の高周波ブレード……いやいっそ、相手の技に合わせてバスタードソードぐらい持ってきてやればとさえ思ってしまう。
目の前にいるのは、イラつくほどに認めざるを得ないモノだ。
剣機道のトップ、火星の正規
火星に住む、本物の武士。
いや……今この瞬間は『ボッケモン』というのが正しいか……!
「『地軸の底まで叩っ斬る』。
かつての地球で称された通り、ただ一の太刀を疑わないだけです」
ヒュー、と長く息を吐き、呼吸を整えてツナコはそう語りかける。
同時に、今までの使用で刀身が曲がり、半ばからかけた高周波ブレードを捨てる。
普通の高周波ブレードは、
「もうやめにしなさい、お若いの」
と、その背後で近くの段差に座る老女……ツナコの祖母であり、同じぐらい手練れの居合いの達人のウタヌが言う。
「あなたたちの部下は、皆斬ったのですよ?
今は私も、歳のせいで休まないと動けませんが……
そこの孫を倒せても次は私がおりますよ?」
既にそこら辺に転がる強化済みの身体の屈強な部下達は、全員が一人のただの老人に切り裂かれた。
嘘の様な提案は、極めて現実的な選択肢だった。
「ハッ!
冗談ですわッ!アタクシがんな簡単に引き下がるようなヤツと思われて帰ったら、家も死んだお姉様もその名誉に傷がつくッ!!」
「本気ですか?
刀を抜いた以上は……鞘に戻すのは斬った後他ない」
「まだ自慢の剣も出してねーだろうがですわよォッ!!」
瞬間、離れた場所から飛んでくる影が一つ。
銀色の塗装の騎士甲冑の様な印象を受ける機体……
フレームは、見栄えも良いことで有名なレイシュトローム製『ユニコーン 8G』フレーム全身フルセット。
武装は、右腕に実体刀身のあるタイプのレイシュトローム製レーザーブレードに、同社製実体盾。
肩と背中をつなぐ、何か巨大な武器。
十中八九、『
「これがアタクシのォッ!!
『ナイトアレス』だッ!!」
カリーナがそのeX-Wの名を叫ぶ。
なるほど、余程の自信であり自慢の機体らしい……とはツナコやウタヌも見てとれた。
「eX-Wまで持ち出すとは……」
「テメェらの逃したお仲間がなんかやってくれたのは知ってんですわよ!!
オイ、表のランク3、いや
ここまでやられて、おめおめ逃げるのは無しですわ!
決闘だ!!
お互いeX-Wでケリをつけますわよッ!!」
噛みちぎる様にカリーナ自身の手から手袋を抜き、ツナコへ投げ放つ。
「…………既にそちらの刀は抜かれていると言うわけですか」
投げ放たれた手袋をキャッチしたツナコ、その背後の空。
バラバラと音を立てて、いつもの普及型輸送ヘリが、eX-Wを吊り下げて飛んでくる。
朱色という表現の似合う赤い色、黒、金……
言ってしまえば、地球は日本、戦国時代の甲冑という印象の色の機体。
コアと腕以外、O.W.S.製中量2脚『F102 “T-Regina”』、そして前後に長くはないコアは同社軽量型で……いや違うか?
コアもその腕もカリーナは見たことがないタイプの物だった。
そのコアとその腕が、O.W.S.最新作『F202“A-Fragilis“』なのは今はカリーナは知らない。
ただし肩のコンテナの様なパーツが、ミサイルなどの武装内蔵型の『シンセイ式腕部』なのはわかった。
つまり何かが詰まっている。
その腕には、ある特殊な実体ブレード兵装が、
その背にはまた巨大なV字の翼の様な、派手な
────似ている。
いや、それは当たり前だとカリーナは気づく。
これは、剣の為の機体構成。
似なければおかしい。
「受けてくれることだけは例を言ってやりますわよ」
「剣を抜かれた以上は、こちらも抜かねば無作法というもの」
ツナコは服を脱ぐ。当然というべきか、背中脊椎にある神経接続装置を使うという意味だ。
すぐに下着同然の格好へとなったのは、扇状的と言うにはあまりに剣呑な意志の表示。
本気で、eX-Wで戦う気だ。
鋭い目が、丁寧に畳む所作の中でもそれを物語る。
勝つ気はある。
しかし、カリーナも自らの立場や矜持を抜きに、死を覚悟するだけの戦いが予感できた。
もちろんツナコ自身も、
────2つの機体が、広い空き地の中対峙する。
<カリーナ>
『合図はいりますの?』
<ヤスツナ>
『お互い剣を握り、そこにまた礼を交わす必要が?』
<カリーナ>
『……
まさに戦場の挨拶代わり。
お互いの機体の肩の武装が開き、『挨拶代わり』にASミサイルとロケットが飛ぶ。
(KEロケット……しゃらくせぇですわ!!)
ただの剣バカではない。
そうだ、武士も騎士も、使えるならばミサイルもバズーカもレーザーも使う!!
だが、お互い剣を選んだなら、それを補う武器を使う!
ズドドドドドドドッ!!!!
爆煙で視界は役に立たない。狙い通りだ。
ならば、とカリーナはナイトアレス左腕部の盾を構えてストライクブーストを起動。
まずはぶちかます。体当たりであった。
────しかしそれより早くツナコが、いやランク3『ヤスツナ』操るeX-W『童子切』が煙から踊り出る。
速い。そのためのO.W.S.フレームか……!
機体フレームのみの重さもそれなりであるにも関わらず、それでいて反応速度も最高速度も『
その能力をフル活用し、起動するそのブレード。
───はっきり言って実体ブレードは、弱い。
レーザーブレードの様な高密度レーザーによる絶大な切断力とブレードの長さもなく、HEATパイルと呼ばれる恐らく対策がされていない装甲なら相手が艦艇でも大穴を開ける近接兵装ほどの火力もない。
その威力を上げる方法は二つ。
一つの『ブレード自体の質量を上げる』は、機動兵器eX-Wの武装としてあまりに相性が悪い。
故に、あらゆる手段でもう一つ、
『叩き込む時の運動エネルギーを上げる』方法を編み出されていった。
その中でも、本物の日本刀の形のまま、鞘まで付いているそれは、異常な武器だった。
ツナコの意思を反映して、鞘を握る左腕の指が鞘のトリガーを引く。
───レールガン射出型『居合い切り』実体ブレード、当然エクレールメカニクス製、
『KEB-00 MURASAMA』
はっきり言って、それは『ネタ武装』だ。
レールガンで射出した実体ブレードを、握って切るモーション。
自動でやる場合は、射出タイミングがシビアで攻撃後の隙が大きすぎる。
マニュアル操作で握る事は不可能な武器だ。
<ヤスツナ>
『────ェェェェェェェイッ!!』
カリーナには確信があった。
目の前のランク3、ヤスツナのMURASAMAは間違いなくマニュアル射出かつ……!
ピシャァァァンッッッッ!!!
その勢いを殺さず、雷同然の音を立て放たれた剣を最大速度のままキャッチし切り裂く。
<カリーナ>
『───つァァァァァッ!!』
まさに雷の如く、下段から来たブレードを、よくも出来た物だと
ギィィィィンッ!!
実体盾表面素材が、ハムの様な薄さで切り取られていく。
速い世界がまるでスローモションで見える。
成功しなければ斬られていた……と、安堵した気持ちが生まれるより早く。
童子切の握るレールガンの射出速度で振り上げられた刀身が、その速度のままくるりと刃をこちらに点高く突き上げながら向く。
蜻蛉の構え。
それは、薬丸自顕流の基本にして、必殺の型。
もっとも、防御を意味する構えと言われることを嫌うほどの攻撃の為に全てをかけた態勢。
(認めてやる……!!)
<ヤスツナ>
『───キェェェェェェェェェイッッッッ!!!』
電磁射出されたエネルギーが残っているという理屈の欲しい速度で、童子切の持った刃が振り下ろされる。
<カリーナ>
『ああ、お前こそ火星の武士ですわよッ!!』
ガキャァァン!!
しかし、瞬間カリーナの操るナイトアレスの蹴りが飛ぶ。
脚部後ろに備えるブースターを起動して、ブーストチャージ並の蹴りを持って距離を離す。
同時に、ナイトアレス太もも脇にある
実体ブレードの弱点、剣の長さ幅がそのまま攻撃範囲が同じが故に、雷の如き一閃をなんとか避けられた。
<カリーナ>
『舐めんじゃねぇですわッ!!』
そして、直後にストライクブーストを起動し、緊急脱出の為のはずの推力を持ってぶつかる。
鎧も、盾も、剣以外も武器。
カリーナなりに西洋剣術を紐解いた答えでぶつかる。
────だがやはりというか、相手とぶつかった瞬間にその抵抗と相手後方の光を見て、勘違いに気付いた。
西洋、日本、そんなの全てが地球由来。
であるなら、相手も同じ考えに至るのが当然!!
ゴスゥンッッッッ!!!
(お前もぶちかますかッ!?)
(自顕流が止まるものかッ!!)
お互いの機体が、ギギギギと軋む音を立てて激しくぶつかる。
重量は、ツナコの童子切が上だ。
だが推力は互角……!!
このゼロ距離の押し合いから機体フレームを回転させ、童子切の右腕に握られたブレードが下段から振るわれる。
しかし、それをナイトアレスの左腕の盾で勢いをつける前に防がれ、そのまま固定される。
同時にナイトアレス右腕部に握られたレーザーブレードが逆手持ちになり、レーザー刃が伸びる。
童子切の右腕部マニピュレーターの5本の指がナイトアレスの右腕部の手首に当たる部分を掴み、捻り上げて巨大なバスタードソードほどの刀身となったレーザー刃を逸らす。
<カリーナ>
『見事ォッ!!』
<ヤスツナ>
『あっぱれェェェェッ!!』
ガシィン、とお互いのコア前面装甲でぶつかり合い、同時にアサルトブーストで距離を離す。
同時に抜け目なくロケットが童子切の肩から、ASミサイルがナイトアレスの肩から放たれた。
お互いの中心のあたりで爆発。
しかし、ASミサイルはAI社製故に『賢い』からか回り込んで童子切へ向かっていく。
<ヤスツナ>
『ィヤァァァァァァッ!!!!』
瞬間、鞘レールガンに収めていたMURASAMAを再び射出。
このミサイルが
ならば、切り払うのみ!
<カリーナ>
『そう来るって信じていましたわァァァァァッ!!』
その動作の直後、先の爆炎を撃ち破って、腰だめにレーザーブレードを『突き』の姿勢で構えてストライクブーストで迫るナイトアレスの姿が現れた。
ツナコは流石に目を見開くほど驚愕する。
この姿勢の突きは、回避も難しい上に確実に致命傷となる!
<ヤスツナ>
『───チィィィィッッッッ!!!!』
選択肢は一択。
振り払った剣を強引に反転させて振るって、寸での所でレーザー発信部分の刀身に破壊不可能合金の刃を下からぶち当てて逸らす。
一瞬、童子切側のブレードを握るマニピュレーター表面がレーザーで焼かれるほどギリギリの攻防だった。
だが、直後凄まじい衝撃が童子切を襲った。
ぶち当てられた勢いを利用して、足癖悪く蹴りを入れられていたのだ。
そして、機動兵器たるeX-Wの全身各所のブースターを利用して姿勢を戻し、再び空中からレーザーブレードを突き込む。
童子切は蹴りの衝撃で仰向けのまま硬直。
避けられない────訳ではない!!
ドヒャアッ!!
仰向けに近い姿勢のまま左にアサルトブースト。
こちらも人間が戦っている訳ではない。
過敏な反応と出力のブースターを駆使して姿勢を無理やり戻し、避けたことに気づいて減速していたナイトアレスへ、照準。
着地狩りの、ロケット連射。卑怯とは言わせない。
<カリーナ>
『ぐっ……!』
盾とEシールドを構えて防ぐ敵を見たツナコ。
瞬間、ロケットを止めずに距離をアサルトブーストで詰めて、ある武装を起動。
童子切のEシールドが光り、直後爆ぜる。
ズガァァァァァン!!!
そう、ブラストアーマー。
自らのEシールドを全方位攻撃の衝撃波として打ち出し、敵を攻撃すると同時にエネルギー干渉を起こして敵のEシールドを無効化する武装である。
副次効果として、相手のカメラをその光量で一時的に潰せる。
相手のナイトアレスが盾を構えながら直前のこちらの位置へ向けて防御姿勢を見せる中、再び納刀し鞘へエネルギチャージをするツナコ。
抜き─────即、斬る!!
MURASAMAのこの星でも貴重な破壊不可能合金製の刀身が射出され、それを掴み斬る。
相手に盾を両断し──────
<カリーナ>
『来ましたわねランク3ィィィィィィィィィィィッ!!!』
直後、盾を離した相手が、視界が戻っていない中に破壊された盾の感触からこちらの位置を割り出してレーザーブレードを振るう。
横……ちがう、前に回避!
ツナコは、レーザーブレードの伸びる刀身から、あえて相手のすぐ脇へと童子切の機体をアサルトブーストで前進させて回避する。
<カリーナ>
『やはりですのォォォォォッ!?』
しかし、その直後、すり抜けた側の腕、盾を外したナイトアレスの左腕部が、腰の格納スロットに存在したレーザーブレードを引き抜いた。
<ヤスツナ>
『ダガー!?!』
回避は間に合わず、防御に向けた童子切左腕のMURASAMAの鞘が、つまり電磁射出機構が破壊される。
<カリーナ>
『まさにソードブレイカー代わりになりましたわねェ!?』
<ヤスツナ>
『やはり……達人か!』
お互い、ブースターをフル稼働し、
<ヤスツナ>
『ィェエェェェェェェェェイッッッッ!!!』
電磁射出こそ出来ないが、ならば打ち慣れた自顕流の剣を打ち下ろすツナコの童子切。
<カリーナ>
『ラァッ!!』
器用に、左の小さなレーザーブレードを振り回してその強烈な打ち込みを逸らし、本命の右腕のレーザーブレードを横なぎに叩き込む。
しかし直後、相手の機体の膝蹴りが下から突き上げられ、レーザーブレードを握っていたマニピュレーターに叩き込まれる。
ガキィン、という音と共に空中に放り出されるナイトアレスの大型レーザーブレード。
好機、と再びMURASAMAを構えようとしたツナコの右腕部へ、カリーナの意思を反映したナイトアレスの左のレーザーブレードが突き込まれる。
マニピュレーターが破損する方がまずい、そう判断してあえて剣を落としてレーザーブレードを回避。
それすらも狙いと言わんばかりに、即座にMURASAMAへナイトアレスの蹴りが飛び、遠くへ弾かれる。
<カリーナ>
『これで丸腰ですわよランク3ィィィィィィィッッッッ!!』
<ヤスツナ>
『ッ!!』
再び左の小さなレーザーブレードを突き込み、丸腰の童子切を襲うナイトアレス。
しかし、交差する瞬間そのブレードを握る左腕を手首に当たる部分から掴まれ、ドヒャアッという音と共にアサルトターンをする童子切。
それはまるで、柔道の投げ技のよう。
レーザーブレードを思わず手放すような衝撃と共にないとアレスが投げ飛ばされた。
<カリーナ>
『〜〜ッ!?
ァッ!!』
地面には、ブースターを蒸してなんとか激突せずに済む。
ドシィン、と姿勢を戻して着地し、即座に振り向くナイトアレス。
睨み合う両者、共に
数瞬の沈黙……
────そして判断は早かった。
お互いが、背中の最後の武器を抜くまでは。
<機体AI音声>
《NGウェポンモード、起動します》
機体のジェネレーターのリミッターが外れる。
それも、両者とも退路なしの、2段リミッター解除。
AI社系列の機体フレームでなければ、フレーム自体が耐えられる時間はない。
だが、両者とも背負う
ナイトアレスの両肩に広がる盾のような翼のような装置。
開いた中のジェネレーター左右二つが唸りを上げる。
童子切の引き抜いた、Vの字に開いていた刀身が合わさり生まれる巨大な質量の実体剣が、改めて点高く構えられる。
<カリーナ>
『いざ、』
<ヤスツナ>
『尋常に』
ナイトアレスの握る、背中の装置と太いケーブルで繋がった『発信器』が上段に構えられる。
同時に、童子切の持つ巨大で長大な、鉄塊同然の剣の側面についたブースター全てが機体後方へと向き光だす。
両者の機体フレーム内の、ブースターの基幹技術と本来は重力・慣性低減機構『ヴァーディクト・ドライブ』の本来の出力が、2段リミッター解除を受けた出力を持って解き放たれ、余剰効果で白い光をフレーム全体から放ち始める。
キィィィィィィ……!!!
本来、お互いが数十秒の果てにフレームが耐えられなくなり機能停止するこの状況、
そのわずかな時間だけに出来る超高速移動、いわゆる『
どのみち、一撃必殺。
狙うはそれのみ……そして今、
お互いのNGウェポンが、2段リミッター解除状態を経てなお10数秒かかるチャージ時間が終わった。
先に振るわれたのは、ナイトアレスの輝く一閃。
白い光が右腕に握られた発信器から放たれ、天高く光の柱を生み出す。
いや、それは柱ではない。
振り下ろされるは、全長約『2km』の
正式名称:対要塞用規格外熱光学切断兵装
NGウェポン『クァンタムレーザーソード』、
もはや大口径レーザー砲と何が違うのか分からない物が、未だ斜め下に向けて剣を構える童子切へと振り下ろされる。
焼け死ね、避けても稼働限界目一杯まで追う!!
カリーナの思いは────全長約2kmのはずのレーザーブレードごと一瞬で断ち切られた。
童子切が消え、レーザーの刃が一瞬半ばから消えた時、
驚愕、疑問……と同時に、確信を持って上を見上げた。
打ち下ろすという具合に迫る巨大すぎる実体剣。
破壊不可能な刃を、UFO状態の超加速で叩きつける。
単純で、愚かで、呆れるほど強烈なNGウェポン。
正式名称:規格外超弩級対艦艇突撃実体剣
NGウェポン『ドレッドノートバスターブレード』
その『斬艦刀』とでもいうべき物は、あまりにもその質量と切れ味に似合わない速度で振るわれた。
そう、まずは自顕流お得意の、『抜き』の動作でこちらのレーザーブレードごと切り裂かれ、
こちらの上を取った状態で、本命の技を叩き込む。
ただ打ち下ろすのみの1撃。
それだけで地球のかつての時代、『薬丸自顕流』の名前を轟かせた恐るべき一撃。
カリーナは、所詮こちらの振った剣の速度が、どれほど頑張っても『雷の如く』程度であったとすら思ってしまうその一撃。
その名こそふさわしい一撃の元、ナイトアレスごと自らも一刀両断されたのだ。
遠くなる意識の中、不思議と穏やかな気持ちがあった。
そう、全力で戦った故の満足。
(認めざるおえねぇですわ……
お前が、この火星最強の剣士で──────)
「…………ヒュー……すぅ〜……」
童子切の中、UFOの負荷で完全に動けなくなった機体の窮屈なコックピットの中で、ツナコは長い長い息を吐き、呼吸を整える。
「…………剣機道の私以外の剣士達と比べて、遜色ない実力でした。
殺さざるを得なかった……切り捨て御免。
ですが…………あなたほどの西洋剣術の使い手……eX-Wの腕を持つ人間は、この火星にもそうはいなかった……」
弔いの意味を込め、静かに手を合わせる。
黙祷…………しかしその時、
ズカァン!
倒したはずの相手へ何かが打ち込まれ、爆発する。
「!??
誰か!?!」
見れば、空を数機のヘリと、なんと言えば良いのか、見慣れたバーンズアーマメンツ製の1001Bフレームなどの、見慣れた装備の機体達がくる。
そう、
どう見ても新人
『すみませーん!無事ですかー!!』
無線ではなく、スピーカーで話してくる。
何故……とまだ生きている計器を見れば、
「そこのあなた!!
なぜ死体蹴りみたいなことをしたのですか!?」
急いで、近づく素人の
『ええと、依頼を受けて来ました!
あなた方の救援と、』
その続きを聞いて、最悪の事態を理解した。
『敵勢力の殲滅です!
歩兵も狩れって、火炎放射器とHEATライフルまで支給されて!』
「な……!!」
おかしい。
────こちらがクオンから受けた依頼には、『可能なら生け捕り』と追加報酬付きのはず!
「何が……どうなって……!?」
***
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます