[変更済]MISSION 7 : 撃ち抜け、奴よりも早く!
────オーグリスウェポンサービス、O.W.S.
当の本人達は、なるべく同じお仲間達のAI社陣営の他社に頼らないように得た資産を兵器開発に投じ、結果AI社の中でも経営は苦しい方らしい。
しかし、『人間を強化してまで扱う』ことになったその高性能なeX-Wフレームや武器は強いの一言。
その中でも売り出し中の武装パーツは、実弾兵器の大御所バーンズアーマメンツと、高火力といえばここのリボルバーリバティー社に喧嘩を売る気のような実弾系兵器がほとんど。
精度と耐久性は、強化済みの
撃っている実弾兵器のとりわけ運動エネルギー弾系列の砲身は、全てが『水冷式』で砲身加熱を極限まで抑えて弾道が長時間変わらないように工夫されているとか。
弾丸は『単純威力で抜く』バーンズ社やリバティー社と違って、
特殊な対Eシールド加工を施した、『Eシールド貫通』を念頭に置く。
レーザーであれば同じ効果があるけれど、あえて実弾でこだわったのは理由がある。
O.W.S.の思想──『eX-Wは基本陸戦機動兵器』。
3次元的に動き、戦車や低空を飛ぶヘリ相手に優位を取り、爆撃を回避する速度と運動性能を持ち、地形を選ばず戦う最強兵器。
だからエネルギー兵器は自社内でそれなりに研究するけど、運動性能を阻害してしまわない事を念頭に基本は実体弾系の武器を発展させてきた。
大型の構えが必要な真逆の思想のこのスナキャも、
当然と言うか、Eシールド貫通性能も高いし、威力も多分他社に負けてない。
……さて、傭兵系美少女の私こと大鳥ホノカちゃんは自分でも認めるアホである。
パーツ名なんて覚えられないよー!お勉強きらーい!!
なのになんで、こんなスラスラと
ガキィィンッ!!!
────相手のスナキャ命中したら『走馬灯』ぐらい見るからッ!!!
<セヤナ>
《被弾や!!前面装甲!!》
「あっぶなぁ……!!」
実弾耐性の高い防御方式のバーンズ製、その中でも一番硬いこの4脚機のコアにえぐれる弾痕が出来た。
Eシールドで減衰してない威力そのまま喰らった……
<ウォースパイト>
『ホノカちゃん無事ですか!?』
一緒に戦ってる、盾代わりを務めてくれたウォースパイトさんの機体、重装甲な重量2脚のオールドレディもよく見たらコアにすごい抉れた傷がある。
ヤバいね、スナイパーキャノン。
引くほどの威力だ……!
「ウォースパイトさん、セヤナちゃんと同型のウェザリポ、かなりの手練だよ!」
<セヤナ>
《せやなぁ、ごめんなウチ有能スナイパーAIちゃんで!
後2発……ゼロイン完了まで撃てる思うか!?》
「バイタル抜けてないなら勝機があるって信じたい!」
<セヤナ>
《せやなァ!》
喰らっても、致命傷じゃないしこっちのスナキャも狙ってる!!
1発目のデータで修正した弾道線……神経接続を通して見えるスコープの照準と合わせて、発射!!!
ズドォォンッッッ!!!
こちらの両腕のスナキャ、2発目。
弾道がだいぶ改善されたけど、左腕は少し狙いの左に逸れた。敵の私と同じ機体構成の機体の直ぐ左に。
至近弾……てことは……次で当てられるかもしれない!
いや、
右のスナキャが相手の左肩付け根に命中!!
左肩落とした!!!
<セヤナ>
《おぉ!!ストライクッ!!!
次がほぼ完璧な調整になる!!リロード終わったらすぐ撃ちぃやァ!!》
言われなくても……弾倉内の弾丸3Dプリントと、バレル冷却終了までのクールタイム中に、もう狙う。
この2射で、機体自体のコンピュータとセヤナちゃん、後強化済みの私の身体の脊椎のコンピュータの並列処理で、スナキャの
あとは、次が命中するかの確認!
相手が残った右腕のスナキャを構える。
撃ってこない。当たり前か。
eX-Wの命中率は、今ここにはいない相方のAIコトリちゃん曰く、
『機体と腕パーツの安定性』が物を言う。
片腕がないって言うのは、バランスが崩れてる。
補正がいる。その処理時間が隙だ!
(速く……!!)
狙いは付けた。予測発射可能時間の終わりまで、円形のスコープに見える円形のゲージが縁をそうように上がっていく。
スコープの向こうの相手が、こちらを狙う。
────撃てる!
私が、引き金を引いた瞬間、
相手が、残っていたスナキャを捨てた。
「────!!」
予感というか、相手が最後にマニピュレーターを指鉄砲にして向けたのを見たのを最後に、弾道を観測をしないで咄嗟に私はこの4脚機のアサルトブーストを起動した。
肩のそれから生まれる大推力───っていっても普段使いの寄りはずっと低い推力と、この機体に対して低い上に容量もないジェネの容量ゲージが一気に減って、なんとか重い機体を左の方へ動かす。
<ウォースパイト>
『危ない!!』
ボン、ボン!!
私が元いた箇所へ、右斜め後ろから狙撃が来た。
そうだよ、他の機体も、最悪ゼロインを私と同じく終えた機体がまだたくさんいる。
ゼロインを終えた───チラリとさっきスナイプ合戦した敵機の方角を見る。
この頭部の優秀なカメラは、頭が吹き飛んでその後ろのコックピットのある位置から開いた穴と煙を出す相手を見た。
「やったね」
<ウォースパイト>
『お見事!
スナイパーの語源は、当時の銃では撃ち落とすのが難しかったタシギという鳥かららしいです。
逃げの判断は、まさに
しかし、これではおそらく残りの相手も……!」
「危なかったけど───でもこっちはゼロインを終えた!」
<セヤナ>
《せや!反撃の時間やでホノカちゃん!!》
よし、と飛び出すより速く、隣のウォースパイトさんのオールドレディが右腕部でこっちを制しながら飛び出す。
<ウォースパイト>
『私が囮になります。
撃ってきた相手を頼みま、きゃあッ!?』
早速、さっきの相手が当ててきた。
地図上C地点方向、ここから狙える!
「セヤナちゃん、リコン射出してあとカモメちゃんっていう私のオペレーターさんに!!」
<セヤナ>
《はいなァ!!》
これでわかるかは不安だけど、機体の
二つのスナイパーキャノンの砲身を展開、構え。
スコープの視界へ私の視界を切り替え。
リコンの情報と照らし合わせて、視界に神経接続を通して映る敵の機体の過去の進路の線を辿る。
もちろん、スナキャの数と同じ
<セヤナ>
《随分ウチをこき使うやん!
並列処理は生でも電子でも頭の負担大きいで?》
「マルチロックは
C地点方向、少し高い崖型の森付近、
E地点、森と平地の境目。
どっちも森を背に、木を盾と偽装にして隠れてる。
でも、狙えるはずだ……相手が狙うためにこっちへスナキャを向けるなら!!
目標はその首元、一番装甲が薄くて、コックピットと操作する
そして相手も、同じ位置を狙ってくる。
撃て!
相手より早く!!
ズガァンッッ!!!
地震恐竜の名前が似合う反動を、4つの脚と後ろ足から伸びるパイルアンカーで抑える。
全身の機械の関節を使って衝撃を緩和して、それで抑えて安定させた弾道の通り、砲弾が弧を描く。
まぁ、相手もそれは同じなんだよね!
この衝撃の硬直から早く抜け出して避けられるか……いや多分奇跡が起きなきゃもう無理だ!!
それは、相手も同じ……この一瞬でお互い生死が分かれる。
バンカーが離れた瞬間、アサルトブーストを起動。
散々クソだのなんだの言って申し訳ないと内心謝ることで、ちょっとでも運を引き寄せる。
2発来た。1発目はギリ回避コース!
もう片方……無理だ!!
相手は2機は狙い通りの場所に命中、でもこっちも当たる!
ボンッ!!
1発……1発だけ、コックピットの中に針みたいな長い砲弾が突き破って、私の左の二の腕辺りに突き刺さる───いや貫通して切り落とす。
「〜〜〜〜ッ!!」
痛い。死ぬほど痛い!
でも……死ぬほど痛い程度ですんで良かった……!
コトリちゃん、生身を捨てる事になっても、やっぱ言われた通り身体を強化しておいてよかったよ、感謝何度目だ!?
真っ白な私に流れる人工血液が飛び散り、でもすぐに傷口を白い金属質のカサブタで塞ぐ。
流石に強化Lv.5でも、腕は生えないか……!!
<セヤナ>
《コア貫通!!無事か!?》
「セヤナちゃん生きてるなら最高だよ!
私の腕ないぐらい神経接続でなら動かせる!!
私より次に敵!!」
<セヤナ>
《……、せやな!!》
コア貫通、でも頭部カメラもコンピュータもセヤナちゃんも生きてるし、両腕のスナキャは動かせる!!
後3ヶ所……やばい、旋回中に砲弾が来た!?
「まず……!」
<ウォースパイト>
『させません!!』
目の前に、頼もしい
「ウォースパイトさん!?
クッ!!」
目標はB地点、墓の中!!
構え、狙って、発射!
ズガァァァァァンッ!!
左腕のスナキャの1発で、お礼を速達!首を吹き飛ばして撃破!!
「残り3ヶ所……ウォースパイトさん無事ですか!?」
<ウォースパイト>
『……まったく、こんなヒリついた戦場……フフ、いつ以来だか……!』
「何笑ってるんだか!お婆さんだし死ぬのは覚悟できてるって?」
余裕だね。生きてる証拠だ。
<ウォースパイト>
『そうですね。
実は……昔は立場が逆でしたから』
「え?」
G地点、高速道路上、もう狙われているけどこっちも狙う中、そんな言葉が来る。
発射。同時だ……避けてくれこの機体ちゃん!!
<ウォースパイト>
『────かつての盾役はアンジェ。軽量2脚しか使えない上にそこら辺のゼロインされてないスナキャを渡してきたり、酷い目に会いましたよ』
だけど、相手はおそらく完璧にゼロインできてなかった結果、足元に爆発するような衝撃で終わって、こっちは逆に正確に弱点を撃ち抜いた。
「ごめんウォースパイトさん。
私もおばあちゃんと同じく酷い目に合わせてる」
残り3体……!
結構私たち2体とも満身創痍だけど……!
<ウォースパイト>
『あなたはちゃんと謝れるのね……フフ♪
さ、あなたはあの『下手くそ、変わって!』とか言ったアンジェのアホの代理なんですよ?
残りも倒さないと、お孫ちゃん?』
「オッケー!
おばあちゃんより強いってとこ見せたげる!!」
次の目標は、B地点とD地点!
────いない!?!
いや違う、いた!!けど!?!
「近づいてきている!?」
ストライクブーストの光を背中から放ちながら、こちらに近づいているのが見える2機の4脚。
この機体と同じって事は、こんな長時間ストライクブーストは出来ない!!
まさか……ジェネレーターのリミッター解除を!?
このクソジェネだと、短時間でジェネレーターがオシャカになるじゃん!!
なんで…………あ!
「────H地点のからやる!!」
<セヤナ>
《なんやて!?》
<ウォースパイト>
『ですね、なら私が2体を!』
ウォースパイトさんも同じ考えなら、
2体は『囮』だ。今日冴えてるな私!!
その証拠に、振り向いたH地点のビルの上、こちらにスナキャを向けた機体がいた!
────スナキャは構えない。でも相手はカメラと頭部パーツの優秀なFCSで捉えている。
構えないのは、避けやすくするため。
相手も分かってるから────同じくスナキャをしまう。
不思議な光景かも知れないけど、
お互い撃ちあうはずの敵同士、お互いが撃つのを辞めていた。
だって、
<セヤナ>
《……先にアレやな。
撃ったやつが負けるわってヤツやねんコレ》
そう、相手もこのセヤナちゃんと同じ無人機用AIなら、同じ結論のはずだ。
最初に撃った方が回避されて、反撃で沈む。
だから、自ら撃ってはいけない。
「まぁ、そういうわけにもいかないけどさ……!」
ここで重要なのは、後ろで今戦っているウォースパイトさんがどうなるかだ。
私は敵を殺す事に躊躇しないクズだけど、お婆ちゃんの知り合いを見殺しにできるほど薄情にもなれない。
できることなら、すぐに決着をつけたい。
<セヤナ>
《さてどうする?ウチは相手と同じ
もし勝機っちゅーもんがあるなら、それはホノカちゃんのセンスだけや。
この際無茶苦茶なやり方でもええ。
なんか、面白い案でもあるか?》
「……一個だけ聞くけど、相手は間違いなく私と同じ首の付け根、狙ってくると思う?」
────ひとつだけ、勝てる方法思いついたけど、
それには、セヤナちゃんの事を知らなきゃいけない。
<セヤナ>
《せやなぁ……向こうのウチは、君のことマジで怖い思っとる。
せやから……確実に弱点を突いて殺すこと考えてる。
間違いない……1発で決めるわ。
ウチは間違いなくそうする。
ウチは……間違いなくそうしないと君には勝てんわ》
「おぉ、褒めてくれるねぇ〜……!
だったら、私の勝ちだ!」
右腕のスナキャを構える。
相手は、回避行動を取った。
私は、構えただけで、撃たなかった。
フェイント。だけど相手もバカじゃ無い。
左へアサルトブーストで避けた相手は、さらに右へ多段アサルトブースト。
つまり、フェイントの後狙いをつける私を翻弄するつもりの動きをする。
いつ撃つか、なんて考えさせて、最悪その気にとられているうちに本当に撃つ。
そうするはずだよ。そして、相手が構える。
────回避なんてしない。撃て。
相手が構えを解く。わざとらしすぎたかな?
私はゆっくり狙っている。狙っているだけだけど。
再び、左、右、タイミングを変えて反復横跳び。
私は動かない。撃たない。
相手が構える。撃った……フリ。
でも私は動かない。撃たない。
あえて撃たない。ただ狙うだけ。
構えを解いて移動……しない!
再び構え─────撃ってくれた。
実は、先に撃った方が負けのこの戦い、もう一つだけ決着の方法がある。
それが、今私がスナイパーキャノンを放って生み出した状況。
相打ち。普通はね。
私は構えていない左腕のスナイパーキャノンを、
直前にパージして、
ブン投げた。
砲撃後の反動で揺れている中、狙いはめちゃくちゃだし飛距離も出ない投擲は、だけど一瞬私の正面を通過した。
ガコン!!
砲弾が当たって、機体に当たるスナキャの質量。
だけど、確実に削った敵のスナキャからの砲弾の運動エネルギーは、Eシールドを、そしてこの装甲を貫けないほど減衰していた。
精度の為に頑丈な作りのO.W.S.製のスナキャは、クッション代わりに最高だった!
揺れるカメラの先で、相手の頭部パーツが吹き飛び、後ろのコアを直撃する。
爆発……そして、相手が動かなくなった。
スナイパー合戦は……私の勝ちだ!!
<セヤナ>
《……!
や……やるやんけホノカちゃん!!すごいで!?
はっはー!!今日からホノカちゃんが火星最高のスナイパーや!!!》
「そうです、私が火星最高のスナイパーな傭兵系美少女、大鳥ホノカちゃんなのですよ!」
残ってる右腕でピースピース!
さて、火星最高のスナイパーな私は、ウォースパイトさんを助けに……
<ウォースパイト>
『あらあら、調子の良いこと言っちゃう辺りは、アンジェそっくりですね火星最高のスナイパーさん?』
ガシャーン、とスクラップ二つ分の、私の乗る4脚と同じ機体のパーツがこっちに転がって来る。
<ウォースパイト>
『スナイパーは私のような支援がないと生き残れないって事は、忘れないようにしてくださいね?』
あちこち装甲が剥がれたりバチバチ中のケーブルが切れて漏電している重量2脚、オールドレディの中からウォースパイトさんがちょっと笑って言うのだった。
「……了解でーす。
流石と言うか、2体倒しちゃうだなんて……!」
<ウォースパイト>
『言ったでしょう?スナイパーは支援がないといけないと。
正面のぶつかり合いはオールドレディの距離です。
の、割には……まぁあなたより手ひどくやられてしまいましたけど』
「……ははは!」
<ウォースパイト>
『……うふふふ……!』
まぁ、生きて笑ってりゃ良し!!
私たちの勝ちだ!!
<クオン>
『────終わったようだな』
と、この丘の下にトラックごと隠れていたクオンさんが声を上げる。
「クオンさん!ルキちゃん無事!?」
<ルキ>
『ごめんねおねーちゃん?私、人の考えが読めるシンギュラ・デザインドだから、普通の人間が私たちの位置把握できないって事忘れてたの。
いやぁ、動き回るお陰で、何度もこっちはスナキャの流れ弾で吹き飛ばされかけたんだけど??』
「……ごめん」
<ルキ>
『下手くそ!!
…………帰りにアイス買ってちょうだい』
うわぁ……ハーゲンなお高いのじゃないと許して貰えない感じ〜……ごめんて忘れてたんだって……
<ルキ>
『ついでにだけど、おねーちゃんのお友達なんだけど、』
おっと、そっちも忘れてた!!
ツナコちゃん、ウタヌお婆さん、今助けに!!
<ルキ>
『アンタらが2機落とした辺りで、勝っちゃったみたいなんだけど』
「……は?」
え、勝っちゃった???
どゆこと??勝っちゃったって言ったの??
え?
あの状況で、勝ったの??
***
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