[変更済]MISSION 6 :狙撃戦は基本面倒くさい








 さて、墓参りしてたら謎の裏社会の武装ヤクザ的な方々に襲撃された、ちゃんとした正規登録済み傭兵系美少女の大鳥ホノカちゃんですが、



 いま、相手から奪った4脚狙撃機eX-Wに乗ってるんだけどさー、この機体ヤバい。

 まず内装、ジェネレーターとブースターが低出力なのと、肝心の狙撃用スナイパーキャノンが恐らくまだ零点補正ゼロインされてない、いわゆる『撃っても当たらない』ヤツ!


 この状況で、敵の数もまだ把握できてないような同じ機体と、後無人機の軽量2脚を叩かないといけないって感じ!



「で合ってるよね、ウォースパイトさん?」


<ウォースパイト>

『ふふふ‪……‬ところがそう言うわけでもありませんよ?』


 と、今乗ってる鹵獲した機体を荷台に乗せて走っている大型eX-W用トラックの助手席に座る、私のおばあちゃんの知り合いの見た目ゆるふわブロンド眼鏡美人な現役超ベテラン傭兵スワンウォースパイトさんが、なんとまぁ私の認識を否定しちゃうにだった!


「違うの!?」


<ウォースパイト>

『敵の数は狙撃型こそ多いですが、恐らく現ランク12であるあのキリィさん一人で抑えられる程度に、無人機の前衛は少ないはず』


「あ‪……‬!」


 そういえば、キリィちゃんのブラックインパルスは、本人も認めているけど継戦能力に関しては大分射突型ブレードとっつきに依存してる。


 それでも、まだこっちに攻撃は来てない。

 狙撃機も狙ってるはずなのに‪……‬いやコレは純粋に軽量機で空中戦もこなせる機体だしまず当たらないかゼロインされたライフルでも。


<ウォースパイト>

『機体はフレームが立派でも内装がお粗末、さらにゼロインされていないスナイパーキャノン。

 どうやら、我々傭兵の属する企業連合体トラストに対抗する技術力のある『財団』といえど、


 工場の数と資源の調達と運搬力、言ってしまえば『工業力』に関しては、やはりアンダーグラウンドに収まる程度でしか無いのでしょう。


 でなければ、バーンズアーマメンツ内装なんて使いませんからね』


 言えてる。

 バーンズアーマメンツの内装は、私がコピーできても使いたくは無い。絶対やだ。



<ウォースパイト>

『しかもECMも通信妨害も無し。

 eX-Wは保険、本来は歩兵人員でサクッと殺すつもりでしたでしょうけど、予定が狂ってしまったと考えるべきです。


 ならば、コレは好機と言えます』



<クオン>

『良い洞察力だな相変わらず。

 で、私を足に使ってどこへ向かわせる?』


 と、トラックの運転中のクオンさんが訪ねてくる。



<ウォースパイト>

『ホノカさん、恐らく外の私達のオペレーターが、私の頼んだ情報を既に送っています』


「情報‪……‬うーん、今のところ地図だけだけど?」


<ウォースパイト>

『それです』


 え、地図!?

 ここら辺の、普通の地図だけど!?


<ウォースパイト>

『地図は軍事作戦において最も重要ですよ?

 まぁ、何気なく使える立場である以上は、ついありがたみを忘れてしまいますがね』


「‪……‬じゃあ、この『A-1』とか『A-2』ってもしかして‪……‬?」


<ウォースパイト>

『あら‪……‬!

 私のオペレーターの仕事では無いですねぇ‪……‬フフ、通りであなたが地図を重要視しないわけですね。

 帰ったら、あなたのオペレーターは誉めるべきですよ?』


 ‪……‬‪……‬優秀さは他の傭兵スワンからのお墨付きか、ウチのカモメちゃんは‪……‬!


<ウォースパイト>

『ホノカさん、地図情報を私の電脳にリンクを。

 A地点と設定された場所は恐らく、標高の高い順から1、2となっているはずです』


「標高‪……‬あ、そっか!!

 高いところから!!」


 つまり、見晴らしの良いところへってことか!!

 今把握した!!


<ウォースパイト>

『同時に各A地点は、稼働中の狙撃型eX-Wが隠れている可能性もあります。

 現在向かっている一番近いA-1は、この道路の位置なら森が遮蔽物になって狙えないでしょう。

 ただし、後少し道なりに進めば、気づかれます』


「不味くないですかそれ?」


<ウォースパイト>

『なので、1機応援を要請しました』


「応援を!?どうやって狙撃を潜り抜けて!?」



<サブコンピュータ>

《────真上に答えあるで?

 ようやるわ、見てみぃ!》



 この機に乗ってた関西弁補助AIウェザーリポーターちゃんの指示通り、見上げると何やらすごい速度で落ちてくる物がある!


 なにあの筒みたいなの!?


 ───と思ったら、筒がバラバラになって中から‪……‬!!




 そう、出てきたのはeX-W。

 それも地表スレスレ、減速の為に一応は本来緊急脱出用・長距離短時間移動用ではあるはずのストライクブーストを起動して、真下へ爆風見たいな勢いのブーストの衝撃波をぶっ放しながら降り始める。



 ズシンと、地面が陥没しそうな重厚感。

 まぁあのふとましい脚と身体は、重量2脚かつ重装甲な上半身フレーム。重くなきゃおかしいよね‪……‬というかもしやコアパーツが今乗ってるこの4客と同じ!?



「あれが応援‪……‬私、今回いるかなってぐらい強そうな‪……‬!」


<クオン>

『オールドレディか。武装を変えたか?

 グレネードとは‪……‬いつものバトルライフルはどうした?』


<ウォースパイト>

『諸事情でアセンは前の依頼の時のままなんです。

 ですから、ちょっと不利────』



 ズドォォンッッッ!!


 うわっ!?近くになんか着弾した!!

 トラックが倒れる‪……‬!こんにゃろ、私の乗ってる機体を傾けてバランスぅ〜‪……‬よし!!倒れてない!!



「こっちを狙ってきた!?」


<ウォースパイト>

『いえ、狙ったのは私のオールドレディです!

 やはり、相手も零点補正ゼロインが出来ていない‪……‬!』


 と、まだ揺れて動いてA-1地点へ向かうこのトラックの中、見たら助手席のウォースパイトさんも戦闘態勢って事で服を脱ぎ始めていた。


<ウォースパイト>

『付け入る隙は今です!

 クオン社長達はこの丘のふもとで待機を。


 私が盾になり、あなたはいち早くゼロインをし、カウンタースナイプにて狙撃型を一掃!

 それが作戦の概要です‪……‬できますね?』


「盾か‪……‬多分実防高めのフレームって言っても‪……‬!」


 チラリと、この機体の大変優れたカメラアイで、あの外されたスナイパーキャノンで開いた穴を見る。


<サブコンピュータ>

《怖‪……‬この両手のスナキャ、O.W.S.の『精度特化』の単発射型最新の、『06SC “D-Hallorum”』っちゅーんやけど、》


「これで精度特化?

 威力特化の間違いじゃない??」


<サブコンピュータ>

《せやなー。クソッタレ。

 この機体も実体弾防御は高めやけど、まぁお守り程度やこういうのは!


 当たりどころさんが悪かったら、そこんとこのお墓に入るハメになるで?》



「良いね。最悪で分かりやすい。私頭悪いしさ」


 でも、今このタイミングで、親子3代仲良くお墓にってのは‪……‬無しだな!


「やるか‪……‬!カラーパターン変えるよ、もうこの機体は私のだし」


<サブコンピュータ>

《おけまるやー》


 カラーパターンの数字を入れて、この機体をいつものグレーと黒と、ちょっと黄色の私の機体カラーに!

 この色変え機能結構便利だよなぁ‪……‬



「‪……‬‪‪……‬よしもう一個決めた!

 君は、『セヤナちゃん』だ。そう呼ぶね!」


<サブコンピュータ>

《ブホォ!?

 笑かすなや、ほんま‪……‬!!》



<サブコンピュータ>

<セヤナ>

《せやなー!まぁ、個体名あるんもええか!

 じゃあ、ウチこと浪速の狙撃向けウェザーリポーターのセヤナちゃんをよろしゅうな、ホノカちゃん?》


「おっけー、セヤナちゃん!

 まずはウォースパイトさんを運ぶ!」


 トラックの助手席から出てきたウォースパイトさんを、畳んだスナキャに乗せて‪……‬いざ!







<セヤナ>

《メインシステム、戦闘モード起動するで?》



 場所は丘の上、思ったより高くて遠くの街まで見れる。

 ただし、山頂の空き地部分は、下からウォースパイトさんの機体が見えただけあって木々で隠れられない。




<ウォースパイト>

『さて‪……‬思ったより不利かもしれませんね』


<セヤナ>

《せやなー、こらヤバい。

 ホノカちゃーん、マップちょいと見てみぃ?》


 早速戦闘モード起動した私とセヤナちゃん付きのこの機体。

 不穏な一言と一緒に、私のいる場所を赤い三角形で示した中心と、そこからかなり広いマップが出てくる。


<セヤナ>

《東西南北津々浦々、まぁ細かい箇所にそっちのオペちゃんやらが集めた敵のいる場所が示されとるやろ?

 B〜Hとかいう7箇所、恐らくこの範囲に一機ずつウチらと同じ機体がおる》


「多いねぇ‪……‬しかもどれも遠いねぇ‪……‬!!」


 ボン、と今早速左後ろの多分F地点から狙撃が来た。


<セヤナ>

《何がヤバいって、射程内やねんウチら。

 全部の地点でこのスナキャの有効射程や。

 運がいいのはまだゼロイン完全にできとるのはいないこと、

 運勢最悪なのは、もうゼロイン開始してるねん相手な?》



 なるほど。

 そりゃ撃った数多ければ、ゼロインはすぐ出来るしね。



<ウォースパイト>

『今から、あなたには手早くゼロインをしてもらいます。

 その後、スナイパーキャノン持ちeX-Wを可能な限り排除。

 全部は弾数的に不可能でしょう‪……‬何より、同じ機体なら相手も実弾耐性が高い。

 当てる場所を厳選しないと、当てても1発では落ちません』



「あー、コトリちゃんに教えられた所だー!

 『O.W.S.の弾丸は対Eシールド用だけどそれでもシールド内部の空間で運動エネルギー減衰するから、そのせいで変わる弾道も計算しろ』って言われたヤツ〜!」


<セヤナ>

《あの人なら言うわー、それ。

 ま、そこは今や天才もびっくりな計算能力の電子頭脳なウチと機体コンピュータちゃんの並列計算でなんとか微調整したる。

 ちな、自分はこういう機体はどこ狙う?》


「コトリちゃんのスパルタで覚えてるよ。

 こういう場合は、頭部パーツの付け根を撃ち抜けって」


<セヤナ>

《せやな、機体の制御系はそこしかないしそれで100点や》


<ウォースパイト>

『幸い、相手もこちらを狙っている以上、確実に我らの方を向いている。

 同じ条件のスナイプ合戦‪……‬ただし相手がゼロインのためのデータを取得している以上は、こちらが不利です』


「‪……‬‪……‬F地点から始めます」


 ガショガショ4つの足を動かして、振り向くF地点方向‪……‬さっきも、トラックの時も方角的に多分撃ってきた場所。


<ウォースパイト>

『なるほど‪……‬それしかありませんでしょうね』


<セヤナ>

《せやな。

 ええかホノカちゃん?3発や。


 幸い、というか撃ちまくってる相手も分かっとるんやろうけど、F地点はカタログスペック上、両腕のライフルの『有効射程距離』や。


 3発撃ったら、センサーのゼロインは恐らく完了できる。


 そして、相手は残り1発。

 次は8割命中、その次は確実に抉るで》



「‪……‬だから、なんとしてでもF地点の敵に向かって3発撃って、ゼロインを完了させる?」



<セヤナ>

《せやな》



「‪……‬‪……‬で、ウォースパイトさんは、盾代わり‪……‬!」



 隣の重量2脚、何度も言うけど実弾防御の性能は高い社のヤツだ。

 けど‪……‬スナイパーキャノンはそれでも耐えられて‪……‬持って数発なはず。


<ウォースパイト>

『オールドレディは、硬いとはいえ‪……‬

 ディプロドクス・ハロルム、かつては『大地震わせる恐竜セイスモサウルス』と呼ばれた巨大な恐竜の名前を持つだけあって、アレはそう何度も喰らいたくはないですね‪……‬!』


「ウォースパイトさん、経験者?」


<ウォースパイト>

『若い時から、あなたのお婆さんをそうやって何度か守ってあげたのですよ?

 ‪……‬孫のあなたぐらいなら、なんとか守ってあげますよ』


「‪はは、守られてばっかりはやだな。

 必ず倒すよ。すぐに」


<ウォースパイト>

『‪……‬‪……‬懐かしい、セリフですね‪』



 ‪……‬‪……‬おばあちゃん、お墓からか天国からかは知らないけど、どうかちょっとだけ、ちょっとだけ幸運を祈ってね。



「‪……‬やるよ!」



 スナイパーキャノン、両腕とも砲身展開。

 同時に、4脚の姿勢を低く、後ろ脚二つにある姿勢固定用の射突型ブレードアンカーを地面に打ち込む!


 スナイパーカメラモード起動。スコープ倍率は7倍!!



 T字のスコープの先、よくある団地。

 予測射撃線二つと一緒に、機体カメラが見るその先に‪……‬いた!!


 団地屋上、私のと同じ機体!

 こっちを見て‪……‬右腕のスナキャを向けてる!



「来る!!」


 相手のライフルが光る。

 発射光が見えて、一瞬視界が暗くなって同時にすごい衝撃音が。


<ウォースパイト>

『クッ‪……‬!』


「ありがとう、ウォースパイトさん!!」


 自ら砲弾を受け止めた機体が避けた間、予測CGの相手の位置に予測斜線を合わせておいた!!

 ウォースパイトさんが避けると同時に‪……‬1発目!!



 ズドォォンッッッ!!!



 やっぱり、両腕のスナイパーキャノンそれぞれの1発目は、手前とか右ちょっと脇などにそれて外れていった。


 予想通り。そして最悪の予想通り、



 先に零点補正ゼロインを終えた相手の一撃が放たれた‪……‬!!




           ***

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