[変更済]MISSION 5 :うわぁ!なんて機体を拾っちゃったんだ!?









 ───ィィェェェェェェエエエエエエエエ!!






 聞こえるすごい雄叫びを背に、傭兵系美少女の大鳥ホノカちゃん達4人は今、


 襲撃してきた反社会的な皆さんの用意した狙撃型無人eX-Wをなんとかするべく墓場を脱出!


 そしてものすごく幸運で見つけた、その狙撃型の起動前の機体を一機見つけたのだった!



「くく‪……‬見てみろこの機体‪。笑えてくる構成だな」


 開口一番、その狙撃機ようらしい4脚eX-Wを見て、クオンさんは本当におかしそうに言うのだった。


「何がそんなにおかしいんですかねぇ?」


「同じく。意味がわからない」


「あら、若い子には分かりませんか。


 この機体、脚部は大和重工の『八式武蔵-4L』。安定性をかなり重視した狙撃向け脚部です。


 コアはバーンズアーマメンツ製『CHM-1600H』でこれがバーンズアーマメンツ最高傑作と言われている高性能重量2脚型向けのコアパーツ。硬く実防重視のバーンズらしい防御方式ながらレーザーでも数発耐える物です。


 頭部は、大和重工『三式大和-H』。前衛機に乗せるには勿体無い、レーダー範囲も広くカメラ性能も高く各種センサーも強い狙撃戦向けです。


 腕部はご存じ、バーンズアーマメンツ製『AMM-1001B』。傭兵スワンが最初に乗る機体の片割れの腕部用パーツでありながら、その全腕パーツを比較してもトップを争える射撃安定性やエネルギーや重さでも機体にとって低負荷な特性がベテランでも愛される良い腕パーツです」



 ウォースパイトさん、そのメガネとゆるふわウェーブっぽいブロンド髪のもあって、なんか昔学校にいた美人の先生みたいな感じに、思ったより長文な説明をしてくれたのだった。



「‪……‬へー、なんか‪……‬ヤクザが用意したにしちゃ高級だなぁ‪……‬」



 なんて感想しか思い浮かばないけどね!


 ‪……‬‪……‬ってあれ、なんでみんなそんな良い笑顔でこっち見てるの?また私アホなこと言った??



「‪……‬あなたも勘は鋭いようですね」


「へ?」


「ホノカ、お前アホだが今回は正解だ。

 そも、前々からお前と戦った違法傭兵ブラックスワンの装備を考えてみろ。


 企業の支援なしにしたって、随分豪華じゃないか?」



 あ‪……‬!!



「私はあのエセお嬢様と会話した中、ヤツらの資金源である‪……‬というよりヤツらがまとまることで生まれた『財団』なる巨大な資本は、どうやら我々のパーツを完全にコピーできるだけの工業力がある。

 それをうまく運べる物流網もだ。


 おおよそ把握していたとはいえ、こうしてみると衝撃的だよ」


 ‪……‬‪……‬なんてこった、じゃあこの機体は‪……‬!!


「じゃあこれ‪……‬コピー品eX-W‪……‬ってコト!?」


「おそらく正規品と大して変わりはないさ。

 書かれている正規品の証のロットナンバーは刻印されてないだろうが」


「ただ、本物同然のコピー品である以上は、扱い方もそのままということですね。

 誰が乗ります?」


 と、そういえばみんな一応正規の傭兵スワン

 さて、誰が乗るかは‪……‬ジャンケンポン!!


 即決断じゃんけんの結果、私のチョキの一人勝ち。


「じゃ、私がなんとかしますか」


「頼むぞ。ちょうどお前向きだろう」






 てなわけで、コアパーツのコックピットを開くと‪……‬


《ん?なんやウチの出番か?》


 そんな、聞いたことあるような関西弁と一緒に、ちょっと灰色味がかったショートボブ風髪パーツの、コトリちゃんと同じような三頭身ボディがいた。


「ウェザーリポーター?」


《え、何?ウチ、見ての通りプリチーなタイプ02の狙撃型なんやけど、そんな珍しい?》


「いや、実は私の普段使いがタイプ13の子なんだよ」


《ハァー!?あの気難しいパイセン人格のか!?

 ん?チョイ待ち、もしかして自分傭兵スワンかなんか?》


「え、うん」


《じゃあ何や、ウチ機体ごと鹵獲したん?》


「そういうことになるねぇ」


 と、中々おしゃべりな、あのリンちゃんを思い出す関西弁のウェザーリポーターちゃん、餅みたいなデフォルメおてて両方を人差し指向けてくる。


《やるやんけ、自分!

 やっぱ、傭兵スワン名乗るんなら落ちてる機体丸ごと奪ってボロ儲けぐらいはやっとかんとなぁ!》


「それで良いのかーい!!

 盗まれてる側が盗んでる側褒めるんだ‪……‬」


《だはは、せやなーそらおかしいか!!

 せやけどええツッコミやんけ自分?名前は何?ヨシモト興味ある??》


「私は大鳥ホノカ、見ての通り傭兵系美少女です!」


《ホノカちゃん言うんか。おっけーや!

 自分のこと美少女言っちゃう辺り気に入ったわ!》


 おぉ、何やら気に入られた!

 めっちゃフレンドリーじゃん、同じ関西弁のリンちゃんよりフレンドリーかもしれないー‪……‬コトリちゃんよりとっつきやすい!!イオちゃんぐらい素直そうだし。


《ところで、自分この機体使うっちゅーことは、ウチ一応無人機運用の為のもんやん。

 降りとく?》


「あー、でも私も相方にコトリちゃんっていうそのタイプ13の子乗せてんだよね。

 サポートとか、君に頼める?》


《ほー、ええやん。せやな、じゃあその随分おもろい名前つけられたパイセンほどやないけど、サブコンとしてもそこそこ使えるウチが今日の相方や。

 よろしゅうな、ホノカちゃん》


「おし、お願いね!」


 とりあえず、時間も押してそうだし、まずは脱ぎます!!


「ちょ!?何脱いでるのおねえちゃん!?」


「露出狂とかじゃないよ。

 ただ今私服だしさ、神経接続装置かませるには、恥ずかしいけどブラとショーツだけの方が都合いいんだ。ごめん服お願い!」


 ルキちゃんは確か脳波コントロール装置だけだから頭につけて終わりだけど、強化人間はそうもいかないからね‪……‬畳むのまでお願いしてごめん!


 この下着、ちょっと趣味っぽいSF風のブラと中々覚悟決まってそうなハイレグのセットも実は、強化済みの傭兵スワン向けの神経接続装置の取り付け位置邪魔しない用のものだったりするのだ!

 スースーするし、中々際どいのが欠点かな?


 てなわけで、セクシーな格好でコアに乗り込んで、関西弁のウェザーリポーターちゃんを指定位置にセット。

 座席の神経接続装置へ体を固定して、今回はベルトをちゃんとする。パイロットスーツの身体固定機能って便利だったなぁ‪……‬


 みんなが離れて巻き込み事故防止安全確認、でコアパーツを閉める!


<サブコンピュータ>

《メインシステム、パイロットデータ認証するで。

 立ち上げまでチョイ待ちな?》


 目の前のモニターが光って、起動準備。

 よくある英語のシステムチェック項目が出てきて、オールクリアー!


<サブコンピュータ>

《メインシステム、通常モード起動や。

 パイロットデータ、認証。機体とウチの脳みそにアップロード完了や。

 アンテナ3本、データリンクも良好やで〜?》


「じゃ、神経接続スタート」



 目の前のモニター越しの景色から、視界はダイレクトにカメラから直接‪……‬というか、機体頭部カメラが私の目で私の頭になる。


 キュイキュイ周りを見渡せば、ルキちゃん達3人がこっちを見上げているのが見えた。



<クオン>

『使えそうか、ホノカ?』


「ちょっと待ってね‪……‬うわ、このEN出力‪……‬!!」



 この機体、めっちゃエネルギー出力がカツカツだった。


<サブコンピュータ>

《せやなー、はーなんやコレ?

 ジェネレータークッソ安いヤツやん。安い上に舐めた性能のやつやん。

 もし舐めてないにしろ、この機体重めなコアに4脚やぞ。舐めとんのかこの機体組んだバカは!

 関西の人間‪……‬やないけど、AIにバカって言うんは死ねとかそう言う意味なんやで?ウチにそこまで言わせおって!!》


「ブースター、バーンズアーマメンツ製っぽい名前だよね‪……‬?

 あれって、覚えにくいけど大概セールで叩き売りされてるよね‪……‬クソブースターとは言われてるけど」



<ウォースパイト>

『はい、泣き言はそこまで。

 ここにない高性能な機体より、今ここにある機体で戦うしかないのですから』


「うー‪……‬そりゃそうだけど‪……‬」




『高出力ジェネレーターは人権、高推力ブースターは義務』



 コレが傭兵スワンの常識。



 低出力ジェネレーター使ってる傭兵スワンに人権なんてない!!



 エネルギー回復が遅ければ、撃たれて死ぬんだからね。人権なんてものは無いも同然!!



 すぐに動けなきゃ行けないから、ブースターも出力を高くしなきゃいけない‪……‬つまり義務だ。



 まして‪……‬この機体は、4脚‪……‬!!

 パーツ名は覚えられないけど、コレが『4脚』っていうのだけは私の乏しい知能指数が警告を発するんだ‪……‬!!




<サブコンピュータ>

《おばちゃん、それ面白い思って言うとるんか?


 4脚やぞ?

 2脚の2倍の脚の数、2倍の速度と2倍の旋回性能、2倍の安定力に2倍の積載量!

 そして2倍の被弾面積と、2倍のエネルギー消費、2倍の重さに1/2のジャンプ力や!》



 その通りでございます!


 4脚は、今この場にいない相棒のAIヒナちゃん曰く2脚の2倍のメリットと、2倍のリスクが存在する。


 射撃安定性能と速度と旋回性能は高いし、積載量もある。


 でも、その脚の増えた分の重さが、脚の数が被弾面積を大きくしてカタログスペック以上に攻撃に脆い。


 しかも横と前後の移動は早いけど、

 2脚の最低2倍の脚の数だけの重い脚は、ジャンプ力を大きく削ぐ。


 いやね、『機動兵器』って言われてるeX-Wエクスダブルは、この『上下の移動』っていうのはかなり、かなり回避の上で大きな役割を持っているんだ。


 人間は真上が死角、陸上の兵器も、空を飛ぶ戦闘機も実は真上が死角だ。


 だから、逆脚大好きなヒナちゃんなのもあるけど、『上からの攻撃トップアタック』をしやすいジャンプ力と滞空性能の逆脚をすすめてくる。


 そして、こうも言っていた。



『4脚は優れた性能だけど、『機動兵器』を『歩行戦車』にまで貶める脚だ。

 2脚が苦手な傭兵スワンが安易に手を出すぐらいには強力な脚けど、コイツはその性能を過信して罠に嵌りやすい脚なのは間違いないんだよ』



 ‪……‬‪……‬今まで実際に使ったことないけど、それだけビビらせる脚ってなにさ‪……‬!!



<ウォースパイト>

『そうは言いますが‪……‬!』


「分かってる。分かってるから、ウォースパイトさん。

 こんな幸運で手に入れた機体、使わない手はないし使うさ‪……‬ただね?」



 ────実は、もう一個だけどうしても心配なことがある。


 この機体の両腕、その腕で保持した大口径スナイパーキャノンだ。



「このスナキャ‪……‬多分零点補正ゼロインされてない‪……‬!」



<ウォースパイト>

『───!』



 私が心配していること。


 零点補正ゼロインっていうのは、元は人間が使うライフルとかスナイパーライフルとかで使うやつで、


 銃って、本体のライフルが高精度でも、付けてるスコープが微妙に本当の撃った弾の軌道と狙う時参考にする点が、どうしてもズレてるの


 1ミリのズレでも1000m先では1mのズレになる。

 だから、何発か撃って、スコープの中の真ん中の照準点と、ライフルの着弾するところを重ねなきゃいけない。


 これが零点補正ゼロイン


 そして、機動兵器の使うライフルにもそれが必要になる。


 コンピュータ制御されたとはいえ、最初はライフル自体の弾道と、ライフル系武器内蔵のセンサーとコンピュータの予測弾道はズレがある。


 だからか、普通eX-Wパーツ正規品は、買ったらまず最初に実射して、このズレを補正する必要があったりする。


 私は、毎回コトリちゃんに首掴まれて連れて行かれて、1弾倉分の弾代を犠牲にやっていたりした。

 ケチろうとすると、毎回キック、アッパー、連続ビンタのコンボがくる!


 でも‪……‬やった方がいいって言うのは、常に感じているんだ‪……‬!!


<ウォースパイト>

『‪……‬なぜ、そう思ったのですか?』



「‪……‬私の機体を投下しようとした時、私の頼れるオペレーターさんなカモメちゃんは『狙撃です』しか言わなかった。


 普通、カモメちゃんはもっと詳しく言うはずなんだ。

 『至近距離だった』『回避できてよかった』がない。


 てことは、見当はずれな方向に弾丸が飛んでいったけど危険だから退避したんだ。


 でもおかしい。このフレームが安定性特化な4脚なのはウォースパイトさんが説明してくれた。

 狙撃戦向けだって‪……‬じゃあなんで外す?

 威嚇射撃?無人機だよ、それも威嚇する理由はないよ、堕とせば良いんだから。


 つまり、狙ったけど当たらなかった。

 なんで当たらなかったって言うと、このスナキャは零点補正ゼロインがされてないから!」



 ‪……‬‪……‬我ながら、半分勘みたいな推理だ。

 けど、なんかそんな気しかしない。



<ウォースパイト>

『‪……‬‪……‬アンジェの孫、だったわね』


「え?」


 そんな勘任せ推理を披露したら、ウォースパイトさんがそう小さくつぶやく。


<ウォースパイト>

『アンジェもね、まったくもってパーツ名は覚えられませんでしたから。

 でも、こう言う時の勘は間違いがないのですよねぇ‪……‬いつも助けられた』


 ‪……‬‪……‬

 ‪……‬そっか。おばあちゃんと、案外そっくりなんだ私‪……‬ふふ♪


<ウォースパイト>

『勘とは、それまでの経験と知識を無意識に統合した結果生まれた予測です。

 あなたもその歳で私と同じほどの見立てとは‪……‬恐ろしいほど、才能がある。


 ‪……‬作戦を伝えます。

 私に案があります』



 おっと、嬉しがってる場合じゃない!

 なんか作戦があるって?



<クオン>

『して、SASの社長‪……‬いや、『司令官』のお前の作戦はなんだ?』


<ルキ>

『私たちだけじゃ、無理じゃないのかしら?』



 と、いつのまにか拾ったあのヤクザさん方の無線機を片手に、そうこっちに通信するクオンさんルキちゃんの二人。



<ウォースパイト>

『私達、の範囲は4人ではありませんよ?

 幸い、無線は通じているのならば相手の射程圏外とも連携は取れます。

 それに、中にはまだ動けている機体もいる』




 と、ドヒャアッ、と言う音と共に空中をスライディングするような動きでアサルトブーストですっ飛んでくるキリィちゃんの乗るブラックインパルスが一瞬真上を通る。


 と言っても、即座の背中のハッチが空いてストライクブースト。

 本来の用途通りの緊急脱出のための大推力で、飛んでくるプラズマ弾達を避ける。



<ウォースパイト>

『コレならいけます。

 まずは、私のオペレーターを筆頭に皆さんのオペレーター達を使って、必要な情報を集めます。


 その後は簡単。

 戦いながら、零点補正ゼロインしましょう』




 わお!

 中々大胆な作戦!!



<サブコンピュータ>

《ほー、こらアホっぽくてええな!

 踊る阿呆か見る阿呆か、だったらブレイクダンスでも決めたろうやないか!

 な、ホノカちゃん?》



「ま、それしかない。

 ウォースパイトさんを信じようか」



<ウォースパイト>

『ではまずは‪……‬少々、あの戦っている軽量2脚機や墓場の二人に甘えて、情報収集です』



 情報‪……‬


 でも、この状況で一体なんの情報を??




          ***

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