[変更済]MISSION 4 : 剣機道の師範さん達








 傭兵系美少女、大鳥ホノカちゃん困惑!!



「ヒッ‪……‬なんなんだお前!?!」


「ただの剣術道場のお婆さんです」



 強化済みの身体でフル武装のヤクザさんを、対強化人間用の高周波ブレードを奪った上で一人切り、さらには放たれた大口径歩兵用ライフルの弾を切る!


 そんな事をしたのは、もう60代も後半だった気がする、私の死んだアンジェおばあちゃんのお友達であるウタヌお婆さん!!





「テメェみてぇなババアがいてたまるかよぉッッ!?!」




 いや全く、その通りですよねー。


「ウタヌお婆さん‪……‬強化済みだったの!?」


「いえ?

 古い人間なもので、先祖代々いただいた身体には、せいぜいeX-Wを動かすのに便利な神経接続装置しかつけたことはないわよ、ホノカちゃん?」


「ふぁッ!?!?」


「久々に見たが、腕は衰えていないなウタヌ。

 いや、かつてのランク2、『同田貫』を操る傭兵スワン『マサクニ』の名、今だけ復帰か?」


 クオンさん、今なんて言ったの?元ランク2!?

 ウタヌお婆さんそんな強かったの!?



「ご冗談を御老公。私はもう、昔の機体に乗れぬほど衰えていますよ。歳を取らない身体のあなたが羨ましいわ」


「あの、ウタヌお婆さん、それで衰えてるの?」


「あまり自慢ではないのだけどねぇ、ホノカちゃん?

 昔は私もお転婆な娘っ子だったもので、この程度の強化人間プラスアルファになっただけの未熟者程度‪……‬もう、こんな会話しながらも全員斬り殺せた時代もあったの」



 えぇ!?


 いや、おほほほ、なんて笑ってるけど、ちょっと待ってほしい。




 強化人間プラスアルファは、eX-Wの性能と引き換えの苛烈なGとに耐えられるよう、そして神経接続によって操縦しやすくよう、身体を機械化した人間のこと。用はサイボーグっていう昔のSF漫画のヤツ。


 強化Lv.1だと神経接続装置を脊椎に付けただけの人間で、


 今周りを囲んでいるのは、Lv.4辺りの脳とか以外は外も中身も完全に機械化したような状態。私と同じ。


 こうなると、パワーだけならヒグマと取っ組み合いして勝てるし、でかいライフルじゃないと弾くから倒すのには固い鉄も切り裂ける高周波ブレードがいる。





 お分かりいただけた?

 生身のお婆さんが勝てる方がおかしい。




「〜っ、落ち着けですわ野郎どもッ!!

 相手は生身だ、数で押してスタミナ削りやがりなさいッ!!」



 と、あの口調が悪いお嬢様強化人間プラスアルファがすごく的確な指示を飛ばす。



「まずい‪……‬私も!」


「ウタヌさん!無茶はしないで!!こちらにも強化人間プラスアルファは二人います!!」


「ええ。私も歳ですもの。ホノカちゃんもウォースパイト先輩も、心配なんてしないでほしいわね。


 無茶なんてしない‪……‬昔と違って、もう疲れて息も上がってますからね‪ぇ‪……‬」


 じゃあヤバいじゃん!!

 てか、なんで呑気に近くの段差に腰掛けちゃってるのウタヌお婆さん!?



「休憩とは余裕だなババア!!!

 ちょうど墓場だ、ちゃっちゃっと死ねやぁ!!」



 ほら、ライフル来るぞ!!





「────ツナコ、やってしまいなさい」



 瞬間、鞘に収めた高周波ブレードをポンと軽く投げるウタヌお婆さん。



「───ィィェェェェェェエエエエエーッッッッ!!!!」



 その横を駆け抜ける誰か!

 すんごい叫び声!!

 空中を舞っていた高周波ブレードの鞘を掴んで、抜刀!一人の強化済みの身体のヤクザをぶった斬る!!



「ツナコちゃん!?!」



 いややっぱりとは思ってたけど、普段の恥ずかしがり屋はどこ行った!?



「なっ!?」





「キィィェェェェェェエエエエエエエエ───ッ!!!!」



 鬼の形相、って言うのが本当に似合うツナコちゃんの大絶叫と共に、抜かれた高周波ブレードが野球のバットでも持つみたいに構えられて、


 いやそれ、剣じゃなくってハンマーなんだよ、っていう動きで振り下ろす。


 走りながら、振り下ろす。

 で、ライフルごと強化済みヤクザが真っ二つになる!


「キェェェェェェェェェイッ!!!」


 さらに走ってブンブン振り下ろす!!

 剣を打ち込む、って感じ!

 それでヤクザがさんの強化済みボディは、薪が割れるって言う感じに真っ二つになって、白い人工血液が飛び散る。


 でも止まんない。


「キェェェェェェェェェイッッッ!!!!!!!」



 ノンストップツナコちゃん、とにかく前に進みながら、ハンマーみたいな振り下ろし高周波ブレードでどんどん強化済みヤクザさんたちを『薪割り』して倒していく!!



「ざっけんなゴラァ!?!

 生身のパワーでぇ、俺たち機械の身体が何度もぶった斬られてたまるかよぉ!?」



 だけど、ひとりのヤクザさんも高周波ブレードを構えて、ツナコちゃんの受け止める!!!



「バカヤロウ!!受けるなですわよこのダボがぁ!?!」



 だけど、そんな声を出したのは相手の例のお嬢様ヤクザだった。

 そして、その言葉の瞬間、



「キェェェェェェェェェイッッッ!!!!!」



 受け止めた相手の高周波ブレードの反対側が、相手の方にめり込んで、


 受け止めた腕のと、ツナコちゃんの高周波ブレードの十字型の断面を生み出してぶった斬られた。




「えぇ‪……‬!?

 何そのパワー‪……‬!?ツナコちゃんって‪……‬」


「もちろん、あの子神経接続装置を付けるのも怖がったぐらいですから、生身ですよ」



 ズドン、と勢い余って高周波ブレードが地面を斬り裂き、石畳のお墓の道を傷つける。


 この威力!!


 たしかに、昔から横になった丸太に木の棒バシバシ打ち付けてキェーって叫んでた練習見てたけど、まさかもう丸太割れるレベルだった、ツナコちゃんや?



「その太刀筋‪……‬抜いて即ぶった斬った技、打ち付けるみたいな剣撃‪……‬!!


 テメェ、さては『薬丸自顕流やくまるじげんりゅう』ですのね!?!」



 と、相手のお嬢様、レイピア型高周波ブレードを向けてツナコちゃんに言い放つ。



「‪……‬‪……‬正確には‪……‬‪……‬」


「あ‪……‬?」


「薬丸家伝『野太刀自顕流のだちじげんりゅう』。それががベースというだけです。


 剣機道は、結構欲張りなごちゃ混ぜ剣術集団。

 火星に伝わった、古流剣術から剣道のような物まで全て教えられ、自分に合った技を選ぶ。


 その思想と技を持って、鋼鉄のもう一つの身体であるエクシードウォーリア、eX-Wを動かす術とする。


 そういう物です」


「‪……‬チィ!!

 表のなんちゃって剣道女子サークル傭兵共かと思えば‪……‬!!」


 と、ツナコちゃん斬り裂いたヤクザさん達から、高周波ブレードとライフルとを拾い上げて、ひょいとこっちに投げてくる。


「おっと‪……‬ツナコちゃん?」


「ホノカちゃん‪……‬皆さん、ここは私達に任せて、周りのeX-Wとかを何とかしてもらえないですか?」


「え、でも‪……‬!?」


「私達ぐらいのサイズなら、剣があれば充分。

 でも大型となると、やっぱり強化済みの人か、いやもっとおっきいの必要なの。


 お願い。ここは全員、おばあちゃんと斬っておくから」


 あ、目が真剣マジだ。



「‪……‬‪……‬まったく、未だ伝説を残す気なのね、ウタヌ?」


「まぁ‪……‬骨を埋めるには良い場所でしょう。

 どのみち殺人剣の実践剣術を気取る身なのだし、こういう相手をこの歳でするのも一興。

 後、私より御老公な方々なんだから、若いのに任せなさいな」


 なんていうウタヌさんも、ビビってる残りのヤクザさん達の前まで歩いて、死体から残っている高周波ブレードを拝借している。


 ‪……‬なんでちょっと楽しそうなの??


「マジで言ってるの‪……‬正気じゃない!」


「正気じゃないけど出来そうだしさ、ルキちゃんこれ持って!!

 とりあえず私達、クオンさん連れて逃げるよ!!」



 ルキちゃんとウォースパイトさんに受け取ったライフルを渡して、私は高周波ブレードを持つ。


「すまんな、荷物で」


「逃しませんわ、ゴラァ!!」



 こっちに、強化人間プラスアルファの脚力で向かってきたあのお嬢様。

 だけどその後頭部に勢いよく、高周波ブレードの鞘がぶち当たった。


 見たら、他のヤクザに襲い掛かられたウタヌお婆さんが鞘を引き抜いたついでにぶっ飛ばして、抜かれた高周波ブレードを一閃!

 当然のように返り討ちにしていた。

 そういえば、お婆さん昔そんな感じの居合いの技を見せてたな!!あの時は座ってたけど。


「て‪……‬!?」


「キェェェェェェェェェイッ!!!」


 すかさず、お嬢様に地面を砕くようなツナコちゃんの本気パワーでブレードが振るわれる。

 避けた隙にこっちもジャンプ!!距離を離すぜ一気に!!!



「グッ‪……‬剣道女子サークルの部長がぁ、邪魔しやがりましてぇッ!?」


「その剣道女子サークルの部長、ヤスツナの名に置いて、斬ります‪……‬!!」



 名勝負は見れなさそう!!

 とにかく‪……‬まずは、こっちの機体を呼ぶ為の方法考えないと!






「───にしてもどうするの!?

 こんなライフルと高周波ブレードじゃ、対空砲がわりの機体を倒せないわよ!?」


 と、お墓からちょっと離れた森の脇の道に降り立って、走りながらそんな事をルキちゃん言ってくる。


「‪……‬強奪できないかな、機体を?」


「はぁ!?お姉ちゃん正気!?」


「いえ、良い案かもしれません!

 クオン社長、あなたの火星人マージアンとしてのハッキング能力ならば可能では?」


「近づけばな。出来ればEシールドで焼かれる範囲ギリギリが良い」


「よし、その方向で行こう!」


「‪……‬あ、まってそこの交差点の右!

 うそでしょ、良いのがあるじゃない!」


 森を抜けたあたりの交差点。

 ルキちゃんのシンギュラ・デザインドとしての超感覚どおり右に、デカいトラックと数人の強化ヤクザさん達がいた。



「‪……‬へ?」


「‪……‬‪……‬わお。

 よっしゃ超ラッキー!!!ルキちゃん偉い!!」



 襲う!!素早く反撃されないように!!



「やったこのトラック‪……‬eX-Wの輸送用だ!!」


「しかも‪……‬クオン社長、すみませんが出番はない様ですね!」


「‪……‬楽で良かったよ」




 そこにあったのは、

 一機の起動前の、4脚型eX-Wだった!!




          ***

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