[変更済]MISSION 3 :墓場を荒らす不届き者どもへ








 ───家族の隠していた事も知って、しんみり死んじゃったお母さんをおばあちゃんと同じ墓に骨を埋めたばかりの私、藻にふくしている傭兵系美少女の大鳥ホノカちゃんでしたが、



「避けてぇぇぇぇぇぇっ!!!!」



 とっさに見えた光、なんかやばいって近くのクオンさんを抱えて水平にジャンプ。どういうこっちゃとは聞かないで!!そうとしか言えないんだからさ!!


 バシィィィィィン!!


 直後、みんななんとか回避した位置にあったお墓とか道が、光と共に蒸発して真っ赤な穴が出来上がる。



「ぐっ‪……‬!?」


「クオンさん!?」


「ウッ‪……‬!?」


「ちょルキちゃん危ない!!」


 しかも、避けたはずなのにクオンさんは苦しそうな顔するわ、隣のルキちゃんも着地したと思ったら胸を押さえてうずくまる。


 何が‪……‬あっそうだ、私身体は強化済みだし、頭の中のコンピュータとかセンサーが何か教えてくれるかな!?


 計器によれば‪……‬ん?


「いーえむぴーれべる58‪……‬!?」


「やはりパルスか‪……‬直撃を避けて正解だな‪……‬!」


 と、荒い息のクオンさんが、抱えた腕の中でそう呟く。


「ぱるす?」


「パルスプラズマだ。プラズマ兵器の一部は着弾地点に『電磁パルス』を撒き散らす‪……‬!

 主な用途は、対Eシールド減衰効果や、通信阻害だが‪……‬‪……‬


 我々『火星人マージアン』の体内のナノマシンは、このパルスプラズマの波長で活動を強制停止してしまう。


 そこのシンギュラ・デザインドの身体の機能も、私の生命活動も支えるナノマシンの活動が、な‪……‬!」


「!

 ってことは、これクオンさん狙い!?」



 考えても見れば、クオンさんは火星の企業連合トラストを支える1企業の一つ、AI社の社長だ!!


 てか数日前も狙われてたじゃん!!



「来るわよ、団体さんが!」


 と、ルキちゃんは多分シンギュラ特有の特殊な感覚で人数を言い当てたみたいで、


 答え合わせみたいにざっざっざ、とたくさんの足音がやってくる。



 黒尽くめにヘルメット。

 ただ身体を覆うスーツの感じは、多分パイロットスーツにも使われてる防弾素材。


 いかにも、戦闘員ですって感じ。

 ご丁寧に、前に頼れるオペレーターのカモメちゃんに勧められて買った強化人間プラスアルファ用のゴッツイ銃まで持ってる!



「何者ですか!?」


 ウォースパイトさん、意外にも銃を持っていたみたいで、いやデカいねそのハンドガンなんて思っちゃう物を取り出して構えている。

 対強化人間用ですって、主張しているサイズが頼もしい。



「───抵抗してんじゃねぇですわよ、老害がぁ!!」



 だけど、突然超高速で現れた誰かが、一瞬でそのゴツい拳銃を切り裂いた。



「なっ!?」


「ったく、クソみたいな企業のトップを殺しにきたかと思えば、面倒くさい老害つきで嫌がりますのねぇ!?

 しかも、お姉様の仇までいやがるじゃねーですのぉ!?」



 現れたのは、レイピア的な多分高周波ブレードを持ってる銀髪縦ロールのお嬢様。

 なお、ヤンキー顔負けの顔でこっち睨んでる。


 にしても、え、私?


「仇‪……‬?」


「とぼけてんじゃねーですわよ!!!

 サブリーナお姉様をったのはテメーだろうが、大鳥ホノカァ!?」



 ‪……‬‪……‬?



「さぶりーなって誰だっけ?」


「はァァァァァァァァァァ!?!?!?!?」



 私、こんなヤクザお嬢様の知り合いいたっけ?


「‪……‬あのねぇ、お姉ちゃん?

 数日前、デカいドリル持った違法傭兵ブラックスワンを殺してるでしょ、慣れないブレードで‪……‬だったわよね?」


「あ!!アレかぁ!!」


 思い出した!!

 そうそう、慣れない近距離向け機体でなんとか倒したんだ!強かったよ‪……‬


「アレですってぇぇッ!?!

 アタクシの尊敬するお姉様を、アレ呼ばわりってーのはどぉういう了見ですのゴラァッ!?!?」



「いやキレられてもさぁ!私人の名前覚えるの苦手なんだよ!!

 まして通信しかしてない殺した相手いちいち覚えてるのそっちはさぁ!?」


「んだとコラァァァァァッ!?!?」


 もうすっっごいくびの角度でキレられてますけど‪……‬覚えてないんだよ、こっちも。




「‪……‬‪……‬そうか、お前はカリーナ・ピエラントーニか。

 『ミンチお嬢様』の妹分の『切り裂きお嬢様』か」



 と、クオンさんがようやく立ち上がりながら、そう冷静に相手のお名前を言い当てる。



「あぁ?クソッ‪……‬殺そうとしている相手が一番話通じんのかですわよ‪……‬!」


「お前が殺そうとしている相手は、『ピエラントーニ・ファミリー』が生まれるきっかけも産み出した『博打好き次男坊』も顔を知っている、


 そんな長生きが取り柄の女だぞ?」


 と、クオンさんの言葉に、打って変わって視線が鋭くなるそのお嬢様な人。



「あぁ、そうでしたわねぇ?

 アタクシのご先祖様が散々世話になった長生きだけが取り柄のクソ人外女がテメーでしたわ‪ぁ?」


「ピエラントーニファミリーって何?ヤクザ?」


「そうですわよ!!まぁ、マフィアっつー方がアタクシは好きなんですけどな!!」


 マフィア‪……‬!

 とにかく、反社会勢力ってことか!!



「‪……‬‪……‬どうせ殺すなら教えろ。

 お前らは『財団』の手先‪……‬いや、『財団』の一部なのか?」



 と、クオンさんの一言に、ヘッと言い放つそのお嬢様。



「『財団』‪……‬なぁるほど、たしかに。

 非企業経済での経済活動、金の出所‪……‬そういう物を表現した言葉にしちゃあ、随分といいネーミングでいやがりますわぁ?


 ‪……‬‪……‬そうさ、アタクシらのファミリーが、財団の中核の一つ!それで間違いはねぇですわよぉ!!」



 財団‪……‬!

 お婆ちゃんの過去の話でも出てきた言葉‪……‬そういう意味なの?



「‪……‬‪……‬お前たち、まだ火星の統一とやらを諦めていないのか」


「アァ!?!

 そもそもお前らが70年前に突然現れて、それまでこの星を統治してたご先祖様を追い出したんだろうがッ!!!


 落ちた宇宙船の地球の技術とやらで!!

 事実上の地球の植民地化ってやつだろうが!!

 ったく、火星人類の誇りはどき行きやがりましたのぉ!?反吐が出ますわッ!」



 そこまで、知ってる‪……‬!?

 今は、数日前に始めて火星全土へ公開されたはずの、ずっと隠していた地球の人類の存在をこんな詳しく‪……‬!?



「‪……‬‪……‬火星と地球。それが植民地と支配者たる列強の関係になるとまだ本気で思っているのか。


 お前たちは、昔と変わらないな。

 人類の事を過信しすぎだよ」



 フッ、と何処か遠い場所を見つめる顔で、クオンさんが相手を鼻で笑う。



「あ?」



「‪……‬遺言代わりだ。

 昔話をしてやろう。

 まだ人類が、あのバリアで覆われた場所のみで生きていた時代の話だ」



 クオンさんは、そんな遠い場所を見る目のまま、空を見上げてそう語り出す。



「私が、私を作った博士たち、クラウドビーイングが用意した、本来の『自立兵器』、人類を統一させるための敵。


 かつて、コレを滅ぼす為に、一大攻勢を仕掛けようとした男がいた。


 当時の人類生存圏の、長を補佐する立場の人間だ。


 ソイツは‪、長である親友の男のため、その家族を殺した相手を滅ぼし、そして親友の持っていた畑を再建し、

 いや‪……‬もっと巨大で、肥沃な土地で、その何倍も広い畑を作るために‪……‬戦う決意をした。


 それに反対したのは誰かわかるか?」


「‪……‬誰だって言うんですわよ?」




「当時の人類の長、親友の男そのものだよ」



 クオンさんは、見てきたままっていう感じに言い放った。



「長は、人々の安全と安定のために己の過去を犠牲にできる男だった。


 だがな、果たしてそんな鉄の意志を例え親友であっても共有できると思うか?


 いや、誰よりも相手を知っているからこそ、認められない面がある。



 ───長に従い、決して外を目指さなかった面々は、のちに『ユニオン』と名乗る民主主義勢力となった。


 そして、それでも外を目指した男は、そのカリスマから『火星初の皇帝』となって、300年近く続く『インペリアル』の皇帝家の最初の男となった」



「‪……‬‪……‬」



「───アイツは、私に出会ってしまった。

 真実を知ったアイツは、無論ユニオンの初代大統領たる親友とも情報は共有した。


 だが、やはりお互いの指針は変わらない。

 大多数の人民が許さなかった。


 そして‪……‬一部の人間はその二つの対立に疲れ‪……‬

 人は人では無い何かに管理される事を望み、私と私が作り上げた自立兵器の中枢AIに頼ることになった。


 オーダーと呼ばれる勢力の管理者は、そうして生まれた。


 人類が3つに分かれるのに、そんな年月はいらなかったよ」



「何が言いたいんですわよコラァ!?」



「人間は群れで生きるが、決して個人個人が完全に同一になることはない。


 私がクラウド・ビーイングを見限った理由、そして何より50年前にお前たち火星統一政府側について、負けた結果裏社会なんて物を作る羽目になった1番の理由だ。



 お前たちの考え、お前たちの思想、


 火星は火星人類の身の力で発展し統治すべきというその考えは、


 それがこの星の絶対の真理、この火星唯一の正解になるわけがない」



 な、と例のお嬢様ヤクザさんが驚愕の顔を見せる。



「否定するというのなら、私が作り上げた企業の力をもっと利用してみろ。

 嫌だろう?どうも、どこからか最新の設計図を手に入れてジェネリックパーツを使っているようだが、だったら初めから工場そのものを裏で買収すれば簡単なはずじゃあないのか?


 しないだろう?言いたいことは分かるよ。

 地球の手先の企業なんぞ使いたくはない、だろう?」


「なんでそれを‪……‬!?あっ‪……‬!」



 え、じゃあ今まで戦った違法傭兵のeX-Wパーツって、相手側がコピーして作ってたの!?

 じゃあ、本来限られた人にしか向けられてないパーツも‪……‬!?



「恐らくだが、お前たちの擁している違法培養されたネオ・デザインドも、わざわざ戦場や色々な場所で死んだ個体から丁寧にDNAを回収して培養し、作り出したジェネリック個体というところだろうよ。


 いや、語っていてあれだがよく頑張ったな。

 お前たちは、少なくとも本気で私が譲り受けて発展させた企業連合体トラストを打ち倒し、その役割を引き継ぐ気だったんだな」



「過去形だとテメェ!!

 これからそうなるんだよ!!」



「────だが無理だよ。もう遅い。

 お前たちが、この局面でやろうとしていることは、

 火星を混沌と戦火の渦に叩き込むだけだ。


 それが引き金になり、私を作ったクラウド・ビーイングは本格的に私たちと同化しようと思考するだろう。



 火星の人類の明日を縮めているのは、


 他でもないお前達だよ、『財団』。

 いや‪……‬」



「もういい喋るなや!!

 お前の魂胆ぐらい分かってんですわよ!!」





 ─────バレてたみたい。



 遠くの空、ボンという音が響く。




<カモメ>

『すみませんホノカさん!地上から狙撃です!!

 スナイパーキャノンを持ったeX-W群を確認!

 数は不明ですが、2機以上!!』



『こっちこそごめん!急ぎの呼び出しでさ‪……‬状況確認できなかった!』



 ───そうです、こっそり無線で私の機体を呼んでいました。


 けど、それも読まれてたみたいで‪……‬!!




「テメェの御託は聞き飽きましたわァ!?

 仲良くまとめて、コイツで殺す!!」



 そんなセリフと共に、見えない位置から上昇してやってきた機体は‪……‬全身AI社ハードレインフレームかつ多分プラズマキャノン持ち!

 さっき撃ってきたの、こいつ!?



「皮肉が効いているな。我が社自慢の無人機PLeX-Wか」


「ちょうど墓場ですわ!!

 跡形もなく、消しとばして────」



 だけど、どうもには気が付かなかったみたいで、


 無人機ハードレインフレームの真横から、『黒い衝撃』が激突する!




 ズドォンッッ!!!




「なんだぁッ!?」


 ハードレインフレームは、脆いのが欠点。


 ましてや、キリィちゃんの操るeX-W『ブラックインパルス』の射突型近接兵装とっつきの一撃は、

 ガチガチの重装型タンク脚相手でもぶち抜く破壊力だ!!



「ありがとうキリィちゃん!!」



<キリィ>

『いい依頼額じゃけぇ、受けん手は無いからのぉ!?』



 ドヒャア、ドヒャア、と軽量2脚の運動性能で、狙撃を避けるキリィちゃん。

 うまくいけば、私の機体も降ろせる!



「チィッ!!!

 だったらプランBに変更ですわよゴラァ!!」



 おっと、でもまだ周りには、強化済みヤクザさんフル武装でいるんだった!!


 こっち丸腰だけど‪……‬行けるか‪……‬?



「───まったく、墓場というのに不敬な人間ばかりなのね‪……‬」



 その時、ゆらりと前に出る影。


 その着物姿は‪……‬ウタヌお婆さん!?



「ちょ、ウタヌお婆さん危ない!!」


「なんだババア?耄碌もうろくしすぎて状況が分かんなくなったかぁ?」


 ギャハハハハハ、と笑う強化済みヤクザさんたちだけど、実際やばいって!!

 剣術できるだけで、生身のお婆さんなんだよウタヌお婆さん!!


「だったら、もっと早く殺しなさい」


「ははは‪……‬あ?」


 よりにもよって、1人の圧倒的大柄な強化済みボディの武装ヤクザさんの前まで───もうガチ恋距離みたいなレベルで近づいて、あろうことかウタヌさんとんでもない事を言い出す。


「こんな距離まで近づくのを許すとは。

 所詮はゴロツキがオモチャを手に入れてはしゃいでるだけね。

 私のようなお婆さんで無ければあなた、死んでいますよ?おほほほ」



「〜ッ、年寄りだからって調子のん─────」


 わざわざ拳を振りかぶって、強化済みのパワーで殴る。


 死────その文字が皆浮かんだその時、


 ズルリ、と強化済みヤクザさん、上半身と下半身が斜めに分かれて地面に落ちる。




 はい!?



 なんで!?なんで突然二つに分かれて!?


 いやその‪……‬理由は一目瞭然だけど、認めたく無い光景があった。




「あら、お婆さん相手でも死んでしまったのね?」




 ────ウタヌさんの手に握られていたのは、相手の腰に差してあった直刀型の対強化人間用高周波ブレード。


 まって?じゃああの一瞬、

 強化済みで知覚も強化されてるはずの私にも見えない速さで相手から高周波ブレード奪って、


 そのままぶった斬ったって‪……‬コト!?


 早いのも凄いけど、私は知っている。


 高周波ブレード、合金性の刀身は案外長いし太い。

 付け根のつかっていうかグリップ部分、高周波を生み出す装置なんでコンパクトだけど重い。


 しかも高周波発生中は刃が結構暴れん坊で‪……‬




 つまり使う方も強化済み前提の武器だ。



 それをあんな涼しい顔で生身で持ってる!?




「う、動くんじゃねーぞババアァァァァァ!?!」


「たわけッ!!

 そこは『なぜ殺せた』と素直に言えッ!!」


 それ言っちゃうんだ。

 しかもぶった斬った相手から柄の部分まで回収してわざわざ鞘に収めてる!余裕だねウタヌお婆さん!?



「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!??」


 当然、相手は発狂して銃を乱射した。

 流石に死ぬ────と思いたかったけど、またもや予想外!!


 ウタヌさん、鞘を左腕に持ったまま高周波ブレードを抜刀、銃弾を全部切り裂く!!



「「嘘でしょ!?!」」



 私もルキちゃんも、当然そう叫ぶ。

 あのライフルたしか強化人間相手用のでっかい弾撃てるやつだよね?コンクリも穴が開くような威力の。




「ありえねぇだろそれはよぉぉぉぉぉ!?!?」



 流石の強化済みヤクザさんも、その叫びはお気持ちはわかります。



「なっているのだけれども、まだ信じないと?」


 煽りキレッキレだよウタヌさん!?

 全弾切り落したし!!!


「ヒッ‪……‬なんなんだお前!?!」



「ただの剣術道場のお婆さんです」



 それが強すぎるんだけど!?

 きゅ、急になんか安心しちゃってきたよウタヌお婆さん!!?




           ***

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