[変更済]MISSION 7 :その名は『恐鳥』







 はい、傭兵系美少女の大鳥ホノカちゃんです!



 じゃあ今日は早速‪……‬アリーナやっちゃいましょうか!


 場所はいつもの、ヨークタウン沿岸区の廃棄都市ステージ!

 壊れかけのビルとかがあったり、道路が陥没して水に沈んでたりもするいつもの場所!!



 今回のお相手は‪……‬?





<ミツタダ>

『この度は試合に応えていただき誠に感謝します!

 剣機道けんきどう、『6段』。ミツタダの名を拝命しております!

 拙者のような若輩者、我が機体『燭台切しょくだいきり』ごと叩きのめすつもりでどうぞご遠慮なく!』




 右腕にレーザーブレードと左にハンドガン、って感じの中量二脚型‪……‬で良いんだっけ?あってるっけ?



「けんきどう、って何さ?」


<ミツタダ>

『古来より地球に伝わる、剣術の心得と技を持ち、戦場を生き抜く術とこのeX-Wの操縦技術を向上するを理念にした武の道です!!

 拙者自身はまだまだひよっこですが、我が剣の冴えを侮る事なかれ!』



 うわー、時代劇っぽいー!!



<コトリ>

《実際、ガチタンが苦手なタイプだな。

 張り付きブレード、ハンドガン硬めか‪……‬

 ハンドガン、威力は低いけど大口径でさ、その衝撃でガンガン脚が止められるんだ》


「じゃあどうしようかな‪……‬まぁタンクってそもそもあんま動かない感じだし?」


<コトリ>

《そこさ。タンクの利点。

 コイツは重い。履帯を使う移動は案外速いけど、ブーストの速度なんてたかが知れてる。

 でも、逆にいえば多少の衝撃で止まるような軽さじゃない》



 なるほど。重いからこその強さってか。


<コトリ>

《君、悪癖だけど殺せると思ったら避けないで火力叩き込む事あるよね?

 でも、今回はそれがメインの戦い方になる。


 良いかい?ガチタンの戦術は単純だ。

 たった一個のシンプルな『思想』を元にして戦うんだ》



「思想‪……‬?」



<コトリ>

《『やられる前にやれ』


 こちらの装甲がレーザーで溶かされるより早く、剣で斬られるより早く、砲弾で穴だらけになるより早く、持ってる武器全部ぶち当てて殺せ。


 避けるとかかわすとかまず無理だから考えるな。


 とにかくその積載量全てに積んだ攻撃手段をこちらの装甲が全部削り切られるより先に全て叩き込んで殺せ。


 これがガチタンの基本思想。


 『やられる前にやれ』、だ》



「‪……‬なるほど!」


 やられる前にやれ、ね。


 良いじゃん。やられる前にやれば良いなんて、おバカな私でも分かりやすい!


<コトリ>

《始まるよ!

 ティタニス‪……‬恐鳥の名前を持つ新しい機体の初陣だ!》


「ところで今聞くのもあれだけど、

 武器がこのサンなんとかだけでも何も言わないってことは‪……‬これ一本で大丈夫な武器って信じて良いってことだよね?」


<コトリ>

《そういうことさ》



 コトリちゃんがそこまでいうのなら、多分そういう事だし、私も使う武器これだけってのは分かりやすい!





<アリーナ司会>

『それでは試合を開始する!!

 カウント終了と同時に、両者始め!!』



 5、

 4、

 3、

 2、

 1、



 スタート!





「いこうか恐鳥ティタニスちゃん!!」





 開幕で悪いけど、とっくにロックオン距離だ!

 サンなんだっけ?の威力を試す!



 カァオッ!カァオカァオカァオッ!!!


 ────まず、正直驚いたのは、その連射性能だった。

 エネルギーの減りも凄いけど、すっごく当たったら痛そうなエネルギーの塊みたいな砲弾が‪……‬

 こんな速さで吐き出されていいの!?



<ミツタダ>

『ぐっ‪……‬当ててくると!?』



 ま、相手も私の手口知ってるからとっくに回避してるから、二発しか当たらなかった。

 問題は、一発目でEシールドが消えて、二発目で本体の肩の装甲吹き飛ばしたってところ!!



「やばい威力じゃんこれ!!」


<コトリ>

《でも殺しきれてない!!

 しかも相手も冷静だ!!》


 見えてるよ。


 あの時代劇みたいな感じの子、なんと忍者みたいにビルの合間に隠れて動き回ってる!


 狙いをつけさせない気だ‪……‬

 そして近づいて、一発って感じかな!?


「うわ、こりゃキツいね」


<コトリ>

《ガチタン、旋回力が低いとは言わないけど、やっぱり機動兵器としては致命的に運動性能が低いんだ。

 来るぞ。

 多分側面か背面から、斬ってくる‪……‬!》


「‪……‬‪……‬だったら、こうしちゃうかな?」


 私は、ティタニスの履帯を動かして、バックである場所へ向かう。


 と言っても、何のことはない場所。

 近くの崩れた廃ビルの中、まだ無事な壁を背にして止まる。



<コトリ>

《ほー、考えたじゃないか。

 これで相手は上か側面からしか斬ってこない》


「でも、正面は絶対にない。

 撃たれるからね‪……‬私もこのサンなんだっけ相手に正面は嫌だな‪……‬」


<コトリ>

《サングリーズル。

 でも同感だ‪……‬相手は真っ直ぐだけどバカじゃない》


「‪……‬でも、これで良い。

 後ろから来なければ、それでいい」


 そう、問題はそこ。

 相手はもう絶対この右腕のサングリーズル相手に真正面からやってこない。


 となると上か、背部は塞いだから横からくるはず。


 レーダー、未だにグルグルジグザグ動いていることが窺える。


 リコンを飛ばして‪、すぐに視界に周りを動き回る機影を見る。



「コトリちゃん、確認するけど、ガチタンの戦い方は『やられる前にやれ』、だね?」


 右に動く相手。来るか?


<コトリ>

《そうだよ。それが?》


 左に動く相手。まだか?


「他の特徴なんだっけ?」


 真上を横切る。焦らすの上手いねぇ。


<コトリ>

《ものすごく重い。重装甲だしね。

 まともなブースターでも推進力が足りないぐらい》


 後ろ‪……‬な訳ない。


「だろうね。避けんなってことは、アサルトブーストも大して動かないわけだ」


 右‪……‬いや左かな?


<コトリ>

《今のアサルトブースターなら割と動くけど、こんなデカブツが一瞬で真横に動くと今度は慣性ですぐ反対側にアサルトブーストするのもキツいね。

 アサルトターンもちょっとブースター推力的に遅いと思うな》


 左‪……‬左から来る‪……‬!


「それが聞きたかった」


 敵のショクダイキリとか言う機体が跳躍する。


 上‪……‬じゃない!!

 右側に降りて即座に旋回して、レーザーブレードを展開した。


<ミツタダ>

《切り捨て、御免ぇぇぇぇぇぇぇんッッ!!!》




 私は、




 ─────どうやら運が良かったみたい。





 ドヒャアッ!!


 旋回も銃口を向けるのもしない。

 相手のブレードよりちょっとだけ早く、右にアサルトブーストしてティタニスを思いっきりぶつける。


 ドゴォッ!!!


<ミツタダ>

『────!?』


 タイミングバッチリ、相手の機体の右腕部がへこんで曲がるような衝撃で相手が吹き飛ぶ。

 切られる前に、やってやった!


 ようやく動かした上半身。

 戦車の大砲が伸びてる四角いところみたいに真横を向いた上半身と、銃口がもう相手に目の前のサングリーズル。



 カァオッ!!



 一発で十分。

 これで終わり。


<ミツタダ>

『‪……‬見事!』


 ズシャアン、と倒れる燭台切、だっけ機体名?

 まさか、こんな褒められたもんじゃない戦いで、褒めてくれるとは‪……‬良い人だったね、相手!


「どうも。あんたも強かったよ」


<コトリ>

『なんて無茶な戦い方だよ。タンクで紙一重な技使って、危うく斬られるところだったよ?』


「やられる前に、やってやったでしょ?」


<コトリ>

『‪……‬‪……‬ふふ、たしかに!』




 ブー、と大音量のブザーのような終了の合図が流れる。



<アリーナ司会>

『試合終了!

 勝者、ティタニス!!』



 途端、前と違って拍手喝采の周りの音が聞こえてくる。


 カメラアイでズームした観客席では、案外大盛り上がりな感じだった。



「ま、気分良く終わりってことね。

 賞金ゲットだ!!」



 なるほど。

 ティタニスの使い方、ちょうど分かる戦いだったかも!



           ***



「お疲れ様です、ホノカさん」


 ちょうど、アリーナのガレージで迎えてくれたオペレーターさん。

 うん、まさにちょうど良かった。


「うん。

 ちょうど良かった、オペレーターさん話があるんだ」


「はい?どうなされましたか?」


「‪……‬実は、昨日から考えてたんだ。

 そろそろ、オペレーターさんのことオペレーターさん言うのもアレでしょ?


 名前。とりあえずどうするかだけ考えてたんだ」



 突然こんなこと言ったもんだから、オペレーターさんロボットと思えない凄まじくキョトンとした顔をする。


「てなわけで‪……‬コトリちゃん、まずはいいかい?」


《なんだい?》


「そもそも、機体名を決めたのはコトリちゃんじゃん。

 アルゲンタヴィスの方に選んだエンブレムから。

 あれはたまたまだったけど‪……‬そもそもアルゲンタヴィスって鳥の名前だっけ?」


《そうだよ。エンブレムのコンドルから。

 地球の古代、新生代に生きていた大型のコンドルの仲間からだ》


「そうそう、おっきい鳥。たまたま私の苗字と同じ〜。

 ティタニスもおっきな鳥だっけ?」


《そうそう。恐鳥っていう恐竜が滅んだ後栄えためっちゃ攻撃的なダチョウみたいなの。

 全長が2.5mぐらいって言われてるのがティタニスだね》


「デカいね‪……‬

 で、君はちっちゃいサイズだからコトリちゃん」


《色々言いにくい理由で、不本意ですがね!!》


「つまりちっちゃい鳥!


 じゃあ、オペレーターさん中くらいの鳥から名前つけるのどう?

 ほらリンちゃんの所もなんとか神話で統一してたし。



 そう、昨日から何と無くそんなこと考えていたのだ!


 ‪……‬‪……‬言ってみて、オペレーターさんはすっごいキョトンとした顔で、唐突に頭の両脇、耳の代わりの機械部分を触る。



「まず、中型の鳥類のデータを検索して行きますね」


「いやいや、そこまでする!?

 コトリちゃん、中くらいの鳥で良いの知ってる?」


《中型ね。

 だいたいカラスか‪……‬あ、あそこの鳥ぐらいの奴が一応中型じゃない?》



 と、遠くの空でカーカーなく白い鳥が見えた。


「カモメ?」


《どう聞いてもあの鳴き声ウミネコでしょ》


「いや分かんないよ‪……‬

 あーもうじゃ、いっか、カモメで。ウミネコはなんかこう、しっくり来ないし。


 よし!今日からオペレーターさん改め、カモメちゃんだ!

 適当だけど、カモメちゃんで良いや!

 よろしくカモメちゃん!」


 と言うわけで、オペレーターさん改めてカモメちゃんだ!

 いいじゃん、親しみを込めてて!ちゃん付けでも!


 と、言った私の手をがっしり掴む、オペレーターさん改めカモメちゃん。


「改めて、私はカモメです。

 よろしくお願いしますね♪もうオペレーターさんじゃないですからね?カモメかカモメちゃんと、ちゃんとお呼びくださいね!?」


 おぉう、すっごいキラキラした目と笑顔‪……‬!

 ‪……‬もうちょいかっこいい鳥の方が良かったかな?

 まぁいいか‪……‬喜んでいるようだし。


「まずは私の同僚でもあるヘリに、カモメのエンブレムでも探してつけておかないと!!

 ええだって私ことカモメが乗ってますもの!!

 そのぐらいしなきゃ‪……‬うふふ‪……‬カモメかぁ‪……‬可愛い響きに良いモチーフ‪……‬うふふふ」


「そ、そんな気に入ったんだ‪……‬」


「もちろんです!!

 個体名として、とても良質です!!

 偶然というか、要素はあるものの最後は乱数的に決まったのも良いです!!

 偶然通りかかったウミネコさんありがとうー!」


 自分を名付けられて喜ぶロボットって、なんかそんなSF小説あったよな‪……‬歌うぐらい喜んでるよカモメちゃん‪……‬


「あ‪……‬そうですホノカさん!」


「どうしたいカモメちゃん?」


「はい!

 明日なのですが、一個依頼が入っております。

 ちょうど、タンク向きなんで後で確認していただけませんか?」



 おぉ、依頼だ!!

 よっしゃ、アリーナも良いけど、やっぱり一番稼げるのは依頼だしね!



「どんなの?見せて!!」



           ***

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る