[変更済]MISSION 8 :割と地味で面白みのない戦い方だった
────傭兵系美少女の私こと、大鳥ホノカちゃんは今日も
ちょっとギシギシ言う気もする新機体ティタニスちゃんと共に、ヘリで揺られながら……
<カモメ>
『わーたーしー、カモメちゃーん♪
戦場ーのー、運び屋ー♪
わーたーしー、カモメちゃーん♪
頼れーるー、オペレーターさーん♪
らんらーんららー♪ らんらーんららー♪
らんらーんららー♪ らんらーんららー♪
らんらーんららー♪
今日もいい天気ー♪』
「なんか癖になる歌なんだよね、カモメちゃんのこれ」
<コトリ>
《私も何か知らないけど妙に好きだな、これ》
本日は快晴。場所は最近ドンパチばかりの人類生存圏の外の周り、それも下は荒野!
意外とヨークタウンから遠い場所だからさー、ここ苦手なんだよねー。
<カモメ>
『本日の任務は、不法武装集団再排除です。
ここガリブ砂漠は、元々敵自立兵器群のプラントがあった場所であり、現在は旧プラント地域はインペリアルの大規模農場地帯へ変わっております。
ところが、交通に必要なルートに度々不法武装集団が現れ被害が出るようになり、』
「気のせいかこの前同じこと、前はここにくる前に聞いたような」
<カモメ>
『はい……
また同じ不法武装集団が占拠しております。
敵主力はやはり、』
<コトリ>
《戦車でしょどうせ》
<カモメ>
『はい…………今度は、なぜか最新型のレールガン搭載タイプです。
装甲も前の比ではなく、何より熱光学迷彩があるそうです』
「性能違うだけで、前と同じだよね?」
うーん、前に一回やったことあるぞー?それもつい最近!
<コトリ>
《またかよ。
まぁいいか。新しい武器の性能テストには充分だ》
そう、ティタニスは今新しい装備になっていたのだった!!
えーと、左腕になんか大きな折りたたみ型のスナイパーライフル……だっけ?と、背中にミサイルポッドを新しく。
「この武器強いの?」
<コトリ>
《君向きとは思うんだけどね。
背中のは、レイシュトローム製
……まぁ実はあだ名の方が有名なミサイルだけど》
「どんなあだ名なのさ?」
<ヒナ>
《ストーカー》
なにそのめっちゃ粘着質なあだ名。
<コトリ>
《で、左腕が本命。
私のだーい好きなO.W.S.製『06SC B-excelsus』。
いやマジで良い感じのやつがマッコイ仕入れてくれて良かったよ。
メンヘラなこと言う割に品揃えしっかりで、仕事はできるんだよな》
「なにがどう良い感じなんだか」
<コトリ>
《君、滅多に弾外さないし、意外とロケット当てるのも上手いからこそこれにしたんだ。
コイツは、スナイパーキャノン。スナイパーライフルとは違って、本当にスナイプするのさ。
まぁ、やってみた方が早いか。ちょっと起動してみ?》
ほいほい、と左腕のスナイパーキャノンとやらを展開……うぉ長いな。
構える……と思ったら視界が変わる。
私の強化された身体、機械化された脊椎を通して、多分ティタニス左腕のスナイパーキャノンとかのスコープ……センサーっていうべき?に私の眼が接続されたんだ!
「映画とかでみるスナイパーのスコープ覗くやつ!!」
<コトリ>
《そゆこと。
マニュアルで撃つのは手間かもだけど、多分君こっちのがなんか相性いいよ。
なんなら、もう射程圏内なら撃つ?》
「……本当にいるんだけど」
というか、視界の先にいるんだよ、戦車。
ズームしたらくっきり見える。
というか、当てられんじゃないかなこれ?
<コトリ>
『撃つなよ。反動でヘリがバランス崩すからね』
「心読まれちゃったか……」
<カモメ>
『間も無く作戦領域です。
降下しますか?』
「お願い!」
<コトリ>
《カモメちゃんや。
ついでで悪いんだけど、相手のスキャンと大気の状態のデータ、こっちに回して》
<カモメ>
『了解。
もしや、スナイパーキャノンの真価を発揮するんですか?』
おいおい、ここに分かんないアホの子がいるんだぞ!
ちゃんと説明しなさいな!!
<コトリ>
《ホノカちゃんや、今から大変に地味でありえないほど一方的な戦いをしよう。
このスナイパーキャノンと、安定性の塊なティタニスを使ってね》
とか言っている間に、ガコンとティタニスを切り離し。
一体なにをするのやら……!
***
ギュラギュラギュラ……
『さぁ来るなら来い、足付きどもめ!!
我ら復活の機甲紳士同盟!!
もはやただではやられない!!』
戦車の中で叫ぶ不法武装集団の一人。
しかし、その戦車も最新型であり、言葉通りただではやられないだけの性能はあるはずだった。
『砲塔の旋回も早い。
これなら今度は勝てますかね?』
『支援者には感謝だな。
『南西、12km先に一機きました!
……!!
タンク脚型……eX-W!!』
『ぬぁんだとぉ!?!
よりにもよって……紛い物で来るか!!!
侮辱!!本物の戦車乗り相手に、そこまでの侮辱をするか!!』
戦車集団が散開を始め、目標へ向かってそのレールガンタイプの主砲を向け始める。
『1.5km以内に近づけ!直射性が高い主砲だからな!
地形を利用して頭だけ出すように狙え!!』
『敵のヘリがこちらをとらえていますよ』
『ヘリに気をつけろ!だが足を捨てた紛い物は、まだ距離があるは────』
ボン、と一台の戦車のすぐ近くの土が弾けた。
一瞬、なにが起こったのか分からなかった次の瞬間、
***
<カモメ>
『着弾です。右01、角度003修正』
<コトリ>
《弾道予測線修正。ホノカちゃん、ちょい右に動かして線が赤くなったら撃って?》
視界に映るものすごく斜めに構えたスナキャと、そっから伸びるCGの線。
その線が赤くなったので……発射!
ボォン!!
ぶっ放された弾丸、お空に撃って大丈夫かなって思ったら、ああそうか重力あるもんねって感じに曲がって、見えない荒野の先に消える。
<カモメ>
『弾着!効力射、目標1撃墜』
「当たってんのこれ?」
<コトリ>
《当たってる当たってる。
そもそもこれ直射がメインだけど、実弾兵器なんだから弾は放物線描くしね。
10kmも先ならこういう使い方もできるんだ》
<カモメ>
『目標2、左9、角度-8』
<コトリ>
《ほら、次だぞ!いう通りに動かして!》
いきなりなので自信ないけど、まぁティタニスを左に動かしてーの、ちょっと気持ちスナキャを下に向けてーの……発射!
また弾がCGの放物線の先の見えない荒野に吸い込まれる……
「当たってんのこれ!?」
<コトリ>
《弾道観測!!》
<カモメ>
『左02修正。角度そのまま!』
<コトリ>
《はい撃って!!》
撃ちまーす!
これ本当に当たってんの?
ずっごい地味で分かんないんだけど!!
***
ボォン!
戦車の一台がほぼ真上から当たった砲弾で破壊され、爆ぜる。
基本的に正面を重視した装甲の戦車は、構造上どうしても上下と後ろの装甲が弱くなるのだ。
『チィッ!!見誤った!!
奴は戦車ではない!!『自走砲』だ!!』
『まだこの砲の有効射程外です!!』
『しかし、敵ながらなんて腕だ!!
観測射撃から次弾で必ず当ててくる!!
観測手も確実だ……くそう!近づけ!!
とにかく、こちらの土俵に立たねば勝てん!!』
未だ爆ぜる地面、砲弾の雨、
男たちは、なんとしてでも戦車の中で相手へ近づく。
***
もう何度目か分かんない、当たってんのこれ?な攻撃が続く。
<カモメ>
『少しバラけてますね。距離的に、スナイパーキャノンだけでは難しそうです……
ヒナさん、私のヘリにロックオン同期を』
<コトリ>
《おっけー。
ホノカちゃん、ストーカー起動して!》
「かしこまりー」
次はミサイルか……背中に集中して、ほい。
<カモメ>
『ロックオンはこちらでやります!
完了と同時に、発射お願いしますね?』
<コトリ>
『ストーカーミサイル、同時発射型じゃないから、一発づつ撃とう。最初のくるよ!』
早速、私の視界に一個ロックオンマークが見えた。
ミサイル発射!
って、当たる前に次のロックオン?
<コトリ>
《早く撃って!当たるからちゃんと!》
「まぁそういうなら撃つけどさ!」
こんな遠くから戦うの初めてだけど、大丈夫なのこれ!?
***
また一台、今度はミサイルが当たって爆散する。
『くそぉ!!なんて射程距離だ!!
侮っていた……我々は侮っていた!!
相手は分かっている!!戦いのセオリーを!!
卑怯とは言えん……だが!!』
ここで切り札を使う事を決めたようだ。
ヒュン、と戦車たちの姿が消える。
『近づいて見せる……!
そこからが勝負だ!』
***
<カモメ>
『しまった!熱光学迷彩!!』
なんかすごい装置の名前出たな!!
<コトリ>
《ステルスか。厄介だな……しばらくロックオンもレーダーも映らないし、光学情報もダメだ》
「探せないのそれ?」
<コトリ>
《いや、この頭には『生体センサー』がついている。
怪しい言い方だけど、生物特有の揺らぎを観測するっていう代物で、人が入っているならロックは可能》
<カモメ>
『コトリさん、ですがたしか最大ロック可能距離は……
相手の主砲の射程と、同じだったはず……!』
<コトリ>
《そう。
つまり、ロックできる頃にはお互い撃ち合う距離だ》
「……ふーん、良いじゃん別に。
ようやく、撃って当てられる距離になったって事だし」
急に周りが静かになったな……そう思うだけ?
「いいさ、元々eX-Wってそういう兵器でしょ?
残りはお互い撃ち合う感じでいこう」
<コトリ>
《レールガン、大和重工製だし当たると痛いぞ?》
「やられる前にやれ、でしょ?」
<コトリ>
《……たしかに、それしかないか》
風向きが変わって、ついでにこの荒野の砂が舞い上がる程度に風自体が強くなる。
なんだっけ?西部劇っていうんだっけ?
そんな緊張感……こっからは、いつも通りの撃ち合いだ。
静かな時間が過ぎる。
荒野の決闘、って言葉をようやく思い出した。
でも…………私は、
それにすぐ気づいたおかげで、左腕のスナイパーキャノンを構えられた。
「見えるじゃん、熱光学迷彩!」
一発!
なにもないはずの空間に、穴が空いて直後に元の戦車のシルエットが見えて爆散する。
<コトリ>
《どうしてわかったの!?》
「いや、砂被ってる」
案外このティタニスの頭も、カメラ性能いいね!
砂被ってる輪郭がくっきり!
そこだ!スナイパーキャノン二発目!!
戦車一台撃破!
と思ったら左から衝撃!
<コトリ>
《撃たれた!!》
「知ってる!!」
ギュラギュラこっちも履帯で動いて、旋回はアサルトブーストで突然に!!
カァオッ!
サングリーズルのプラズマちゃん直撃!!
横の戦車の反撃を喰らいつつ、こっちもカァオッって消し炭に!!
「やっぱ重いなティタニスちゃんは!!
避けるより反撃って言葉を体で感じる!!」
一台が真横まで迫ってレールガンを向けてくる。
こっちの上半身だけ向けて……同時に撃つ!!
なんとかレールガンは掠っただけ。逆にこっちは命中!プラズマ強いな!!
でも今度はタンク脚からみて真正面!
「ッ!!」
ならアサルトブースト、そんで
ガスンッ!
相手の戦車が横転して、3回転して横向きに止まる。
ありがたくそれを盾にレールガンを防いで、撃った別の戦車へスナキャを当てる。
でも弾かれた。
じゃあヤケクソの三発ぐらい!!命中したらようやく黙った!!
<コトリ>
《相手も真正面か側面なら実弾防御は高めだね。
エネルギー兵器は弱々だけど》
「ヒナちゃんのいう通り、サングリーズル頼りになるね!」
カァオッ!
一発で戦車が消し炭になるし、当てる方向とか考えなくていいのもいいね!
でも、もう一個いう通り、スナキャも地味に数発で戦車が落とせる。
結構好きかも……!
「これで最後!!」
最後、真正面からやってきた相手の攻撃を受け止め、返礼のプラズマを打ち込む。
これで……熱光学迷彩なければ、全滅だ!
<カモメ>
『……スキャン終了。
事前情報通りの数の戦車が……全て沈黙!》
<コトリ>
《案外手間取ったね。でも作戦終了だ》
「…………このスナキャ、案外良いね。
アルゲンタヴィスに戻っても使ってみるかな?」
<コトリ>
《気をつけて。2脚だと安定性の差でちょっと当てにくいから。
タンクか4脚かじゃ無いと流石に当てるのが難しいんだ》
なるほど……それは後で確かめよう。
とりあえず……任務完了!依頼達成だ!
<コトリ>
《改めて……作戦目標クリア。
システム、通常モード切り替えとくね》
<カモメ>
『……ホノカさん、一応おめでとうございます』
「ん?急にどうしたの?」
<カモメ>
『今の任務を持って、
ホノカさんの傭兵ランクは、Aへ昇格です!』
あらまぁ!
いよいよ、私もAランク傭兵か!!
「……ひょっとして、それ結構大変なことになるって事じゃない?」
<コトリ>
《かもね。
こっから依頼難易度上がるぞ?》
わーお。
喜んでばかりもいられないか。
「まぁでもまずは、帰ろうか」
***
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