MISSION 18 :UFOキャノン、発射
<火星統一政府軍パイロット4>
『いたぞ!鳥のエンブレムの灰色!!
あの機体だけは死ぬ気で抑えろ!!ぶつけてでも倒せ!!』
<火星統一政府軍パイロット5>
『奴はジブリール先行量産型部隊を壊滅させたほどの相手だ!!
動きが違う……本当にただの人間なのか!?』
「丸聞こえだよ、広域無線で叫んじゃって!!」
はい、その灰色の機体こと『グレートアーク』の中の傭兵系美少女な大鳥ホノカちゃんでーす!
今も、ようやく慣れてきたぶっ飛んだ速度の軽量2脚機のグレートアークの動きで、同じくようやく慣れてきたレーザーブレード主体の戦い方をしてまーす!
<イオ>
《ロックオン!!右によけて!》
機動兵器『EXCEED-WARRIOR《エクシードウォーリア》』こと長いから『
グレートアークのブースターは全部、『軽量機に積む出力じゃない』と言われるアヤナミマテリアル製。
一瞬で敵の塊の端に移動できるし、ゲロ吐きそうなのを我慢すれば連続アサルトブーストで敵の背後を気持ち悪い角度の曲がり方で取れる。
ズガン、と左腕の大型ハンドガンを打ち込む。
装甲の貫通性能も射程もライフルと比べたら低い代わりに、ライフルでも大口径な部類のハンドガンの弾は衝撃力に優れるのだ。
要は、ダメージはないけど敵の脚を強制的に止められる。
そして、流れるようなコンボでレーザーブレードを空中で足止めした相手に叩き込む。
いわゆる『硬め斬り』という小技だ!
<火星統一政府軍パイロット6>
『バカな……速すぎる……!!』
「〜っ、ゲホッ!
身体が強化済みじゃなきゃ内臓潰れてる速さだなやっぱ」
<イオ>
《これを、私の人格データの元になった人間が生きていた時代に生身で使いこなしていた化け物がいたんですよねー……》
「嘘でしょ、それ絶対!」
ピーピーいうロックオン警報から、意識置いていかれそうなアサルトブーストでレーザーを避けながら叫ぶ。
うん、レーザーってロックオン警報聞いた時に避けてもかすっちゃうレベルの弾速なんだけど、この機体は完全回避可能か……怖いなグレートアーク!
<火星統一政府軍精鋭兵1>
『各員、その灰色の軽量機に構うな!!
ここからは、我々が引き継ぐ!!』
<火星統一政府軍精鋭兵2>
『ジブリールかハールート・ミーティアでなければこいつは抑えられない!!
未だ飛来する特攻兵器と雑魚に注力せよ!』
げっ!!
あの大量パルスプラズマキャノン持ってるでっかい背負いものがまたと、骸骨っぽいのがたくさん来た!!
「面倒なのいっぱい!」
<イオ>
《ロックオン警報!!避けて!!》
振り下ろされる、全長数キロのレーザーブレードを避ける。
避けた先を完全予知してぶっ放された4脚たちのレーザーを、レーザー着弾前に高速移動して回避!!
「〜〜〜ッ!!!」
何も言えない。
視界の端で、残りのプラズマ弾頭入り
(でもコイツらを抑えてれば、みんななら当ててくれるはず!!)
ドヒャドヒャドヒャドヒャァッ!!
連続直角曲がりでなんか空中に迷路でも作るようなすぅんごぉい気持ち悪い動きだ!
パルスの雨を、敵のしつこいレーザーを、死ぬ気で避けていくしかできないか!!
***
ズドン!!
11発目のプラズマ弾頭が敵の巨大歩行型要塞『フォートレス・オブ・ホーネット』のEシールドに着弾する。
<シルヴィア>
『まずいぞ、想定よりプライマリーシールド出力が高い!!
全弾命中で減衰し切れるか!?』
<ありす>
『天才おチビちゃん、まずいのは私たちかも!!
生き残り優先じゃないとキツい数きた!!』
空中を落ちるシルヴィアの重量2脚機『キャッスルブラボー』とありすの重装タンク脚機『ハピ⭐︎タン』へ迫る、天使の姿をした禿鷹の群れ、敵の機動兵器達が迫る。
<シルヴィア>
『背中のNGウェポンを使う暇はないか!!』
<ありす>
『先降りるよ!!
アイドルとタンクは空中戦は不利だから!!』
左腕の二連装ハイレーザーライフルを放ちながら弾幕を張るキャッスルブラボーの横で、ブーストを切ったままその重量で一気に落下し、地上しれすれでブーストを起動して履帯を地面に強くキスさせながら進み始めるハピ⭐︎タン。
そのままグルンと上半身を本物の戦車さながらに後方上へ向けて、両腕の4連想威力特化オートキャノンをぶっ放し、キャッスルブラボーの着地を支援する。
<ティア>
『
早速だが弾幕が足りない!!!ヒヨッコどもじゃあ装備も練度もキツいんだ!!手伝いな!!』
<ありす>
『おっけーおばーちゃんさん!!
弾幕ならありすちゃんのワンマンステージだから!!』
ズガガガガガガガガガガガガガガッッ!!!!
鑿岩機さながらの音と共に飛んで行く、大口径75mm4連装オートキャノン『MC-1 カルティべイター』二つから発射される砲弾達。
破壊力といえばこの企業『リボルバーリバティー』社製のこの威力!
断続的な衝撃で足止めをした敵の強固なEシールドを数秒で減衰させ、その下の実弾防御力の低い装甲を穴あきチーズへと変える。
そんな物を吐き出すからには、相手も回避運動をとらざるを得ずに、上空からの攻撃頻度が明らかに減る。
<ハルナ>
『ありすちゃんすごーい!!!
まじアイドル傭兵!!』
<ありす>
『ちょっと違うよ?
ガチタン大好きな傭兵系アイドルだよっ!!!』
まとまった空中の敵へ、背中の二つのグレネード、そして両肩の大型ロケット砲を叩き込み爆散させる。
ありすのハピ⭐︎タンは、そのピンクの塗装の可愛らしさでも微塵も隠せてない、重装系ガチガチ装甲のタンク脚、つまりガチタンの戦い方のためのアセンだった。
<マリー>
『あらまぁ、頼もしいですねぇ若い子は』
<マシュ>
『ゴリ押しを極めてか。若かった頃は、美しくないだの言ってたねぇ、アタシらもさぁ?』
<ティア>
『窓際で日向ぼっこするような会話しているとは余裕だねぇ、アンタら!!
あたしゃもう歳だ、余裕もないようだ!!』
ババン、とスナイパーライフルで減衰したEシールドを武器腕スナイパーキャノンでその下の装甲ごと貫き、敵機を確実に落とす。
やはりと言うべきか、1番の年長者が一番撃破率が高い。
<ミコト>
『数を減らさないと!!とにかく撃って当てないと!!』
<ハルナ>
『無理無理ィ!!
あんな当たんないよ!!』
<ノドカ>
『ミサイルもなんだかロックオンが間に合わなくてぇ!!』
<フミカ>
『当ててるのに落ちない!!』
<シルヴィア>
『当てなくて良いよ?
ただボクから見て右側の君たち、もうちょっと右を撃ってくれ。
左側の子はもう少し前だ』
ヌッと初期機体ことバーンズアーマメンツ社製1001B中量2脚フレームに毛が生えた程度のいかにも戦場初心者な新人傭兵たちの機体の後ろから、深い青の重量2脚機体ことキャッスルブラボーが現れる。
<ミコト>
『なんでそんなことを!?
当たんないよ?』
<ハルナ>
『私射撃苦手だし、その方が楽かもぉ!!』
<シルヴィア>
『はは、当てなくて良いよ?
当てるのは君らの役割じゃないからさ。
そら!!』
一瞬、キャッスルブラボーの両肩の武装が翼のように開き、ふとましいフレーム全体を光が包む。
ズギャァァァンッッ!!!
雷が落ちたような音と共に、降り頻る雨に穴をあけるように光の弾がキャッスルブラボーから放たれた。
機体を防御するEシールド、それを爆発させるように周囲にエネルギー衝撃波へ変換するブラストアーマー、
そしてキャッスルブラボーを構成するフレームを作ったエクレールメカニクス社、
その脅威の技術は、そのブラストアーマーに指向性を持たせた兵器、
『ブラストキャノン』を生み出した。
火器管制システムによるロックオンできない事を除けば、今1箇所に集まった防御性能が高いはずの敵機体達が一瞬で蒸発する破壊力があった。
一同、味方が絶句するこの威力!
<シルヴィア>
『そうだ、言い忘れていたよ。
ボクの機体はブラストキャノンを使う。
くれぐれも、前に出て戦わないようにね?
少なくともここにいる機体達の防御数値では、まず無事では済まないから』
<ミコト>
『…………そう言うのは、発射する前に行って欲しいんですケド……』
はっはっは、と笑うシルヴィアの操るキャッスルブラボーの背後、
ニョキっと伸びた砲身が一本。
ズドドドン!!
放たれた速射五連の120mm口径の砲弾が、遠くへ向かう敵の
<ヴィオラ>
『流石は傭兵ランク一桁代の
ただ、景気良くやりすぎたのも事実かも』
青い重逆関節機体、この場で唯一上官と言える立場でもあるインペリアル勢力の貴族、ヴィオラの操る『ハイドランジア』の烏帽子に似た狙撃戦向け頭部が睨む空、
先端に銃口を付けた漏斗ににた小型飛翔体達が、こちらに高速飛翔してやってくる。
<ヴィオラ>
『
例の厄介なのが来た!!』
直後、包囲していた物の正体である小型の砲台達が周囲を囲むようこの場の全機に攻撃を始める。
<ハルナ>
『ナニコレ!?レーザーも雨!?!』
<ティア>
『随分ハイカラなものを!!
ヴィオラ様お下がりを!!わけぇのは自分の命を守りな!!!』
慌てて回避行動をする機体達を囲むよう、空からやってくるは頭身が低く見える人型機動兵器、
<ヘイロー部隊1>
『こちら第24
……!?
なんだこの被害規模は!?ほぼ壊滅だと!?』
<ヘイロー部隊2>
『一般部隊がこんな簡単にやられるか……!
先に戦いの我々対傭兵戦術が書き換えられるほど強いらしいな……!』
<ヘイロー部隊3>
『またアグレッサー相手の演習が地獄になるな。
いや、地獄の方が生ぬるいか!』
<ハルナ>
『なんか見たことないの来たケド!?』
<ヴィオラ>
『アレは確か、前のヨークタウン襲撃でも来た対傭兵用部隊の機体ね……!!
気をつけなさい!!
こちらの機体の大半はレーザー弱点よ!!』
周りのアタッカーサテライトの雨を避けながら、ヴィオラは無線を遠く、自らの治めるハンナヴァルト領へ飛ばす。
<ヴィオラ>
『聞こえる!?間も無くプラズマ弾頭が全弾着弾よ!!
狙いはできているんでしょうね、ロート!?』
***
ハンナヴァルト領外縁部の一角、
特殊兵器『UFOキャノン』、火器管制担当
<エクレール技術者>
『ハイパーコンデンサ、1〜12番まで全弾準備完了。
弾体へ通電開始。
発射可能を100と仮定し、現在出力23……27……36……!』
「技術者が何を言っているかは知らんが!!!!
いつでも照準はつけているぞ!!!!」
暑苦しい男ロート・エッケハルトは、その性格に似合わないほどピタリとMWへ有線接続された火器管制装置を……
人型兵器が持つためのバズーカに似た巨大な望遠鏡じみた装置を構え、その性格に似合わないほどピタリと照準線をあの大雨の向こうに映る影へ向けていた。
<エクレール技術者>
『出力レベル100まではトリガーは引かない事。
現在出力は56……60……67……!!』
<ヴィオラ>
『前線はひどい状況だけど、傭兵達が上手くプラズマ弾頭を全弾当ててるわ!!
外したら承知しないわよロート!?』
「まかせろッ!!!
俺たちの土地を奪還するまでは!!!!
他の土地を再び奪わせるようなことなどしないッ!!!!」
<ヴィオラ>
『……でも焦らないで。こういう時だからこそ、冷静によ。ロート……!!』
「ああ!!!お前程の女が熱くなっている以上!!!
男の俺が!!!留守を任された俺が冷静にならんとな!!!」
ロートの乗る
大雨の中、シルエットだけが映る巨大な影に電のように光る球状の爆発が二つ輝く。
「後3発……そして俺が撃つ!!」
***
<ケルヴィ>
『残り3発……!』
<ドミニオ>
『さ!全弾当てちゃおうぜ〜!!』
<ルキ>
『簡単に言ってくれるわね……!!
この数を抜けるわけ!?』
はい、無線聞く余裕がかろうじてある私こと大鳥ホノカちゃんは、今もお尻にレーザーか何か当たりそうな状態で妹ちゃんの機体へ向かってます!!
「待っててルキちゃん!!!なんとか穴開ける!!」
スパン、と相手もレーザー耐性高いし硬いはずの天使っぽい機体をぶった斬る!!
だけど通り過ぎるのが早すぎたみたい!?
私の機体が振り向くより早く追加で来た!?
<火星統一政府軍パイロット23>
『仲間の犠牲を無駄にはしないッ!!』
<火星統一政府軍パイロット25>
『ぶつけてでも止めて見せるッッ!!!』
まずい間に合うか微妙!?
<ルキ>
『舐めんなぁッッ!!』
なんと、ルキちゃんの機体が弾頭入りブースターをパージ!!
わずかに上昇してブースターが敵を通り過ぎるのと同じタイミングで、蹴りを入れたっ!?!
<ルキ>
『お姉ちゃん、弾頭!!』
あ、なるほど!!
最速の愛機のグレートアークちゃんを弾頭の前まで
「イオちゃんドッキング任せた!!」
<イオ>
《無茶苦茶ですよ、本当!!》
そこそこ頼れるAIなイオちゃんのおかげで弾頭を背中で受け取って、全力でブースターを加速させてあのバリアへ!!
機体がルキちゃんのより軽いから、もうこの距離なら妨害も間に合わないね!!
<火星統一政府軍精鋭7>
『させるかァァァァ!!!!!』
<ケルヴィ>
『こちらのセリフだッ!!』
目の前で盾になろうとした敵機を、ルキちゃんの姉妹ちゃんがぶった斬ってくれた!
バリア目前、ブースターパージ!!
そんで持って爆発するより早く一気に距離を離す!
ズドォン!!!
「これで残り2発!!」
<火星統一政府軍兵士25>
『大尉が止められなかった!?!』
<火星統一政府軍兵士23>
『本当に相手は人間なのか……!?
ネオツー・デザインドの我々が赤子扱いか!?!』
<火星統一政府軍兵士25>
『あの鳥のエンブレム……『異常』だ……!!』
「あーん?無線で好き勝手言ってくれちゃって!!
そんな楽でもないからね!?」
<イオ>
《なんでも良いですって。
ほら、残り2発がきました!!》
見えた!!
私の相方AIのコトリちゃんの操るハーストイーグルに、友達の
<コトリ>
《エーネちゃん先に当ててほしいな。
最後の1発の次には例のキャノンが撃ち込まれるらしいし》
<エーネ>
『ありがとう。まだ私は死ねないしね』
「あ、ちなみにコトリちゃんと機体壊れたら修理費請求するね?」
<エーネ>
『生きてたら払うよ。さ、ホノカちゃん道を切り開いてね?』
へいへい、タダ働きか。まぁ報酬の内だしね!!
<エクレール技術者>
『弾体UFO、安定。
射出準備。砲身出力、85……93……!』
無線から聞こえる、例のでっかいキャノンのもう直ぐ撃てます的な言葉。
いよいよか……!!
<火星統一政府軍精鋭9>
『プライマリーシールドの出力がもう10%もない!!
機体をぶつけてでも弾頭を止めろ!!
特攻には特攻で返せ!!!!』
<火星統一政府軍パイロット10>
『なんでそれでしかホーネットを守れない……!!
我々は優勢種じゃなかったのか……!!!』
当然、たった二つの弾頭に、まぁ残った機体を全部上げてくるよねー……うわ数えるのダルい数……
「なんだって良いさ!!勝って生きてりゃ報酬が待ってる!!
さっさと道を開けてよねぇッ!?!」
両背中のミサイルを発射、左腕の高衝撃ハンドガンで近づいた機体を足止めして、ブレード直撃!!
後でミサイルを回避したり直撃したりで足止めた相手から、超高速で突っ込んでぶった斬る!!!
一気に3機殺しても、まだまだ多そう!!
***
UFOキャノンのFCSシステムたる巨大なレンズを通して、今弾頭が大雨の中巨大要塞を見るロート。
「二回だな……!!
二回光ったら、撃て、だな……!!!」
冷や汗混じりに緊張した顔を見せるが、トリガーを握る指はピント伸ばして一切震えはない。
自他共に認める熱い男だが、やはりトリガーを握る指は冷静だった。
一瞬先にそれは起こる。
その一瞬が長い。
思わず、トリガーを弾きたくなる。
雷が、プラズマ弾頭の当たった光に見える。
雨か汗か、視界の中のあの巨大な影が一瞬隠れる。
「………………フハハハ!!!緊張しているか、俺でも!!!」
だから笑う。やることは変わらないし待つ時間も同じだ。
焦りは不要。その時になったら劣化の如くトリガーにかけた指を押し込めばよし。
今、良い女たちが前線で奮闘しているのだ。
男である己が、どっしり構えてなくてどうする。
その思い出ロートは、あくまで笑って待つ。
<エクレール技術者>
『出力、95……98……100!』
技術者が、あの一言を言う直前で、
ピタリと照準線を合わせた要塞に二つの眩く広がるプラズマの爆発が見えた。
<エクレール技術者>
『撃てます!!』
「───────外しはしない!!!」
引き金を引いた瞬間、光が放たれた。
静かな、静かな時間を進む光が、真っ直ぐにあの巨大な要塞へ届く。
一瞬、晴れたかのような光量が、戦場を包んだ。
静かに、ただ静かに光の線が、フォートレス・オブ・ホーネットの巨大な体を貫いたように見えた。
まるで大気が燃えがるような爆発が着弾地点にに巻き起こる。
………………グォオオオオオオオオオッ!!!
遅れてやってくる音、爆風。
凄まじい振動がロートの乗る
「ぐぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?!」
もっともそんなもの見えないぐらい中身が揺さぶられる。
生身の体には耐えられないかもしれないと思わせる衝撃波だ。
一瞬、ドーム状に着弾地点から空気が消える。
このUFOキャノンがある地点まで天にある雲と雨が全て吹き飛ばされ、出来上がった真空のドームの頂点に太陽と青空が見えた。
透明で静かな時間。
その一瞬の後、全ての空気が元に戻り、今度は後ろから凄まじい衝撃波がやってくる。
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?!?!?!」
再び水と空気の濁流が発生し、今度こそ機体が倒れマニピュレーターでなんとか地面を掴んで耐える。
やがて、衝撃波が暴風、強風……そして風へ変わっていき、再び雨が降り始める。
「はぁ……はぁ……敵は!?」
ロートは、慌てて大型スコープを再び向ける。
ブルースクリーン、ノイズ混じりの画像に舌打ちしたが、直ぐにシステムが回復して映像を見せる。
山のような巨大な影は────健在。
そこまでは良い。相手は都市を十回は更地にする爆撃も耐える相手だ。
UFOキャノンの照射結果は……!!
ボン、と音が聞こえるような爆発が、翼のように広がる左の甲板から上がるのが見える。
思わず、ロートは笑ってしまった。
「…………ははは……ははははははははッッ!!!
冗談だろうッッ!?!」
相手の左側の甲板の一つが、折れて崩壊している。
結果だけ見れば、強固なセカンダリーシールドだけではなく、本体に大ダメージを与えたのだ。
「大戦果ではないかッッ!!!
大戦果だッッ!!!!ヨークタウン級だぞ!?!
あの移動要塞をッッ!!!!!」
ズシィン、とロートの操るMWの隣の、UFOキャノンだったものの巨大な砲身が崩壊して崩れ落ちる。
どうやら、試作兵器は自らの火力に耐えられなかったらしい。
「やったぞ!!やったぞ!!!
今つまりは、あの要塞は無防備だ!!!」
それだけでも大戦果だと、ロートはコックピットの中で拳を突き上げてガン、と天盤を殴ってしまっていた。
「おい!!大戦果だぞ!?
ヴィオラ!!おい、聞こえて……!」
だが、そこで気づく。
この火力、この攻撃の被害範囲。
まさか、前線の勇敢な女たちは……!!!
<ヴィオラ>
『────外してるんじゃないわよ、バカロート。
ど真ん中から逸れたじゃない、射撃に自信あったんじゃないの?』
だが、無線から最高の報告が来た。
「ヴィオラァァァァァァァァッッ!?!
無事かァァァァ!?!?」
<ヴィオラ>
『うるさい!……うるさい声が聞けてよかったけど、ここからよ』
そうだ。
ここからだ。
ここからが、本番なのだ。
***
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