[変更済]MISSION 10 :今時修行は流行らないのにね‪……‬





 どうも、傭兵を辞めるために傭兵で稼いでいる大鳥ホノカちゃんです。

 そのくせにとうとう身体は強化人間プラスアルファに改造しちゃって、仕事に体捧げちゃってます。


「にしても、アリーナなんてシステムあるんだねぇって感じなんですけど。

 私たちの戦いを見せ物って」


「まぁ、気持ちも分かりますわね。

 まじめに戦う傭兵スワンの皆様の戦いぶりを見て賭博したいだなんて、下劣な品性は間違いないですもの。

 まぁ、ワタクシもその下劣な品性を否定できないのも事実ですけれども」


 今日は、珍しく拉致も突撃訪問販売もなく、普通にマッコイ商店に来た私でした。


 というのも、eX-Wの方じゃなくて、ちょっと別件で。


「まぁどうですか?

 ヘリコのオーバーホールも長いでしょうし、お茶でもサービスしますわよ?

 なんなら、撮ってるアリーナのあのクッソ生意気な赤いヤツの試合でも見ます?」


 そう、今日はオペレーターさんの物|(?)であるヘリの方の整備なのだ。

 というか、ヘリコプターって『ヘリコ』と『プター』で区切るって初めて知った‪……‬


「それもいいかなぁ‪……‬

 というか、一応このヘリも私の物だし立ち会い必要なのかー。

 ここってなんでも整備出来るんだなぁ‪……‬」


「そりゃもちろん!

 金さえ払えば車検だって通しますわ〜♪

 まして、ホノカさん値切り交渉しないで見積もりを通していただける良客ですもの!」


「だって分かんないものケチって事故で死にたくないもん。

 ばあちゃんも貧乏だけど車検とかは真面目にやってたし私にそう教えてたよ」


「まぁ‪……‬!

 なんて素敵な教え‪……‬!!

 これは全力でやらねば無作法というものですわね!

 ユナさーん!全力で働きなさーい!」


「じゃ営業職のくせに今のところそこのホノカちゃん以外仕事ねー人は、せめてオイラに水くださいよ」


「まぁ!

 まったく一言多い上にワガママな部下を持って幸せですわよ、本当に!」


 ‪……‬プリプリ言いつつ、強化人間プラスアルファボディの4つ腕全部使ってるユナさんにストローで冷えた麦茶を飲ませてあげる辺り、マッコイさん普段のあれなければ良い人なんだよなぁ‪……‬


「‪……‬ところで、オペレーターさんとコトリちゃんや。

 そのイジってる機械どうよ?」


 そうところで、

 このガレージの片隅にある、妙なマシーンをイジってる、我が家のロボ二人がおりましたとさ。


 私が、本当はスワン辞めるために貯金したいお金の内300cn|(ユニオン円で300万円)する奴だったけど。


《大体終わった。

 いやー、ごめんね、300cnも出させちゃってさ。

 どうせ、ガチの対スワン戦だし、見かけたこれ使わせたくてさ》


「その、ゲームセンターの大きなゲームみたいなヤツ?」


 真面目にそうとしか見えない、座席と画面のセットなものがそこにありました。


「あながち間違いではないですね。

 こちら、AI社並びにO.W.S.連携制作のeX-W用シミュレータユニット、


 その名も『プロジェクト9-B』という物です」


《まぁ、ゲーム感覚でeX-Wのかなり正確なシミュレーションができるすっごいメカだよ》


「うーん、聞く限りだと、ゲーセンにあるやつにしか見えなーい!」


 まさにゲームセンターにありそうな見た目!


「実際ゲームセンターにも一部機能をオミットした物がございます。

 ただゲームセンターのものと違い、こちらはコアパーツのコックピットのデータを入力すれば、座席の形もそれに変えられます」


 そんなオペレーターさんの説明と共に、バイクっぽかった物が変形して座席になる。

 しかもこれは‪……‬


「いつも乗ってる奴!」


《1001B・1600Hコア対応形態だ。

 さてと、ごめんショップの人!!

 待合の間ここでシミュレータやってるよー!》


「どうぞー!どのみち長引きそうですし!!」


「こっちはお構いなくっすー!」


《良し。

 ほれホノカちゃんや、パイスーにお着替え》


「ほーい」


 まぁ待ち時間ずっと暇だしね‪……‬



 そんな訳で、相変わらずぴっちりなインナーを着る。

 強化済みだから、背中の端子を今まで気にしなかったぴっちりなインナーの端子に合わせてつけて、

 ゴツいアーマーを履いたり装着していく。


 そうそう、今までただの無線のスピーカー付きのやつとしか思ってなかったヘッドセット、ちゃんと強化人間用の頭の端子に対応してるんだよ!


 初めて知ったけど、額当てみたいな頭の奴、防御用かと思ったら、もらった第三のお目々ヘッドセットと同じで、この一見カメラに見えない部分が全部特殊なカメラアイだったんだ!


 すごい、視界が割ととんでもないことに!


《バーンズアーマメンツ製パイスーも随分変わったなー。

 昔はガチでパワードスーツ歩兵って感じだったけど、企業同士仲良くはなれたおかげかその性能で強化人間対応で、ここまで薄くなったんだもんなー》


「でもちょっとえっちじゃない?

 お胸もお尻も太もももキツい上に薄いしぴっちりすぎるし》


《そのぴっちりが、eX-Wにも使われてる人工筋肉素材と同じだし、下手な装甲より硬い上に対Gスーツ機能があるんだ。

 強化済みとはいえ、あった方が生き残りやすいよ。

 でもレーザーだけは勘弁ね》


「まいっか‪……‬これも、前みたく背中にぶっさす感じ?」


《そそ。座席の形は完全に1001Bコアまんまだし、そのスーツも背中の端子がちょっと色々安全装置になるだけで型は同じ》


 おっけー、と座席に背中のバックパック的な部分をぶっさすように座る。


 コトリちゃんも本物のコックピットの位置にセットして、準備完了。


《メインシステム、シミュレータモード起動するよ》


 視界が消える。

 そして、あの全周囲がモニターに包まれたみたいな光景に。


 まぁ、全部まさにゲームの最初に画面みたいな感じだけど。


<コトリ>

《さて‪……‬機体のデータが私が持ってる君のアルゲンタヴィスのデータを使うよ。

 一応はパーツ情報まで事細かに記されてる上に、これにはちゃんちGがかかる仕様だからほぼリアルな訓練が可能だ》


「どうやってGの表現を!?」


<コトリ>

《人間はかつては火星まで重機運んでこれたし移住する人間を乗せられたぐらいなのを理解してる?

 もうとっくに、重力も慣性も操作できる装置はあるよ。

 なんなら、eX-Wはその装置の塊みたいなもんだよ》


「え、マジで?」


<コトリ>

《マジだよ。詳しい話は、君がもうちょい頭良くなったらね?

 いい?今からやるこの『プロジェクト9-B』の、トレーニングモード、君がやれば確実に強くなるけど一個だけ注意事項があるんだ。

 これだけは守ってやってほしい》


「注意事項って?」


<コトリ>

《真面目にやっても良いから、最高得点を目指そうとか考えるな》


 ‪……‬‪……‬?


 どう言うこと?


<コトリ>

《まぁいいか。

 始めれば分かるさ!》


 そんな訳で、コトリちゃんが用意したトレーニングモードへ私は挑戦した。






 ‪……‬一番目トレーニングラスト。



<コトリ>

《それでは今より、射撃能力訓練最終プログラムを始めるよ。

 制限時間以内に数多くの敵を撃ち落とすこと。

 なお、最終プログラムは、妨害用の移動障壁のパターンを複雑化する。

 訓練開始!!》



 カウント、3、2、1、スタート



「鬼畜ゲーじゃんこの数さぁ!?!」


 膨大な複雑に移動する大量の虫みたいなのを、ランダム移動する光るお邪魔盾を潜り抜けて定点狙撃する。


 言うと簡単だけどさぁ、やるとヤバいでしょ!?!



<コトリ>

《これね、最終プログラムまで行くと、上位クリア出来るのはガチの化け物だけなんだ。

 鬼畜ゲーなんだよ、いやでも射撃に関しては君めっちゃ上手いぞ!

 Wトリガー、つまり2丁の銃の特性の違いに気づいて撃ててるって結構すごい!

 ゴールド判定までガンバ!》



「クソゲェェェェェェェェェェェ!!!!!」





 ‪……‬五番目トレーニングラスト


<コトリ>

『それでは只今より、近接適正テスト、最終プログラムを行う。

 ブレード装備のみで敵機体を撃破してもらうよ。

 じゃ、がんばってね?』


 カウント、3、2、1、スタート



「逃げんなぁぁ!!!逃げずに戦えぇ!!」


 ガン逃げのちっちゃい敵にブレードだけ当てるの!?

 無理じゃね!?!


<コトリ>

『近接はダメか。ブレード当てるの下手くそ侍だね君。

 あ、でも蹴りは上手いぞ。

 蹴りで倒そうよ』


「簡単に言うなし!!」






 ‪……‬十二番目、トレーニングラスト


<コトリ>

《それでは只今より、縦移動テスト最終プログラムを行う。

 制限時間以内にどこまで登れるかがテストの判定となるよ。


 あ、当然妨害もあり、そして道中には隔壁があるから上手く穴を通って登る様に》


「アスレチックをやらせる気ぃ!?!」



 縦穴を、それもレーザー出てたり砲台があったり、空中に爆発する奴があったりするのを必死に登る。


<コトリ>

《結構早いな‪……‬

 移動テストでも思ったけど、神経接続操縦抜きでも結構移動のスキルが高いね》


「うわーん!!コレこそ鬼畜極まりだー!!」






 ‪……‬‪……‬そして、最終プログラム。



《────ここまできた事を褒めてあげようか。

 訓練は成功。君のスキルを大体把握できた。

 君も、君自身の得意が分かってきただろう?》


「コトリちゃん‪……‬?」



 そこは、荒野のど真ん中。

 私のシミュレーターのアルゲンタヴィスと向かい合うよう、赤い機体が立っていた。



《コレで最後だ。

 対eX-Wプログラム、最終レベル。


 相手は、かつての私。

 スワンだった頃の機体。


 名前は『B-REX』。まぁ手加減のために最初期のアセンで行ってあげる》




 いわゆる逆関節、まるで戦闘機かF1カーみたいな上半身。

 右腕にはデカいキャノンを持って、左腕には小さめのライフルと、背中になんか扇子みたいな折りたたみ方された武器‪……‬ミサイル?



《勝てたら御の字。

 負けるまでの時間を測ろうか》


「‪……‬もしかしなくても、コレって強い奴‪……‬!」


 B-REXっていう機体が、カウント終わりと共に近づいた──────











 ちーん。

 無理無理、これクリアさせる気あるの?



《ヨシヨシ、あれであそこまで粘れりゃ及第点だよ。

 トレーニングおつかれさん》


「コトリちゃん鬼!!

 強さも訓練も鬼だ‪……‬」


 正直、強化されてて良かったなってところ多すぎたよ。

 真人間でアレをクリア出来るの??


「しかし、いうほど悪い成績ではないですね。

 今の機体が割とまだ初期と差がない事を差し引いても、コレは良い‪……‬」


《やっぱ、天性のスキルは射撃寄りだね。

 強化人間の空間把握強化部分とか、視界とセンサーの同期を無意識でできた辺りもすごいし‪……‬

 鬼畜極まりないこのシミュレータの射撃系テストでゴールド評価は半端ないよ》


「そーなのかー。

 はぁ‪……‬辛かったよぉ‪……‬!!」


 まさかこんな鬼畜ゲーをやらされるとは思いませんでしたわ。

 と、私の頬の冷たい物が当てられる。


「乙っす!オイラのヘリコ整備の方が早く終わったっすよ?随分白熱してたっすね」


 見ると、冷たい炭酸飲料を持ってきてくれたユナさんだった。


「おぉう、やっぱりかぁ‪……‬ありがとうございます!」


「つーか、この伝説の鬼畜シミュレーターを良く結構良い感じの成績で出来たもんすよね?


 コレ作った奴、基準が『イレギュラー』なんじゃないかって言われてる奴っすよ?」


「いれ‪……‬ぎゅらー?」


 なにそれ、って感じの声を出すと、おっととユナさんが言う。


「あー、これ都市伝説っすよこの業界の。


 なんでも、250万分の1とかとにかくすっごい低い確率で、天性のeX-W操縦技術を持つメタクソ戦闘力の高いスワンが生まれるそうなんすよ。


 無自覚かつ、あんまりに強くって、何もかも焼き尽くす最強の存在。


 不確定で不安定な生まれ方、そしているだけで計画的な戦いが崩れることもあるからこそ、


 「予測できない者イレギュラー」、


 なんて言われてるスワンが、どこかにいるんだって話があるんすよ〜」


「へ〜」



 なーにそれカッコいいー!

 漫画とかの主役じゃーん!


《イレギュラー‪……‬‪……‬‪……‬‪……‬‪……‬‪……‬‪……‬‪……‬?


 いや、無いよ。そんなの。

 いるわけがない》


「‪……‬‪……‬‪……‬‪……‬‪……‬‪……‬‪……‬そう、ですね。

 まさか、そんな超人的な存在がこの世にいたら、簡単に世界の軍事バランスがあちこち傾いてしまうじゃないですか」


「あれ、会話の歯切れ悪いっすね。

 ひょっとして、コトリちゃんは連続稼働でエラーっすか?」


《かも‪……‬なんか、一瞬調子悪くなっちゃった》


「今日はもう、一度帰りましょう。

 システムチェックも一晩かけて、明日に備えます」


「あら?みなさん帰りますの?

 何かパーツでも買っていきません?」


「あー‪……‬

 コトリちゃん、そう言う事一切言わないで、あの鬼畜ゲームさせたの、なんか理由があって?」


 考えても見たら、コトリちゃんが何か対策にパーツ買おうとか言わないのは変だね。


《‪……‬ぶっちゃけ、ガチって強化人間の強み全部生かして戦う手もあったけど、



 ホノカちゃん、正直に答えてほしい。

 あのフレイムブレイカーとか言う機体を無様な負け方にしたくはないかい?》




 ‪……‬‪……‬‪……‬



「‪……‬私、アリーナのことあまり好きじゃない。

 それにあのフレイムブレイカー乗ってるスワン、ジュディだっけ?昔いたいじめっ子みたいで嫌い。


 だから、出来るなら‪……‬

 楽に早く終わらせたい方が、気持ちとして強い」



 私は、正直アイツがどうなろうか知ったこっちゃない。

 許せないけどそれ以上に、あんまり関わりたくない。

 とっとと終わらせたい。勝って賞金もらえるならそれでいいけど。



《じゃあ、ちょうどやろうとしていた方法と合致するね。

 ふふふ‪……‬君のその態度、一番アイツみたいなタイプにとっては屈辱になるよ》


「‪……‬‪……‬それもそれで怖いなぁ‪……‬!」




 一体なにする気なんだ、コトリちゃん!?

 というか、鬼畜トレーニングの意味はあったのか!?




          ***

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