[変更済]MISSION 3 :とりあえず準備しっかり
《という訳で説明しようか。
大和重工製であり、同社の名前と同じフレームの『三式大和』は、遠距離戦と射撃安定性に特化した中量2脚フレームだ。
脚のパーツとしての特徴は、ともかくどんな状態でも射撃を安定させるためにか、内臓ブースターも推力より持続性に振ってて、止まった状態なら空中でもかなり安定して射撃ができる。
真人間でも空中発射が可能という冗談もあるよ?
まぁ、地上ならもっと安定しているね。
脚に標準で備わっている射突型ブレードを地面に叩き込んで静止時の安定性も中々高いんだ。
ただ、その安定性を支える脚部のボトムダウンな重量比率と、この射突型ブレードのお陰でもう一個だけ有名な特性がある。
ご存じ、ブーストチャージダメージ最高峰という肩書きだ。
だからこそ私は言いたい。
ねー、売っ払って同じくブーストチャージダメージ最高峰のO.W.S.製のT-rexフレーム脚買おうよぉ!!
絶対今回の任務は逆脚だよ逆脚!!》
「良いじゃん別に今ある奴で」
傭兵系美少女な大鳥ホノカちゃんの頼れるデフォルメボディは30cmの相棒AI『コトリちゃん』はO.W.S.とAI社が共同開発したものである。
特にO.W.S.は元になった傭兵の人格もあって思い入れが深く、こうやって隙あらばO.W.S.製パーツを勧めてくるのだ!
そして私が断ったら、すっごい不満そうな顔で私のおっぱいポンポン上から叩いてきた。
こらこら揺らすな揺らすな。
「そういえば逆脚という手もあったな。
完全に失念していた」
《失念しちゃダメでしょぉ!?!
逆脚こそ至高!!特にO.W.S.製は!!》
クオンさんの言葉に完全にネコがシャーッ!ってなる感じに不満を発射するコトリちゃんであった。
「ちなみにソラさん的にコトリちゃんの言葉は嘘か誠かどうなんですかねぇ?」
「嘘だし誠かな。
逆脚、逆関節ってO.W.S.とそれ以外だと設計思想地味に違うしね」
《はいそこ!!70年間地球の重力化でボケた思考は捨てる!!
T-rexフレーム逆脚は火星では最強なんだよ!!》
「まぁ、今回はこの2脚だけどー♪」
《ぴゃぁぁぁぁぁぁ!?!?》
なんだその可愛い悲鳴は……あ、強制シャットダウンしちゃった。
いつも元気だねコトリちゃんは、はっはっは。ごめーんね。
「……でも脚はこの際なんでもいいんだけど、私的にビビってるのは腕部パーツかな?」
《……そこはちょいと同意するかも》
あ、再起動したコトリちゃん。
……そして、やっぱり私の相棒なだけあって、もう一個の『腕』の方がビビるのは同じなんだな。
細く装甲も薄そうな、というか最早フレームそのままな腕と、
肩からコアパーツに接続する部位との間の、何やら物々しい雰囲気のユニット。
今、私の持ってるeX-Wの3機のうち1機、ペラゴルニスに新しくつけられた腕。
「前に、ペラゴルニスに武器腕つけた時も、こっちかどうかで悩んだよね。
アヤナミ式武器腕、か」
「三式
大和重工製アヤナミ式武器腕。
武器としては大口径二連装速射レールガンって感じ」
ソラさんの操作で、ガシュンと音がして細い腕がバンザイするよう後ろへ下がる。
代わりにあのコアと腕の間の物々しいユニットが変形して、両腕は太い砲身のレールガンに変わった。
「おぉ……すっごい変形!」
《大和重工の設立を考えると、皮肉が強い武器だよね相変わらず》
「たしかに……アヤナミマテリアルのこれの製造ラインを担ってた中小企業のみんなが、本社の意向の完全自動化に反対して離反、か。
懐かしい話だねぇ……」
「ソラさん詳しいですね?」
「だって、70年ちょい前の新人
ピスピスって両腕でピース作ってるけど、半端ないってソラさんのその話。
「まぁ懐かしい話は後でいいや。
コイツ、火器としては強力だけど、見ての通り防御はトタン板よりはマシな程度だね。
腕の積載とかは案外良いし、射撃安定性は流石大和重工って感じではあるから安心して欲しいな」
《問題とすれば、やっぱ背部武装の干渉かな?
アヤナミ式はこれがちょっとキツイんだよね》
「まぁでも、このホノカちゃんの3機めの愛機の元々の武器の垂直爆雷は積めるかな。
積載も案外イケる。アルゲンタヴィスのレザスナとアサルトそのまま積めそうだ」
「あー、でもソラバア、一応こっちで変形時の角度調整した方がいいかもっす。
あの爆雷ミサイル、補助レーダーユニット部分飛び出してるし」
「じゃ、そこは調整かな。ユナちゃんも良い整備士で助かるよ、本当」
「えへへ照れるっす……ついでに120円のこ」
「ダァメェ♪」
強く生きろ、ユナさん。
「一応、アセンで言えば私は特には文句ないけど……
なんか、注意とかあります?」
「強いて言えば、頭部が八式武蔵じゃん。
ロック速度は早いし射程もあるけど、サイト狭いけどいいの?」
「うーん、私はむしろ遠距離得意って感じです平気かなとも思うけど……
でもアルゲンタヴィスの、信濃フレーム頭、結構広かったな……うむむ」
《ここは安心のO.W.S.製リトロナクス頭に買い替えない?》
「うーん…………悪くはないけどまだちょっとね……」
《良いじゃん!!そんなに射程大事か今回!?!
狭そうだしロックオンサイト重視でしょぉ!?》
「それもそうだけど……なんかO.W.S.プッシュが強すぎて……」
《ウッ…………だって、だって……》
コトリちゃん、カメラアイ二つのデフォルメ顔を器用に涙目に見える感じにしてマジ泣きである。
涙は流さなくても、これはガチだね、いつものことだし。
まぁ泣いてもちょっとな……リトロナクスは前使ってた頭だけど、狙撃用という割にロック距離が不安なんだよな……別に短いとかじゃないけど……今の長さの方が性に合うんだよなぁ……
「……ねぇ、リトロナクスよりは高いけど、
そういう時にピッタシのO.W.S.パーツあるじゃん。
どう?買わない、このマッコイ商店に在庫あるよ?」
「え?」
ソラさん、なんだって?
《え?
……あ!!アレか!!》
「アレってなんだよー、お金出すの私だぞー?」
《アレっていうのはね、価格はちょっとお高めの34000cnだけど、君と私のワガママの妥協点にはぴったりなパーツさ。
その名も、》
「じゃーん!
FCS用のオプションパーツ!!」
と、ソラさんは、何やらちっちゃい携帯電話サイズの物を持ってきた。
「FCS??」
《
ロックオンサイトとか射程距離とかのパラメータ全部ひっくるめたシステム》
「で、これはO.W.S.製FCS拡張オプションパーツ、
名前を『096FCS D. milleri』だよ」
「でぃーみれり?なんの恐竜?」
《ディメトロドンっていう、恐竜っぽいけど恐竜じゃない、実は哺乳類の親戚の地球の古生物だ》
「辛そうで辛くない少し辛いラー油みたいだね……」
「まぁ、火星じゃあんまり博物館無さそうだしね……
ディメトロドンはさておき、このFCSオプションっていうのも始まりは私とそこのコトリちゃんパイセンの関わってたO.W.S.でさ、
eX-WのFCSは基本頭部依存でその他武器のセンサーと連動してサイトの広さとか射程距離が決まってる仕様なんだけど、そのせいで企業によって色々性能が偏ってしまってるんだよね?
そこで、今みたいに射程距離そのままロックオン可能範囲を広げたい!とかその他諸々のFCSのカスタマイズを可能としたパーツの第一号がこれだ!
基本は普通のオプションパーツだから頭部のコンピュータに直挿し増設する形になるからこのサイズでなんか頼りなさそうだけど、使ってみると違いがよくわかるよ。
なんせ、君の使い勝手に関わる物だしね」
なるほど……そりゃすごい。
「でも34000cnか……お高くね?」
「お値段以上だし、損はさせないよ。
ねー、お姉ちゃんのお店の常連って事なんだしさー、買ってぇ〜??いいパーツだよぉ〜??」
《ホノカちゃん、これ欲しい》
「いやいや、まず値段がヤバいんだけど……
もー、また遠のくじゃん傭兵辞めるのもぉ〜!」
「大丈夫ですわよ♪強い機体ならその分大儲けできますわ♪」
「マッコイさんまで参加してくるぅ!?」
『買って買って買って〜♪お願いします〜♪』
……結局5分抵抗したけど、買っちゃったわ。
早速、ペラゴルニスの縦二つのカメラアイが特徴的な頭の中に付けたわ。つけたのユナさんだけど。
これで大した性能アップじゃなかったらコトリちゃん売っちゃうからな!!
「にしてもこれで粛清任務ですかー。
なんだっけ、例のクオンさん作ったグートルーンちゃんとかとの交渉とか、まぁ私には良くわかんない大変なこともあるのにこんなことしてていいんです?」
「そういうのもあるから、先に内部から刺そうとしてくる相手を消しておこうと思ってな。
これでも大分消し終えたつもりだったが、まさかあのクルス坊やがとは……
アイツはマッドなところはあるが権力闘争とかは興味ないと思っていた。
正直、殺す事はまぁいいとして本当になんで私を狙っているのか動機が知りたいような仲ではあるんだ」
はー、いやいや50代の男性を坊やだとか、大体消し終わったとかすごい情報多いー。
「…………本当になんで今なのか。
私を消してAI社を手に入れたいのか、今にも博士が軍勢でも揃えてやって来てもおかしくは、」
ピンポーン
なんだこのチャイムの音??
「あら、ワタクシのお店にお客かしら?
ちょっとお待ちくださいね?はーい、どなたですのー?」
そういえば、コソコソ話中ずっと鍵閉めてたっけ……
ってこの店にお客!?マジか、リンちゃんとかまた来たのかな?
「この店に客か、珍しいな」
「珍しいなー。ホノカちゃんとそのお友達以外かな?」
「お、やっと忙しくなるんすかね?」
こんなことを従業員と姉妹に言われるレベルなのに、誰が来た?
「────何故あなたが!?」
…………マジか、なんか只事じゃない声をあのマッコイさんが上げてる!
なんだなんだと、一応私物のバトルライフル (12.7mm弾とかいうに撃てる)を携えて、ユナさんとかはデカいスパナ持って行ってみる!
「それ以前に、どうしてここが……!」
「ゼロワン……いえ今はキツネでしたっけ?
ああ、このホームページだとマッコイと名乗っていましたっけ。
まぁ、どれにしろ顔写真付きでお店の宣伝をしておいてそれを言いますか、あなた?」
マッコイさんの目の前には、黒い髪でボブカットちょい長めかなな髪型の綺麗なちょっと吊り目の女の人がいた。
あれ、顔がそっくり??まさか……!
「───アーク、喧嘩腰なのは良くありませんよ」
なんというか、答え合わせみたいなちっこい人が現れた。
銀髪の小さい美少女、でも実際はすごい年齢の人。
「グートルーン博士……それにアーク!?
何故ここに……!?」
クオンさんの驚く声。
そう、相手はクラウド・ビーイングのトップというか……まぁ複雑な感じの代表者。
「何故ここに、ですか。
あなたがとっとと交渉の席に付けと散々にこちらを煽ったのでしょう?クオン」
「……それもそうだが」
「二人とも、喧嘩はやめなさい。
…………コレでも、要求はある程度飲むつもりで来たのですから」
と、グートルーンちゃん氏が一歩前に出る。
「すでに、各陣営の代表の方々にも、私自身が向かっています」
「お得意のコピペですか」
「嫌味ったらしいですね。私の姉って」
「クオンにアーク。
…………今日は私の意志の表明に来たわけではありません。
ここへ案内してもらったから彼女がらみでもあります」
と、すっと店の入り口の方からまた一人。
黒髪のスタイル抜群な美人さん、メッサ見たことあるどころか、殺したことがある人。
「ジェーン・ドゥ!」
「久しぶりだな。打ち上げ以来か」
片手を上げて、あいさつもそこそこに店内に入ってくる。
「あまり仲も良くない家族連れだから、用件を手短に言わせてもらう。
実は、ある
特徴とエンブレムは分かるが、データがない」
「データがない?
おかしい話だ、こちらが把握している
「
あらま、最近聞いた名前ね?
「…………あの厄介者達を?我々も把握しきれていないところはあるが、理由は教えてくれるんだろうな?」
「理由?
我々の『サーバーシティ』が襲撃されたからに決まっています!!
まさかあなたの子飼いの秘密戦力ではないでしょうね!?」
「何!?!
アーク、それは本当か!?!」
「さーばー??」
何やら、聞きなれない単語が……
「落ち着いてくれ、アークもクオンも。
……博士、あなたの娘達は相変わらず血気盛んだ」
「申し訳ない……」
「…………流石の私もそこまではしないし、サーバーシティの場所はどの陣営にもまだ言っていないぞ?
何があったか教えてくれ。少しこちらとしても看破できない事態だ」
たしかに。
何がなんだか、聞いてる私たちも分かんない。
「…………あなたも知っての通り、私たちは情報体。
その意識の元データは、巨大都市サイズのサーバーにて全てが管理されています」
「マジで?」
「マジだぞ大鳥ホノカ」
グートルーンちゃん氏の説明聞いて驚いたら、ジェーン・ドゥに肯定されました。
サーバーってアレだよね?パソコンのなんか重要なやつ。
「今回、襲撃にあったサーバーシティは、あなたにも教えていない私達の新設都市です。
……不明の
「4機で撤退。強いじゃん」
「お前に評価されるとこちらも割と嬉しいよ、単騎で4機フル編成を殺された身としては」
実際強いじゃん。次勝てるか分かんないよ、私?
「で、なんだが私が戦った感想を聞いて欲しい」
「ジェーン、お前がわざわざ感想を言うとは、何があった?」
「相手は2機とも、ネオ・デザインドだ」
と、クオンさん表情をかなり驚いた物に変える。
ネオ・デザインド……なんか聞いたことあるような??
「ありえん!!ネオ・デザインドビーイングの
なんなら生産数全てを把握している!!」
「────ん?なんかウチのこと呼んだー??」
と、扉を開けて話していたら、
あー、そうだネオって何か思い出したー!ってなる人物が多分偶然登場!!
長い銀髪を揺らして歩く、それだけでモデル体型がもう生える生えるなすごい美人。
黙ってたら、雑誌の表紙飾れるような絶世の美女。
今日はオフなので赤いコートでめっちゃキメてるこの美人さんは、
「なんやこのメンツ?カチコミかい?
オモロそうならウチも混ざろうか?」
関西弁が特徴的な、私の先輩傭兵なオリトリンデことリンちゃんであった。
「オルトリンデか!お前このタイミングは偶然にしてはできすぎているぞ?」
「知らんわジェーン、ウチかてマッコイさんにちょいとパーツ売ってへんか学校帰りに聞きに来ただけや。
ちゅーか、今、ネオ・デザインドいう言葉聞いたけどなんやウチの噂でもしとったん?」
そんなことを言いながら、カッコいい見た目と裏腹なすごい物、
今時見ない赤色のランドセルを背中から下ろすリンちゃん。
なんでランドセルを?って思うのは、あんまり詳しくない人だけ。
「……そういえば、12歳と聞いてはいたが、お前まだ小学生だったのか?」
「うん。いや勉強はできるけど、お父ちゃんに社会学んでこいとは言われとるねん。
出席日数これでも真面目に多い方やで?」
12で小学生……
小学生って、身体と顔??
「ネオ・デザインドは、13で身体が成長しきるからな。
その後は50代近くまでテロメアの劣化が起こらない。
まさに夢の人工生命体だ」
「生命体ってなんやねん。一応は人類扱いやで?
「それもそうだが……」
「…………ちょうどいい、ある意味でお前のおかげだからな。
お前も聞け、実は……」
という訳で、簡単説明中……
「は!?ネオの
ありえへんやろ、ウチら試験管から生まれたか弱い生き物なんやで!?
ヤクザモンに育てられるほど簡単な生き物ちゃうわ!!」
人間扱いじゃなかったんかーい!って言い草……
「お前のアタッカーサテライトに何度か殺されたからな。
おかげで今回の敵の動きで自律制御か、お前たちネオの特殊脳波と空間認識による攻撃かは分かった」
「そら、1回は半殺しで2回は全殺しやったからな!!
けどありえへんわ……
ちゅーか、そんなもん
あの人マッドいけどウチらネオのこと誰よりも知っとるし、愛しとる人や!!
ウチの父ちゃんのお兄ちゃんなだけある人なんやで!?」
………………ん???
あれ、クルス?
なんか……なんか最近聞いたことあった名前なんだけど??
「…………浅見クルスか」
「せやってかそっちの会社の系列の人やんクオンばあちゃん!!
むしろ年末とか定期検診で会うウチより会ってるちゃうんか??」
ふむ、と何かを考えるクオンさん。
「…………ごちゃごちゃした話が妙な点で繋がるな。
だが、案外コレでスッキリするか?」
「??」
「…………皆、ちょっと聞いてほしいことがある」
そしてクオンさんは、
全てを話した上で、とんでもない提案をしてきた。
***
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