[変更済]MISSION 4 :いつかやると思われていた男







<オルトリンデ>

『しっかしあのクルスおじちゃんが粛清かぁ。

 いつかやられる思うとったけど、成り行きでウチが参加するとは思わへんかったわ。

 まぁ、残念やけど当然か』


<ジェーン・ドゥ>

『それにしても、仮にもこの前まで殺し合い、なんならまだ私たちクラウドはお前たちと正式な交流がないのにな。

 こうして味方になる日がすぐ来るとは思わなかった』


「ま、なんだっていいでしょ。傭兵が受けた仕事に文句言っても仕方ないし、むしろ実力的には文句なしのメンツじゃん?」



 傭兵系美少女、大鳥ホノカちゃんはお仕事開始!


 相方は、リンちゃんの操る逆脚型混成フレームeX-Wの『スカイヴァルキュリア』、


 そしてO.W.S.製の特殊なフレームの中量2脚な『ホワイトスペクター』、


 この2機と私のペラゴルニスで、今谷底で静かに待機中です。


 あ、ウソ!

 もう一機いるんだった!!



<アーク>

『実力的には、ですか。

 私としては、あなたたちの存在そのものに疑問を持っていますが』



 丁寧な口調のハリネズミみたいな言葉を吐く、4脚型の機体が一機。


 マッコイさん、クオンさんの妹さんでソラさんのお姉さん、火星人マージアン5姉妹の3女の‪……‬アークさんである。



<ジェーン・ドゥ>

『戦闘データが、気に入らないと言うことかアーク?』


<アーク>

『イレギュラーという不確かな何かに疑問を持っているだけです。

 まぁ、最悪あなた方は見ているだけでも良いですよ?邪魔をしなければ』


「マジすか、太っ腹じゃないですか!

 修理費弾薬費タダだ!!」


<オルトリンデ>

『ウッソやろ‪……‬あの姉妹の中でそんな性格の良いこと言えるんか‪……‬!?』



 本当びっくりだよ!

 ただでさえお金貯めてる身としてはありがたい!!


<アーク>

『‪……‬‪……‬皮肉って言葉がいつ火星の人類から消えたのですか?』


「!

 ど、どこの希少部位ですか‪……‬そのお肉‪……‬!」


<ジェーン・ドゥ>

『諦めろアーク。特に今のランク9に知力というものはない』


 え、なんか頭がいいと分かる言葉だったの?

 コトリちゃん教えて?教えない?何故にホワイ??


<コトリ>

《さて、アホな会話するのもここまでだ。

 カモメちゃんからそろそろ研究所のゲートにたどり着くってさ》



 おっとと、どうやら時間だ。


 さてここからは、私に頼れるオペレーターな美人アンドロイドなカモメちゃんのお仕事になる。


「カモメちゃん、調子どう?」


<カモメ>

『良好です。暗号化ラグも問題なしですね』




           ***




 ババババババババババ‪……‬!


 eX-W輸送もできる武装した大型ヘリが、研究所のヘリポートへと着陸する。




“目標に到着しました。

 念のため、検問の間は無線を切ります“


<ホノカ>

『オッケー!気をつけてね?』



 ヘリはゴリゴリの武装型であり、コックピット部分の座席二つしかない。


 いつもと違って、ビジネススーツ風の格好と伊達メガネのまるで秘書のような格好のカモメは、後部座席に座っていたクオンをその見た目通り秘書らしく手を貸してヘリから下ろす。


「良いフライトだったぞ?」


「ありがとうございます、CEO」



 そして、コレよりカモメは、クオンの秘書型の人型機械端末ソレイユモデルとして振る舞うこととなる。








 というのも、少し前の作戦会議の話


「大鳥ホノカ、お前のオペレーターのソレイユモデル、たしかカモメだったか?

 少し借りて良いか?」


 と、クオンはホノカに提案していた。


「あらま、ウチのカモメちゃんをなんで?」


「‪……‬もしや、私が『ニンジャタイプ』だからですか?」


「そうだ」


「いやなーにそれ??」


「ホノカさん、あまり教えても意味はないぐらいホノカさん自身強いので言ってませんでしたが、

 傭兵スワン向けのオペレーター業務を行うべく配布される私たちソレイユモデルには、大きく分けて2種類いるのです。


 一つが、電子戦・電脳戦に特化した『フェアリータイプ』というソレイユモデルです。

 火星人ほどのとは言いませんが、歩くスーパーコンピュータと言っても過言ではない性能ですが、少々身体は脆いですね」


「そうなんだ‪……‬」


「‪……‬そしてもう一つが、フェアリータイプよりは電脳戦が不得手ですが、実機での歩兵戦闘もかなり考慮している私のような『ニンジャタイプ』。

 普段は傭兵スワンの皆様の護衛から、任務によっては地上から侵入してのオペレートなども出来るようなタイプとなっております。


 この二つのうち、私はニンジャタイプに当たるソレイユモデルなのです」


「あー、だから生身の時、おっきい弾丸じゃないとそんなに抜けないから盾にって?」


「ええ。まぁ、ホノカさん自身さっさと強化手術を受けておりますし、あまり語ってもホノカさん‪……‬忘れちゃいますでしょう?」


「間違いないね!さっすがカモメちゃんわかってる!」


「‪……‬ウフフ♪」


 この時、カモメは何故か知らないがホノカの頭を撫でていた。

 どういう訳か一応は持ち主マスターであるホノカに電子頭脳の中の何かが癒された。


「まぁ、実はそれが理由の半分だ。

 もう半分は‪……‬『秘書くん』、入ってくれ」


 何故か同じくホノカの頭を撫でておくクオンは、空いた片手を上げて誰かを呼ぶ。


「失礼します」


 そして、入ってきたのは、

 見た目がカモメと全く同じソレイユモデルだった。


「うそーん!?カモメちゃん増えた!?」


「‪……‬あら、あなたもその顔のタイプで?」


「はい。

 そして私は、フェアリータイプの身体です。

 何故あなたが、今回私の代わりに抜擢されたのかはもうお分かりですね?」


「声も口調も大体同じだ!!」


《工業製品だし当たり前でしょ》








 ────そして現在、研究所のヘリポート



(そう、工業製品なら同じ顔にCOMボイス、性格パターンぐらいはあり得る話です。

 ただ一点、本来クオンCEOの秘書型と違い、私ことカモメは陸戦歩兵として戦闘が可能なニンジャタイプの身体であること)


 クオンの後を歩く秘書型のソレイユモデルのフリをしながら、電子頭脳のクローズド部分で考えをまとめるカモメ。


(私は、新美クオン氏の身に何か起こらないようにするための護衛であり、

 粛清するターゲットへホノカさん達を誘導するマーカーでもあるという事です)



 そして、目の前にまず第1の関門が現れる。

 危険物検知用ゲートと、二つの巨大な影。


 2m以上はある筋骨隆々とした巨体は、人工筋肉繊維の塊。さらにフルプレートタイプの増加装甲もある。

 いずれも一応女性型、二つの巨体のソレイユモデル。



(軍用高出力型『ナイトタイプ』のソレイユモデル‪……‬!

 しかも、持ってる武器は、パルスプラズマライフル!)


 少し厄介な武器を、それも『色々察せる』ものを持ったソレイユモデルに内心驚くカモメ。


「止まってください。

 申し訳ありませんが、CEOといえど検問はさせてもらいます」



 そう言って近づく二つの巨大なナイトタイプのソレイユモデル。

 下手をすれば、大型重機クラスの出力の人工筋肉の身体は、カモメでも手こずる。


「分かってるさ。

 いつも通り銃は後ろの腰につけてある。45口径だ」


 隣でクオンが手を上げるのをみて、同じく怪しまれないようにカモメも手を上げる。


 直接接触と、彼女らに増設された磁器センサーなどによるボディチェックが始まる。


「‪‪……‬形式番号S04-A768、仕様変更の跡を確認しました。

 背部バッテリーユニットを開いてもらいます」


 めざとい金髪癖っ毛ロングのナイトタイプが言う指示に、素直に従って服を捲り、背中の腰近くのハッチを開ける。

 本来の型番なまえがあまり内側に書かれていないタイプであることに安堵するカモメだった。


「‪……‬増設型のバッテリー二つですか。

 軍用の長時間行動をさせられるとは、激務のようですね?」


「それが生まれた意味ですから。あなた達と同じです」


「たしかに。失礼しました。

 もうCEOのチェックも終わりました。

 後は、ゲートでの2重チェックの後に入室を許可します」


「わかった。秘書くん、」


「はい」


 カモメとクオンは、危険物感知ゲートへ進む。

 これ見よがしな可視光レーザーと、ダミーに隠れて放たれるあらゆる検知手段で危険物が探知される。


 ───まぁ、カモメ本人は『仕込みはバレない』自信があった。

 やはりというか、感知したのはクオンの持ち込んだ拳銃だけだ。



「では改めて、ようこそ新美クオンCEO。

 レイダー外部遺伝子研究所はあなたを歓迎します」


 そして、ようやく研究所の入り口へ入る。



 内部は、まさに研究所という感じの場所であり、受付や補佐を担当するソレイユモデルや、人間の研究者達が多く歩いている。


 入り口近くの広い休憩用のカフェテリアでは、大量の資料とコーヒーを片手にうんざりした顔を見せる研究者らしき人間もいれば、あーでもないこーでもないうるさいバカと騒ぐグループもいる。


 至って普通の、医療系研究所だ。



「───やっぱり来るの早かったですなぁ、社長?」



 一瞬、カモメの反応が遅れ、かなり太い注射針の付いた機械でクオンが背中から刺された。


「!?」


「待ちぃ、秘書ちゃん。ボク吹き飛ばしたらそれはそれでCEOがもっと痛い目合うわ。

 支えたって、殺す気はないから」



 シリンダーの中にやや赤みがかった透明な液体が満たされていき、クオンがふらついて倒れるのをカモメは言う通り支える。


「ぐっ‪……‬クルス、お前、まさか‪……‬!」


 そして、クオンの後ろにいた男が、その機械から丁寧に中を満たされたシリンダーを抜き取る。



「いや本当ごめんなさいねぇ、クオン社長?

 火星人マージアンの生体サンプルどうしても欲しかったんや。

 けど、僕が頼んでもくれへんやろ?心苦しいけど殺して回収しよう思ったんですわ。

 まぁ、失敗したおかげで今日来てくれたおかげで、一応生きたまま手に入れられましたけど」


 そこで不敵に笑っていた細身の中年男性こそ、目標の浅見クルスその人だった。


 


「お前‪……‬相変わらず、研究以外は頭が回らないな‪……‬!

 普通の人間の致死量分は抜いておいて‪……‬お前らしいよ‪……‬まったく」


 ふらついたクオンの背後に、医療業務使用のソレイユモデルが車椅子を持ってくる。

 座らされ、腕をまくられて点滴を受ける。


 殺しかけた割に手厚い扱いだった。



「いや本当、申し訳ない思っとるんですよ!

 どうせ、ここまでやってお咎め無しなんて都合のいい話ない思いますし、せめて僕殺す前に社長には研究成果見てもらいたいんですわ」


「‪……‬研究成果?」


「ま、どのみちしばらく安静にせなあかんくしたんですわ。

 治療ついでに見にいきましょか。

 気になるでしょう、僕がバカやった理由?」


 その言葉に、ふぅーとクオンは大きくため息をだす。


「‪……‬まぁ良いだろう。

 見せてもらおうか、『冥土の土産』という奴を」



 それは、クオンの暗号の合図だった。


 ひとり静かにしていたカモメは、出撃の信号を短く送った。




          ***



「お!カモメちゃんの合図だ!」



 傭兵系美少女、大鳥ホノカちゃんお仕事の時間です!



<オルトリンデ>

『っしゃあ!!いくで全員!!』


<アーク>

『あなたが指揮権を持つとは聞いていませんでしたが?』


<ジェーン・ドゥ>

『こういうのは、ただのノリだから許してやってくれアーク』



 次々と、仲間が機体の脚で谷を蹴って上へ登り、進み始める。


 まるでニンジャみたいな壁走り、いや壁蹴りとか壁飛びが正しいかな?


「じゃ、こっちも行きますか!!」


 さて、私も早速壁蹴りで登っていく!


 目標は謎の怪しい研究所だ!




          ***

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