[変更済]MISSION 15 :棺桶ロードを抜けていけ!
どーも、借金のせいで傭兵やって、機動兵器でどんぱちしている大鳥ホノカです。
という訳で、私の機体アルゲンタヴィスは、胸の辺りを構成するコアパーツも武器も新しくして心機一転!
背中には超音速飛行が可能な
敵は、チカッと光ったらドーンッ!と全てをぶっ壊す長距離砲をブッパしてくる上に、
真下には敵自立兵器の艦隊が、プラズマ対空砲だっけ?名前忘れたけど光る滅殺花火を撒き散らしてきてまーす!
いけないいけない、気を抜いてアサルトブーストで左右に避けないと一瞬で消し炭だぞ☆
心なしか、コアを軽量パーツにしたおかげかすっごく動ける!
私の頼れる相棒の
ふぅ……さぁて!!
「現実逃避してる場合じゃ無いでしょ私ぃぃぃぃッッ!?!」
棺桶ロードの言葉に偽りなし。
周りに飛び散る花火見たいなプラズマは壁になるし、
遠くでチカッと光った瞬間避けなきゃ、長距離からやってきたぶっとい弾丸に撃ち抜かれる。
この狭いし仰向け同然の、棺桶そのものなコックピットがマジで棺桶になるのは数秒後かもしれない。
<コトリ>
《敵の長距離砲の威力は馬鹿げているね。
回避を最優先だ。距離が縮まれば当然光が見えてからの着弾時間も短くなる。
僅かな光も身逃さず、一切気を抜かないで死ぬ気で回避し続けて。
どのみち、それ以外方法はないからさ》
「分かっててもキツいし出来ないかもしれない事が多すぎる!!」
やりたくないこんなクソみたいな命懸けの傭兵業。
でもやるしかない。
生きて傭兵を辞める為には、必要金額500万cn。
今回の前払いの残りは……4万cnちょいか。
機体の修理費、弾薬費も考えないといけない。
────だけど生きてなきゃ、そんな心配すらできない!!
「お金のために頑張るって決めたからには!!
最後までお金のために頑張り続けるしか無いよねぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!」
光った。避ける。通り過ぎる!!
───他の傭兵達は、本来コレをやるはずのインペリアル正規部隊の人達は、生きているのかな?
***
「はぁ、はぁ、はぁ……!!」
回避行動を続けるアルゲンタヴィス。
その背後には、ハードレインフレームタイプの軽量2脚機、可憐なピンクと白の花のような機体キュアフル・ウィッシュを必死に操るエーネの姿があった。
「嘘でしょ……どうして避けられるの……?」
アルゲンタヴィスが、大鳥ホノカが避ける姿を見て同じ方向に行けば、ほぼ確実にあの恐ろしい攻撃の数々を回避できる事はすぐ分かった。
すぐ分かったが、分からない。
なぜ、砲撃を『見て』避けられるのか。
こうして随伴してわかるが、明らかにハードレインより重く、動きこそ良いが純粋な運動性能が高いハードレインフレームの自機より明らかに運動性能が下だ。
だが、言うなればそのおかげで目の前のアルゲンタヴィスの動きに合わせられる、機体性能に頼れるからこそ回避ができる状態だ。
分からない。コレが本当に同じスワン、いや自分より遅く傭兵になった者なのか?
「でも……ついていけば……生き残れる!!」
────理由はいい。結果が出ているのだ。
エーネは、内心申し訳ないと思いつつ、アルゲンタヴィスを、ホノカを利用して生き延びようとしていた。
そして、その隣では、
自らの力で、なんとしてでもこの場所を抜け出そうとする傭兵が3機。
<オルトリンデ>
『次はちょい右に避けぇな!!』
<キリィ>
『どっしゃぁぁぁ!!』
<サージェント・トルペード>
『うにゃー!!』
<オルトリンデ>
『しっかしびっくりやであのホノカちゃん!
見てみぃ?砲撃見て避けてるで?』
<キリィ>
『どうせ近づけば皆がアレやらんといけんのじゃ!
まぁ、確かに弾除け以上には戦えそうじゃの?』
<サージェント・トルペード>
『羨ましい限りだなぁ!
あーあ、私はアンタらのお尻見ながら行くわ。
そういう神経使うの苦手だからさ!!』
いよいよ、近づくにつれて、砲撃の激しさが増す。
そんな中オルトリンデは、そのネオとしての感覚で向こう側の砲撃する者の『焦り』と明確な『殺意』を感じ始めていた。
(なーんか変やな?
こんな攻撃、いつもの
せやのにその下、ごっつデッカい妙な殺気がむわむわしとるんか?
なんやコレ、気のせいかデカすぎひんか??)
しかし、妙な事、で言えばオルトリンデの関心は別にあった。
別に見なくても砲撃は避けられる。
だからこそ────
「まさに新人っちゅー感じの慌て方、動揺、嫌悪。
なんやけど、心の根底が妙に冷え切っとる。
ほんま、新人かあの子?
いや、新人でアレやから面白いんやけど」
フッ、と小さく笑い、未だ飛び方を覚えたばかりの鳥の様な回避を見続ける。
「ま、後ろの人らよりは、飛ぶのが上手やで?」
***
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、……!!」
スカイヴァルキュリアか、アルゲンタヴィスの動きをなんとか捉えて回避する。
なんとか……動きが激しすぎるのだ。
呼吸を乱して集中し、辛うじて無言でついていける。
周りのインペリアル所属のeX-Wパイロットたちも、生きている間はその状態だった。
(我々は、足りないとは言え累計で6000時間は訓練している!
戦術シミュレートも余念もなく、SSSB訓練も9回実際にやっている!
実戦は負けた事も多いが何度も経験している!
新兵といえど、不足はないはず。
だが……なんだこの差は!?)
距離的にも、また別の意味でも遅れている。
そう自覚してしまうほどの、凄まじい動き。
(これが、
じゃあ、我々は、なんだ!?)
ついていくだけで精一杯の中、不意に開く無線の音。
<スノウウィンド>
『SSSB、使用限界近いです。
全機通常戦闘の準備を』
いつの間に、という驚愕、
これで一息つける、という安堵、
─────この激しい移動をしながらの冷静すぎるオペレート通信に恐怖を覚える。
「依頼して……正解か……くそったれ……!!
***
やったぜ、って喜ぶべきか迷う女、大鳥ホノカちゃんです。
SSSB、もう終わるのはいいけど、
<コトリ>
《なんかおかしいな。
Eシールドどこ?熱も無いし光学的な反応もない》
「やっぱそうだよね?
中からでも外からでも見えるもん、普通はさ」
私は、コトリちゃんの指示でさっきから高度を落としていた。
綺麗な海が……うん?海が綺麗??
「ねぇ、みんななんかおかしいよ!!
海に敵がいない!!
シールドも無い!!」
そうだよ。さっきまであれだけバカスカぶっ放してた敵はどこ?
見えるものと言ったら…………
<スノウウィンド>
『アルゲンタヴィス、そちらから敵の様子が見えないのは本当ですか?』
「本当だよ。
レーダーにもいない。
島だけ」
遠く、シルエットが既によく見える。
不気味な塔みたいな岩山がそびえる、巨大な島が。
<スノウウィンド>
『島が見える?
……アルゲンタヴィス、SSSBをパージしてください。
その後は、移動しながらで良いので島の映像データをこちらへ転送してください』
「え、あ、はい……」
パージどうやんだっけ、と思ったらコトリちゃんがさっさと送ってくれた。
背中からパーンと弾ける感覚と、後は慣性で移動しながら、海に落ちないようブースト。
と思ったら、隣に一機やってくる。
見たことないフレームだけど、コアの部分はエーネちゃんと同じハードレイン。
ただし、脚は脚っていうより細長いコマみたいで、腕もなんか腕って言うより飛行機の翼に似たレーダーみたい。
辛うじて、ツノ二つ上に伸びる間に、くるくる回る天使の輪っかみたいなレーダーがある頭があるからeX-Wって分かるすごい見た目だ。
背中の武器っぽいの片方だけで、もう片方もレーダーだし。
<コトリ>
『AI社特殊フレームの『AIE-03オーロラ』か。
味方の
<スノウウィンド>
『アルゲンタヴィス、カメラを島に向けてください』
おっとと、視線を戻す。
本当にここが敵地?静かだー…………
「…………ねぇ、みんな?
変なこと言って良いですか??」
続々と味方のeX-WがSSSBをパージする中、私は…………うーん、これ気のせいだよね?もし気のせいじゃないなら、ヤバいことに気づいちゃった。
<オルトリンデ>
『……なぁ、ホノカちゃーん?
もしかしてやけど……ウチと同じこと気づいてぇへん??』
<スノウウィンド>
『すみませんが、先に気づいたのは私なので。
恐らく、アルゲンタヴィスのスワンの感は正解です』
「…………やっぱ、
初めは近づいているだけだと思った。
でも、なんか右にだんだん寄ってる気がするし、見える角度が違う気がする。
<オルトリンデ>
『島や……ない』
オルトリンデさんが、今までのテンションと違う、まるで絞り出したかのような怯えた声をあげる。
<キリィ>
『なんじゃその怯え方……いつものおふざけどうしたけぇ?心臓に悪いのぉ……オイ……!』
<スノウウィンド>
『データ照合。アルゲンタヴィスとスカイヴァルキュリアの予測通りです。
島に『偽装』した物体、毎時28ノットで移動中。
島内部、及び海中各所に熱並びに電磁波を検知。
いわゆる高エネルギー反応……まるで、心臓みたいな』
<オルトリンデ>
『言ったやろ。
島やない』
突然、島が崩れ始めたのがカメラに映る。
薄い土が剥がれ落ちて、岩に見えた金属的な本体が映る。
海面が波打って、島の幅みたいなのが浮上し始めた。
テレビで見たクジラが浮上するような感じに、
ソイツの、頭が現れる。
<コトリ>
《『あなたは釣り針でレビヤタンを釣り上げることができるか。輪縄でその舌を押さえつけることができるか』》
どうした突然コトリちゃんや。
ってツッコミ入れる気力も失せた。
<コトリ>
《『あなたは葦をその鼻に通すことができるか。
これがあなたに、しきりに哀願し、優しいことばで、あなたに語りかけるだろうか。
これがあなたと契約を結び、あなたはこれを捕らえていつまでも奴隷とすることができようか。
あなたは鳥と戯れるようにこれと戯れ、あなたの娘たちのためにこれをつなぐことができるか。
漁師仲間はこれを売りに出し、商人たちの間でこれを分けるだろうか』》
巨大な、蛇。
連結している身体は列車にも見える。
<コトリ>
《『あなたはもりでその皮を、やすでその頭を十分に突くことができようか。
その上にあなたの手を置いてみよ。その戦いを思い出して、二度と手を出すな。
見よ。その望みは裏切られる。それを見ただけで投げ倒されるではないか。
これを起こすほどの狂った者はいない。だから、だれがいったい、わたしの前に立つことができよう。
だれがわたしにささげたのか、わたしが報いなければならないほどに。天の下にあるものはみな、わたしのものだ。
わたしは彼のおしゃべりと、雄弁と、美辞麗句に黙っていることはできない』》
列車みたいな動体に一両一両馬鹿でかい大砲が、びっしり並んだちょっと小さい大砲が、四角い多分ミサイルポッドが見える。
<コトリ>
《『だれがその外套をはぎ取ることができるのか。だれがその胸当ての折り目の間に、入れるか。
だれがその顔の戸をあけることができるか。その歯の回りは恐ろしい。
その背は並んだ盾、封印したように堅く閉じている。
一つ一つぴったりついて、風もその間を通らない。
互いにくっつき合い、堅くついて離せない。
そのくしゃみはいなずまを放ち、その目は暁のまぶたのようだ。
その口からは、たいまつが燃え出し、火花を散らす。
その鼻からは煙が出て、煮え立つかまや、燃える葦のようだ。
その息は炭火をおこし、その口から炎が出る。
その首には力が宿り、その前には恐れが踊る。
その肉のひだはくっつき合い、その身にしっかりついて、動かない。
その心臓は石のように堅く、臼の下石のように堅い』》
その身体は分厚かった。
島が無数に連なっている大きさなのに、全て鋼鉄製みたいな。
<コトリ>
《『それが起き上がると、力ある者もおじけづき、ぎょっとしてとまどう。
それを剣で襲っても、ききめがなく、槍も投げ槍も矢じりもききめがない。
それは鉄をわらのように、青銅を腐った木のようにみなす。
矢もそれを逃げさせることができず、石投げの石も、それにはわらのようになる。
こん棒をもわらのようにみなし、投げ槍のうなる音をあざ笑う。
その下腹は鋭い土器のかけら、それは打穀機のように泥の上に身を伸ばす。
それは深みをかまのように沸き立たせ、海を香油をかき混ぜるなべのようにする。
その通ったあとは輝き、深い淵は白髪のように思われる』》
身体の各部から、空飛ぶ蜂みたいな自立兵器を発進させている。
アレがプラントだと言ったの、間違い無いな……
<コトリ>
《『地の上には、これと似たものはなく、恐れを知らないものとして造られた。
それは、すべて高いものを見おろし、それは、すべての誇り高い獣の王である』
……完全に姿表すまでに聖書の一章分言い切れるって何さあれ?》
こっちが聞きたいレベルの、凄まじいやつ。
<キリィ>
『デカすぎるじゃろ……!』
<オルトリンデ>
『なんやアレ……ヨークタウンよりデカい……!』
通信に飛び交う、デカいの言葉。
悪いんだけど、聖書とか昔下校中に変なおばさんが配ってたのもらったっきり読まずに捨てたので、
私は『デカい』以外の感想を持たない。
<インペリアル部隊長>
『嘘だろ……なんてデカいんだ……!!
────『化け物』め!』
海の上にあらわれたのは、超巨大な蛇だった。
自立兵器の親玉だ。
とにかくでかいし強そうな。
「どうすんのこれ?」
棺桶ポイントが消えた。
その代わりなんだろう、本当に棺桶に入るの待ったなしなモノが出てきた。
墓標がデカすぎる。
私たちみんなでも不足はないぐらい。
─────生きて帰れる気がしない……!
「普通島が変形するとかアニメの中だけじゃん……」
***
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