[変更済]SIDE STORY : 今、アイツら何やっているの?
──────カメラに映る映像をズーム。
とある海岸に揚陸し、砂浜と海の境目に巨大な身体を下ろしている葉巻型の長い身体を持つ船が一隻。
『オイオイ、なんだぁ?
まるで襲ってくださいって言わんばかりの無防備な姿はよぉ?
わざとらし過ぎて、襲うに襲えねぇじゃねぇかよぉ……静か過ぎるのもマジで挑発してんのかぁ??』
大和重工製八式武蔵フレームで全身を固めた、4脚狙撃機『ジャック・オー・ランタン』内部で、ランク15の
────とっくに相手のレーダー範囲ギリギリのはずの海域で、トラスト所属の
甲板の上のジャック・オー・ランタンのカメラによって見え見えの偵察をしているにもかかわらず、相手の動きはない。
「チッ……乗り損かよ!どうギフトⅡを回収するつもりだあのクソ◯◯◯共は!?」
実年齢より小さい背丈と童顔に似合わない酷い悪態をつきながらウィルは機体を降りる。
「まーまー、落ち着きなさいな。
俺もああいうお金持ちプレイやりたいってのは正直な話だがね」
空母バーナード・フェリクス艦長、陽気な黒人のエドワードは、ウィルにアイスの入ったカップとスプーンを渡しながら言う。
「……ストロベリーか。良く好みが分かったな艦長?」
「俺もストロベリー派でね?」
「つーか、金持ちプレイってどういうこった?
マジでアレがものけの空って言うことかよ?」
ふむ、とストロベリーアイスを一口含みながら、エドワードは遠い向こうの輸送船を見る。
「雇われる側なもんで、商売道具の船は俺は犠牲にしたくないよ?戦闘で仕方ない時とはいえね。
ただあの輸送潜水艦、ずいぶん古い型だ。使えないわけじゃないが」
「船なんざ兵器としての寿命は長いだろ?」
「だな。だがそろそろ使い捨てても良い艦歴だよ、あれは。
羨ましいねぇ〜!一つの社の社長に、貴族の称号!
そしてそんなことができる資産!ワオ!
個人事業主には憧れる戦い方だ!!」
「…………確かに言われるとクッソムカつく金持ちプレイだな!
…………情報じゃ、2隻だったはずだよな?」
「さて、もう一隻は見つかるかね、と」
と、遠くから運んできたユニオン軍の偵察部隊の航空機と、白い色のeX-Wが戻ってきた。
「ジェーン達が戻ってきたか!」
***
バーナード・フェリクス艦内、会議室。
「ハマサキ少尉、報告を頼む」
「はい。
いやぁ……我々ユニオン航空隊の、練度不足もあったんでしょうがぁ……2時間近く、飛んだんですが……
えー…………何一つ、見つけられませんでした…………」
報告をした兵士含めて、全員釈然としない表情と悔しさの混じった顔を見せていた。
「ダメか」
「すまない、私もダメだった」
「まぁダメに決まってるか」
クールな印象のリングヘアの凛々しい女性、ランク9
「あの、
何かこう、トラスト所属のツテで、この状況打破できるような情報は無いんですかねぇ……?」
「悪いな正規軍。あったら俺が欲しい。
だが妙だと思ったんだ、あの金持ち企業レイシュトロームのツテでの情報が多すぎた。
だから追えたんだが、本命の動きは二つの変態ども……O.W.S.かエクレールがなんか出したな?
何出したんだよアイツら……びっくりドッキリメカは戦場で会うと心臓に悪いんだよな……」
と、大真面目なうんざりした顔でふざけた様な『事実』を言う艦長エドワードの元に、船のクルーが小走りで駆けてやってくる。
「艦長失礼します。
『お客様』が到着しました」
「来たか!
では正規軍の皆は一時解散!
ジェーン・ドゥ!お仲間が到着したぞ!」
***
空母の真横。
巨大な見慣れない兵器達が浮上する。
そして一人、小柄な身体の人物が甲板にやってきた。
「グートルーン!?
まさかあなたが直接か!?」
「向こうの体の会議は終わりましたので」
ジェーンは目の前の小柄な白髪の少女───グートルーンを意外そうな顔で見る。
「それにしたって、一応あなたは我々クラウド・ビーイングの代表だろう?
まぁ、だからこそ全てができるが」
「あの場所の間違った生命体を消す使命と罪は私の責務です。
彼女らに罪はないですが、いずれ我々や人類と悲惨な生存競争をしなければいけなくなる」
「あの場所の?
あなたの記憶アーカイブのアレか」
「今まで放置していたのは、海岸部から内陸へ続く道にいた大型生物達の対処まで戦力が避けなかった事が大きいですから。
…………私は少し不服な結果になりましたが、彼らとの一時休戦はこちらにリソースを割くには良い結果と言わざるを得ませんね」
チラリとエドワードの方を見るグートルーンに、エドワード本人は歯を覗かせてサムズアップして返しておいた。
「娘さんとの交渉は上手くいったのですか?」
「冗談でも、あの子達の望まない呼び方はやめなさいJ-07」
「……久々に本来の名前を呼ばれた気がする。
次は気をつけます」
「…………あの子達は良くも悪くも大人になりました。
私は、私がやらないといけない事とはいえ酷い事を散々したのに、ビジネスと割り切って情報も渡してきました。
ゼロツ……いえ、今はクオンでしたね。
どうしたって、中立という理念の元あの子の作ったトラストという組織を動かしたいのでしょう」
「太っ腹な。
情報とは?」
「最新のものです」
と、グートルーンは左のこめかみに左指をトントンと叩く動作をし、それを見たジェーンが同じようにこめかみを指で押さえてよそ見するように視線を外す。
「何してるのかね?」
「お前ら普通の人間と違って、今頭に記憶ごと情報共有してんだよ。整理すっから待ってろ」
「まー便利!」
「……冗談かと思うレベルで正確な情報を?
しかも更新時間は15分前?
…………おかしい。ダミーデータの可能性は?」
「分かりませんので今、『真上』で情報の精査中です。
ただクオンは、ゼロツーと呼ばれていた昔から嘘はついていないのに騙すのが得意な子でしたよ。
これも、情報自体に嘘はない。
ただ何かを隠しているのでしょうし、何か罠があるのでしょう」
「……『上』で、やはりギフト2を落とせませんか?」
ジェーンの言葉に、静かに首を横に振るグートルーン。
「アークも奮闘していますが、あなたに任せた例のあの機体、
あの『UFO』という技術の発展型を艦に使用しています。
本来は惑星間移動用の航行技術ですか……私たちが火星に旅立った後の物を再生させた技術ゆえに、こちらでも知っての通り扱い切れるだけのノウハウがありません」
「私も、5回は使用で死んだ代物です。
この前の8回目の使用でようやくある程度動かせるようには」
「そもそも、あんなものを機動兵器に乗せる事自体が
だれがあんな地獄への道を亜光速で進むようなシステムを組み込んだのでしょうね?」
「……いずれにせよ、ギフト2の破壊は降着後と言う事ですか」
「ええ。
ですので、今回は『グランキャンサー』を6機用意しました」
振り向き、持ってきた巨大兵器達をみて言うグートルーン。
「本当に殲滅をする気ですか。
しかも
「私は、私達が最初に犯した過ちの修正をしなければいけませんから」
「…………にしてもあなた、やはり恐ろしい」
空母の横の、巨大兵器を見ながらジェーンはただそう呟いた。
「たとえ誰に
それが正しいと信じて」
…………ふと、少し離れた場所で、グートルーンの言葉を聞いたエドワードが、静かにつぶやいた。
「でも大量虐殺には、変わらんよな」
「……よく分かってんじゃねぇか」
静かにウィルも肯定し、まぁしかし仕事なのでそのまま自らの仕事に戻るのであった。
***
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