MISSION 21 :弱点分かっても相手は強い







 ─────突然現れた敵『火星統一政府軍』の新型兵器の弱点が、大鳥ホノカの活躍で成形炸薬弾HEATをはじめとした化学エネルギーCEによる武器が有効という状況は、広範囲ECM下の戦場にあらゆる方法で伝えられた。




<インペリアルeX-W部隊機>

『CE武器は何がある!?』



<インペリアル整備兵>

『はい!!HEATライフルと、HEATマシンガン‪……‬ロケットなら大量に!!ミサイルもなんとか!!』


<インペリアルeX-W部隊機>

『すぐに装備させろ!!

 ロイヤルの皆の負担を減らすために上がるぞ!!』





 インペリアル正規軍リッターオルデンは即座に、FCS導入により動けるだけのeX-Wを中心に、速くHEAT系列の武装を装備し発進。







<サージェント・トルペード>

『ふははははは!!!

 eX-Wじゃないなら私は強いんだよぉぉぉぉぉ!!!』



<ジュディ・ゴールド>

『死ね死ね死ね死ねくたばれぶっ潰れろオラァッ!!!』



 また、普段からCE系列の武装を扱う傭兵スワンの活躍が光るが、



<サージェントトルペード>

『なんでえぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?!?』



<ジュディ・ゴールド>

『やられんの速ぇえんだよクソがぁぁぁぁぁ!!!』



 それでも、新型機動兵器は強い。


 それはどこの戦場でも同じだった。





          ***




 ヨークタウン、第3甲板上部、




 カァオッ!!カァオッッ!!!




 一撃目は周囲にプラズマを撒き散らしながら耐えたが、すでに満身創痍のボロボロの天使のような姿が、


 2撃目で上半身が蒸発する。



『まずいな、アンプ付きのライウンで2発だと!?』



 クオンの操る愛機『フォックスファイア』、

 両肩のエネルギー流入整波装置、ことアンプで破壊力を強化した、右腕に構えるAI社最強火力のプラズマキャノン『AIPB-XX RAIUNライウン』ですら2発無ければ、謎の天使型機体は倒せなかった。



「ライウン、あれ地球に眠ってた、もう140年以上前の最終戦争以前の、失われた技術でできた戦闘艦艇の主砲のレプリカなんだけどなぁ‪……‬

 アンプも倍率は破壊力1.5倍になるはずなのに‪……‬」


「それやばくねぇすか、ソラバア?

 それに1発耐えてる敵さん含めて?」


 足元で、マッコイ商店の整備員の二人こと、クオンの妹の地球育ちの火星人マージアンのソラと、

 強化済みの身体にサブアームを背中から生やす褐色の少女整備員のユナがぼやく。


 ぼやきたくなるのも当たり前であり、店番している間に何件かあの天使型機体のハッキング能力で動かないeX-WやMWを上手いこと動くようにしながらとある機体を動かせるようにしていたがために、もう二人はヘトヘトだった。


《ヤバいに決まってるでしょ。

 そしてそんなヤバい相手だ、多分この機体はいる》


 そして、疲れる二人のケツを蹴り上げる30cmの3頭身のマスコットロボ、

 こと、無人操縦及びパイロット補助用AIシステム『PLシステム』ユニット、ウェザーリポータータイプ13『コトリ』。


「コトリちゃんパイセンさ、言われた装備にしたけど、君の相方が死ぬ前に間に合うと思う?」



《あのウザいお調子者はさ、殺すなら自分の手でって決めてるんだ。

 その時楽しく戦うためにも毎日鍛えておいたんだから、間に合う前に死ぬとかされたら私の目が節穴ってことになる。


 ねぇ、生前の私の人格データを仮にも完璧にサルベージしてAIにした張本人の新美ソラにとって、

 私って節穴な目に見える?》


「そっちに殺されかけた事もあるのに、節穴だなんて言えないさ、先輩ちゃん」


「‪……‬アンタ、冷静に考えたら、このチビちゃんの中身って元は人間の『魂』みたいなもんなんすよね?

 死んでも戦わせるとか、鬼畜っすよ」


 ユナはもう一つ任された機体を調整しながら、二人の会話に口を挟む。


「安心しなよユナちゃん。一番売れてるのは私こと新美ソラの人格データの『幽霊軍団ファンタズマレギオン』システムさ。


 自分の魂もコピペして使ってる。

 コレでまぁ少しは、死人も納得でしょ?」


「こえーよ、魔物みたいなバアさんだな」


《しないからね。異常だからね》



 べー、とソラ (御歳86歳)は70年前から変わらない舌だしスマイルで答える。


 そして、ユナに運ばれて、コトリの小さな体はとある機体の中へ。






《ファンタズマレギオンシステム、ロジックパターンタイプ13、投影。


 PL-3、スタンディングバイ。

 カモメちゃん、準備はいいかい?》


<カモメ>

『はいコトリさん!

 対ハッキング装備に手間取りましたが、いつでも!』



 コトリの仲間、傭兵スワン、大鳥ホノカの『私物』であり頼れる女性型アンドロイドガイノイド『ソレイユモデル』のカモメが操る、巨大な二つのローター付きのヘリコプター。


 吊り下げられるのは、二つの機体。


 コトリが操る、軽量逆関節型機体『ハーストイーグル』、


 そして、蘇った本来のホノカの愛機。



《別に倒しちゃっても構わないけど、念のため君の『アルゲンタヴィス』を持っていくよ、ホノカちゃん》



 カモメのヘリに懸架され、今戦場の空を切り裂いて向かう二つの機体が飛んでいった。




          ***





<セヤナ>

肩部けんぶ残弾ゼロやッ!!』



「敵もゼロだこんにゃろー!!」



 傭兵系美少女大鳥ホノカちゃん&関西弁スナイパーサポートAIのセヤナちゃん、


 そして二人で操る4脚狙撃機『オルニメガロニクス』の活躍で、天使みたいな見た目の機体を撃破!!



<セヤナ>

《ま、腕部左右ともに残弾30%やけど》


「弾代ぃぃぃ‪……‬!!!

 HEATはお高いのにぃ‪……‬!!!」



 被害は大きい。お財布にも戦局にも。短波無線で電波悪いけど、たまに拾う内容は結構苦しいみたい。


 にしても6機相手にこの残弾‪……‬!


 今ここにはいない相棒AIのコトリちゃん曰く『HEATは弾代が高い上に基本弾速が遅いせいで当たらない』は本当だったな‪……‬!!


 相手は強い。硬くて早くて攻撃も激しい。

 あんなにパルスプラズマをパルパルパルパル連射してくるのにあんな動けるってどんなジェネレーター使ってんだろ。



<セヤナ>

《まだイケる思っとるなら、撤退した方がええよ。

 逃げる分の弾いるんやで?》



「そうは言うけど‪……‬ほら、あっちの支援もあるからさ!」



 今いる海岸の先、本来私が狙撃支援しなきゃいけない場所で、私の妹分含めて3機が揚陸艦を邪魔して沈める戦いをしているけど、




<ルキ>

『やっぱこっちにも来るわよね!』


<エカテリーナ>

『CE武器はわたくしが持っています!

 お二人は下がって!!』


<アンネリーゼ>

『立場をお考えくださいな、殿下!!

 全く、こんなことなら‪……‬!』




 残念ながら、相手の天使型の兵器のおかわりに襲われてる!!


 向かわなきゃ‪……‬いや、向こうから来た!!



「何体いるんだよこいつら!!」


<セヤナ>

《な?人の心配できる余裕とか無いねんなこの業界!!》



 せやなー!!なんて言う余裕もないわい!!


 オルニメガロニクスに残された武器、両腕のHEATライフルを撃つ!


 遅い弾速のせいで華麗に翼みたいなブースターを利用してあの天使型には避けられる。

 もう何度も見たし、対処は連射して数射ちゃ当たれだ!!

 舐めんな!オルニメガロニクスの腕パーツは安定性が高いから、なんか連射力上がるんじゃい!!


 理屈!?後でコトリちゃんに聞く!!


 重要なのは、


<セヤナ>

《腕部残弾30%b!!》


 連射が速ければ、弾切れも速いのが当然ってこと!


 追加は何体だっけ?知らないけど、こっちは救援どころか助けて欲しいぐらいの数だってこと。


 巻き込めて後3体。


 その後は、蹴りで残りを仕留めまくるしかない。



 無理だな‪……‬!



 ボン、ボン、はい、終わり。



<セヤナ>

《腕部残弾ゼロ!》



「ちくしょうッ!!」



 ガキャァン!!


 とっさに、光の刃ことプラズマブレードで突撃してきた敵の機体を蹴り殺す。

 装甲が硬くても、2脚の人型相手なら、4脚のこっちが重いからダメージは相手が上。衝撃で中はグダグダ!



 でもって一瞬止まった隙に、残った相手はプラズマパルスマシンガンの銃口をこちらに向けてる‪……‬!



(────死んだかな、これは‪……‬!!)



 うん死んだ。すぐ死ぬ。

 ‪……‬‪……‬でも抵抗せず死ぬのもアレだな‪……‬?



「ちぇっ!

 道連れだこの野郎!!!最後まで戦ってやる!!」






<ツナコ>

『───チェストHEATロケット!!!』



 聞き覚えのある声、見覚えのある無線相手の名前!


 まさか、って言うタイミングで敵の片方が飛んできたロケットの直撃で爆散した。



「その声はまさか!?」



<ツナコ>

『私を呼んだね!?ホノカちゃん!!』



 呼んでないけど、呼んだことにしたい相手が来てくれた!!


 紅白に金の昔見せてもらった鎧兜の色の機体は!!

 大体O.W.S.製品フレームで、ブレードを振るうためのあの機体は!!!




<ツナコ>

『ちぇぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっッッ!!!』



 ストライクブーストで突撃して、居合い切り一閃!


 そんなことするのは、私の幼馴染のツナコちゃんだ!


 機体名は『童子切どうじきり』!!

 私を一回半殺しにした機体と傭兵スワン、ランク3『ヤスツナ』ことツナコちゃん登場だ!!



<ツナコ>

『───たしかに硬い』


 だけど、まさかのツナコちゃん必殺のレールガン射出居合い切りなんていう変態機構の実体ブレード、


 それで、切れ込みが浅い‪……‬!!?


「気をつけてツナコちゃん!!

 コイツらはHEATとかのCE武器以外で抜くことは難しい!!」


 急いで、惚けてる方の敵の天使型を蹴って距離を離す私。



<ツナコ>

『‪……‬どうやら、装備を変えてきて良かったと言うことなのね‪……‬』


 すると、珍しく童子切はいつもの武装じゃない、

 このオルニメガロニクスにも積んでいるウェポンラックを起動して、レールガン居合い剣から‪……‬


 何その、分厚いブレードのような物??

 刃の間にヤケクソみたいに並んだ円筒形のやつ‪……‬まさかそれって‪……‬!



<ツナコ>

『ホノカちゃん、あなたの仲間がもうすぐ機体と補給を持ってくる。

 今は下がって!』



「分かった。でもツナコちゃん病み上がりじゃん?

 無理はしないで‪……‬ほぼ真人間なんだから。

 体は大切にしなよ」



<ツナコ>

『‪……‬‪……‬だから、前の任務で敵だった時、頑なにコアを狙わなかったの?』



「いやいや、そんな。

 当てられなかっただけさ、ツナコちゃんが私より強いんだ。

 昔から喧嘩しても勝ち譲ってもらってばっかだったしね」



<ツナコ>

『‪……‬逆だと思ってたなぁ‪……‬


 でも、今はそう言うことにするね』




 天使型のおかわりが飛んできた。

 私は念の為バックしながら距離を離す。


 視線の先、海の上をブーストで浮かぶ童子切。


 敵がパルスマシンガンを放った瞬間、一気に距離を詰めて斜線の内側に回避するのが見えた。


 多分O.W.S.製ブースターの殺人的加速で、一体に飛び蹴りブーストチャージを叩き込んでコックピットだろうと思う敵機体の胸部をへこませた童子切。



<ヘイロー部隊機1>

『気をつけろ!!コイツはランク3!!

 最警戒対象だ!!』


<ヘイロー部隊機2>

『ブレード主体のネタアセンがッ!!!』



 一瞬、離れてパルスマシンガンで焼く体勢になろうとした敵の、最初に離れた敵へ急加速アサルトブーストして近づくツナコちゃんの童子切。



<ツナコ>

『そのネタアセン、私は少しだけ得意なの』


 すでにツナコちゃんが一番得意なあの型、あのバット構えるみたいな姿勢で謎のブレードを天高く構えている童子切。




<ツナコ>

『きぇぇぇえええあああああああああ───ッッ!』



 いつもの恐ろしい声で恐ろしい速度で振り下ろされた瞬間、剣の当たった場所に爆発が起こる。



 間違いない、どこの社の製品かは知らないけど、アレは!!



 HEATブレードだ。

 あの切れる部分に挟まれてぶつけてた円柱は全部HEATだ!!



 その証拠に、爆風と共にスパンと天使型の機体が、頭の後輪から股までスッパリと切断された。




<ツナコ>

『ブレード主体のネタアセン、さげづむならば好きにしなさい!』



 ただし、とツナコちゃんの意思を乗せて、あの構えを取る童子切。



<ツナコ>

『剣機道の師範を務める以上は、


 眼前の敵は、全て叩き斬るのみ!!!』




 ────ここは任せてもいいらしい。


 なら、と後ろ向けてた機体を進行方向に戻す。


 すでに、目的の仲間がたどり着いていたからね!!



<カモメ>

『ホノカさん!アルゲンタヴィスを届けに参りました!!』



「遅かったじゃないか、もう敵取られそうだよ?」



<コトリ>

《じゃあさっさと、アルゲンタヴィスに乗って私も出して。

 何もしないで勝つ気はないでしょ?》



 真面目なオペレーターのカモメちゃんと、付き合いの長い辛辣なコトリちゃん、


 そして、最初に乗った機体の名前を受け継いだ高性能機がやってきた。





「行こうみんな!まだ戦いは始まったばかりだ!!」




 レーダーの敵反応は多い!

 まだまだ楽にはさせてはくれない‪……‬




          ***



 一方その頃、沖合




<エーネ>

『船一機落とした!!』



<イグ>

『本当に落とせた‪……‬!?』



 そこでは、エーネの軽量2脚でありレーザー兵器主体の高火力機『キュアフル・ウィッシュ』と、

 レプリケイター、イグ・フロストの操る重量2脚型機体『カージナル』が、強襲揚陸艦を1隻沈めた。



<エーネ>

『元さえ絶てば、あの機体も出られないはず!!』


<イグ>

『毎回こう言う戦いですか。正直恐ろしいものですよ、人間の戦場は!』





<???>

『────調子ずくなよ、たかが雇われの分際で‪……‬!』





 と、突然の広域無線での罵倒。

 二人の機体は、近くの残っている強襲揚陸艦の、甲板の上に視線が注がれる。




<エーネ>

『‪……‬なるほどね。こうくるか』


<イグ>

『何を納得しているんで?これがいつものことだとしたら、正気を疑う‪……‬!』






 ────巨大な光輪のようなユニットは、さっき見かけたら機動兵器達と同じ意匠だが、より巨大。


 頭身が低く、どこか中性的な印象を受ける人型の本体、



 そして、翼のように周りを飛ぶ謎の兵器。




<ヘイロー部隊員>

『我々ヘイロー部隊に与えられた兵器が『ハールート』と『マールート』だけではない。


 貴様らに使うまでもないと思っていたが‪……‬


 これが、『ザバーニーヤ』!!

 真の意味で対eX-Wを念頭に置いたこの兵器を出させたことを後悔させてやる‪……‬!』





 ザバーニーヤと呼ばれた機体は、10ほどの数が強襲揚陸艦の甲板に並んでいた。

 アレも、向こう側の兵器なのだろう。




<エーネ>

『後悔のない戦場なんてないよ。

 それでも生き残る。生きて勝ってやる!!』




 現れた恐ろしい兵器。

 しかし、元より戦場を選べる立場ではない傭兵スワン達。



 戦う以外の選択肢は、


 誰にも彼女にも存在しなかった。





           ***

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