[変更済]Chapter 3 :ENDING
地球から火星へ降下した宇宙輸送船『ギフト2』。
そこへ収められていたあらゆる科学技術や情報は、
今、確かに火星人類へと受け渡された。
クラウドビーイングに対抗する力、
あるいは、人類同士の小競り合いを加速させる力
それが今、確かに人類が手にした物であった。
生かすも殺すもこれからにかかっている…………
だが、それはあくまで、ホモサピエンスを基礎とした人類側の話……
***
「まずは、このような席を預けてくれた事を感謝いたします……叔父上様!」
「かしこまらなくていい、ウォーロフ。
私達は、お互い良く知る仲じゃ無いか」
───203平原、仮設テント。
両軍が見守るその中で、二人、
片方は、蒼鉄王国国王、ムルロア・ヘーリクス。
もう片方は、赤鋼帝国皇太子、そして皇帝代理のムルロア・ウォーロフ。
今、この大陸の二つの国の事実上トップが、テーブル一つ挟んだ距離で座っていた。
「ただ、講話条件では中々痛いところをついて来たな。
愚弟より賢いぞ?」
「ははは……勘弁してくださいよ叔父上様……
こちらにも譲れない線はございます」
「……まぁ、飲まざるを得ないさ。誰もがわかっている。
もう兄弟喧嘩をするような時期ではない。
向こうから新世界は来てしまったんだ」
「……父上は無事でしょうが、果たして彼の地の方々に無礼はないでしょうか?」
「どうだろう?
案外こちらの大使より有能かも知れない。
だって、ゼノバシアだから」
「言えてますね。
なら、私もお父様より与えられた使命を果たします」
「ああ。
では、改めて講和としよう」
二人が、握手する。
その様子をカメラのマグネシウムフラッシュが写す。
今、後の歴史に刻まれる一枚が出来た。
─────
同時に、非公式ながらも軍事同盟と貿易協定は即座に締結した。
その主な内容の中には、海の向こうの技術のことも当然最上段に記載されている。
レプリケイターの歴史に、大きな転換点が来た。
自分達を作り出したかも知れない存在、その仲間であるまた別の知的生命体。
レプリケイターとは異なる人間の、はるかに進んだ技術。
それが、果たして何を自分達にもたらすのか。
ただわかることは、手に入れなければ、掴もうとしなければ決してそれは手に入らない。
故に、大使を、自らの国家の王族すら送り込んだ。
嵐の予感は誰もが感じていた。
それによって、滅ぶ可能性もある。
それでも、レプリケイター達は、新たに出会った別の種族との交流を選び、新しい時代を迎えることを選んだ瞬間だったのだ。
────火星の歴史に、新しい風が起こる。
***
……てなわけで、傭兵系美少女大鳥ホノカちゃん、
勝手知ったるおうちの近く、ヨークタウンのお膝元に戻って来ましたー!!
「そしてギャァァァァァァァァスッ!?!
なんで修理費で40万cnぶっとんでりゅのぉぉぉぉぉォォ!?!?!??!!」
港で私を迎えてくれたのは、修理明細書っていう最悪の紙切れ一枚だった。
「あー、アレかな?このインペリアルって勢力のじゃなくて私が修理したからかな?」
「な、なんだってー!?
ソラさんそれは本当かい!?」
「まいどありー¥$¢£
悪いとは思うけどありがたく受け取っとくねー♪」
ぐぉぉぉ、やられた……!!
理屈的にはそうする……そうなる!!
「ぐぞう……成功報酬80万が半分……!!
ぐやじいでず……ッ!!」
《生きて帰れて新しいフレーム手に入れただけマシでしょ絶対》
ぅおーい、なんだいコトリちゃんグリグリ頭をしてきてからにー。
《はぁー…………こんな脳天気なアホの子が、初手でUFO使いこなすかー……私も生前できなかったのになー、才能ってやつかー?羨ましいー。生に未練が沸々湧いてくるー》
「コトリちゃん、このグリグリもしやずっと言ってるそれが原因のグリグリじゃないのかい?」
《そうだぞ。
エキドナの再三の検査でも、脳の損傷は軽微。
はぁ?私生前あのUFOの実験で、割と脳にダメージ受けたけど??寿命縮んだけど??》
「……横から言い訳するけどパイセンちゃんさー、今は機体のAIレベルも大分上がってるし、何より生前緋那ちゃんパイセンが作った例のあの強化人間補助システムが、」
《あってもキツいことこの子やらかしてるから愚痴ってんじゃん!
コイツめコイツめ》
わー、グリグリ辞めてー!?
《……コトリちゃん、辞めましょうよ。私達もうある意味死人なんですから……》
と、新しく買ったウェザリポちゃんのイオちゃんが止めてくれる。この子の元の人間知り合いなんだっけコトリちゃんの生前の?
《知ってるから未練たらたらなんだよ。まさに地縛霊さ。
オイ、その
「マジで!?」
「えー、マジっすかー??」
《火星に帰った記念でいいでしょ?修理費よりは安いんだから》
「やったー!ゴチになりまーす!」
「まだゴチにするって言ってないけどー!?」
ヒナちゃんナイスだ相棒AI!!
畳み掛けろ!一食浮かしてさらに焼肉のために!
「あ、そういえばおねーちゃんは?」
話題を変えて誤魔化す気かソラさんや。
でもそういえば一緒の船で帰ったマッコイさんは?
「うぉぉぉ!!!あんな建造物見たことない!!
写真、写真!」
「ちょっと、レリックさーん!
せっかく帰って来たありすちゃんの生配信動画の画角に収まってよー!」
「……もぉ、いくら未知の場所だからってはしゃいでしまって……」
「おねーさま引率しておられますな」
「面倒見なんだかんだいいんだよねマッコイさん」
「確かにな」
と、最後突然現れたるは、マッコイさんの実妹でもあるクオンさんであった。
「クオンさん、もう身体は?」
「私も火星人だ、すぐ治る。
それに、どうせ帰ったら仕事なのは分かっていたから帰るまでにくるであろう仕事を終わらせるのに必死だったんだ。
私はこれから休暇だ」
サングラスをかけ、一歩踏み出すクオンさん。
「それよりちょうど良かった。大鳥ホノカ、ついでに妹、奢ってやるから焼肉に付き合え。
ベロンベロンになるまで呑むつもりだから、送ってくれないか?
仕事は終わりだ。打ち上げに行くぞ」
「まじか!
……まぁそのぐらいなら!!」
よっしゃ、と走り出すその時、軽自動車が一台やって来て私たちの前に止まる。
「───帰りは静かな航海だったろう?」
助手席の窓を開けて顔を出す、黒髪ロングでストレートないかにも出来そうな美人のキャリアウーマン風な人がサングラスを外してそう言う。
「なんだ、ジェーンか。お前らこそ早いな、身体がこっちには予備があるか」
「ジェーンって……まさか!?」
その名前、もしやハロウィンスコードロンのジェーン・ドゥ!?
本当に死んでも死なないんだ……目の前に現れたら納得するしかなーい!!
じゃあ、運転席のメガネのおねーさんとか、後ろの席のプクーって頬膨らませてる子とか、隣のちっちゃい人は……!?
「何しにきた?お礼参りか?」
「まだ動く気はない。だが、良いだろう?こっちは一度死亡判定扱いで規定通りいつものAランク落ちだ。
せっかくの努力したランクを奪った相手の顔ぐらい見たい」
ジェーン・ドゥその人らしい女の人は、まさかの私の顔を見る。
「……若いな。良い
感傷だが、もっと初対面は平和な関係だったら良かった。
お前は強すぎたよ、
「……あ、そっすか。
ま、
つい、そんなことを口走ったら、一瞬クオンさんと顔を見合わせるジェーン氏。
「「ぷっ、あははははは!!」」
途端、笑い出す二人。
後部座席のお仲間さんも何が何だかって感じの私と同じ顔。
「くく……まさに傭兵。見境のない力か。
これが人類の可能性か、新美クオン?」
「見境がない、どう転ぶか分からない。
そうで無ければ可能性とはいえないさ……不確定だからいい」
「そうか。我々が超えなきゃいけない壁の大きさを納得したよ」
「次も勝つさ」
「じゃあ、博士もきっと勝つまで続けるだろう。
だが今日じゃない。
こちらも仕事終わりだ……残念会でもやる気だったところだ」
「奇遇だな。こちらは祝勝会に焼肉だ。
昼から全力で呑むぞ、私は」
「…………行くか?負けっぱなしも癪だ、飲み比べにしないか?」
「……負けた方は、奢れ」
と、クオンさんとジェーン氏がお互いに手を握り合う。
「……アタシを殺した相手の顔見ながら呑むのかよ?」
「未成年飲酒はダメだよ?」
「誰が小学生だ頭幼女がゴラァ!?」
「良いですね、ドライバーはどうせ私ですけど」
と、マジでハロウィンスコードロンの皆様と焼肉行く流れになっているのでした。
「えぇ……殺し合った相手と焼肉行くのぉ?」
「そう言うもんでしょ、
親兄弟でも任務で敵対したら殺し合うし、それ以外は適当に仲良くしても良いんだよ」
《まー、殺し合いぐらいで仲違いするような間かなってところあるしね、イオちゃんや?》
《あうーん……ノーコメントです》
「……じゃ、いっか。
私って
という訳で、任務も終わってるんだし焼肉だ!!
敵も味方も関係なく無礼講でいこう!!
私は傭兵系美少女の大鳥ホノカちゃん。
明日から、
今日は、焼肉!!
───ちなみに、マジでクオンさんは日が沈むより前に吐くほど飲んで介護大変でした。
同じくジェーン・ドゥ氏も途中脱いでからすっごい酒乱で仲間の皆様が土下座する事態だったのは、また別の話。
***
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