[変更済]MISSION 11 :勝てば良かろうの精神でいこう





 私、大鳥ホノカは、借金を理由に傭兵になってしまい、今や脳とか女の子の臓器以外はほぼ機械化した強化人間プラスアルファになってまで、

 早く傭兵を辞めるべく傭兵活動に勤しむ矛盾ライフを過ごしてます。


 嫌でも真面目にやらなきゃいけないのが仕事なんだよぉ、お金のために!




「あー、にしてもはじめてのアリーナかー。

 緊張してつい節約したいのにアイス買っちゃったよ」


《太るぞ、生身に戻ったら》



 あ、私が抱っこしてるこのコアラみたいな三頭身ロボちゃんはコトリちゃん。

 こう見えて、先輩で師匠で助かるけど一言多い子です、いてぇ!パンチとは心読んだなコトリちゃん!?



 私、2回しか任務こなして無いけど、なんだかんだ出費はあったのでまぁ、傭兵やめる為の解約金500万cnカネーは遠いね。

 1cn=ユニオン領域通貨1万円分だから‪……‬



 ウワーッ!500万とか数えたく無いー!!



「でもアイスはやめられない‪……‬

 まぁ今日傭兵らしく無い戦いで勝てば、ファイトマネーは10000cnだっけね?」


《ま、君には勝ってもらうから。

 苦戦すら論外だからね?

 あの性格クソみたいなスワンを機体名にかけて炎で焼いてやろう。

 そして修理費・弾薬費抜きの10000cnをゲットだぜ‪……‬ウフフ》


 気のせいか、コトリちゃんのつぶらなお目目だけの可愛いロボ顔が「ニチャァ」って笑ってるんすけど‪……‬怖い。



「というか、アリーナ会場どっちだい?」


《ルート情報は脳に送るから、線に進んでいきなよ》



 うわ、視界に3Dの線で行くべき方向が記されてるぅ!

 強化人間プラスアルファになっちゃった時は、あーもう生身じゃなくなっちゃったよー、って感じだったけど、それだけあって便利だなコレ。


 ま、ヘッドセット型の第2、第3の目はいまだに慣れないけど‪……‬ん?


「あ、ちょいごめん!」


《私も見えたよ。行くか!》



 意外と可愛いメカアクセなヘッドセット型でそうは分からないけど、全部光ファイバー?とかの複眼みたいな機械の眼、そこに映るはまぁ治安の悪い光景。



「なぁ嬢ちゃん、俺らはただちょっとお小遣いが欲しいだけなんだよ」


「良いだろう?なぁ、そうすりゃすぐ消えるからよ!」


「やめてください。渡せません‪……‬!」


 デカい男二人に、小さな女の子がそう言って後ろにいる車椅子の男の人を守る。


「エーネ‪……‬辞めろ、無理だよ」


「レンくん心配しないで!

 何度も言いますが渡せません!」


「オイオイ、病人一人にお嬢ちゃん一人で、こんな俺らみたいな柄の悪ぅーい大の大人のクズ二人、」


「どうにか出来ると思ってんのかぁ?」




「分かってんなら治安良くしなさい、なっ!!」



 この身体の加減も分かってきたけど、加減抜きで股下に素早く蹴りを入れておいた。

 いやぁ、面白いようにひょいひょい真上に『大の大人のクズ二人』が打ち上げられて、放物線描いで路地裏の大きなゴミ箱に入るのは、


 ‪……‬プフッ!笑っちゃうぐらい愉快だったね。


「「〜〜〜〜〜ッッ!?!?!?」」


 ゴミ箱に上半身突っ込んで、股下の「おとこのこ」抑えて何が何だかわからず悶絶している。


「あ‪……‬やっべ」


 だけど、私ったら大変なことに気づいちゃった。


 燃えるゴミは、月・水・金。


《あー、今日燃えないゴミの日か》


「私、前もいじめっ子に同じ反撃した時も、ゴミの日間違えてたんだよね。

 おばあちゃんに、『燃えるゴミの日は守りな!』って怒られてたっけ」



 なんとなく、コトリちゃんと顔を見合わせる。



《「あーっっはっはっはっはっは!!!」》



「ひぃ〜!!ひぃ〜!!」


「あ、あぁ〜!!」


 流石にあの二人もお股押さえてトンズラしたか。

 良いねー、やっぱ女に生まれたからには、ああいう弱点を積極的に攻めなきゃさ!


「あ、あの‪……‬?」


 おっと‪……‬そういえば、まだ女の子いたか。


「あ、大丈夫ですか?

 ここら辺治安悪い気がするから、散歩コースは考えた方がいい‪……‬んだっけ?」


《私も初めてきたんだから知らないよ》


「それもそうか‪……‬」


「あの‪……‬助けてくれて、ありがとうございます!」


「あの、僕からも‪……‬ありがとうございます」


 と、小さい女の子も車椅子の男の人も、揃って礼儀正しいお礼の言葉。


「いやいや、ただの通りすがりなんで。

 ちょっとアリーナ会場行くついでだったんで」


「え?

 ‪……‬アリーナ会場、って今日の?」


「僕らと同じ行き先だ‪……‬!」


 え、そうなの?偶然〜。


《‪……‬‪……‬というか、今気づいたけど、もしかしてそこの女の子、『エーネ・レイニー』では?》


 びくり、と目の前の女の子が表情を変えて反応する。


「え、誰?有名人」


《君さぁ、スワンなら同業者を知っとけよ。

 てか、一昨日の試合を忘れんな!》


 ‪……‬‪……‬あ!



「‪……‬やっぱり、ウェザーリポーターに、強化人間ってことは、同業者さんだったんですね」


 そっかこの子が‪……‬!


 一昨日のアリーナで、負けた子の‪……‬!!







「改めて、私はエーネ・レイニーと申します。

 こちらが兄の、レンハルト・レイニーです」


「どうも。レンハルトです。

 ユニオン圏の、それも純日本人なんて珍しいな‪……‬僕らも、ユニオン圏で育ったから、日本語が普通なんですよ」


「へー‪……‬意外とタイプかも、レンハルトさん」


「あはは‪……‬照れるな」


「ちょっとレンくん?」


 ごめんごめん、とエーネちゃんに車椅子を押されるレンハルトさん。

 なんか、線の細い儚いイケメン‪……‬マジで意外とタイプ。

 だけど、それ以上に‪……‬


「車椅子でなんて、結構きつい病気ってやつですか?

 あ、私強化人間だし、変わろうかエーネちゃん?」


「あ‪……‬お構いなく」


「エーネ。良いんだよ無理しなくて。

 僕のわがままなんだしさ‪……‬」


「レンくん!

 ‪……‬‪……‬私は好きで、病気のお兄ちゃんの車椅子を押してるの」


 おっと、そりゃ手出し不要か。

 申し訳なさそうだけど、お兄さんのレンハルトさんもまんざらじゃ無いか。


「‪……‬‪……‬生まれつき、内臓が弱いもので。

 でも、最近ドナーが見つかって、三日後手術なんです。

 今日が最後の外出日なんで、ちょっと無理言ってもらっちゃって‪……‬」


「それでアリーナに?

 趣味がすごいですね」


「いやその‪……‬」


「レンくん、昔からロボットとかそういうの好きだよねー?

 私がスワンになったの、反対してたくせに、私の機体見たら、危うく心停止しそうなくらいに興奮しちゃって!」


「おい、僕はまだ反対だからな!

 僕だって‪……‬心臓さえまともに成れば、仕事だって出来るはずなんだ‪……‬」


「‪……‬‪……‬もう、それこそ気にしないでよ‪……‬」


 ‪……‬‪……‬なるほど。

 察しちゃうね。私はもっと情けないお金がらみのことで傭兵やってるし。


「‪……‬‪……‬今日の試合、僕の趣味以上に、僕は見届けなきゃいけない試合だと思うんです‪……‬」


 ふと、レンハルトさんはそう声を絞り出す。


「妹を、殺しかけたやつ。

 でも‪……‬アイツは強い。

 アイツが、勝つなら勝つで納得はできるんです‪……‬

 アリーナは、よっぽどの事故が無ければ、任務と違って死ぬことはない‪……‬

 妹が、負けても‪……‬それだけなんです。

 だから‪……‬‪……‬だからコレは、僕の気持ちの問題で‪……‬」



 ‪……‬‪……‬ああ、なるほど。


 とぼとぼ、長いようで短い距離を、ルート情報だともうすぐなそこを歩く。

 その時間は、ほんの少しの無言で‪……‬


 だからなのかな?

 俯くレンハルトさんの気持ちが‪……‬いやってぐらい伝わってくる。





「レンくん‪……‬‪……‬ごめんね」


「お前は悪く無いよエーネ‪……‬」


「ううん、違う。違うの。

 私ね、レンくんの治療費が稼げるならそれで良いと思ってた。

 けどね、私‪……‬私も、やっぱり悔しいよ‪……‬

 あんな奴に負けて、だから‪……‬私もここにきちゃったんだ‪……‬」



「‪……‬‪……‬そっか」



 やがて、アリーナの観客席入り口に。


「じゃ、私こっちだから」


「え‪……‬?」


 ふと、観客席の券売所に向かう二人に背を向ける。


「こっちって‪……‬まさか、まさかあなたの名前って‪……‬!?」


「ああ、名乗るほどのものじゃ無いから言ってなかったけ。


 私が大鳥ホノカ。

 ま、あんまり期待通りの戦いできないかもだけど、戦ってくるよ」




 そんな訳で、


 あの性格の悪い奴との、戦いだ!




          ***




 廃棄都市。

 ここは、自立兵器との戦いなどのせいで放棄された都市であり、今はもう誰も住んでいない。


 その代わりに、私達傭兵の元締めである企業連合体トラストの手によって、アリーナの一つのステージとして今は活躍していた。




<サージェント・トルペード>

『はいはーい、皆さんまたもやおはようございますー!

 最近、アリーナで試合するよりも実況が多いわたくしこと、サージェント・トルペードです!!


 畜生!!私だって、私だってまだ勝つ気あるもん!!


 全くムカつく評価ぁ!!

 そして本日のここ、クリュセ海すぐのいつもの廃都市ステージは、ムカつく奴の独壇場かぁ!?』





 赤い機体が、テレビの電波に乗ってドアップ。

 炎のような1001Bフレーム、炎そのもののエンブレム。


<サージェント・トルペード>

『現在、ムカつくぐらい連勝中!!

 クッソ生意気な自信も、そんだけ強けりゃ許されるってぇ!?


 新人傭兵、『ジュディ・ゴールド』!

 機体名『フレイムブレイカー』!!


 今日こそ負けやがれ、ファッキンビッチ!!』



<ジュディ・ゴールド>

『ハッ!!

 オイオイ、負けが込んでこんな雑用やらされてるランキングアリーナのドンケツが、偉そうな態度取ってんじゃねぇよ!!

 すぐにそこに駆け上がって、アタイ直々にお前も燃やしてやるよ!!』



 相変わらずスッゴイおクチが悪ぅい!

 相手って先輩さんだよね?もうちょい敬えよなー



<サージェント・トルペード>

『ったくこのクソガキィ!!

 その時は私の自慢の爆雷を奢ってやるからな!!


 まぁその前に、

 こっちの期待の新人ちゃんが相手だけどね!!』



 え、私?



<サージェント・トルペード>

『なんと、初任務で全額前払い系唯一の生き残り!

 コレまでしてきた任務、たったの2回!!


 それでBランク昇格は破格の速さだぞ!?


 割と謎の多いスワンがお相手!!


 スワン名『大鳥ホノカ』

 機体名『アルゲンタヴィス』!!


 正直コイツに勝ってほしいと思うけど、意気込みはあるかい!?』



 おぉう‪……‬そんな評価なの私!?



<ジュディ・ゴールド>

『コイツか!例の傭兵スワンっていうのは!?

 気に入らねぇな‪……‬!

 名が売れてきてるやつってのは、たかが知れてるんだよ!

 今日で化けの皮剥がさせてもらうぜ、クソ雑魚が!!』


<サージェント・トルペード>

『オメーのセリフの番じゃねーから!!

 悪いね、このバカがさぁ!

 よければコイツ倒しちゃって?鼻っ柱折れるところがみたいんだよ!!みんなが!』



 みんなが、か。

 でもコイツが強いのは間違いないし、賭けてる人は多そう‪……‬うむむ?


「‪……‬‪……‬ま、10000cn分頑張ります。

 負けても失うものないし、勝てばそっちの賞金10000cnさんが現金になるだけだし」


<ジュディ・ゴールド>

『あ?』


<サージェント・トルペード>

『ブッ‪……‬お金扱いかよ‪……‬プフッ!』


<ジュディ・ゴールド>

『テメェ‪……‬舐めてんのかコラ、あ!?』


「舐めるも何もお互いまだ戦っても勝敗が決してもいないでしょ?

 そっちが私のこと大袈裟だって思うのも勝手なら、私がそっちをお金扱いしても別に良い訳だ、違うかな?」


 視界に映し出されるカンペ。

 良くもまぁ、コトリちゃんこんな煽り思い浮かぶなぁ‪……‬


<ジュディ・ゴールド>

『あぁ!?』


「私、傭兵を辞めるために全力でお金稼いでんだよね。

 そのために今日は勝つよ。


 ああ、だから卑怯も卑劣も全力でやるから、つまらない戦いになると思うし、


 あんたが負けてくれるとすっごい嬉しい」



 いやぁ、コレは大丈夫?

 作戦通りとはいえすっごい煽りすぎでは‪……‬?



<ジュディ・ゴールド>

『‪……‬やす‪……‬燃やす‪……‬燃やすぅ‪……‬!

 テメ、テメェだけは‪……‬ッ!

 ぜ、ぜぜ、ぜ‪……‬ッ!!』



<サージェント・トルペード>

『よっしゃやる気十分だな!!

 じゃあ、今日のアリーナもサクッと始めるぞ!!

 カウント!!』



 3、


 さて、うまく行くかな?


 2、


 結構『非道い』ことするけど


 1、




 スタート!!





<ジュディ・ゴールド>

『絶対に燃やすぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!』





 ピーッ!



 一発目、来たと思った瞬間に狙い通り、脚を撃ち抜く。


 ピーッ!ピーッ!


 2、3発、反撃もさせないように連続で、胴体、肩辺り。


 面白いぐらい命中。



 ────ボン!ボボボボ‪……‬


 断続的な爆発、そして────フレイムブレイカーは、倒れた。




<ジュディ・ゴールド>

『──────え?』




 たしか、仮定装甲値とかいうのがゼロになってるはず。

 ま、無理な連射した結果、私のパルスレーザースナイパーライフル、煙出てるし今ちょっと一部が爆発して火を噴いてるけど。



「でもまさか、ここまでコトリちゃんのいう通りになるなんて‪……‬!」



          ***


 アレは昨日の話、どうせだから動画サイトのアーカイブでジュディ・ゴールドの試合を見てみた後、


「強いねー。速攻で全火力叩き込んで完封ってやつが多くて」


《‪……‬‪……‬そっか、分かんないもんか、コイツの明確な弱点》


 そこでコトリちゃんはそう呟いて、ジュディ・ゴールドの試合の冒頭だけを見せ続け始めたのだ。


《ここも、ここも、ここも、

 地形に関係なくコイツ、最初は必ず真っ直ぐ突っ込んでくる。

 コイツ、気持ちが攻撃すること、叩きのめすことだけに集中しすぎて、この致命的なスタートダッシュが癖になってる》


「それそんなやばいの?」


《コイツ、どの試合もライフルの射程に入ったら回避行動してる。

 地形関係なしで。

 それが、今度の戦う場所の廃都市ステージは致命的なんだ。


 何せ開始場所が、一直線の4車線道路、傾斜ほぼなし。

 スナイパーライフルに、血染めの王という意味なだけあるリトロナクスのカメラ性能とロック距離なら開始したと同時に攻撃が当てられる。


 多分前のエーネちゃんがたまたま中距離用レーザーだったから、砲身を見て発射までのタイミングを掴んでそれで回避できたんだろうけど、

 コイツ多分君の左腕の村雨9型パルスナを開幕で打ち込めるし必ず当たるぞ、この動きは》



 流石にそんな、綺麗な結果になるのかって思ってたよ。



《いっそ相手もほぼ1001Bフレームなら、強化人間の特性の一個、『発信装置ハッキングして機体エネルギー流入・放出の操作』の力使えば、パルスナ壊れるけど1001Bを三発連射で機体の装甲値全部削れるよ。

 ガチって強い相手なら、開幕で沈めるのも手だよ》



「‪……‬なるほど」




           ***


<サージェント・トルペード>

『ぎゃはははははは!!!

 マジかよ!!こりゃすげぇ!!


 一歩も動かず勝った!!

 一歩も‪……‬絵面が地味だけど、これぞパーフェクトゲームじゃん!


 勝者!!

 大鳥ホノカのアルゲンタヴィス!!


 コレが2回の任務でBランク入りした実力か〜!?』




 途端、観客席から投げ込まれるゴミやら何やら。

 多分大ブーイングだなーコレ。

 そりゃそっか‪……‬相手は性格クソ悪いけど、ちゃんと派手に戦ってたもんね。


<サージェント・トルペード>

『ふぅ〜、こりゃ今日の悪役は君というわけかい‪……‬

 で、戦いの感想は?』


「え‪……‬修理費アリーナ持ちで良かったなって」


<サージェント・トルペード>

『‪……‬‪……‬ブホォ!!

 ぷっくく‪……‬いやぁ、だっておwwwwww

 おい聞いてたかクソ新人wwwwww

 もうダメwwおまwwwここまでコケにされてるじじつが腹痛wwwごめ、無理無理司会進行もう無理、ブッ、あっっはっはっはっはっはっはっは!!!!!』



 大爆笑する司会進行さん、余計に増える怒号とブーイング。



<ジュディ・ゴールド>

『ふざけんなぁぁぁぁぁ!!クソが!!クソが!!

 もう一度やれよ!!!オイ、聞いてんのか』


「あ、じゃあ今日は私ギャラ貰って帰りますんでー」



 負けた人がなんか言ってるけど、まぁ入金確認できたんでOKです。


 踵を返してアリーナの整備場ガレージへ。


 ふと、観客席のところ、車椅子のイケメンと可愛い女の子が見えた。

 頭部を向けたら‪……‬深々と頭を下げていた。



「‪……‬‪……‬そんな大したことじゃないから‪……‬気にしなくても良いのにさ」



 そう、私は酷い人間。

 別に敵討ちとかじゃなくて、これもお金のためなのだ。


 ‪……‬頭下げられる人間じゃないでしょ、みんなの前でこんな試合する人が。


 そんな訳で、私は静かに去るのであった。



          ***


 未だ暴動が起きそうなほど湧いている観客席。

 その端にいる車椅子の青年と少女。



「‪……‬‪……‬あっけない上に、酷い試合だったよな」


「そうだね、レンくん」


「‪……‬‪……‬ごめん、エーネ。僕さ‪……‬‪……‬

 すっごい、スッキリした」


「‪……‬‪……‬ごめんね。私も」


 二人は、少し顔を見合わせて、もう堪えきれないと言った感じに笑う。

 そして、笑顔のまま、アリーナの観客席を後にした‪……‬



           ***

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