[変更済]MISSION 19 :帰ってきた火星人
傭兵系美少女大鳥ホノカちゃん、地球人と初めて出会うの巻。
いや真面目にね、目の前にはいぱーなんとかで地表スレスレまでやってきた宇宙船の先端と、多分コックピットのガラス窓っぽいのがあったんだよね。
追突仕掛けてバツが悪そうな、操縦席の金髪の人が苦笑いして手を振っていたのだ……
もちろん手は振り替えしておいたけど。
地面に対して垂直だった宇宙船は、何か高速回転してそうな甲高い音と、その大きな図体のいろんな場所で真っ白に光る部分をより強く響かせて、発光させながら地面と水平になるように動いていく。
「すっごい……」
あんな大きいのが、重力を無視するような動きをする。
夜空を隠す巨大な船体は、しゃもじに翼とロケットブースターみたいなのが生えたみたいな感じの物だった。
《UFO……
本来の用途は、70年前以前からずっと、新美ソラがケチってeX-Wのフレームに積んで実験してたこれは、
見ての通り、宇宙を航行する船を動かすための技術だった……!》
コトリちゃんが、なんだか感動した声を出して言う。
《やったな。おかえりソラちゃん。
いったい地球での70年間、何機のeX-Wを事故らせたんだ?
でも、船の動きは完璧だよ……ようやく帰って来れたんだな……》
「そっか……」
ズズズ、と頭上を進んで、着陸できそうな平地へ移動する『ギフト2』を見送りながらふと私は思う。
地球って、お勉強の時間寝てた私もあまり知らない。
日本人っていう概念の元の国があったりしたって事ぐらいだ。
遠い場所。でも、その星はこの星の隣と言っても過言ではないらしい。
遠い隣から、わざわざやってきた。
それって……きっととっても大変な事なんだろうな…………
『────あー、あー、もしもーし?
火星の皆さん聴こえてるー?聴こえてますかー??
聴こえてたら誰でもいいから返事してー、お願ーい』
そして、誰かの広域無線。
いや……誰かじゃなくて、きっとあの船の中。
女の人の声が響く。
「あー、はいはいこちら……ねぇヒナちゃんなんていえば良い?」
《通信借りるよ。
こちら、すぐ近くのウェザーリポータータイプ13!
個体名『コトリ』!》
『ブッ……今『コトリ』って言った!?」
《言ったよ、『ソラちゃん』。
コックピット越しに見たけど、元気そうじゃん!》
え?
ソラちゃん……って、なんだっけ!?
直近でめっちゃ聞いた名前!!
『元気だよ、『コトリちゃんパイセン』。
こっちでも、火星のことじゃ先輩になったね……はは、マジか!』
《ああ。そっちの私は元気?と言っても、知っての通り私は『コトリ・オーグリス』の記憶を君にサルベージされてコピペした別物だけどね》
『それ、70年間聞き飽きたセリフだよ!ここでもうんざりするぐらい聞けそうで嬉しいね!』
《そうか。
じゃあ、この場の皆何か言いたそうだけど、製作者でもある君の為に、私ことコトリちゃんが代表して言ってあげるか。
お帰り新美ソラ!火星へようこそ!!》
あー!!
火星人の!!色々やった人の!!地球から色々送った人の!!
『……ただいま、火星。生まれて初めて帰ってこれた故郷』
「……そっか、帰ってこれたんだ……!」
つい、私がそう言った瞬間、近くでドサリという音が響く。
見ると……口元を抑えたマッコイさんが、膝をついて涙ぐんでいる!
「……まさか、本当に……!!」
「…………間違いない。私たちには分かるだろう?
何度か、話したあの声じゃないか……あの声だ……!」
「……ええ!」
同じく涙ぐんでいるクオンさんに支えられて、それでも泣いている。
……そっか、そうだよね。
死んだはずの、顔も見たことないかもしれない、妹さんがあそこのいる!
じゃ……私も、マッコイさんに肩をかす。
「え……?」
「……会う前から泣くなんて、いつもの掴みどころのないお姉さんなマッコイさんはどこ?
ああ、それが『新美キツネ』さんとしての顔?」
「…………そう、ですわね……ええ」
「じゃあ、一番初めに妹さんに会って、もっかい泣き崩れよう!」
「……!
ええ!もちろん!!」
じゃあ、一番近いし、早速……
「だがその前にやる事がある」
パン!
突然、クオンさんは取り出した拳銃で、グートルーンちゃんを撃った。
なんで、と問う暇もなく、よく見たら縛られてた腕の拘束が外れてて、肩に1発食らったけど上手く避けてる!
「チッ……数秒も見させた!!」
タンタン、と頭を冷静に打ち抜くクオンさん。
理由を聞くより早く、今度はあのギフト2の側面で爆発が起こった!
「今なんか着弾した!?」
《スナイパーキャノンだ!!
そうか、人造人間オーグリスシリーズには、脳に量子通信器官が!!》
「どういう事だいコトリちゃん!!」
「私が代わりに説明しよう。弾道観測だよ。
博士自身が観測手でありマーカーだ。
だがまずいな……あの狙撃の腕はウィル・オ・ウィスプか!
エンジンが一機やられた!」
クオンさんの言う通り、なんだか出ちゃいけないタイプの煙ともっかいボンって音がしながら、ちょっときりもみして地面にドシンと落ちるギフト2の大きな船体。
「ごめんなさい……恨んだって良い……それでも……!」
そして、生きてたのかグートルーンちゃん!?
まだ、片方なくなった赤い血を流す目の顔で向こうを見ている。
「大鳥ホノカ!!切れ!!」
マジか、とは思ってたけど、背中に背負っててよかった高周波ブレードでその綺麗な頭を細切れにしておいた。
グロイけど、こうしないと……!
でも、またスナイパーキャノンがギフト2に着弾する。
「クソ……!!
今の角度を見たか!?別方向だ!!
ハロウィンスコードロンが本気を出してきた!!」
「どういうことですかクオンさん!?」
「…………大鳥ホノカ、お前のペラゴルニスはPLシステムはまだ搭載しているな?」
「え……あ、はい。いつでもこられる様になってます」
「貸してくれ、じきにハロウィンスコードロンが最低12機は来る」
「へ?
アイツら、4機しかいないんじゃ?」
「クラウド、と聞いても分からんか。
アイツらは、体と機体さえあればコピペで増えると考えてくれ。
奴らは、最強の部隊をいくらでも送れる」
「は!?」
なに それ ??
***
<オルトリンデ>
『出番でっせ皆の衆ぅー!!
ほらほらちゃっちゃとスクランブルしぃやぁ!!』
<キリィ>
『遅れると死じゃけぇ、気張って空に上がれぇい!!』
オルトリンデの操る逆関節機体『スカイヴァルキュリア』、といつもの相棒であるキリィの乗る軽量2脚『ブラックインパルス』が、インペリアルの軽量2脚中心の部隊を引き連れて空に上がる。
<アウローラ>
『オルトリンデ、キリィ!!
何を慌てているの!?』
<オルトリンデ>
『アウちゃん良いこと教えたるわ。ウチは何回もアイツらと戦っとるからってのもあるし、ウチ自身ネオやからよーく知っとんねん。
ランク9のジェーン・ドゥは、いやハロウィンスコードロン自体がゴキと一緒や。一人見かけたら30人はおるで!』
<アウローラ>
『誰がアウちゃんかってことも含めて信じ難いわね』
<キリィ>
『嫌でも信じるしかないけぇ。見てみぃ!!』
アウローラを含めた1小隊4機編成で4小隊のインペリアルeX-W部隊は、遠くやってくる機体を見て息を呑む。
O.W.S.試作フレーム、『F301 “M-gui”』を白く染めた機体。
右腕にはレイシュトローム製レーザーライフル、左腕はO.W.S.の高精度ライフル、背部には大和重工製分裂ミサイル二つ。
その構成こそまさに『ホワイトスペクター』、ランク9であるジェーン・ドゥの機体そのもの。
それが、3体。
<アウローラ>
『3体とは大きく出たわね……!
こちらは3小隊。勝てるわよね!?』
<オルトリンデ>
『勝てるで、一機落としてくれればあとはウチらがなんとか出来る!!』
<アウローラ>
『聞いたわね!!コンドル小隊はフォーメーションデルタ3G!!
他の小隊長も頼みわよ!!プライドを捨てて袋叩きでようやく勝てる!!』
やってきた高誘導の分裂ミサイルを迎撃し、空の上でeX-Wたちが交差する。
その下でも、今一機の4脚型『ジャック・オー・ランタン』の胴体が文字通り蜂の巣にされて沈む。
<アンネリーゼ>
『ようやく1機。一番弱いと言えどハロウィンスコードロンなのね。意外と楽しませてくれるわ』
狙撃、主砲プラズマビーム、そう言った『即死の雨』を回避しながら縦横無尽に戦場を駆け回る赤い4脚『ブラッドハントレス』。
今、一機の重量2脚を背中から伸びる自慢の
<アンネリーゼ>
『チッ……あら、私としたことがはしたない真似を。
でも────させただけの実力はあるようね!?!』
反撃に右腕のショットガンでEシールドを減衰させ、Eシールド貫通性能の高い左腕のO.W.S.アサルトライフルでコアを撃ち抜いて沈めておく。
<テレサ>
『にしたって多いっしょ!?!
コイツら、知ってはいたけどこんなゴキブリみたいに出てくるワケ!?
管理者の端末かってーの!!』
同じく、4脚のメソゾイック・キマイラを操るテレサ・オーグリスは、70年前の地球の存在を思い出しつつ、両腕の自社製───O.W.S.の高精度なライフルたちを駆使してなんとか耐える。
<アンネリーゼ>
『おばあさん、ボケて組んじゃった武器構成じゃキツそうね』
<テレサ>
『荷電粒子砲積んでくりゃ良かったって思ってるしお嬢ちゃん様ぁ!?』
ガキャァンッ!!
主砲プラズマビームを背負う重量2脚『フリッケライ・モンスター』の一機を、4脚の
<テレサ>
『まだうじゃうじゃいる!
総火力が足りないし!!』
<ありす>
『今!!
火力が足りないと言ったねっ!?』
カァオッ!!
敵の
一瞬その注意を逸らした近くの
<ありす>
『火力といえばガチタンだね!?
ガチタン系アイドルありすちゃん、ちょっと機体を借りて参上!!』
それは、大鳥ホノカのガチタン機『ティタニス』。
それを借りたありすが、背中のガトリングをぶっ放しながらハロウィンスコードロンの群れに突撃する。
<ありす>
『撃ち負けはしない良い機体を借りてきたからね!!
今日も正面突破!!それしかできないもん!!』
<アンネリーゼ>
『あら頼もしい。
でも、』
────未だ、減らない地上のeX-W達。
元が装甲の厚い重量2脚や、それなりに装甲の強い大和重工製4脚フレームの機体群の彼らは、そうそうに数を減らしてはくれない。
<テレサ>
『何言いたいかはわかるよ。
多くね、やっぱ?』
<ありす>
『みんなファンだとしたら、今日はサインがわりのグレネードは無いんだよなぁ……』
<アンネリーゼ>
『これだけの混戦ともなると、ランク8の子の武器も使えない、か』
3機のeX-Wが囲まれるその少し先で、同じく囲まれている2機がいる。
<エーネ>
『数が多い……!
ハイレーザー持つかな!?』
ほぼ初期機体だが、装甲の薄さ以外は優秀なAI社製ハードレインフレームをベースにした軽量2脚『キュアフルウィッシュ』を操るエーネがつぶやく。
キュアフルウィッシュの背部からバシュウ、と光る極太のレーザーが放たれ、敵の高速戦向けなO.W.S.製中量2脚機の『カーミラ』をEシールドごとコアパーツを貫き大破させる。
レーザーはEシールド貫通性能が高いために、軽量機やあまりいないエネルギー兵器防御の高い期待以外は一撃死もあり得るのが幸いしている。
何せ、相手も同じレーザーと、レーザーの次に対Eシールド貫通性能が高いO.W.S.製ライフルを持っている上で、数が多い。
特にハードレインは強化炭素繊維装甲製で、軽く頑丈だが、実体弾防御性能は『トタンよりマシ』と言われるぐらいであり、当然カーミラの左腕に光るデイノニクスの名前を持つ凶悪なライフルが向けられる。
キルゾーンに入ってしまったが、かすっても死ぬハードレインでどう避けるか考えてしまった。
エーネは完全に遅れたと気づいた瞬間、
ズドォォンッッッ!!
カーミラ達の真横から、巨大な光の弾が通り過ぎて、全てを蒸発させる。
<シルヴィア>
『君のおかげでだいぶスッキリした。
ボクはごちゃごちゃしたのは嫌いなんだ』
真横から、エーネよりも小さく可憐な美少女のシルヴィアが乗っていると思えない、屈強でマッシブな重量2脚機体である『キャッスルブラボー』がやってきた。
両肩に備えられた武器『ブラストキャノン』による指向性を持たせられた
<エーネ>
『ありがとう』
<シルヴィア>
『いいさ。策にはまってイラついてたのもスッキリしたしね』
カァオッ!
キャッスルブラボーの右腕に持つプラズマキャノンの傑作、ホノカのティタニスも持っているサングリーズルが、新たに来た重量2脚のフリッケライモンスターを主砲を使わせる間もなく撃ち破る。
<エーネ>
『策……?』
<シルヴィア>
『私達を釘付けにして、そして本命は『ギフト2』へ。
なんとも単純な策に引っ掛かるしかないというのも、バカにされてるみたいで嫌さ!!』
さらにキャッスルブラボー左腕のレイシュトローム製デュアルレーザー『シグルドリーヴァ DHL-4』が、二つのレーザーでこちらを狙っていたカーミラを撃ち抜く。
『
ただし……本人の言葉通りなら『八つ当たり』である。
<シルヴィア>
『あの、忖度は抜きでもランク1を殺す算段でもあるのかな?』
***
ギフト2より200mもない平原。
4体のeX-Wと、2つのeX-Wが対峙する。
<クオン>
『遅かったじゃないか。もう私の仲間が『ギフト2』の受領へ行ったぞ?
後は肩書きの傭兵ランク1らしくお前達を狩るだけだ』
2機側、白と青のクオンが経営するAI社製中量2脚フレーム『ブリザード』を基本とした愛機『フォックスファイア』の中でそう語りかける。
<ジェーン・ドゥ>
『2機か。侮られた物だな。
生体センサーに反応もないということは、大鳥ホノカ自身ではなく、
O.W.S.試作フレームをベースにした『ホワイトスペクター』の中で、ジェーンはそうクオンへ言い放つ。
<ウィル・オ・ウィスプ>
『ランク1か。まぁ
……って、言えれば良かったがな』
<クオン>
『お前たちの実力で、それでもトップ10の後ろの方が気に入らないか?
それとも、何度も人間に自分のランクを脅かされ、撃墜されたことを根に持っているか?』
無線機越しに、複雑な感情が無音で漂ってくる。
<クオン>
『戦闘用学習型AIユニット、J-07『ジェーン・ドゥ》、E-102『エリザ・B』、F-67『フランシィ』、W-09『ウィル・オ・ウィスプ』。
もっとも、クラウドビーイングにもなれば元がAIか人かは誤差か。意思も記憶も経験も……統合されて反映される。
だが、だからこそ、あらゆる意味で戦場の学習は早かったはずだ。
クラウドになって『死に戻り』も出来るようになって……
それで、その体たらくか』
<ウィル・オ・ウィスプ>
『チッ……ああ、そうだよ!!
人間様よりずっと、戦うために生み出されてるはずだろアタシらはよぉ!?
別にそれが不満じゃないけど、
じゃあ何でだ?
なんで、どうして!!
どうして、人間に負けてるんだよ!?
おかしいだろ、アンタとか、同類とかじゃない!!
何でだよ!?!イラつくぜマジで!!』
<イオ>
『────まだ分からないんですか?』
ふと、ウィルの問いに対して、意外なことに声を上げたのは、ホノカのペラゴルニスを操るAI……ウェザーリポーターのイオだった。
<ウィル>
『あ?』
<イオ>
『……たとえ人間を元にしていても、高度な学習型だったとしても、
世界を支配するAIユニットでも、情報体へ進化したとしても、
私たちは、『完璧』になれても、
『
イオは───正確には、その元となった存在の記憶が語りかける。
<イオ>
『完璧、完全、ついそんなものを誰もが目指しがちですよね?
でも、この二つとも、どうせ『限界』の類義語でしかない。
人類はいつだってやり過ぎてきた。
それで地球が滅びかけたのも事実です。
でも、
やりすぎるってことは、いつだって『限界を越えられる』!
完璧なんていう限界にしかなれない私達じゃない!』
瞬間、ペラゴルニスのいた位置へ撃ち込まれるプラズマビーム。
<フランシィ>
『だから、何?
わたしたちは、難しい話をしにきたわけじゃないもん。
みんな殺す。あの船も壊す。
それ以外に、考える必要ないから。
ウィルはそんなこと考えているから弱いんだし』
<ウィル>
『悪かったな』
<エリザ・B>
『……まぁ、長々と話していても、どうせあなたの目論見通りなのでしょう、ゼロツー……いえクオン』
と、唐突にカーミラ右腕のレーザーライフルがギフト2の方へ放たれる。
<クオン>
『!?』
クオンは、機体を振り向かせずに着弾地点を見る。
突き飛ばされた、自らの姉のキツネの無事と、片脚を抑えるホノカの姿を見る。
そして、即座に両肩のレーザー
<エリザ・B>
『こうされても反応が早い。
流石は、グートルーン博士の最高傑作ということですか』
<クオン>
『一々神経を逆撫でする言葉を選んでくるな。
ハンター役が上手いわけだ』
炸裂するプラズマ火球から出てきたカーミラを無視して、密かに狙っていたフリッケライモンスターへフォックスファイアの名前の由来である右腕のプラズマライフル『AIPB-XX
突撃したカーミラは、ペラゴルニスの武器腕速射砲の邪魔で攻撃をキャンセルさせた。
<ジェーン・ドゥ>
『新美クオン!
最後に一つだけ聞く!!』
そして、背後へ回ったホワイトスペクターが左腕の実弾ライフルを撃つと同時に問いかける。
<ジェーン・ドゥ>
『お前の姉だけなら分かる。
あのAランクの
イレギュラー、だからか?』
<クオン>
『……アイツだけか?』
質問に質問で返すクオン。
だが、ジェーン・ドゥはその言葉の真の意味を理解した。
<ジェーン・ドゥ>
『ランカーは、やはり全てがイレギュラー候補なのか!?
いや……イレギュラーそのものか!?』
レーザーライフル。しかし、AI社製ブリザードフレームは対エネルギー兵器防御が高く、Eシールドが突破された程度では動じず、そのままプラズマライフルで反撃するフォックスファイア。
<クオン>
『お前より下のはずのオルトリンデに酷い目に遭わされたというのに、今気づくか』
<ジェーン・ドゥ>
『オルトリンデがそうなのはずっと前から知っていた。
私は、博士の意見とは違う。イレギュラーに興味がある。ずっと情報を集めていたからな。
だが───今一番気になるのは!』
ガキャァン!
いつの間にか近づいていたフォックスファイアの
<クオン>
『前に出過ぎだ、お前らしくもない。
それほどまで、アイツに可能性を感じるかジェーン・ドゥ』
実際には背後でいつかのホノカの様に、1対3かつなかなか尖った機体構成のペラゴルニスを操るイオが頑張って抑えているおかげでもあるが、そこは無視するクオン。
<ジェーン・ドゥ>
『……それが聞けて満足だ。
ここからは、全力で潰す』
ホワイトスペクターの関節をはじめとした各部分が白く光り始める。
<クオン>
『やはり遅かったじゃないか……今更UFO起動か』
<ジェーン・ドゥ>
『もうデータは集まった。前の大鳥ホノカ相手の時とは違う。最高の火星人といえど、』
<クオン>
『私はまだ伸び代がある。博士もいつも大袈裟なんだ。
最高だなんて、今決めつけるな!』
フォックスファイアがホワイトスペクターへ向かう。
己の限界を超える決意を、クオンは決めて。
***
「いったーい!!
やだ……かたっぽ黒焦げじゃーん!」
傭兵系美少女、大鳥ホノカちゃん不覚!
片足が、レーザーで焼かれて黒焦げです。
「ホノカさん!大丈夫ですの!?」
「強化済みで感謝!!マッコイさんは無事そうだね……あら、コトリちゃんは?」
と、モゴモゴ聞こえてると思ったら、何かの動物の掘った穴にコトリちゃんヘッドがインしてもがいてた。
とりあえず、立てはするから経って、コトリちゃんを抜く。
《ぷはー!うわ、息もしてないのにぷはーって言っちゃった!?》
「いいじゃん、ロボが空気うまいって思っても」
そんなことより……私の脚ぐらい酷い状態の宇宙船がすぐそこだ。
歩きにくいけど、流石にマッコイさんに肩貸してもらうには強化人間ボディ重めだから自力で近づく。
と、ボンと音を立ててすぐ上の扉が勝手に開く。
「ゲホゴホ!?グエー、消火用ガス吸っちゃったー!?」
なんて声と共に、誰かが降りてきたハシゴを滑る様に頭から落ちてきた。
「ゲフゥ!?」
背中から落ちてきたのは、煤けた金髪のモデルみたいな美人さんだった。
まぁ、ツナギ姿だし、痛みで悶絶しているけど。
「……大丈夫ですかー?」
「うぅぅ……なんとか……って、どちらさん?」
「あ、どうもー、火星の
《そして、私がさっき通信した『コトリちゃん』だよ》
え、と私の肩のコトリちゃんに近づいてアレコレ見るその美人さん。
「マジだー!コトリちゃんパイセンが元の子がコトリちゃん名乗ってる!」
《久々ー、で良いよねソラちゃんや?》
え、まさか!?
「うん久しぶり!70年ぶりだっけ……あ、やばいやばい、ごめんねそっちの子も!
私、新美ソラ!地球育ちの火星人だよ!」
まじか!
この人が……70年前に、火星に色々送った人!!
……なんか、ただの明るいおねーさんじゃん!
***
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