EPILOGUE : 巨大要塞が夢の後







 ────ガンッ!!ガツン、ガンッ!!!




「────動け!動けって言ってるのよ!!

 私の機体が、こんな簡単に棺桶になるのかッ!?!

 どうした!!動いてみろ!!!」





 ガン、と拳を叩きつける様に起動ボタンを何度も押し込み、ブゥンと音が流れて狭いコックピットが明るくなる。



<機体AI>

《メインシステム、通常モード起動します》


「遅い!こんな場所で死ぬのはハンナヴァルト家の恥よ!」



 インペリアル辺境伯であるヴィオラは機体の中で毒づきながら、恐らく前のめりに倒れている機体をなんとか起こす。


 グィーン、ドボボボボボ‪……‬!


 機械の駆動音と共に暗かった視界に流れる泥と僅かな光が差し込み始める。


 やがて、大雨に洗われてようやく機体の視界がハッキリとした。




「‪……‬‪……‬にしたって、ここは‪……‬酷いものねぇ?」



 周りには、何もなかった。


 大嵐の中、荒野だった場所は焼かれ、足元は黒ずんでいる焼かれた土か、この雨に流された泥水が流れている。


 計器が安定し、方角表示が復活する。


 今向いている方角より、右へ90度機体を方向転換させれば‪……‬



「あった‪……‬!」



 そこには、もはや幽霊でも住んでいるかのような風格あるボロボロの移動要塞が立っていた。


 まだ動いてもいない。




          ***



 移動要塞『フォートレス・オブ・ホーネット』

 戦闘指揮所CIC、内部。



「被害報告‪……‬とにかく報告できるブロックから順次話せ」



 自ら、なんとかなけなしの工学知識で配電盤をいじり回し、ようやくこの暗いにも程があるCICがマシな暗さに変わることに安堵を覚えたカナデ・グレイン中将だった。



『こちら第2甲板!!火災発生!!

 現在消化中です!!死亡は2名、負傷者多数!!』


『第6甲板砲塔、もう屋根がありません!

 衛生兵は良いから傘が欲しいです!!!』


『第16高射砲ユニット、人以外全部吹き飛びました!

 全員怪我人こそいますが無事!奇跡の勲章ありますか!?』


『第3ブロック通路!!ここはこないほうがいい!!

 綱渡りしたいアホか大雨でシャワーしたいっていう物好き専用だ!!!』



 各地の被害報告に、眉間をおさえて項垂れざるを得ないカナデ。


 どうしてこうなった?


 もちろんあらゆる複雑な考えや今後の方針やコレまでの状況を加味して、そう内心に思わざるを得ない。



「‪……‬報告がない場所はそれどころではないのだろうな‪……‬

 ミラノ中尉!」


「イエスマム!」


「走って報告してきた我が兵の報告は一度君が受け止めてくれ。

 手が回せるオペレーター諸君も同じく頼む。

 まずは、機関室と相談して一刻も早くこの要塞を動かし、抜け抜けやられて帰る汚名の代わりに生き残りの命を繋ぐ」


「‪……‬了解です」


「それと‪……‬ここのグレイブ艦長の私物の飲み物を悪いが貰うぞ。頭が痛い。甘いものがいる。諸君はいるか?」


「いただきます」


「こちらも」


「コレで皆は共犯だな。

 ここにいないノア・グレイブへ乾杯」


 適当な持ち寄ったコップに、今生死も分からない味方の飲み物を注ぎ、そして残ったボトル全てをカナデは一気に飲み干す。


「ぷはーっ‪……‬!!

 よし‪……‬CICを艦橋ブリッジへ上げろ!!

 モニターかセンサーかは知らんが全部死んでいる!

 石器時代のやり方でホーネットを動かすぞ!!」


『了解!』


 オペレーター達の長めの操作の後、ガコンと大きな音を立ててこのCICが亀の歩みで上へ向かい始める。



「管制より機関室!!私はカナデ中将だ!!

 誰でもいい!!生きているなら火だるまでも良い!!状況報告!!!」



 無線機を乱暴に付けて、叫ぶようにそう尋ねる。


『機関室より管制へ!!!

 火だるまのがマシだ!!!オレたちゃ被爆で寿命はねーや!!超重元素使ってる旧型のワームホールエンジンなんて最低!!

 で!?最後の仕事はなんだよ!!』



 幸い、返事はすぐに来た。

 充分だ。言葉遣いは気にしない。



「諸君の勇気ある今の行動に敬意を表するが、

 それで、動くのか!?ホーネットは帰れるか!?」


『ああ、良い質問だよ中将閣下!!

 良い知らせはオレ達が放射線障害で死ぬより前か先か分からんけど帰れるだろうよ!!

 歩行もギリギリいける!!!エネルギーも足りるし、何より派手に放出したおかげか安定したよ!!!』


「良い知らせだな!即座にこのホーネットを帰路に就かせよう!!


 だがまずは話の続きだ。

 悪い知らせは何か?」


『ああ、よく聞いてくれたよ中将閣下!!


 悪い知らせはEシールドは使えねぇ!!

 武器へのエネルギー経路はズタボロ!!!


 いや!!このホーネット全てのエネルギー伝達系統自体が緊急フルメンテナンスを今すぐ必要なレベルで大ダメージを受けている!!


 今攻撃されたらさらに連鎖爆発でお釈迦になりかねない!!


 戦闘は無理だ!!逃げる判断をしていただけて大変ありがたい!!』



「‪……‬‪……‬了解した。機関室、君らの奮闘に感謝する。

 欲しいものはあるか?」


『今すぐ冷えたソーダかコーラをくれ!!』


「無事な奴をかき集めよう」



 通信を終えたタイミングで、ガコンと部屋の上昇が止まる。


 開くシャッター。

 陽の光はやって来ず、ボタボタと雨粒が叩き込まれていく。


 大雨の中、ようやくこの廃墟のような姿のホーネットの一部を見渡すことができた。



「‪……‬‪……‬酷い物だ。

 これが、この星無敵の移動要塞の一つの姿か?」


 ボン、と近くの砲塔の一部が爆発して、炎が上がる。


 大雨に負けない火事がそこかしこに見えた。



「中将!!緊急事態です!!」


「お次はなんだ?」


「‪……‬敵です」


「‪……‬はぁー‪……‬泣きっ面に蜂か」


           ***




<ロート>

『うぉぉぉぉ!!!ヴィオラァァァァ!!!

 無事かァァァァ!??』


 クソうるさい声と共に脚部後ろに備えられた履帯を利用した移動でやってくる、普及型機動兵器『マシンウォーカーMW』の一つウェアウルフ。


 赤い塗装の、ロート・エッケハルトの機体だ。


「ロート!!私がいなければあなたがあの場所の指揮官よ!?勝手に単騎で来てどうするの!!」



<ロート>

『気にするなッ!!!単騎ではない!!!』



 直後、ロートの背後から大量のウェアウルフや、他にも逆関節型のMWといった多数の寄せ集めのようなMW達がやってくる。


「‪……‬そういう問題じゃ‪……‬


 あーもう良いわ!!

 全員聞きなさい!!これは好機よ!!」


 と、折れた中指から半分がない左マニピュレーターで、移動要塞を指し示すヴィオラ。


「あの要塞は原型こそ留めているといえど、そのダメージは甚大!!


 今なら反撃もなく、アレを捉えることができる!!!」


 無線機越しから、この場のMW達全員の息を呑む音が聞こえる。


「まだ追える!!本格的に走り出す前に占拠せよ!!!


 否!!!鹵獲せよ!!インペリアルの兵達よ!!!


 アレを捉えて皇帝陛下へ差し出せ!!

 そしてこれまで奪われた土地の分を!!!

 失った領民!!仲間!!全ての仇を討て!!!」


『───おぉ!!!』






 うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!




 全員がコックピットの中で雄叫びを上げ、移動要塞へ向かう速度を上げる。


<ロート>

『しかし追いつけるか!?

 あれは意外と早いぞ!!』


「歩き出さなければ、この距離なら15分で辿り着ける!!」


 ヴィオラは、自機の最速を叩き出せるストライクブーストが破損し、ついでにメインブースターも片方の出力が落ちている表示を見ながらなおそう叫ぶ。


<ロート>

『お前は帰れ!!!

 そんな機体で制圧できるか!?!』


「逆に聞くけど誰があんたらの支援砲撃してやれるっていうの?

 それに、雇い主として、手駒の傭兵がまだ生きてたらこき使う必要がある!!


 ‪……‬流石に黒薔薇小隊シュバルツローザの皆は天寿を全うしているでしょうけど」




<ティア>

『誰が天寿を全うしたと!?』



 と、瞬間近くの岩から飛び上がる3つの黒い逆関節機達。



「生きてたのね!?」


<マリー>

『ええ、ヴィオラ様。死に際を見誤りました』


<マシュ>

『ははは!!心臓が止まったかと思ったら、昼寝してただけだったみたいで!!』


<ティア>

『ろくでなしにヒヨッコばかりとはいえ、また若いヤツらより生き存えるとは思いませんでしたがね。


 我ながら因果な老後ですよ。


 ならばせめて、あの若人わこうど達の敵討ちに我らも連れていってやってください!!』



「こちらからも頼むわ!

 ストライクブーストは使える!?」



『『『無論!!』』』



 3機の逆関節機体達の背部が開き、本来は緊急脱出のための最大出力を持って敵地へ向かう。



<ロート>

『3機だけで制圧ができるか!?!?!』


「さっきは10と何機かであの要塞を落としたわよ!!

 ああ、クソ!!歩き出した!!」


 先行した黒薔薇小隊の向こうで、大きく一歩を踏み出す移動要塞の姿が見える。



「この損傷!!例えアイツらの領土へ返したところで戦略的被害は甚大!!


 とはいえそんなベターラインで、我らインペリアルの皇帝陛下が満足するはずがない!!


 ならば捕らえて、捧げるぐらいしないといけない!!


 でなければ完全破壊はしなければ!!


 そこまでやってアイツらが2度と我れら帝国の土地に土足で踏みいれないほどの負けとは認めない!!


 そこまでやった勝利が無ければ!!

 これまでの我が方の犠牲が、報われるとは思わないでしょう、皆も!!!






          ***


 ホーネット、艦橋部分へ上昇中の管制室内


「中将!ヤツら、広域無線で好き勝手言ってますよ!」


「聞こえてる!!全速回頭!!これ以上悲惨な負け方を許すな!!」



 ちょうど部屋がガコンと音を立てて止まり、艦橋のガラスを守っていたシャッターが開き始める。


「逃げ切れますかね!?」


「逃げねば‪……‬もはやこれ以上の雪辱は勘弁願いたい!!」



 シャッターが開き、外の光が管制室に差し込───






「な‪……‬!?!」





 ──





『───やっほー!いやー、待ってたんだよ〜?』



 そこにいたのは、灰色の機体。

 右肩にコンドルが銃を脚で掴むエンブレムの、逆関節機体。



「なぜ‪……‬無事なんだ‪……‬!?」


『お、無線繋がってんじゃん。

 いやさー、頼れる相棒のコトリちゃん曰く、ブラストアーマーって本体にはほぼダメージが来ないからさ?

 こうやって、逆に要塞のEシールドの内部に入り込んでやり過ごしたんだよねぇ?』


「そんな‪……‬あの一瞬で‪……‬!?」



 さて、という言葉と共にその機体───ハーストイーグルの右腕のプラズマライフルが、ブリッジへ向く。




『ここからは、お金の話をしようか』




          ***



 どうも、生きていた傭兵系美少女な大鳥ホノカちゃんです。



「インペリアルの皆さーん!!

 こう言っちゃなんだけど、正直ここにいる要塞を押さえつけるのはきついんだよねー!!」


 まずは、広域無線でそう呼びかける。

 個別の周波数じゃ無い理由?まぁそこは、色々あるのだよ。



<ヴィオラ>

『生きてたと思えばそんな所に!

 確かに単騎じゃ、』



「ごめん他のみんなも無事。


 今要塞の、多分敵さんの通信が届いてない場所はみんな占拠してんじゃないかな?」




 そして、生きているのは私だけじゃ無い。


 全員ブラストアーマーなんて使いまくるし喰らって死にかけてるようなベテランと、運のいい新人ちゃん達だ。


 みんな、ほぼ甲板の中で睨み合いナウ。


 制圧は半分達成。半分ね。



<ヴィオラ>

『‪……‬やるじゃない』


「おっと喜ぶのは早いよ?

 正直私たち限界でさ。

 弾も少ない、装甲値はギリギリ、中には負傷したり機体の損傷も多少ある。


 ‪……‬‪……‬何より、提示された条件でも、そろそろ足出ちゃうような働きしてるからね。

 私なんて一機落ちちゃったし」


<ヴィオラ>

『大変ね。

 ‪……‬で、何が言いたいの?』


「決まってるでしょ?


 このままなら、一銭の特にもならないこの要塞は、当初の目的通り破壊するしかないってこと」



 無線機から聞こえる驚きの声。

 でも、どちらかと言えば要塞の中の人たちの声だ。


「ああ、契約違反とか言わないよね?

 要塞の破壊が当初の目標でしょ。

 もうこんな状態なら、最初に言われた弱点を私達が一斉に攻撃すれば、ハイ目標達成。報酬ゲットだ」



<ヴィオラ>

『ただし、鹵獲という千載一遇のチャンスを我々は捨て去るということね。


 ろくでなしだこと、つまり壊されたくなければ、』



「いやいや、そういう言い方はしないよ。



 ただね?

 鹵獲となると追加報酬は欲しいよねって事。



 流石に、サービスの範疇は超えてるよ?」




 そう、ここからは有料です。


 良い条件だったし良い報酬だったけど、その範囲はこれまでの戦いまで。一機私の機体堕ちてるし。


 ここから手伝えって言うのなら、『残業代』貰っても文句は言わせないよねぇ?




<ホーネットより通信>

『───ふざけるな貴様!!!

 我々の生殺を金で決めるのか!?!』



 そして、どうも目の前のガラスで覆われた向こうにいるちょっと豪華な軍服を着てる女の人が叫んでいるようだね。うん、無線機片手に拳を振り上げてるのが見える。



「そりゃ、ね」


<ホーネットより通信>

『我々はこの星の戦士だ!!火星統一政府の名の下にこの戦いに赴いたッ!!!

 我らの命も!!この身体も!!

 金などには出来ないッ!!!』



「その通り。

 つまりそっちの価値は『ゼロ円』!!


 !!


 このままならねぇ!?」



 ギャハハ!!ちょっとゲスな笑いかな?


 傭兵みんなでそう笑って無線に乗せて言ってやるのだ。


<ホーネットより通信>

『な‪……‬ぁ!?!』


「何驚いてんのさ。

 価値がつけられないって言う言葉が、価値が高すぎるって意味になるわけ?

 私バカだけどそんなわけないじゃん!


 この星、この戦場で、

 命の価値は安い。


 まして、あんたらみたいに企業共通通貨cnも持ってないような軍はタダ同然!!


 そんなのに慈悲で価値つけてあげるってんだから、感謝して欲しいよね」



 我ながら、なんてカスな発言だろう。

 相手も絶句。無線機に息を呑む声しか聞こえない。

 ‪……‬はは!良い子ちゃんだねぇ、本当!!



「さて!

 最初からゼロ円の人の話も終わりだ!


 ビジネスの話ってヤツをしよう。

 私的には、追加で7割報酬増しでここを制圧するつもり。


 他は?」



<ルキ>

『お姉ちゃん、ふざけないで。

 10割でしょ、10割!!そのぐらいはいると思うけど!』



 妹や、随分大きく出たね。



<シルヴィア>

『足りないな。前回報酬の1.3倍分が妥当だよ』


<ありす>

『ぶっちゃけ、ありすちゃんの機体はここから長期戦キツいから2倍欲しいな〜?』



 って、私より先輩の皆さん大きき出たなぁ!??



<ホーネットより通信>

『ぎゃ‪……‬逆オークション‪……‬だと‪……‬!?』



<エーネ>

『ところで、本当に火星統一政府側にはお金はないんですか?

 今なら、こちらを雇う事も可能ですよ?』


「エーネちゃん、さすがの営業だけどやめときなって」


<ホーネットより通信>

『だ、誰が薄汚い金の亡者の手など!!』


「ほら!お金ないんだよこの人ら!」


<エーネ>

『残念。

 確かに沈めた方がお得だねホノカちゃん』


 ころころ笑う可愛い声して、物騒な話する私のお友達だ。

 可愛くてもやっぱエーネちゃん傭兵だな、うん。



<ケルヴィ>

『そんな大金をもらって良いかは分からないが‪……‬

 命をかける分の報いはいるな』


<ドミニオ>

『ニオちゃん達もそのぐらい欲望はあるからね〜』


<ハルナ>

『こんな相談するもんなんスか先輩方‪……‬あーしマジ人生選択ミスった‪……‬!』


<ミコト>

『‪……‬カスみたいな会話。カスなのが私たちってこと?』


<ノドカ>

『おかあさん、おとうさん、就職失敗した上で人手なしになるのを許して‪……‬』


<フミカ>

『この恥ずかしげも無い最悪の会話。コレが出来なければ傭兵として戦えないと言う事なのね。

 最低‪……‬最低だけど、参考にはなるわ』




「‪……‬というわけだけど、ヴィオラさんどう?」




<ヴィオラ>

『2倍なんて出せるわけがないわよ!

 前任務の1.5倍分上乗せ、弾薬費・修理費そちら持ち、かつ支払いはインペリアルの首都より払わせる交渉で最低二日後になるわ』



「じゃ、ぶっ壊すか。

 それでも考え直すなら1.8で手を打つ」


<ヴィオラ>

『1.6!弾薬費はこちら持ちにしてやるわ!!

 ただし用意に時間がかかるのは本当よ!!決死の作戦でもう領主としての私財もすっからかんなの!!!

 例え陛下を質に入れてでも確実に用意はする!!


 でもこれ以上は譲れないわ!!


 そうじゃなきゃ壊せば良い!!最低限の勝利は約束できる上に、二度とあんたたちロクデナシを雇う事はないでしょうけど!!


 どうする?信用まで失って、はいここで終了ってする?


 あんた達も内心、懐が苦しいでしょう?』



「‪……‬‪……‬‪……‬‪……‬」





 どうする?


 ────言ってみるもんだね♪

 予定より2倍の報酬だもん!!



『受けた!!』



 さ、仕事を再開だ!!




<ホーネットより通信>

『‪……‬‪……‬ここまで、我らを愚弄するのか‪……‬!?


 ‪……‬‪……‬この、金の亡者どもめぇ‪ぇぇぇッ!!』



 あー、お金が出せないしさっきので戦力も失った人がなんか言ってるー!


 まぁ、お仕事の時間なので、関係ないか。


 はい、制圧スタート。



           ***




 ────傭兵達がホーネットを内部から制圧する様子を見ながら、機体内部でため息をつくヴィオラ。


「よかった。3倍なんて言われなくて」


<ロート>

『ヴィオラ。お前の家、確かいくつか隠し財産があったよな?』


 秘匿通信チャンネルで、珍しく普通の声量───ロートにとって小声で通信が聞こえる。



「現皇帝陛下に在らせられるミハエル様はお優しく優秀な方よ。

 事情を話せば復興資金と、あの役立つロクデナシどもの報酬ぐらい用意していただけるわ。

 一生ついていきます、陛下」


<ロート>

『‪……‬お前も悪党だな。

 まぁ!悪党ぐらいで無ければ、辺境領を守るなんぞ出来んか!!!はっはっは!!』


「あなた、性格の割にこういう話は理解しているあたりさすが同じ辺境伯ね。

 おっと、言い忘れてたわ」


 ヴィオラは、笑いながらもう一度無線チャンネルを広域に合わせる。



「傭兵達!!

 言い忘れていたことがあったわ!!!」



 ここからズームして見える要塞は、もはや制圧寸前である。

 ヴィオラ達インペリアルの兵がのったMWも追いつき、さらにこちらのヘリで急いで用意した兵士達も降下し始めている。



 もう一度言おう。

 制圧は間近だ。






「この勝利は、貴女達のおかげです。


 良く働いてくれました。

 この金の亡者のロクデナシどもが!!!」







          Chapter 6 END



          ‪……‬END?

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