MISSION 14 :倒せ!未確認兵器
パルスの光に包まれて。
そんな、おバカな私が思い浮かんだとは思えない詩的な表現を思い浮かべて、
「あ、死んだわ」
って呟いた傭兵系美少女な私が大鳥ホノカちゃんです。
おばーちゃーん、おじーちゃーん、いま会いに行くよー…………
「─────じゃないわァァァァァァァァッッ!!!」
いやいやいやいやいや死んでたまるか!!
死んでたまるかぁっ!?!ごめんおばあちゃんしばらくは会わないから!!!!おじーちゃんもごめん!!!!
もう!!!
結構お金貯めて傭兵辞める算段ついてるのに!!
「嫌だ!!たとえペラゴルニスの修理費で収支マイナスでも!!死ぬよりマシだ!!」
<ウェザーリポーター:タイプ06>
《そんなペラゴルニスのEシールド出力低下!!仮定装甲値40%減少!!》
「ペラゴルニスでそれは運がいいかも!!!」
パルスの光の外に出れた。
被弾箇所は、咄嗟に一番やばい下半身をパルスの方面から逸らしたおかげで、コアパーツ周辺で済んだ!!
済んだでいいのか!?このコアEN耐性は飴細工レベルだぞ!?
<ルキ>
『運がいいは本当みたいねおねーちゃん!』
「ルキちゃん生きてたかぁ!?」
と、すぐ隣で少し焦げた程度じゃ目立たない黒い装甲の機体、バルチャー・グリフィスとその中の私の妹ルキちゃんが声を出してくれた!
<ルキ>
『おねーちゃん追いかけて正解ね。
ほとんど本能的に、あのイカれたほぼ全方位の即死パルスプラズマの攻撃の穴に出てたわ!』
咄嗟に言われて、『私にとっては真上』の真下の相手を見る。
円形リングがパックリ割れて、まるでハリネズミみたいにその円周に連なったパルスプラズマキャノン達。
だけど、死角が確かにある。
真上と真下……私たちがいる場所は真上……ちょい待ちそれどころじゃない!!
「まさか!」
咄嗟にペラゴルニス宙返りさせて、大体当たるでしょって感じに肩のロケットと武器腕
大体外れたけど、最後の数発が相手の機体に直撃した。
そう、『直撃』だ!
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『なっ……!?』
<ルキ>
『まさか!?』
「そのまさかだよ多分!!
今アイツ、Eシールド張ってない!!!」
────アレだけの攻撃をした直後は、
私のペラゴルニスみたいなeX-Wとかの機動兵器の戦いにおいて、Eシールド防御以外は気休め程度!!
早速ルキちゃん共々、全力で今のうちに攻撃だ!!
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『舐めるなよ旧型兵器どもがッ!!!
ハールート・ミーティアの死角は狭いぞ!!』
カン、カン、と二発だけ当たって、即座に高速回避する相手。
速度だけならペラゴルニス並み、近い……けど射程内!
ストーカーミサイル発射!
永遠に追いかけてくるミサイル相手なら……あ、Eシールド復活してた!?
「回復が早い!」
<ルキ>
『シールド回復まで30秒って所ね』
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『驚いたか!!
<ルキ>
『じゃあさっき直撃してたのは、
ただEシールドが消えただけじゃなくスタッガーしてたのね』
────ルキちゃん、恐ろしい子……!
相手にカマかけて、情報を引き出してくれた!
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『しまっ……あ!!』
<ルキ>
『心読むまでも無いわね。
ネオの知り合いの方がアンタらよりはぐらかすのうまいわよ!』
煽りと一緒にセオリー通り、Eシールド減衰効果の高い自機バルチャー・グリフィスの左腕武器のプラズマガトリングで攻撃しながら抜け目なくミサイルも飛ばすルキちゃん!
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『ぐっ…………だからと言って、こちらの優位は揺らがない!!』
ドヒャァ、と相手もアサルトブーストで機体を真横に振って攻撃を避ける。
おまけに、背中に生えた人型兵器の本体に不釣り合いなデッカい背中のブースターもあって、一瞬で距離を離して、そして一気に距離を縮めてくる。
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『機体性能頼りと言いたければ言え!!!
お前達を殺せればそれで充分だ!!!!』
って狙い私かーい!!
ブォンと相手の両腕にあたる武器腕レーザーブレードが起動して、袈裟懸けに一閃振り下ろしてきた!!
「うぉ!?」
しかも、なんとか避けたら、とんでもないアサルトターンで後ろ向いてきて追撃にもう一回光の剣をぶん回してきた!!!
あんなターンして正気!?強化済みじゃないなら内臓飛び出────
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『くたばれ
「うっひゃぁ!?!」
そして至近距離でぶっ放してくるんだその肩あたりにあるグレネード!!
しかも弾速が速い上に
これをこんな正確に当ててくる!?
お空最強な私のペラゴルニスじゃなきゃ、回避しきれてなかったよね今!?
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『がほっ、げほっ……まだまだぁ!!!』
またレーザーブレード!速い!!
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『体の限界まで性能を引き出してやるッ!!!』
「生身で無茶するねぇ!?」
回避……そしてタイミングよく、ウチの頼れる妹の一撃が決まる!
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『ガッ!?』
<ルキ>
『多少頑丈でも再生できないような生身でバカな動きするもんじゃないわよ』
バルチャー・グリフィス右腕で掴んでいる発射後の冷却時間ナウなレールガンの代わりに、左腕のプラズマガトリングをぶっ放すルキちゃん。
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『舐めるなッ!!私は火星の知的生命体の到達点の一人なんだッ!!』
でも数発カスリはするけど、すぐ動くなぁ……
システム、スキャンモード。
武装に回すエネルギーをコンピュータとかに回して攻撃が一切できない代わりに、省エネルギーで結果機動性が上がる状態。
でも本来の目的のスキャン……カメラの先でルキちゃんの華麗な攻撃を華麗に避けてる隙に敵の解析をしておくのだ。
「カモメちゃん、ペラゴルニスのコンピュータだけじゃ大凡しか分からないっぽい」
<カモメ>
『でもデータは充分です。
解析終了。敵の予測Eシールド出力並びに減衰率を視覚情報化。
仮装装甲値並びにオートバランス負荷を表示』
優秀なオペレーターな頼れるカモメちゃんの手によって、ゲームみたいな数値といくつかのバーが相手に表示される。ま、正確には私の義眼に投影されてるとか!
<カモメ>
『いい知らせです。
スキャン結果から敵パイロット本体の脳負荷並びにEシールド出力、双方がオートバランスシステムと連動している模様です。
Eシールドを削り切れば、オートバランス負荷限界によるスタッガーを起こして行動が一時制限されます』
「そこ直撃狙えって事らしいよ、ルキちゃん?」
<ルキ>
『案外、楽な攻略法だこと!』
ルキちゃんのバルチャー・グリフィスの分裂ミサイルとプラズマガトリングが相手にやたらめったら放たれる。
同じく、こっちもロケットに垂直+ストーカーミサイル連射!!
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『!?
気づかれたか……忌々しいほどオペレーターと状況判断力の質が高いようだな!』
動け動け、当たれ当たれ!
ミサイルを回避しようとした動きで、本人がダメージを、当たれば言わずもがな機体がダメージを、
何より、全部が微々たるダメージでも、
確実に機体のバランスが崩れていく。
ほらほらEシールド出力下がってるよ〜?
このままだとスタッガーしちゃうよ〜!!!
「このままジリジリなぶり殺していこうかぁ!?」
<ルキ>
『早くて強いって言ったって、ちまちまやればその内には勝てるわよね!!』
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『なめるなぁ!!!
そんな簡単にィッ!!!』
突然、レーザーブレードを展開して私に高速突撃してくる。
当然、ギリギリ回避したらすぐ真横で絶対中身がシェイクされる動きで追撃のブレードを振るってくる!!
声も出せないような忙しなさで、なんとかアサルトブーストで回避した私のペラゴルニス。
そして代わりに反撃の用意のルキちゃんの攻撃姿勢。
あ、ミスっちゃった。
一瞬の硬直をする私たちの中心で、相手がチャージ開始したウニみたいな針山地獄パルスキャノンを展開してる……!!!
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『トドメだァァァァッ!!!!』
パルスの光に、
包まれて───────────
***
「ガハッ!?ゼホ、おぇぇぇ……はぁ、はぁ……!」
火星統一政府軍特殊兵器、「ハールート・ミーティア」のコックピット内部で、血混じりのさっき食べていたものを吐き出して荒い息を吐く彼女。
「はーっ……はーっ……ネオツーの身体でも……このダメージ……凄まじい性能だ……振り回されている……
だが……だが……!!ウッ!」
そのまま、全周囲モニターに囲まれて顔を押さえて一人泣き始める。
「……サリナ……なんで、なんで私を待たなかったんだ……!!
逃げたって良かったんだ……!!
なんで一人死んだんだ……!!!
うぅ…………なんで私は間に合わなかったんだ……!!!
うぅ…………すまない……すまない……!!!」
ほんの少し前、少し先に出撃した、遺伝子上も妹に当たる存在に涙する。
120門のパルスレーザーキャノン斉射の後の静寂の中、ただ涙声だけが漏れ───────
<標的目標:優先度1>
『─────こう言う言い方したくはないけど、殺したからには言ってやるよ!!』
瞬間、上からのアラートに顔を上げる間もなく、凄まじい衝撃が断続的に上から落ちてきた。
「バカな!?何故生きて!?!」
<標的目標:優先度1>
『弱い奴は、死に方も生き残り方も選べないらしいよ!!』
コックピットに、朝日より眩しい光が壁を破って入ってくる。
「サリナ……仇を打てなくてすまな────」
そして……
***
120門パルスレーザーキャノンには、たった1箇所だけ穴がある。
穴って言える範囲じゃないほど狭い場所、機体に対して頭側……真上だ。
だからパルスブッパされる瞬間はクッソ忙しかったんだよねー!
死を覚悟した私こと傭兵系美少女な大鳥ホノカちゃん、愛機のペラゴルニスを何がなんでも上昇させた。
掠っただけでもパルスに貫かれるようなうっすいペラゴルニスの装甲なんて当てにできない。
速度のためにミサイルは全部パージ。
それでも、翼の端が焼けた。
レーザーは普通にEシールドなんか簡単に貫通するからね。まぁペラゴルニスにEシールドなんて風除けぐらいにしか使えない程度の出力しかないけど。
でも、上が取れた。
しかも、同じく察したルキちゃんも隣にいた。
お互い武器は一番強いのしか持ってない。
じゃあやることは一つ!
「全弾ぶっ放せ!!」
<ルキ>
『言われなくても!!!』
真下の敵は、発射後の
オートキャノンを、レールガンを、全弾喰らえ!!
ボボボボボボボボボッ!
バシュゥゥゥゥッ!!
一瞬で敵は穴だらけ。
<火星統一政府軍特殊兵器兵>
『バカな!?何故生きて!?!』
「弱い奴は、死に方も生き残り方も選べないらしいよ!!」
────何か悲しい会話もしたけど、まぁ後に残るは残骸のみだ!!
綺麗に弧を描いて上昇して、落ちていく相手の兵器を見ながら旋回する私とペラゴルニスなのであった……
<ウェザーリポーター:タイプ06>
《やったようね。
ただだいぶ派手にやられたわ。
仮定装甲値残り10% 危険よ》
「生きてりゃ良いよ。
でも一旦帰らないとね……流石に機体の方が持たない」
若干、左に傾きそうな感じするペラゴルニス。
ちょっと脚 (脚の代わりの翼)に怪我を負っちゃったからね。
<ルキ>
『生きてりゃ良い、ね。
おねーちゃんは強いから、そう言えるってワケ?』
聞いてたか妹や。
隣にやってきたルキちゃんに私の恥ずかしいセリフを茶化されるのであった。
「いやさ、実際どっちが先かは曖昧だけどさ……
何いうにも、最後の最後に生き残った人間だけの権利ってやつじゃん??
だからつい……」
<ルキ>
『……酷い話なの分かってるだろうし、実際そうでしょってのは一番分かってるのおねえちゃんでしょ?
どんな良い人でも、悪人でも、
弱い奴は、死に方選べないのよ』
「…………」
…………下の残骸は、偶然か知らないけど原型を留めた部分が折り重なっていた。
何がって、今殺した方と……さっき殺した4脚の方。
………………まさかね?
<ルキ>
『…………結局、姉と妹、そろって御陀仏って訳ね』
まさかだったわけか。
……心が読める、シンギュラ・デザインドな私の妹ちゃんがいうなら間違いない。
「…………ああならないためにも、一旦帰った方が良いよね─────」
ふと、そんな言葉の瞬間、
ボンッ!……ズドォン……!!
「何今の!?」
突然の出来事だった。
真上を通り過ぎる光の球。
そして、遅れてハンナヴァルト領の基地の方角に上がる黒煙。
もっと遅れてやってきた、衝撃波が吹き荒ぶ。
ドォォォン……!!
<ルキ>
『なんだっけ、音が遅れてくるってことは、確か弾が音速を超えてやってきたってことよね?』
「おねーちゃんは頭悪いからなんとなくしか知らないけど……
けど確か、雷も光ってからゴロゴロ鳴るまで時間かかるし、その時間で距離が分かるんだっけ?」
外の様子を集めるマイクが鳴らしたってことは……
つまり重要な音で、それでなんというか、最初に遅れてきたのが発車の音なら……!
<カモメ>
『……お二人とも。動けますか?』
「カモメちゃん!?何があったの!?」
違う。聞き方が間違ってる私!
こうきくべきだよ。
『そんな深刻な声で、何を言うつもりなの?』ってさぁ!?
<カモメ>
『今の砲撃で、こちらの基地の一区画が吹き飛びました。
幸い、全体としての損傷は軽微です。
…………良い知らせであり、最悪の知らせが一つ。
今の攻撃は、私の……
こちらの情報にある攻撃の可能性が高いのです……!
いえ、疑いようがないことに、私自身も動揺しています……!』
「!?!」
何を言ってるの?
ねぇ、アホな私に、分かるように……!
いや、いやいや、なんかやだ。
なんか、分かりたくないけど、分かったら最悪なことをカモメちゃんは伝えようとしている……!!
なんで気づいちゃったんだよ、私……!
<カモメ>
『…………砲撃の発射地点の情報を回してください。
機械である、ソレイユモデルガイノイドである私が言うのもおかしな話ですが……!
信じたくない光景があるはず……!!』
ここで私は、アホな私は、
そりゃすぐ振り向いちゃったよ。
ちゃんとシステムスキャンモードへ移行してさ。
────まず、一つ勘違いしていたことがあった。
空がなんか曇ってる。
天気が悪いのもあったけど、遠くの空につぶつぶたくさん。
この頭のカメラ性能が悪いけど、最大ズームのガビガビシルエットでも見えた。
さっきの面倒な兵器がたくさん。
いつもの面倒な兵器がたくさん、2脚も、4脚も。
レーダーは優秀なペラゴルニスの頭が、そして今多分絶句してる相方の名前つけてあげなきゃいけないAIちゃんが、足りないカメラ性能を補って詳細を教えてくれてる。
アイツら、量産機なんだ。
「……嘘でしょ」
<ルキ>
『おねーちゃん、
私の血の繋がってない妹は、心が読めること抜きにしても大変察しがいいのだった。
なんなら、おニューの機体バルチャー・グリフィスは私の今乗ってるペラゴルニスよりカメラ性能がいい頭部パーツを使っている。
見えたんだ。
私ですらうっすら見えて、どうしようもない怖いって気持ちが溢れたアレが、鮮明に。
……ズゥン……ッ!
雷みたいな音は、巨大な足音。
この距離で、空中で、機体の中にいても聞こえるの!?
いや聞こえるわ『アレ』なら……!
……見慣れた、6つの超巨大ビルみたいな脚。
その中央の胴体から、翼みたいに生える空母とか戦艦みたいな形のもの!
びっしり生えてる大砲に、びっしり群がる機動兵器達!!
見間違い?それともホームシック?
幻覚だったらよかった……良くない……!
「なんで、『ヨークタウン』が、あそこに……?」
アレは、どう見てもヨークタウン。
巨大歩行式移動要塞『エデン・オブ・ヨークタウン』
今私が住んでる場所、傭兵達の溜まり場の一つ。
────それと全く同じ姿の、
巨大な姿が視線の先で歩行している……!!
<シルヴィア>
『説明してあげよう、全員。
アレは、エンタープライズ級超弩級歩行式移動要塞。
その名を『フォートレス・オブ・ホーネット』。
ヨークタウンの姉妹型さ!』
と、何やらあの天才おチビちゃんが、そう通信をしてきた。
「…………ヨークタウンって、すごく強いのは間違いないよね……?
じゃ、じゃあその姉妹ちゃん要塞も当然……!?」
<シルヴィア>
『ああ、大鳥ホノカ。
皆が言いたくないことを言ってくれたようだが、皮肉でもなんでもなくそれこそ今全員が知るべきことで、心に留めるべきことさ。
だが!こちらにも切り札がある!!』
切り札……?
もしかして!
<シルヴィア>
『ボクたちエクレール・メカニクスが誇る最新最強最高の技術を駆使した、
今運んできたこの最高傑作で、
あの『蜂の巣要塞』を迎え撃とうじゃないか!!』
***
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