MISSION 18 :宣戦布告だ、戦争だ!
突如、『火星統一政府軍』を名乗る巨大な規模の戦力がやってきた、人類生存圏三大勢力の一つ『インペリアル』領ヨークタウン。
『バカめ』
彼らの降伏勧告に対し、インペリアル皇帝であるミハエル・インペリアル2世は、ごく短い言葉と表現を相手へ言い放った。
『……は?
今、なんと……?』
『バカめと言ったのだ。過去の亡霊。
今更何をしに来た?
いや、今となってまだ50年前の世迷言を繰り返すのか、バカめ』
通信内容を、インペリアルはおろか全人類生存圏、バリアで覆われた土地の中からその外へ広げたインペリアルの領土まで、
全てに流した状態で、ミハエルは言葉を続ける。
『地球の侵略だと?我々の祖先のいた星への礼すら忘れたか。
真意こそどうであれ、70年も前に我らに与えた力の分の誠意すら見せないでそれを言うか?
企業が信用できないなら、なぜ手元で動きがわかるように置くことをしない?
少なくとも貴様ら民主主義を気取っていた火星政府ではなく、
かの星ですらもはや存在しない、古臭い帝政国家勢力たる我がインペリアルはそうしてきたのだ。
いまいち腹の読めないオーダーも、貴様らを産んだユニオンもだ。理想だけでなく実をとってきた。
お前たちは……地球から供与された技術を、経済を利用して今まで生きてきたくせに、それを否定し夢物語をまだ語るか?』
『なんだと、野蛮な武装国家が!』
『野蛮と呼びたければ好きに呼べ!!
だが……銃を突きつけ着飾った言葉で降伏を促すお前たちも、所詮は野蛮と呼ばれた我らインペリアルと同じだ!!』
無線の相手の、言葉が詰まる。
しかし、皇帝の言葉は止まらない。
『交渉は、戦ってお互い立っていたら行おう。
聞け、我らがインペリアルの同胞たちよ!!
敵は既に目の前だ!!
この俺、ミハエル・インペリアル2世の名において皆に命ずる!!
我らが土地を守れ!!我らが同胞を脅かす敵を排除せよ!!
皆の健闘を祈り、そして我らインペリアルの勝利を信じる俺は、決してここノイエ・フェードを動かん!!
皆の未来のために、存分に戦え!!
決して、卑劣な敵を許すな!!』
────俄かに湧き立つ無線の先の、インペリアルの面々の声を聞きながら、無線のマイクを切った若き皇帝ミハエルは、はぁー、と長いため息をつく。
「……いくらなんでもな、ゼノバシア殿?
この文は、芝居がかりすぎると思うが?」
ふと、同盟国の長でもある赤い肌の異形のレプリケイターの皇帝、赤鋼帝国の皇帝ゼノバシアが持ったカンペに文句を言うミハエル。
「原案はそちらだぞ、ミハエル殿?
いい宰相と元帥を持っているな」
「あなたに褒められるのも考えものだがな。
ただあなたの文才のキレがいいおかげで、俺の意思は大袈裟だが伝わったことは礼を言う。ありがとう。
ここからだな……勝つにしろ負けるにしろ、流れる血の責任を取る準備をせねばな」
「なら、軍事同盟を結んだ俺も動くか……まぁ実は動いているがな」
「…………早速例の手紙はあなたの兄に?」
「ま、あの兄なら何も言わずにそうする内容だがな。
オイ、それよりだ。このオレをコマ使いしたからには、赤鋼帝国への軍需支援を期待しているぞ?」
「ああ、インペリアルが立っている間はやらせてもらおう」
よし、と改めて皇帝の執務椅子に座り直すミハエル。
「まずは、この戦いだ。
下手な流れにはできない……
くっ……!俺の代で本物の戦争とはな……避けたかったのも本音だ。
最悪、啖呵だけは威勢がいい最後の皇帝になるのは俺かもしれないなぁ……!!」
弱音は吐くが、ミハエルは早速立ち上がり、控えていた閣僚に合流して事を進め始めた。
***
てなわけで、傭兵系美少女の大鳥ホノカちゃんですが、
「よし……!良い子だ、ミハエル。ボクの孫がよく言った……!」
「よく言ったぞミハエル!!
流石我が子だ!!そうでなくては!!」
「流石ですわお兄様!卑劣な侵略者相手によくぞ言っていただきましたわ!!」
『うぉぉぉぉ!!皇帝陛下万歳!!!
あなたのために勝利を捧げます!!!』
とまぁ、インペリアルの皆さん大興奮な訳ですよ。
「あはは……まぁ、なかなか熱い演説だったしね」
「まぁ、ウチらは
「…………と言うわけで、正規軍の皆様もこちらのドライな
一応はオペレーターとして、現在の戦況を報告させていただきます」
カモメちゃんが、昨日の一つの目から立体映像を地面に照射して、よくある作戦用の図をお見せしたのであった。
「敵勢力は、揚陸艦7、空母2、駆逐艦6、航空機多数、そして『ブラックスカイ』が5機です。
規模で言えば、現在のインペリアル艦隊以上の相当な数です」
「本気だな。このレベルの規模で綺麗事を言うとは……にしても、
「はい、ネェロ将軍。
既に、我々トラスト所属の
ケッ、と近くのフェアリー大嫌いなリンちゃんが嫌そうな顔をした。
たしか、情報を集めることとオペレーター以外は絶対しないんだっけね……
「この配置であれば、敵『火星統一政府軍』の艦隊を沿岸砲とインペリアル艦隊の挟み撃ちが可能だな。
空軍は既に緊急発進しておるだろう。
となると、地上のMW機動部隊は揚陸艦から来る足止めのために沿岸に集めるべきか」
「……それって、間に合うんですかね?」
多分味方の青いマークの、今の多分歩いているMWとかの速度と沿岸の広さとかを見て、つい言っちゃう。
「……無理だね」
「ああ、母上。無理だ」
……まさかの即答ー。マジかぁ
「揚陸艦から相手の兵器が上陸する方が早いだろうね。
何より、おそらく『ブラックスカイ』が上から援護をしてくるんだろうからね」
「ブラックスカイ……なんじゃワシのパクリか?」
「パクリはお前や黒いの」
「ちょっと諸先輩方〜?
真面目な時に漫才始めないでもらえるぅ?」
いつも通りこんな時にガン飛ばしあう中身がヤクザの美女二人に、ルキちゃんの注意と周りの苦笑が飛ぶのであった。
リンちゃんとキリィちゃん……大物だよ
「ははは!流石……
ただ、舐めない方がいい。
ブラックスカイ……史上最強の空の大型機動兵器だ。
あれ一機で、制空権を取れるだけの性能があったし、並大抵の
その真下にあるもの全てを破壊する大雨、その大元の太陽を遮る巨大な雲。
故に『
ティーリエお婆さんのセリフに、流石に茶化せないなと心から思っちゃう。
いやだって、上からそんなもの降らせてくる代物だなんてさ。
みんなも、仮にも戦場を経験してれば、上からの攻撃の怖さはよく分かるし、上から攻撃するタイプも多い。
「……よく、そんな相手と、お婆さん世代は戦えたんですね……」
「おや、大鳥ホノカ。あのアンジェの孫がそれを言うんだね」
「え?」
「アンジェの単騎でのブラックスカイ撃破数は、
通算で『5機』だったのさ。
伝説だよ。悔しいけど」
えぇ!?
私のおばあちゃん何やってるの!?
「おかげで、弱点がわかっている。
ただ本格的にブラックスカイ相手なら、我々ロイヤルがやろう。
ネェロ、空の掃除ぐらいはできるね?」
「お母様、いつまでも子供扱いすると、この私もかのアンジェという傭兵の真似事をしてしまいますぞ?」
「ふふ、まぁ期待しているさ。
ただ、できればそこの同じ黒の傭兵と、相方の白い傭兵の力がいる」
と、言われて振り向くリンちゃんキリィちゃんコンビ。
すん、と真面目な顔になるあたり、私の先輩傭兵な落ち着きがあったね。
「依頼やったらしゃあないな。はよ上がらんと、市街地上空でドンパチせなあかんで?」
「で?相手は、
ワシはなんのとっつき持っていけばいいんじゃ?」
「話が早いな、
HEATパイルの方がいいよ、キリィ。
依頼料は、二人とも各40万ずつ成功報酬でどうだ?」
「「乗った!!」」
ティーリエお婆さん、料金設定がうまいね。がくもそんな感じってところの印象。
そして、と今度は私たちに向き直る。
「残りの傭兵達には、最も大量にやることがある任務を依頼したい」
「依頼料次第で」
「アンジェの孫だな。
────前払い9万、成功は21万だ」
わお
前払いあり、か……!
「君らには、肝心要の任務だ。
我がインペリアルの部隊が来るまでに、海岸への揚陸部隊阻止を、そして揚陸艇破壊を頼みたい」
来たね!
シンプルで、面倒なやつ……防衛だ!
「……私は受けるけど、他のみんなは?」
「おねーちゃん受けるなら」
「私は文句なし」
「元からここは私の守るべき領地だもの。当然」
「我が兄の
「……断る理由は無いので」
「よし……ロイヤルの新人達、君ら3機もそちらを任せる。
隊長は……アウローラ、君だ」
「はっ!」
お、アウローラちゃんが一緒か。
「では、悪いが反対意見も何も、そろそろまずい時間だ。
各自、作戦を開始してくれ」
おっと、カモメちゃんの目から出る地面の立体映像では、とっくに揚陸艦が陸に近づいている!
「よし、カモメちゃん、ちょっといい?」
「はい、ホノカさん」
と言うわけで早速……コトリちゃんを預ける。
《私は留守番か》
「と言うより、いざって時のためにイオちゃんを呼んで欲しい」
「そういうことですか……しかし、オルニメガロニクスは?」
《狙撃型は、ウチの役目やろ?》
「せやなー♪」
なんて、セヤナちゃんを掲げて私は言う。
「さて……戦争とはいえ、稼ぎますか!」
***
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