MISSION 12 :姉妹で仲良く模擬戦闘
ギュルゥン、ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッッ!!!
まずは挨拶代わりに背中のガトリングを乱射!
今日は妹、ルキちゃんの為に仮想敵な傭兵系美少女の大鳥ホノカちゃんです。
ギュラギュラ履帯の音を響かせて、ガッチガチの重装甲と重武装なタンク脚は前へ進むのみ!!!
そんな基本の動き通り、愛用ガチタン機体『ティタニス』の重量感たっぷりな足取りの突撃を始めるのであった!
<ルキ>
『おねーちゃん容赦とか情けって言葉知ってる!?
そこまでアホだったっけ!?!』
機体のジェネレーターのエネルギーコンデンサの容量の回復と、瞬間火力の計算の末みたいな発射感覚でのプラズマガトリングを斉射するは、私の可愛くて美人でスタイル良くて羨ましい妹ルキちゃんの新型機体の……えっと、バルチャー・グリフィス?だっけ?
「賢いやり方でしょ?痛くなければ覚えない!!
私だって……私だって、こう言うやり方でしか戦い方を覚えてないからこう言う教え方以外知らないんだよねぇっ!!!」
<ウェザーリポータータイプ02>
《ああ、あの人の人格入りの指導ではそうもなるか》
同情してくれるまだ名前も決めてない新しい相棒AIちゃんと共に、今はここにはいない鬼畜な赤いあの子こと一人目の相棒AI
たるコトリちゃん式で妹を鍛えていくのだ!
<ルキ>
『そっちがその気なら、私は頭良く戦ってやるからおねーちゃん!』
まぁ、それについて行けないような子じゃないからルキちゃんは。
ほら早速、一番やって欲しくない行動である手短な建物で低燃費な壁蹴りからの上昇を始めてくる!
<ウェザーリポータータイプ02>
《危険ですよ、ホノカお嬢様。
あれ以上上昇すればこちらの仰角の範囲外です》
わかっちゃいるけど、強化してるしてないに限らず人類も今乗ってるeX-Wこと機動兵器「
上が死角で、弱点なんだ。
背中に装着できる武器は強力だけど上下できる範囲……仰角だっけ?があんまりないし、
地味にこのティタニスの両腕のプラズマキャノンと
何より、左右上下前後全部回避に使えるとなると、狙いをつけるのが馬鹿馬鹿しくなるんだよねー!!
「動くと当たらないでしょ!?」
<ルキ>
『そりゃ動くと当たらないでしょ、そんな重武装!!』
ルキちゃんの機体の背中、翼みたいなリフターが多分おニューの機体を空中で留めてくれているんだろう。
フワフワ動くホバリング起動は、見た目はとろく見えても見事照準を外してくる。
ここだという狙いは、アサルトブーストの急加速で避けられる。
タイミングは読まれるか!シンギュラ・デザインドっていう造られた命の子、私の妹ちゃんは心が読める!
そんな優雅な動きから、やってきたるは雷鳴みたいなレールガン。
気分は地を這うあの名前も出したくないGちゃんが必死にハエ叩きから逃げている。
タンク脚は脚遅いってのに、私よく避けられるな!
ズガァン!!!
「うげっ!?」
当たっちゃったけど、なんだこの火力は!?
eX-Wの防御方式、周りを包むバーリアー!こと
仮定装甲数値……まぁ、有能コンピュータちゃんが弾き出した実体装甲の数値が9000以上のハイパークソ硬いティタニスちゃんのそれが、今7000まで下がっちゃった。
マジの戦いなら、0近くになったら次は爆散って塩梅のヤツだよ?
「新武器の火力ぅ!!」
しかも、衝撃で一瞬このギュラギュラ動き回っているティタニスの速度が明らかにガクンと下がる!
いわゆる「
<ウェザーリポータータイプ02>
《仮定装甲値、80%まで減少。Eシールド出力40%
スタッガーになりかけているようで、お嬢様?》
「何発も撃てない武器だ、そのぐらいにもなるさ!
それよか何発も撃ってくるやつのほうが今は嫌!!」
相変わらず上の死角に回り込んでくるルキちゃんの新型機体。
しかも左腕のプラズマガトリングを乱射してくる!!
ティタニスは実防重視でエネルギー武器には弱いんだ!!しかもプラズマ兵器はEシールドの減衰率がやばい……つまり当たっていたら剥き出しのエネルギー兵器に弱い装甲で受ける羽目になる!!
<ルキ>
『優しいおねーちゃん!妹のために花を持たせてくれるなんてね!』
「絶対泣かす!!お姉ちゃんは妹相手には基本暴君なんだぞこんにゃろー!!!」
とは言うけど、初手で火力で押せなかったのはキツい!!
<ウェザーリポータータイプ02>
《仮定装甲値60%
機体ダメージが増大しておりますよお嬢様?》
そしてクールに劣勢を示さないでぇ、新しい相棒AIちゃーん!
***
さて一方、ホノカたちの戦いを遠巻きに見ているは、
「……ゴーグル外すと撃ってるはずのビームもダメージも爆発も見えないんだなぁ、コレ」
「不思議な感じ〜」
などという新人傭兵達と、ありす以外にもいつのまにか大量の外野達がいた。
「うぉぉぉぉ!!明らかに劣勢!!だが粘り強い戦いだぁぁぁぁ!!!
優秀だぞどちらの動きもッッ!!!
熱いなぁッッ!!!」
「ロート、煩い。
あら、決着ね」
隣で歩兵用ヘルメットに存在する
ヴィオラ本人の強化済み人工眼球に映し出された情報により、テストモードのホノカの操るティタニスの仮定装甲値がゼロになるのが見えた。
「やはり最初のうちに決められなかったのが痛かったわね……
むしろ、得意じゃなさそうな機体であそこまでセオリー通りできるだなんて……」
「そんにゃーーーー!!!!
ホノカちゃぁぁぁぁん!?!?ガチタンで負けちゃダメでしょぉぉぉぉぉぉ!?!?」
と、ヴィオラの評価声を掻き消す凄まじい叫びが上がる。
「ちょ、ありすちゃんさん!?どうしたんですか!?」
「いくら妹ちゃんだからって手加減しすぎ!!!
ただ全力ファイヤーするだけがタンクの戦い方じゃないからねー!!
それを知らないホノカちゃんじゃないでしょー!?!」
身を乗り出して叫ぶは、自身もタンク脚使いである
「───ってぇ!?!
ランク4!?なんであなたがここに!?!」
「あ、偉い方でしたかひょっとして?
どもー、
「あ、あらご丁寧に……」
「まぁ詳しいことは置いておいて……
ホノカちゃん出てきたかー!?
今の戦いは酷いよー!!」
と、挨拶もそこそこに一度目の模擬戦闘を終えたホノカたちへありすが向かう。
「…………どう思うロート?」
「……流石に声を小さくせねばな……ッ!!
まさか……上位ランカー二人も派遣か!」
「声がデカい!!
……声を小さくしなきゃいけない話題でしょ、あなたの言うとおり……!」
ヴィオラは、突然の来訪者の情報から、少々嫌な予感を感じた。
もっとも、一番嫌なことはそんな情報が領主である自分にやってきていない事なのだが。
***
「うへーい、おねーちゃんなのに負けちゃったー」
「何してるんだよぉ!ガチタンで負けるなんてー!!!」
はい、妹に模擬戦って言ってもまずは黒星なホノカちゃんでーす。
そしてガチタン命のありすちゃんに怒りの肩掴まれシェイクを食らってるー。
「…………」
「なんだよー!ルキちゃんその呆れた目はー!
勝ったやつの、余裕かこのぉー!?」
「は?
手加減しておいて何言ってるわけ?」
ぶっ……何その冷たい言い方……??
「私だって馬鹿じゃないの。
普段ならティタニスで即距離を詰めてくる癖に、今日は中距離より先に来なかったわよね?
何?手加減してくれてありがとうとでも言わせたいわけ?」
「…………バレてるぞホノカちゃんや」
「…………うぐぅ」
…………実際、手加減してあげたんだ。
初めて乗る機体相手に、練習に、そこまで大人気ないことできない……
「…………オルニメガロニクスにハイスピードミサイル装備で来い」
「……へ?」
突然、ルキちゃんが私の機体を指名して……待っていま武器をなんて言った!?
「……え?い、妹ちゃんそれって……!」
「私のこと思ってるなら、ちゃんとぶちのめして」
と言って、プイッと踵を返して機体の方へ。
「…………本気か……!
いや、本気だよなぁ……」
「…………何、なんでアンタそんな落ち込んでるの?」
と、多分意味を知らない新人ちゃん達が近づいて、まずはミコトちゃんがそう尋ねてくる。
「…………ミコトちゃんや、その質問の答えのために一個だけ聞くね。
なんで私負けたと思う?」
「え?」
と、分かんないだろうなって顔で後ろにいたフミカちゃんを見る。まぁ、頭良さそうな委員長なメガネっ子でも多分分かんないだろうし、そんな顔で返していた。
「それは、」
「ガチタン魂不足じゃーーーーーいッ!!」
スパァン、とそんな言葉と共にどっから持ってきたのそのハリセン?な疑問のブツで頭をスパコンと叩いてきたありすちゃんであった。
「ガチタンは引かない!!轢き殺す!!
ガチタンは不動であらず!!前に進むのみ!!
脚が遅いって?普通の戦車より速いし立体的に動けますがー!??
最悪突撃!!
その重い身体をぶつけて、
そこで初めて全力ファイヤー!!!!!
それがガチタンでしょぉぉぉっ!?!??
普段できてるのになんでしないのぉぉぉぉ!!!?
もぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
うわー、揺れる揺れる!!
肩を掴んで全力で振る振るされて吐きそうー、強化済みなのにー。
「…………そ、それが答え……なんですか?」
「ありすちゃん、あれキャラ作りじゃなかったんだ……!!」
流石にいつものアイドルな可愛い子じゃない様子に……いや待っていつも見せてるの?このガチタン命の姿を???
「いやね、ありすちゃんは正解だよ。
半分は」
「半分?」
と、どういうことか分かってない新人ちゃんの言葉に、ありすちゃんのまんまるなお顔がフグみたいに膨らむ。
「ぶー!それできるの君だけじゃん!!」
「どういうことだよ」
「簡単さ。
相手の弱点の機体で挑まなかった、がもう半分の答え」
とりあえず、まぁガチタン命でそれ以外乗れないと豪語しているが故にフグみたいに膨れているありすちゃんほっぺをツンツンしながら答える私。
「エクシードウォーリア、eX-Wの最大の特徴は、コアパーツを中心に機体の特色を変えられること。
つまり、作戦と敵の相性を考えて、メタを張るっていう手ができる」
それが故の、火星でも地球でも最強兵器なのらしい。
「あー、嘘嘘、新人ちゃん信じちゃダメ!
ここにいるホノカちゃんはね、そういう相手に対して自分の戦いを変えられるっていうことの出来る天才爆乳美少女だからね。
普通は、こんなオッパイ大きくないのがデフォだし、eX-Wはあくまで自分の特性に合わせて、パーツを試行錯誤して自分の機体を作るっていうのが主流だから!
このおっきな子に騙されちゃダメ!こんなの一握りにしかできないよ!一握りできないサイズだし!」
「片方の下乳ぽよぽよすな!大体合ってるけど!!」
見た目通りちっちゃい可愛い手で持て余す私の胸の塊片方を持ち上げぽよぽよするのをやめさせて、新人ちゃん達に改めて言う。
「まぁ、私の真似しても良いさ。君らも私が寝てる間にちょっとは稼いだでしょ?
武器を強くするだけじゃ、1001Bフレームのままだと限界が来る」
一瞬、皆顔が強張っちゃった。
「……で、でもさ歳下パイセンちゃん?
金……貯めなきゃ行けないのに……」
「必要経費ケチって死にました、ってなりたくないなら、パーツはどんどん良いのにしたほうがいいさ。
中古のパーツは売っても同額。
だったら、それで強くなってからの方が
……まぁ、そう言われてもって顔。当然か。
「…………じゃ、そんな訳だから、ちょっと私妹イジメやってみせようか」
てなわけで、向こうで自機の補給待ちでこっちを見ている生意気な態度と身体の9歳児にあっかんべーしておく。
同じくべーってしてくるってことはやる気か!
「あ、ユナさーん、なる早でオルニメガロニクスの武装変えて欲しいなーって!」
「話は聞いてたっすよ。
もう半分終わりっすわ。
でも、背中変えるんすよね?」
「あら、買ってくれますの?」
「『ヘルなんとか』をお願い!」
「『ヘルフィヨトゥル IL-01G』ですわよね?」
「そうそのレーザーライフル!」
***
ズドォン!!!
<ルキ>
『かすった!!!』
「次は直撃かもねー!」
<セヤナ>
《ほらほら、油断しとると当てるで妹ちゃーん!?》
恐竜の名前のスナイパーキャノンから放たれる特大の砲弾。
雷のような音と速度で、遠くでフワフワ飛ぶルキちゃんの赤黒色の新機体バルチャー・グリフィスを追い立てる。
<ルキ>
『近づけない……!』
「しかも射程外だもんね、FCSの」
腕に装備するタイプの大口径スナイパーキャノンは、FCSじゃなくて完全な
まぁタンクでも脚を設置して動かず撃たなければいけない代物だけどね。
<ルキ>
『手加減されてたってよく分かるわね……!
相性の悪い機体、やる気のない虚勢だけの戦い方……!!』
「訓練なんだぞー?真面目に手を抜こうよ。
マジの命のやり取りみたいな動きしてどうすんのさ」
<ルキ>
『私はね!!
手が抜けるおねーちゃんよりずっと弱いのよ!!』
レールガンをマニュアルで狙ってきた。
当たらないって砲口の向きで分かったし動かないで反撃のスナイパーキャノンを撃つ。
<ルキ>
『このまえだって、私達がわちゃわちゃしてなんとか一機倒してって中で、普通に他の敵全部倒して!
私へこむわよ!!分かっていても!!』
華麗な回避でスナイパーキャノンを避けていく。
意図が分かりやすい動きだな。
<ルキ>
『シンギュラ・デザインドビーイングとして、戦うために生まれた私より、
あろうことか、最低傑作な私より強い他の面々も軽くあしらえるような人間が、この世にいること!』
「むかつくかい、私が?」
<ルキ>
『ムカついてるのはアンタに守られてるような私の実力によ!!』
ここで左腕のプラズマガトリング!?
もうそんな射程内に……ヤバい、スナキャを両腕ともパージだ!!
<ルキ>
『金にため、平穏な生活に戻るため、
そんな理由で戦っている相手に実力で負けて、
まして、そんな相手に守られてる。
ねぇ、私って生まれた意味ある?』
プラズマガトリング連射、高速型の分裂ミサイルがやってくる。
動け動け。こう見えてオルニメガロニクスは地面をアメンボみたくスイスイ動けるんだ!
ハンガーの武器を腕に持たせろ!
「そんな重い事聞かれてもねぇ!生まれた意味なんて誰も知らないって!前から言ってる気がするけど!!
まぁ私は、ルキちゃんが血繋がってなくても妹で良かったって思うさ!!
シンギュラちゃん達って戦うために遺伝子から作られたとかよく言うけど、そんなの知らない!!
隣でブー垂れてすぐアイスねだってくるウザい家族がいるぐらいで良いさ!それがもう日常だしさ!!」
<ルキ>
『でもこのままじゃ、いつ私が死ぬか分かったもんじゃない!
まだ、おねーちゃんにおんぶに抱っこしてるような実力じゃね!!』
そのおねーちゃん殺す気みたいなレールガン辞めてー?今死んじゃうぞ?あ、これVR映像か……衝撃がリアルー。
<ルキ>
『訓練なら死なないんでしょ。
じゃあ殺す気できなさいよ!!
殺す気の大鳥ホノカ相手に……!
私より強かったシンギュラの仲間を倒すようなおねーちゃんに勝てなきゃ……!!
私だけ、普通の生活に戻れたおねーちゃんの隣にいれないかもしれない……!!』
……!
「……そんなこと考えてたんだ」
<ルキ>
『この戦いが始まってから、いや
おねーちゃんは、普通に戦場から帰って来れる上澄の中の上澄って、死地に挑める覚悟はあるけど死ぬことを考えないぐらい強い。
おねーちゃんのお母さんのタマコが、今考えると本当死ぬべくして死んだ程度の実力だった、ぐらい酷い言い方できるぐらい。
今のまま、かろうじて動かせる機体をかろうじて戦わせている程度の力じゃ……私ただの、人間以下よ。
…………そのせいで私が死んで、おねーちゃんに看取られるのも……そのせいで、』
「ハイストップ!辛気臭い!!」
背中の武装ハンガーの武器を腕に。
ちょっと変わったレーザーライフル登場!
「一つ忠告してあげる。
真面目すぎるんだよ、ルキちゃんは!」
甲高い音と一緒に、オルニメガロニクスの腕の二つのレーザーライフルがチャージされる。
みるみる減るエネルギーコンデンサ残量。
四脚自体すっごくエネルギー消費が激しいせいで、ジェネレーターが出力特化でも余裕が薄い。
基本エネルギー兵器使うとどうしてもこう、移動分が減ってしまうし出力が足りないなってなる。
「生きてりゃ御の字!戦っている時は生き残るのが優先!!
強いとか弱いとかは手段でしか無いし、弱くても生き残れる手段はあるもんだよ!!
まして、こうやって真面目に練習して弱点を理解して直そうってしてるだけ、私より偉いぞ妹よ!」
なんでそれでもレーザーライフルを使うのか?
まぁこのレーザーライフルの特性と、次にやるコンボのためだ。
<ルキ>
『また舐めプ!?
そっちが積んでるFCSの特性分かってないわけないじゃ無い!!
オルニメガロニクスは『AIFCS-01 フジタスケール1』!広角型で最長のロック距離だけど、その演算の仕様でロック速度はこっちより遅いのよ!!』
そんなわけで距離を詰めてきた。
しかもちゃんと避けられるようにリフターをオフにしてストライクブーストだ!
普通なら、ロックオンより早く相手の射程距離内になっちゃうような素早い動き!
「────それ本当?思いっきりミスしてるじゃんか」
<ルキ>
『……!』
遅いね、発射だ!
ビシャァンッ!!
雷が落ちたような音と共に、文字通り光の速度で着弾したレーザー。
普通の撃ち合いなら、相手のFCSのロック速度で負けるはず。
でも私が早かったのはなんで?
種明かししよう。
実はレーザーをはじめとしたエネルギー兵器は、他の武器よりFCSのロック速度が速くなるんだ。
実弾兵器とは違う、直線の弾道、反動がないから腕部パーツの発射時反動制御計算を省けるからこそ……いや違う。
このFCSはAI社製。
プラズマ兵器の最大手、元からエネルギー兵器前提でのロック速度の仕様なんだ。
ルキちゃん機のアセンのトタンよりマシな程度のEシールド貫通とはいえ、威力が減衰しているからこれで撃墜……とは行かないけど、
相手の機体の動きが完全に停止、と言うより後ろにすら吹き飛んだ瞬間が生まれた。
なんとこのレーザーライフルは、珍しく『高衝撃型』のレーザーなのだ!!
詳しい理屈忘れたけど、着弾した場所が爆発するような衝撃を生んで、敵機体の姿勢制御負荷限界を産むのだ!!
さらに、追撃は緩めない。
即座に両肩のハイスピードミサイルを発射!
HEAT弾頭よりカタログの破壊力は薄いけど、その速度でスタッガー状態じゃ確実に当たるし、それでも高火力だ!
<ルキ>
『きゃぁっ!?』
そして追撃のノンチャージのレーザーで終わり。
ルキちゃん機の仮定装甲値がゼロになる。
エネルギーギリギリ……だけど今度は結構一方的に勝てたな。
<ルキ>
『…………そうしろって言ったのは私だけど……まさかここまでやってくれるだなんてね……!』
「いい勉強にはなったでしょ?
……その機体、一度でもスタッガーしたらアウトだ。
アヤナミマテリアル製フレームは脚止まってからそこそこの火力で沈むぐらい脆いんだし。
特に、レーザーとか弾が速くて衝撃がすごいハイスピードミサイル相手にどう対処するかを考えた方がいいよ」
<ルキ>
『…………ありがとう。ムカつくけど勉強になる』
「あとさ、もしそう言う相手が来ても、今みたく諦めないで欲しいな。
生きて帰ろうよ。勝てなくても、負けない方法はいくらでもあるはず。
逃げても良いし、生きてればまた強くなって挑めるよ。勝ちにこだわりすぎたら負けるよ?」
<ルキ>
『…………でも、勝ちたかった。
悔しいなぁ……相性だけでここまで一方的だなんて……!』
「ま、そのうち勝てるって。
気楽に行こうよ、深刻にしてたり、今限界を越えるとかやってたら……すぐ死んじゃうぞ?」
無線越しで不機嫌な唸る声が聞こえた気がした。
けど勝ちは勝ちねー?ふはははは!
***
「なんで四脚で勝つかねー!タンクの時も真面目にやれー!!ぶーぶー!!」
「……すごい短いけど、すごい戦いだったな……」
「…………あんな機体違うようなの使っても良いんだ……」
「でもさー……あーしらそこまで真面目にやっても?
今でも良いんじゃね?地味に戦ってればさ……」
「…………選択肢としては、考えておかないと……」
応援関側で、各々感想を言い合う中、
「なかなか良い戦力ね、改めて。
これなら、中央の陛下の手を煩わせず、こちらの領土を守り……いや、」
「ああ!!!!
まだ取り返せるかもなッ!!!俺たちの故郷を!!!!エッケハルトの領土を!!!!」
と、ヴィオラとロートは確信を持った笑みを浮かべている。
そのタイミングで、突然サイレンが鳴り響く。
「何!?」
『───全土に報告!!!
レーダー感!!未確認航空機!!!
いえ、救難信号付きで無数の航空機がハンナヴァルト領へ接近!!!!
方角は敵側!!!!』
放送で簡潔に伝えられた事態。
「航空機!?
指揮所、聞こえますか?こちらヴィオラ。
救難信号はどこのもの!?」
『ヴィオラ様!!識別は……』
その時、全員の無線に言い放たれたのは、
『トラスト所属企業エクレールメカニクスと、
壊滅したイェーリング領の兵のものです!!!!』
「なんだとぉ!?!?
ゴルドの土地かァッ!?!?!?!?」
「まさか、同じ辺境伯領のよしみがまだ生きているかもって訳ね……!!」
このハンナヴァルト領のもう一つの隣、
ロートのいるエッケハルト領の反対の場所に位置する奪われた領土の生き残りの物だった。
***
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